5月14日に、内閣参与飯島勲氏が、平壌を訪問しているということが明らかになりました。記事は、訪朝後の北京にてのもの。
>「判断材料として精査」=飯島氏、訪朝終え北京到着
時事通信 5月17日(金)19時53分配信
【北京時事】北朝鮮を訪問していた飯島勲内閣官房参与は17日、訪朝日程を終え、平壌から経由地の北京に到着した。飯島氏は北京空港で記者団に対し、北朝鮮側との会談内容について、「それなりの判断材料として、これから精査して考えたい」と述べた。拉致問題を含む日朝間の懸案について何らかの具体的な提案があった可能性がある。
飯島氏は「真摯(しんし)に長時間の会談ができた」と述べ、北朝鮮側との対話に満足感を示した。ただ詳細については言及せず、「どのような取材も今後一切受けるつもりはない」と強調した。18日に帰国する見通し。
飯島氏は14日に平壌入り。滞在中、対外的に国家元首の役割を務める金永南最高人民会議常任委員長や対外問題を担当する金永日労働党書記(国際部長)らと会談し、拉致問題など日朝間の懸案について話し合ったとみられる。
朝鮮中央通信がウェブサイトに掲載した映像によると、金永南氏は会談で「非常に重要な使命を持って平壌を再訪問した」などと述べ、飯島氏の訪朝を高く評価する考えを示している。
飯島氏は帰国後、菅義偉官房長官らに北朝鮮側との会談内容などについて説明する見通し。
過日、最終的に競売代金納付断念という事態になった池口恵観氏(報道されているように、安倍晋三ともいろいろ関係がある方です)による朝鮮総連本部競落の関係も、やはり飯島氏がからんでいるのではないかとbogus-simotukareさんがご指摘になっています。
もちろん今回の訪朝とその競売の件は、北朝鮮つながりではあっても直接は関係ないし、飯島氏も関係者も、その点について実際のところを語ってくれるのは(語ってくれるとしても)当分先でしょうが、しかし池口氏の奇妙な行動も、飯島氏レベルの人物がかかわっているのなら、それなりに見えてはきます。そうなると、この購入断念は、飯島氏もからんでいたのか、時間稼ぎという側面もあったのか、今後いろいろなことがわかってくるかもしれません。再入札になれば、実質それだけ所有権移転までの時間が稼げるわけです。もちろん競売を実行する「必要」があるわけではありませんが。
そしてタイトルにもしたように、安倍晋三の国会答弁が興味深い。かなり思い切った答弁をしています。
>安倍首相、日朝首脳会談に意欲 「当然考えながら交渉」
2013.5.15 20:10 [安倍首相] 安倍晋三首相は15日の参院予算委員会で、日本人拉致問題などの課題解決をはかるために、北朝鮮の金正恩第1書記との首脳会談に臨むことを辞さない考えを表明した。首相は、小泉純一郎元首相が首脳会談を通じて拉致被害者の帰国を実現した経緯を引用した上で「拉致、核、ミサイル問題を解決しなければならないという判断において、首脳会談が重要な手段であれば考えながら交渉しなければいけない」と述べ、首脳会談への意欲を示した。飯島勲内閣官房参与の訪朝については「事柄上、コメントを差し控えている」と明言を避けたが、対北交渉について「圧力をかけながら、対話で問題を解決したい。その中でさまざまな努力をしている」と強調した。「会うことが目的ではなく、結果を出さなければいけない」とも述べた。
首相は拉致問題に関して「日本の問題だ。日本が主体的に進めていかなければ解決しない。北朝鮮に翻弄されることなく解決に向け努力したい」と強調した。民主党の白真勲氏らへの答弁。
菅義偉官房長官は15日の記者会見で、日朝首脳会談に関する首相答弁について「一般論として答えたのだろう。すぐに首脳会談うんぬんということではない」との見方を示した。
とうぜんこの件については、この時点では答弁を差し控える、というやり方もありますし、それでかまわないと私は思いますが、あえて安倍は上のように答えたわけです。たぶん質問をした議員も、予想以上の踏み込んだ答弁だったと感じたんじゃないのかな。
さて、実は安倍が拉致問題について具体的に動いてくれると、都合のいいところもあります。つまり安倍晋三の行動については、右翼や産経新聞は不本意であっても黙っているので好都合な可能性があるということです。
