過日の記事より。各紙に配信されていますが、引用は琉球新報のものを。写真も、同じ記事のものです。
>朝鮮戦争の終戦宣言に難色 岸田政権、韓国の提案に
2021年11月7日 08:46
朝鮮半島の終戦宣言を巡る各国の対応(写真はロイターなど)
【ワシントン共同】日米韓3カ国が先月ワシントンで開いた岸田政権発足後初の高官協議で、北朝鮮との信頼醸成措置として休戦状態の朝鮮戦争(1950~53年)の終戦宣言を望む韓国に対し、日本が「時期尚早」として難色を示したことが5日分かった。複数の外交筋が明らかにした。米国は態度を留保し、3カ国の温度差が浮き彫りとなった。
韓国の文在寅大統領が9月に国連総会の一般討論演説で終戦宣言を提案後、日本の立場が明らかになったのは初めて。北朝鮮がミサイル実験を繰り返し、核兵器開発と日本人拉致問題で解決への道筋が見えない中、岸田政権は融和ムードだけが拡大することを警戒した。
(共同通信)
日本政府の態度は、正直予想通り、想定内のたぐいであってなんら意外ではありませんが、ただこれも今日に始まり明日に終わる話ではありませんが、そもそも論として、朝鮮戦争の終戦宣言という問題について、日本政府はそれになんらかの意見を言える立場なんですかね。日本は、直接朝鮮戦争には参戦していないでしょう。なお私は、現在朝鮮戦争は実質終戦しているので、終戦宣言に特に問題があるとは思いませんが、これは、私がどう考えるかはこの際どうでもいい話です。
もちろん日本は、6か国協議(ちなみにこれを「6者協議」と呼ぶ向きは、北朝鮮を国家として認めたくないという部分があるようです)のメンバーであり(南北朝鮮、米国、中国、ロシア、日本)、この地域の安全保障の関係の重要なメンバーではあります。しかし朝鮮戦争に関して日本は、米軍(国連軍)の兵站基地としての重要さはあっても、さすがに日本政府による軍事組織が直接介入はしていない。米軍に(理由はともかく)連れていかれた若干の日本人がいるとか、哨戒艇の関係での参加はありますが、さすがに日本の軍隊のたぐいが朝鮮半島に向かったということはないわけです。その後日本もいろいろと国際社会にも復帰したし韓国とも国交を回復しましたが、基本的に参戦していない戦争について、日本側がその処理について当事者の国々に口をはさむ余地はないでしょう。
それでですよ、上の引用にもあるように、
>北朝鮮がミサイル実験を繰り返し、核兵器開発と日本人拉致問題で解決への道筋が見えない中、岸田政権は融和ムードだけが拡大することを警戒した。
って、日本はその件に関して、それを改善あるいは解決に導く何らかの努力、動きをしているんですかね。とてもしているようには思えませんが。
先週の選挙で自民党は、議席を減らしはしましたが、過半数を大きく上回る議席を確保したわけで、よほどのことがない限り少なくとも来年の参議院選挙までは岸田政権ということになりますし、少なくとも次の衆議院選挙までは自民党を中心とする連立政権が政権を運営することになります。それで現在の自民党総裁にして首相である岸田という人物は、長きにわたって安倍政権で外相をしていました。これは、安倍が自分の次以降の首相に彼をと考えて、岸田があまり得意でないとされる外交の勉強をさせてあげたなんて話もありますが、そのあたりの真偽はともかく、彼は、日本の外交について首相に次ぐ責任者を長くしていたし、また現在は首相という立場です。岸田は、上の引用の
>融和ムードだけが拡大すること
を警戒するのなら、それに対して具体的にこれこれこういうことをしたい、これこれこういうことをするというなんらかの考え、見通しがあるのかです。ないでしょ、悪いけど、そんなの。外相だった時代から首相である今日まで、長きにわたって日本外交の責任者をしていた彼は、そんなことに何の寄与もしていないでしょう。
何回も引用しますと、拉致被害者家族である横田拓也氏は、
>拉致被害者達を帰国させず、双方の国に事件究明の為と称する連絡事務所の設置や調査委員会の立ち上げと言う「聞こえの良い隠蔽工作」には絶対反対する立場を私達は貫きます。
と主張しています。それに対して、「そういうわけにはいかない。平壌に連絡事務所は設置する」というだけの度胸と決意が岸田首相にあるのか。ないでしょうね、現在していないんだからするわけがない。
連絡事務所の設置もしないで、まともな日朝交渉ができるのかとか、いろいろ疑問は生じますが、岸田は、自分が首相である間は大過なく拉致問題が過ぎればいい、米国の絡みで一括して解決できれば、北朝鮮が崩壊してくれればとか無責任あるいは他力本願なことしか考えていないんじゃないんですかね。で、これは岸田や自民党だけの問題ではありません。民主党政権時もそうだし、ポスト小泉の安倍第1次政権以降の首相はみな同じようなものでしょう。唯一福田康夫氏には、それなりのやる気を私は感じていましたが、彼も何もできませんでした。
安倍晋三が、北方領土に関して二島返還を打ち出したのは、それ自体はそれなりに評価に値するでしょうが、その安倍も、拉致問題について連絡事務所の設置もしなかった(できなかった)わけです。ましてや岸田ではでしょう。私が前に指摘したように
来年の9月17日は、誰かはともかく現在とは別の人物が首相だが、拉致問題については今年と同じような状況だろう(本日小泉訪朝から19年) 岸田首相(予定)は、外交に関しては安倍・菅路線を継承するのだろう(ということは、大した外交成果は上げられそうにない)ということになるんじゃないんですかね。それでそういう無責任な態度で
>北朝鮮がミサイル実験を繰り返し、核兵器開発と日本人拉致問題で解決への道筋が見えない中、岸田政権は融和ムードだけが拡大することを警戒した。
もないもんだと思いますね、ほんとに。何をいまさらながら無様で無残な光景です。