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島田知事の限界をも論じられているかに注目したい(沖縄戦時の知事である島田叡についてのドキュメント映画が公開)

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沖縄戦当時、沖縄県の官選知事(最後の官選知事でした)だった島田叡についての映画が製作されて公開されています。記事を。

>2021/03/06 16:23 イベント・その他 最新ニュース

島田叡知事描いた映画「生きろ」公開始まる

太平洋戦争末期の沖縄県知事、島田叡の生涯を描いた映画「生きろ」が、6日、公開初日を迎えました。

映画「生きろ」は、瀬長亀次郎の映画で注目を集めた佐古忠彦監督の最新作で、初日の6日、桜坂劇場には開場前から長い列ができました。
(来場者)「激戦地で生き残った母がこういう映画を見てみたいということで来た。島田知事も沖縄のためにいろいろ頑張ってくださった方なので母に見てもらおうと思って」

初回上映は150人以上が鑑賞し、佐古監督が舞台挨拶を行いました。
(佐古忠彦監督)「島田知事という人に対する評価を含めて色々あるのは私も聞いてますし、今回は色んな視点でこの物語を見つめて頂けると嬉しい」

映画「生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事」は、那覇市の桜坂劇場で上映されています。

予告編はこちら。

映画『生きろ 島田叡-戦中最後の沖縄県知事』予告編

このブログでも島田知事について触れた記事をいくつか書いています。

この本で沖縄戦を勉強したい 島田叡沖縄県知事の前任者である泉守紀についての本を読んでみたい

引用した記事でも、監督の佐古氏は、

>島田知事という人に対する評価を含めて色々あるのは私も聞いてますし、今回は色んな視点でこの物語を見つめて頂けると嬉しい

と語っています。ってことは、この映画は、島田知事絶賛というものではないんですかね。予告編を見た限りでは、島田氏を相当高く評価しているように思いますが。題名も、『生きろ 島田叡-戦中最後の沖縄県知事』だしね。

島田知事の前任知事である泉守紀の評価は、拙記事から引用すれば

>世間では、泉を「死ぬのがこわくて逃げた」と厳しく批判し、島田は「それに対して」と高い評価です。

ということになろうかと思います。しかし、沖縄戦を研究している林博史氏は、その編著書のなかで島田に対して

>「一〇万人を超す命を救った」、あるいは二〇万人を救ったとして当時の県知事や警察部長を賛美する主張がある。はたして事実に照らしてそう言えるのだろうか。人々を戦争に駆り立てていった行政や警察を美化していいのだろうか。(p.70)

>島田知事が一〇万人を救ったというのは何も根拠がない。(p.71)

>いくら軍が強く要求したとしても、知事が死を覚悟して沖縄に赴任してきたとするならば、法的手続きを無視したやり方に異議を唱え、少年たちを守ろうとする努力をしれいれば、と考えるのは無理な注文だろうか。(p.72)

>こうした知事の言動を「本当に言いたかった」ことではないと何の根拠もなく解釈し、知事を弁護する向きもある。知事の側にいた人のなかには、命を大切にするように言われたと語っている人もいるが、それは知事と個人的なつながりのある人だけの話であり、一般の人々は新聞に掲載されたことを文字通りに受けとめるしかない。知事として県民に対して公的に語ったことと、身近なものだけにこっそりと語ったことが違っていた場合、後者をもってその人物を評価してよいのだろうか。島田知事は人柄としては人望のある人物だったようだが、公職にあるものは公的な言動で評価されるべきではないだろうか。(同上)

>近年、こうした知事や警察部長らへの美化論が本土から多く出てくるのはなぜだろうか。沖縄戦でも戦後の米軍基地についても沖縄を犠牲にし続けている本土が批判されている中で、自分たちの強度の出身者が沖縄の人々を助けたと思うことに追ってホッとしたいという癒しへの願望が作り出した幻想ではないだろうか。(p.73)

>公人がその職務上、何を行ったのか、事実に基づいて議論するべきではないだろうか。(同上)

というように厳しい評価です。上に引用した佐古監督の話も、たぶんにこの林氏の意見を念頭に置いているのではないかと思います。すくなくとも佐古氏は、林氏の島田評価についてはご存じのはず。

映画でどれくらい島田の問題点などが指摘されているのかは現段階未見ですので当方論じられませんが、やはり絶賛ではだめだと私は思います。それでは林氏のいう

>沖縄戦でも戦後の米軍基地についても沖縄を犠牲にし続けている本土が批判されている中で、自分たちの強度の出身者が沖縄の人々を助けたと思うことに追ってホッとしたいという癒しへの願望が作り出した幻想ではないだろうか。

になってしまうでしょう。それは、沖縄戦後から76年も経過した今日ではまずいと思います。私たちは歴史が経過して、ある程度当時のことを客観的に観ていくことが可能なのですから、それは林氏がおっしゃるように

>公人がその職務上、何を行ったのか、事実に基づいて議論するべきではないだろうか。

ということになるでしょう。そうなるとどうしても、島田に対して厳しい評価になるかと思います。とすると私としては、『生きろ 島田叡-戦中最後の沖縄県知事』が、どれくらい島田の限界について論じているかに注目したいですね。なかなかそれは難しいことなのかもですが(間違いなく難しいでしょう)、しかしそこに突っ込まないで「島田知事は人格者だ」なんて映画を作ってもあんまりおもしろくないと思います。彼個人の問題から時代の制約にいたるまで論じていかないと、島田知事の実像は見えてこないのではないでしょうか。当時の沖縄県知事というのは、実質的に植民地総督のような立場があったかと思います。そして軍と悪い関係にあった泉知事から知事職を引き継いだ島田知事は、軍からしても話が分かる知事でした。しかしそれは、住民保護とは相反するものになったわけで、これも私が前に書いた文章を引用すれば

>それを「仕方ない」「彼はやるべきことはやった」といって免責するには、沖縄戦ではあまりに多数の住民が死んでしまったわけです。

ということになるでしょう。大川小学校の教師たちもいろいろ批判・非難されているかと思いますが、その伝で言えば島田もいろいろな責任と重荷を背負ったし、また今日からすれば「もっといろいろなことができたのではないか」「これはさすがに軍に迎合しすぎなのではなかったか」などと論じられることも必要かと考えます。

ともかく鑑賞してみて、またなにか書きたいことが出てきたら記事を書こうかと思います。都内での公開は、3月20日からです。


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