このブログで再三指摘しているように、右翼と産経新聞(自民党については、現在安倍は党首ですので、議論するような話ではありません。もっとも安倍が総裁を退任してもよほどのことがない限り極甘であり続けるでしょう)は安倍についてほとんど信じがたいくらい甘いので、彼(女)らは内心「!」とか「あの野郎!」くらいのことを考えても、我慢して黙っています。最近で言えば、河野談話や村山談話の見直しの実質断念が表明されても、産経新聞はその件を(黙然日記さんによれば)数日たたなければ報道しませんでしたし、安倍を支持する右翼の代表である「国家基本問題研究所」も、現段階ではこの件と飯島氏訪朝についての論評を避けています。
今後なにがしかの意見を表明することになるでしょうが、たぶん安倍内閣と安倍個人を批判・非難することは最大限避けるでしょうね。河野談話・村山談話の見直しの事実上断念も痛手でしょうが、それで今回の飯島訪朝です。今後何らかの意見表明になるのかどうかは不明ですが、彼(女)らの立場からすればこれは批判せざるをえませんが、その可能性は低いだろうと私は思います。言及するにしても最大限遠慮したものになるのではないですか。どちらにしてもいずれわかります。ちなみに「国家基本問題研究所」の幹部(企画委員)である島田洋一は、現段階ではブログではこれらの件を扱っていません。ツイッターもご同様。
安倍の狂信的支持者で、辻元清美に対して非常に悪質な名誉毀損行為を行った産経新聞記者阿比留瑠比氏もブログでは(彼のブログは最近2週間ほど更新していないのですが)扱っていませんね。支持するにしても何するにしても、安倍政権を語るのなら、この件は外せないでしょうにね。御大(「国家基本問題研究所」理事長)櫻井よしこも・・・オフィシャルサイトは似たようなものですね。私の勝手な想像では、これらの件について論評しないのが彼(女)らにとって可能な最高レベルの安倍への批判なのでしょう。
さて私がとても興味があるのがこの件の当事者である家族会、巣食う会です。こちらも現段階では、会としては特に意見表明はしていませんね。
ただし西岡力は言及しています。彼(女)らも安倍をやたら支持している。というか、安倍に対する期待は、たぶんに北朝鮮への強硬措置ではないかと思います。強硬措置と言ったって、連中の主張しているのは(私が何回も指摘している)
>・北朝鮮混乱時の実力による救出
[1]金正恩政権が不安定なため、内乱、暴動などによる混乱事態が発生し被害者に
危険が及ぶ危険性がある。
[2]それに備えて、法整備、米韓との戦略対話、派遣要員準備などの準備を急がな
ければならない。
とかいう実現性のない戯言でしかありませんが(居場所もわからないのにどうやって救出するのかとか、本当に危急事態になったら自衛隊なんか派遣できるのか、派遣して何かができるのか(派遣なんかできっこないし、派遣したところで何もできはしないでしょう。実際問題として日本政府は、在韓日本人と日本への影響に対する対応でせいいっぱいなんじゃないんですか)、なんて話は書き飽きました。これからも書きますけど)、この人たちからすればやっぱり
「裏切られた」 「失望した」「ひどい」「だまされた」
とかいうことになるんですかね(意見を表明するかどうかはともかく)。安倍だって、首相になっちゃえば、そんなに非現実的で非常識な話にはのれんでしょう。
前にも書きましたように、巣食う会(家族会は、巣食う会の事実上傀儡でしょう)は時の政府が対北朝鮮関係改善に動こうとすると、実に執念深くそれをつぶし続けました。もちろんこんな連中につぶされる側にも大きな問題がありますが、あるいは、巣食う会も安倍でしたら今までのようなひどいやり方はしにくくなる可能性はあります。ていうか、私はそれに期待しています(笑)。
ところで、上でふれた西岡の意見をちょっと論評します。
>飯島参与訪朝をどう見るか
2013/05/15 01:31
元小泉首相秘書官である飯島 勲内閣官房参与が、5月14日北朝鮮を訪問したことが明らかになった。
私はフジテレビの夜のニュース番組のインタビューで「下交渉だと思うが、そういうものが始まる前に公開されてしまうことは、異例中の異例。今回のことは、北朝鮮が意図的に情報を公開しているようなことなので、一体どういうことなのかなと驚いている」とコメントした。
