先日次のような本を読みました。
それでその本を読んでいて、あ、これあの人物に当てはまると思ったくだりがありました。
>また、「男は性欲をコントロールできない生き物だ」という歪んだ価値観がい、まだ信じられていることにも違和感を覚えます。これは、被害者が存在する性犯罪の場面でもしばしば見られます。たとえばある男性が痴漢で逮捕されたときに、「妻とはセックスレスだったため、性欲を持て余して痴漢行為に及んだのだ」と、性欲解消のために痴漢行為に至ったと考える人がいます。当然ながら、セックスレスと痴漢の間にはなんら相関関係はないものの、「抑えきれない性欲が暴走して、性犯罪を犯してしまった」というステレオタイプがいまだ根強く社会にはびこっている事実は明らかです。(p.30 )
それで、上の引用文で私が思い出したのが、こちらの事件の犯人です。2019年に死刑を執行されています。
Wikipediaには、
>犯人の男は事件当時、飲み代やパチンコ代、携帯電話の出会い系サイト料金の支払いなどのため計800万円の借金を抱えており、また結婚生活が破綻していた。
とあります。それですみません、以下かなり凄惨な文章を引用しますので、そういうものを読むのが嫌な方は、以下の文章は読まないでください。お願いします。最初はこちらのサイトから。
>論告で検察側は事件の動機について「経済的な困窮状態と性的な欲求不満状態から、強盗と暴行目的で女性を物色していた」と指摘。いずれの事件も口封じのために殺害したとした。そのうえで「女性の性や生命に対する畏敬の念もなく、自らの欲望を満たすために女性を襲い殺害した、凶悪かつ残忍極まりない犯行」と厳しく非難した。
次はこちらから。
>鈴木は1989年ごろ車で人身事故を起こし、被害弁済のために消費者金融でカネを借りたことをきっかけに、借金をするようになった。後にパチンコやスナック遊びなどの遊興費で、妻に隠れて約800万円の借金を抱えた鈴木は、そのことが発覚すると妻から小遣いを止められ、夫婦生活を拒絶される生活を余儀なくされた。
そこで04年12月の初旬から、1人歩きの女性を襲って、金品を強奪して生活費などを得たうえ、強姦で性欲を満たそうと考え、車で女性を物色するようになったのである。
飢えた鈴木の目に、12月12日午後11時半ごろ、友人宅から帰宅しようとする安川奈美さん(仮名)の姿が、飛び込んできた。
鈴木は彼女が人気のない公園の前に差しかかったところで、背後から口をふさいだ。そして逃げ出そうとする奈美さんを抱え上げて園内に入ると、彼女の腹の上に馬乗りになり、マフラーの両端を左右に引っ張って気絶させ、姦淫した。
欲望を遂げた鈴木は、奈美さんの手提げバッグを奪おうと考えたが、自分の顔を相手に見られたことを思い出し、彼女の胸のあたりに馬乗りになると、ふたたびマフラーを使って死亡するまで絞め続けた。そのとき、公園の近くにトラックが停まり、運転手が降りてくる気配があった。慌てた鈴木は逃走し、結果的に彼女のバッグがその場に残されることになったのである。
(中略)
翌年1月18日になると、鈴木は仕事で保冷車を運転するときも、包丁を持参するようになった。午前5時20分ごろ、徒歩で福岡空港へと向かう福田祥子さん(仮名)を移動中に見かけた鈴木は、車をUターンさせて駐車場に停め、包丁を隠し持って尾行した。彼女が公園の前に差しかかったところで、背後から口をふさぎ、面前に包丁を突き付けて園内に引きずり込んだのである。続いて祥子さんの顔面を殴りつけ、馬乗りになって首を絞めながらさらに数回殴りつけた。公園の奥では彼女のセーターを下着ごとたくし上げ、露出した乳房を弄(もてあそ)んだ。ストッキングを引きちぎり、パンティをはぎ取ると彼女の口に押し込み、抵抗できないよう殴りつけた。
鈴木は姦淫しようとしたが、前の路上をバイクが通りかかるなどしたため断念。意識を取り戻した祥子さんの背中を包丁で3回刺し、さらに仰向けになった彼女の腹部を2回刺し、財布と携帯電話やCDプレーヤーの入ったバッグを奪って公園から逃走した。
