bogus-simotukareさんの記事を読んでいて、「おいおい」と思いました。
その記事で紹介されている右翼集会のレポート記事です。
【報告】出雲市での講演会「南モンゴルは負けない!」 | 一般社団法人 アジア自由民主連帯協議会(文責・三浦)
それで筆者(三浦小太郎氏)の書いていることに「どうもなあ」と感じたわけです。
詳細な内容は、リンク先をお読みいただければよいとして、まず変なのは
>何よりも、石飛博雄さんという素晴らしい人を(しかも出雲市在住)をご紹介できただけでもとても意義深いものだったと思います。
石飛氏なる人物を私はもちろん何も知りませんが、紹介によると
>石飛さんは若いころから、頭山満や内田良平、玄洋社などのアジア主義に共感しており
とあるくらいですからね(苦笑)。頭山満や内田良平、玄洋社なんてどれもバリバリの右翼、右翼団体じゃないですか。そんなの別に称賛したり自慢したり嬉々として紹介するようなことではない。つまり石飛氏は、本気の右翼なのでしょう。なお内田良平というのは、俳優とは無関係です。念のため。
それで私がすごいと思ったのがこちら。
>石飛さんによれば、当時バングラデシュでは、亡命チベット人部隊がインドから出撃し、バングラデシュ独立運動にかかわったことは、あちこちでうわさになっていたとのことです。事実、インドに亡命していたチベット人たちは、1960年代、ゲリラとしてしばしば中国国内に潜入していました。その彼らが、バングラデシュ独立戦争にも参加していたのでした。
いや、それさ、インド政府によるパキスタン(当時)への重大な主権侵害、違法な内政干渉、不法行為でしょうに。この記事を書いている三浦氏はたとえば中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)にきわめて批判的な人間であり、この2国が同じようなことをしたら、口を極めて非難するんじゃないんですかね。こんなことは、とても自慢したり「過去のこと」としてそのまま紹介するようなことではありません。半世紀以上前の話とはいえ、インドだってそんなことを公然と話をされたら迷惑でしょうに。
それでまたひどいのが、
>亡命チベット人部隊がインドから出撃し、バングラデシュ独立運動にかかわった
>インドに亡命していたチベット人たちは、1960年代、ゲリラとしてしばしば中国国内に潜入していました。その彼らが、バングラデシュ独立戦争にも参加していた
というところです。亡命チベット人の本国である中国に潜入するというのならまだしも、バングラデシュにインド軍の代理にような形でかかわったなんて、それ完全に「外国人部隊」(昔のいい方なら「外人部隊」)です。まさに汚れ役を外国人にやらせているということになり、それもかなりまずい話じゃないですかね。
だいたいこの記事の中では、そういったニュアンスをうかがえるものはありませんが、そもそもインド側が亡命チベット人に、バングラデシュに行けと命じて、チベット側が断れずに行ったという可能性が高くないか。さすがに亡命チベット人部隊が率先して関与したとは考えにくいので。それでこの講演をした人も、この記事を書いている人も、そのようなことを「悪い」「問題がある」とは考えていないんでしょうね。むしろ「そういうことをした亡命チベット人たちは立派だ」とでも考えているのでしょう。そうでなければこんな話はしないし、こんな文章も書かないでしょう。どんだけ馬鹿で非常識なんだか。
それでですよ、拙ブログでも何回かご登場いただいているチベットからの亡命者であるペマ・ギャルポ氏、あるいはチベット仏教の専門家である石濱裕美子早稲田大学教授、もしくは「商人の情け」でHNは出しませんが、やたらチベットやダライ・ラマを支持していた某ネット論客(現在ネット言論から撤退・逃亡中)といった方々は、こういった話をどうお考えになりますかね。この亡命チベット人たちの過去をどう評価するのか。
中国へのゲリラ潜入とかなら、「民族解放戦争」「民族自決のための当然の権利」といった主張も可能かもですが、さすがにインド軍の支配下によって、第三国への軍事作戦に参加するなんてものは、この人たちもあまり積極的にはかばえないのではないか。そうなると、都合が悪いので黙りか、インドにはいろいろ世話になっているから、これくらいのことは仕方ないとほざくか(苦笑)、いやさすがにこれはよろしくないくらいのことは言うか。そのあたりはともかく、いずれにせよチベット人の平和的性格とかそんなものは噓八百、実体のあるものではないという解釈でよろしいのではないですかね。チベット人だろうが何だろうが、こんなことをしていたのなら、平和も何もあったものではない。