飯島氏は小泉首相の2回目の訪朝を水面下でアレンジしたと知られている。彼が窓口として使ったのは朝鮮総連の許宗万議長だ。しかし、2度目の訪朝の結果、出てきたのは偽遺骨や偽書類で、結果として、北朝鮮の謀略に引っかかったことになる。
その彼が北朝鮮外務省と協議するというが、水面下の接触ならば極秘でやるべきだし、外交官との交渉は外交官が担うべきだ。
彼を北朝鮮に呼んだのは北朝鮮の党の謀略機関である統一戦線部だとの見方がある。それなら、民主党時代の中井洽元大臣や野田官邸が相手にしていたのと同じラインだ。統一戦線部は、全被害者の送還に反対し続けているときく。私は、拉致被害者に関する調査委員会の立ち上げというカードで、日本から制裁緩和や支援を取り付ける一方、日本の抜け駆けで韓国と米国を疑心暗鬼にさせて3国連繋を阻害しようとする狙いがあるのではないかと疑っている。
接触も交渉も必要だ。金正恩政権が困りだし、対日接近を企図してきたことも事実だ。しかし、厳格な行動対行動原則を守らず、たとえば調査委員会立ち上げに対して代価を出すというような安易な譲歩をすると、絶対に失敗する。緊張感を持って成り行きを見守りたい。
> その彼が北朝鮮外務省と協議するというが、水面下の接触ならば極秘でやるべきだし、外交官との交渉は外交官が担うべきだ。
いや、これは交渉相手は北朝鮮外務省に限らないし(北朝鮮ナンバー2とも飯島氏は会談したとのこと)、水面下の交渉でもないんでしょう。また外交官レベルでは、そんなに大物も面会はしないでしょう。
>緊張感を持って成り行きを見守りたい。
西岡のふだんの言論内容を知っていれば、当然この件は批判・非難・罵倒をするんじゃないかと思うんですが、やはり安倍を批判するわけにはいかないんでしょうね。でもこれって、彼らの立場からすれば、自分たちの存在意義の根幹にかかわる大変重大な話であって、見てみぬふり、批判しないふりはしにくいと思います。言及するのを避け続けるのであれば、彼らは安倍のやりかたを是認するってことに結果的にはなるんでしょうね。それにしてもここまでの安倍への遠慮ぶりはすごい(笑)。西岡も内心では安倍を罵っているんでしょうが、予想通りといえば予想通りの反応です。本命の改憲のためには黙っているってことなんですかね。どこまで安倍晋三に甘い(遠慮している)んだか。なお、bogus-simotukareさんは、
>西岡ら巣くう会一派はこの訪朝を本心では否定したくてたまらないのだろう。しかし安倍がこの訪朝を現時点では積極支持を表明しないものの、「詳しい状況がわからないのでノーコメント。状況を見守る」という趣旨の発言をマスコミ相手に語り、飯島参与を何ら非難しない、もちろん参与更迭の意志も表明していない以上、安倍信者の西岡らには飯島批判などできようはずがない。
どう見ても安倍が飯島訪朝を黙認していることは明白だ。である以上、安倍同様に「状況を見守る」としか巣くう会一派が言えないのも当然ではある。
と論評されています。
しかしこんな記事も流れています。
>飯島氏訪朝、米側が不快感「聞いていなかった」
読売新聞 5月16日(木)9時59分配信
飯島勲内閣官房参与の訪朝に、事前通告がなかった米韓両政府は対北朝鮮政策での日米韓の連携に悪影響を与えかねないとみて懸念を強めている。
北朝鮮政策すり合わせのため韓中日を歴訪中のグリン・デービース米政府特別代表(北朝鮮担当)は、16日からの訪日で会談する杉山晋輔・外務省アジア大洋州局長らに、飯島氏の訪朝の意図や会談内容について詳細な説明を求める構えだ。
飯島氏の訪朝が明らかになった14日、デービース氏はソウルで「聞いていなかった」と不快感をにじませた。15日には北京で記者団に対し、日本政府からその後、「わずかな説明」を受けたとしたが「まだ情報が足りない。評価は、日本で詳しい説明を聞いてからにしたい」と述べた。
米国は、今月7日の米韓首脳会談で、北朝鮮に対して、あくまで非核化を前提に対話復帰を求める立場を確認したばかり。
デービース氏は今回の歴訪で日韓との強い結束を示した上で、制裁行動に同調する動きを見せ始めた中国から協力拡大を取り付け北朝鮮に揺さぶりをかける狙いだった。それだけに米政府は飯島氏訪朝で計算に狂いが生じる可能性もあるとみている。