犯行後は仕事に戻り、その日の配送業務を終えた鈴木は、午前6時半ごろ現場の公園に戻っている。近づいて様子を見たところ、祥子さんの腹部が痙攣(けいれん)していたので、間もなく死亡するだろうと思い、保冷車に乗って立ち去った――。
さらにこちらも。
>よく『奥さんがさせてくれん』ちぼやきよったね。
地裁の判決文より。
>その後,被告人は,借金の返済に充てるために知人などから借金を重ね,その結果,平成16年9月ころには借金の総額は約800万円となり,妻がこの借金について知るところとなった その結果 妻は被告人に愛想を尽かし それ以降 被告人は,妻から小遣いをもらうことができず,また,妻と性行為をするどころか妻の身体に触ることすらも許してもらえなくなった。また,妻は,日常生活の中でも,被告人に夫として接することはなくなり,子供の前でも被告人を罵倒したりするようになった。
(中略)
また,被告人は,性欲のはけ口が全くなかったため,性行為などを想像して悶々とするような性的な欲求不満の状態でもあった。
(中略)
犯行の動機
本件各犯行は,被告人が,妻から小遣いをもらうことができず,金銭に困窮していたことや,妻から性交渉を拒まれた上,風俗店に行く金銭もなかったため,性欲のはけ口がなく,性的に欲求不満であったことから敢行したものである。そして,被告人は,自己の金銭欲や性欲の赴くままに犯行を行った上,自己の犯行であることが発覚することを防ぐなどという余りにも身勝手かつ自己中心的な理由から,何ら落ち度のない被害者らを殺害したものであって,その動機に酌量の余地は全くない。
夫婦関係を拒絶されたからこの事件を起こしたかどうかは定かでありませんが、少なくともこの鈴木という死刑囚がかなりひどいセックス依存症だったということは事実かと思います。確かに彼は、中学生あたりから素行不良なところはあったようですが、しかしさすがにここまでひどいことをするほど悪質な人物ではなかったはずです。これは、連続殺人犯で有名な大久保清(1976年に死刑執行済み)も同じところがあります。彼も素行不良であり、性犯罪をふくむ前科がありましたし服役経験もありましたが、ご当人のはったりは無視すれば、彼が最初の事件以前に人を殺したという形跡はありません。彼も、最後の服役を終えて仮出所した後で、何らかの理由でセックス依存がさらにひどくなったのでしょうね。そしてそれが、人を殺しても構わないというレベルになってしまったのでしょう。
それにしても「××依存」というのは本当に怖いですね。このブログでも、いろいろな依存をご紹介していますが、先日記事でとりあげた佐藤忠志氏にしても彼が孤独死・困窮死したのは、買い物依存、ニコチン依存、アルコール依存などのためでした。もちろんセックス依存だからといって大久保死刑囚や鈴木死刑囚ほどひどいことをする人間がそうそういるわけもありませんが、ともかく依存症というのは、そこまで人を狂わす可能性があるのでしょう。そこまでひどくなくても、たとえば警察署の署長が商業施設のトイレットペーパーを持ち去ったり、著名なマラソンランナーが万引きをして執行猶予付き有罪判決を受けた後でまた無意味な万引きをしてしまったりもするわけです。
たぶんだが、この埼玉県警深谷署の署長は、摂食障害者の万引き常習犯に近い精神状態ではないか(追記あり:「愛情では依存症は治せない」は至言だと思う)あえて書けば、世の中犯罪をする人間はだいたいにおいて子どものころからよろしくない、頭が悪くて精神もよくない人間が多いのですが、性犯罪者は、ほかはまともでも、性の関係が極端に悪い人間であるという人もいますからね。したがって、上の鈴木死刑囚や大久保死刑囚がまともな人間であるとは言いませんが、まともな学生や勤め人らの中にも、電車の中で痴漢したり、それより悪質な性犯罪をする人物もいるわけです。依存だから、万引きなどをする人間もいるのと同じです。本当に困ったものです。