ところで講演者の石飛博雄氏という人物ですが、保護司をしている、あるいはしていた可能性がありますね。下のPDFの最後のページに、彼の名前があります。
http://izuho.skr.jp/pdf/hogoshi_dayori/izumohogoshi_no30.pdf
はじめはスクリーンショットでもお見せしようかと思いましたが、ほかの人の名前もありますし、それらを画像処理ですべてかくしてお見せするのも見にくいので、興味のある方は上のリンクで直接ご確認ください。
それで、このレポートで次のような記述があります。上の引用の
>アジア主義に共感しており
の続きです。
>また、三島由紀夫の楯の会に属していた方がバングラデシュの孤児支援なども行っていたことから、自分も現場で支援活動をすることを決意して同地に赴きました。
バングラデシュの孤児支援という行動については立派な行動だとして、その動機が「三島由紀夫」とか「楯の会」とのかかわりなんてねえ(呆れ)。三島由紀夫と楯の会って、最後に自衛隊で総監を人質に取った犯罪者で犯罪集団ですよ。心情的に連中のシンパであったとしても、これは基本的に関係ない話なのだから、そういう話は控えるくらいの配慮はないのか。ないんでしょうね。そんな話を堂々と話すなんて、上のチベット人部隊の話同様連中にとっては、こういう話は「自慢」「誇り」であって、「恥」「黒歴史」ではないんでしょうねえ。まあ言っちゃ悪いけど、ハニートラップがどうしたこうしたなんていう愚劣な与太を、青少年向けの新書や共著である座談会本でやたら吹聴する半藤一利氏なども、「そんな話をすると自分の信用にかかわる」なんて考えずに、読者にぜひ伝えるべき貴重な情報だと思っているのでしょう。どんだけ馬鹿で非常識なんだか(苦笑)。
「ハニートラップ」なんてことで、そのような歴史の話を解釈するのはよろしくない(半藤一利氏って、こんなトンデモだったのという気がする)(上) 「ハニートラップ」なんてことで、そのような歴史の話を解釈するのはよろしくない(半藤一利氏って、こんなトンデモだったのという気がする)(下)話がだいぶ飛びましたが、こんなことを公然と語る人物に、保護司なんか任せていいんですかね。いや、もしかしたら現在は保護司をやめているので、やめて初めて明らかにしているのだとか、そもそも上で紹介した人物は同名異人であり、石飛氏は保護司ではないのかもしれませんが、ともかく石飛氏がまともな人間であるとは私にはとても思えませんね。
だいたいこの集会は、「南モンゴルは負けない!」というものですが、当の南モンゴル(中国領内モンゴル自治区)の話は、このレポートでは、最後のところで
>南モンゴルのダイチン氏が、基調講演でモンゴルの現状を報告し、モンゴル語が滅ぼされようとしている現実を語りましたが、石飛さんは、バングラデシュの独立運動も、民族の言語が否定されパキスタンの言葉を強制されたことへの抗議から始まったと語り、ダイチン氏を励ましてくださいました
というくだりでしかないですからね。ダイチン氏なる人物も「どういうことなんだよ」とでも言いたいのではないか。bogus-simotukareさんは、
>何でダイチン氏の基調講演の説明が全然ないのか。「石飛氏に変な義理、しがらみがある」のかもしれませんが、何で石飛氏のバングラデシュ話がやたら多いのか(そもそも南モンゴルについておそらく知識がないであろう彼を呼ぶこと自体がおかしいですが)。俺がダイチン氏なら「馬鹿にしてるのか」とマジギレしてるところですが、多分ダイチン氏は三浦たち日本ウヨに何も言えないんでしょうね。そんなんでええんか(呆)。
とご指摘になっています。そういうことなんでしょうが、なんともはやです。
いずれにせよ、題名にもしたように、講演者が極右活動家や右翼団体に傾倒しているとか、亡命チベット人部隊のバングラデシュ独立戦争への関与とか、講演者の活動の動機(の少なくとも1つ)が、三島由紀夫や楯の会への共感の故であるなんて話は、称賛したり自慢したり嬉々として紹介するようなものではありません。あたりまえでしょう(苦笑)。
bogus-simotukareさんに感謝を申し上げてこの記事を終えます。