特に、オバマ大統領は7日の朴槿恵(パククネ)大統領との共同記者会見で、「韓国、日本と緊密に調整を続ける」と述べていた。歴史問題を巡り韓国の対日感情が悪化していることを念頭に、韓国側に「日本外し」をしないよう暗に求めたものだったが、飯島氏の訪朝はそうした米国の「配慮」も無視する形になったといえる。
.最終更新:5月16日(木)9時59分
こちらも。
><飯島氏訪朝>「独走」に米韓懸念 北朝鮮、包囲網崩し狙う
毎日新聞 5月16日(木)21時53分配信
飯島勲内閣官房参与の訪朝が、北朝鮮の核・ミサイル問題で連携を図ってきた日本と米韓の関係に影を落としている。外務省の杉山晋輔アジア大洋州局長は16日、来日した米国のデービース北朝鮮担当特別代表との会談で説明したが、事前説明がなかったことに米側には警戒感が残る。北朝鮮に国際包囲網を崩す意図もうかがえるだけに、自民党内から「北朝鮮にいいように使われている」と批判も出る。拉致問題は動くのか、会談内容はまだ伝わってこない。
「北朝鮮との対話の窓は常に開いているが、あくまでも非核化に向けた対話であるべきだ」。デービース氏は会談で飯島氏の訪朝にクギを刺した。会談冒頭、デービース氏の顔はこわ張っていたという。デービース氏は会談後、記者団に「根源的な安全保障上の問題は北朝鮮の非核化だ」と強調。飯島氏訪朝について「知らなかった」と不快感を見せ、日本に詳細な情報提供を求める意向を示した。
昨年8月に再開した日朝政府間協議は、北朝鮮に拉致問題を議題にすることを認めさせたが、12月の北朝鮮の弾道ミサイル発射で中断したまま。安倍政権は事態打開に向け、「いろんなルートで北朝鮮側との調整をやってきた」(政府関係者)。政府拉致問題対策本部の三谷秀史事務局長が4月上旬、非公式にモンゴルを訪問したのも対話再開を探るためだ。
飯島氏訪朝もこうした一環で、背景には安倍晋三首相の強い意欲がある。首相は在任中の問題解決にたびたび意欲を示しており、15日の参院予算委では、状況次第で日朝首脳会談開催の可能性に含みを持たせた。
飯島氏は2002年の小泉純一郎首相の訪朝に関わり、北朝鮮人脈を持つとされる。飯島氏には朝鮮総連本部の競売問題と絡めつつ、拉致問題で出方を探る意図があるとみられ、首相も訪朝を了承した。協議は記録のため筆談もまじえて行われているという。
しかし、拉致打開に成算があるわけではない。政府関係者は「成果がすぐに出ることはない」と語る。政権幹部は「内緒にしたかったが、北朝鮮にばらされてしまった」と語り、北朝鮮が飯島氏の訪朝を暴露した意図をいぶかる。
自民党の閣僚関係者は「米国も韓国も『勝手に行きやがって』とカンカンだ。抜け駆けして、政権維持のために北朝鮮の非核化という大目標を無視した政権だと思われる」と批判した。【吉永康朗】
この記事を読んだ限りでは、読売新聞社も毎日新聞社も必ずしも飯島氏訪朝には賛成でないようですね。やはり米国と協調したうえでの北朝鮮対応をということですかね。で、米国側も顔をつぶされた、みたいな反応となると、これもなかなか前途は多難なのですかね。あまり楽観はできないのかも。たぶん難しいですね。前向きに進展することを私は期待したいのですが。
というわけで、上の誰かさんの言葉同様
>緊張感を持って成り行きを見守りたい。
と思います。それにしても正直拉致問題も話題性が低くなりましたね。今後は、拉致問題を前面に出さないで北朝鮮と対応していくという方向になるのかもしれません。やはり時間が経たないと北朝鮮との交渉もなかなか難しいところがあるのでしょう。
それから、私はこのブログその他で安倍晋三のことを二言目には馬鹿、クズと罵っていますが、この飯島氏訪朝についてはとりあえず支持します。上にも書いたように、拉致問題その他の北朝鮮問題への対応が前向きになるのならそれに越したことはありません。正直現状ある程度動かないとどうにもならないと思いますので。
例によってbogus-simotukareさんに感謝いたします。また、上に引用したネットの状況は5月17日21時現在での話ですので、その後の動向については、新しい記事を書くという形で対応したいと思います。