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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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加藤智大死刑囚と山上徹也容疑者には、わりと共通したものを感じる

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先週7月26日、秋葉原通り魔事件の加藤智大死刑囚の死刑が執行されました。法務大臣によると、22日に執行命令を下したというので、26日までの執行を法律は要求していたことになります。記事を。

>秋葉原無差別殺傷事件 加藤智大死刑囚に死刑執行
2022年7月26日 18時48分 

14年前、東京 秋葉原で7人が殺害された無差別殺傷事件で、死刑が確定していた加藤智大死刑囚に26日午前、刑が執行されました。死刑の執行は去年12月以来で、岸田内閣では2回目です。

加藤智大死刑囚(39)は、2008年(平成20年)6月、東京 秋葉原の繁華街にトラックで突っ込み、通行人をはねたりナイフで刺したりして、7人を殺害し、10人に重軽傷を負わせたとして殺人などの罪に問われました。

1審と2審は死刑を言い渡しましたが、加藤死刑囚側は、死刑は重すぎるなどと主張して上告しました。

2015年(平成27年)2月、最高裁判所は「犯行の動機に酌量の余地は見いだせない」と指摘し、上告を退ける判決を言い渡し、刑が確定していました。

そして、26日午前、収容されていた東京拘置所で、加藤死刑囚に刑が執行されました。

死刑が執行されたのは去年12月以来で、岸田内閣では2回目です。
古川法相“慎重な検討を加え執行を命令した” 
午前11時から臨時の記者会見を行った古川法務大臣は、今回の執行の命令書には今月22日に署名したことを明らかにしました。

そのうえで「突然の凶行により命を奪われた被害者はもちろん、ご遺族の方々にとっても無念このうえない事件だ。裁判で十分な審理を経たうえで、最終的に死刑判決が確定したもので、法務大臣として慎重な上にも慎重な検討を加えたうえで、死刑の執行を命令した」と述べました。

また、古川大臣は死刑制度の存廃をめぐる議論に関連して「凶悪犯罪がいまだあとをたたないことをかんがみると、死刑はやむをえず、廃止は適当ではない」と述べました。

(以下略)

私は死刑反対論者ですので、加藤死刑囚の執行にも賛成するものではありませんが、これはこの記事の趣旨と無関係ですのでこれ以上は言及しません。以下の記事は、死刑の問題とはとりあえず無関係ということでお願いします。

国会の会期の問題などで、昨今日本での死刑執行は、7月(8月のこともある)と12月に多く執り行われます。それで今回この執行があったということかと考えられます。また「毎日新聞」の記事によると、法務省の中でも、彼を死刑執行の優先度の高い人物とみなしていたということです。

これは全くの偶然ですが、私は先日(もちろん加藤死刑囚の死刑執行前)たまたま地域の図書館でこちらの本を見つけて借りてみました。

秋葉原事件 加藤智大の軌跡

私が借りたのは単行本ですが、文庫ともどもプレミアがついていますね。あるいは再刊があるかも。加藤死刑囚の人生の軌跡を追った本ですが、加藤死刑囚自身も手記を発表しています。Wikipediaにも項目があります(「」)。死刑確定後の彼の動向については定かでないのですが(確認した限りあまり情報がありません)、再審も請求していたようですが、ともかく処刑されてしまいました。

さて、2022年はまだ半分と1か月過ぎたくらいですが、2022年の最大のニュースとなるであろう事件が、元首相の安倍晋三の殺害(暗殺)でしょう(安倍晋三銃撃事件)。ちょっと今年これ以上の事件は、それこそ大地震とかオウムの地下鉄サリンなみのテロでもないと、日本では起きないのではないかと思います。そのあたり結果的にどうなるかはともかく、この事件の犯人である山上徹也容疑者の経歴などをみていくと、どうも加藤死刑囚に似ている部分を感じますね。たぶん同じようなことを感じた方も多いのではないか。

①これといった前科・前歴がない

2人とも、これといった前科・前歴は確認されていません。仕事先でトラブルを起こしたとかやや問題のある行動はあったのかもですが、それらはさすがにその後の犯罪を予兆させるものではないと考えられます。特に山上容疑者は、理由はともかく仕事をやめて犯行時まで準備に専念していたようで、そのような人物がじっと黙っていたら、警察だって確認は至難でしょう。

②過去から現在の家族関係に、重大な問題があった

これらについてもいろいろ報道されています。加藤容疑者は、特に母親から虐待を受けたと報じられていますし、山上容疑者も、母親が統一協会(統一教会)に入れ込み極端な額の布施をして、教団に強い恨みを持ったとされます。

③高い知能を持ち、高校も優秀な進学校へ行ったが、大学に関しては、(理由はともかく)本人にとって不本意な部分があった

加藤死刑囚の通った高校は青森県立青森高校という青森県随一の進学校です。山上容疑者の出身高校は、マスコミもはっきりとは書いていませんが、やはり進学校だったと伝えられます。ネットで確認した限りでは、奈良県立郡山高等学校ではないかと指摘されていますね。山上容疑者在校中に出身高校が甲子園に出たという情報とも合致します。奈良には、私立の東大寺学園のようなすごい進学校もありますし、公立でも奈良高校他こちらを上回る進学校もありますが、こちらも優秀な高校です。

いや、もちろん違うところも多いですよ。加藤死刑囚は、不特定多数の人物を標的にしたし、また犯行前に掲示板にやたら犯行予告をしていて、また事件前にも、犯行を逡巡しているところがある。それは言っても仕方ないことですが、加藤死刑囚に関しては、犯行の直前までその犯行を思いとどまらせる可能性はあったのではないか。それに対して山上容疑者は、前日に岡山へ遠征して安倍殺害を試みるが、難しいと考え断念。翌日地元で演説会があることを知り、そこで犯行を既遂したのだから、ある時点で安倍は助からない運命にあったのではないかと思いますね。山上容疑者は、犯行前に試射もしているし、この犯行でも1発目を外した後さらに近づいて2発目を冷静に安倍に撃ち込んでいる。山上容疑者が安倍を殺そうとたくらんでいるなんてことを知っている人間はたぶん誰もいなかったし、1発目外したあと確実に2発目で殺すというのも素人さんのなせる業ではありません。だいたい山上容疑者は、一匹狼(ローンウルフ)の暗殺者ですからね。仲間がいれば、怖くなったり警察に恩を売るとかで逃げ出したり警察や周囲に話すこともありますが、山上容疑者は単独でこつこつ準備をすすめて、またきわめて冷静に犯行をしている。山上容疑者が銃撃を外せば安倍は助かったとしても、外さなかったらどうしようもありません。

そういうわけで共通しないところも当然多いわけですが、そして特定の人物をねらったわけではない加藤死刑囚と特定の人物の暗殺に専心した山上容疑者では、根本的に犯罪の態様は違いますがそこに行きつくプロセスはかなり類似していますね。

それで考えるに、この山上容疑者の犯罪というのは、かなり現在の日本の姿の投影であるし、それがより極端な形で(2008年の日本の姿を)あらわしたのが加藤死刑囚の秋葉原での通り魔殺人だといって、そんなに的外れでもないのではないですかね。トラックで歩行者天国に突っ込んで、それで刃物を振りかざし、秋葉原で向かいながら掲示板にえんえんメッセージを寄せたというのがまさに2008年の日本を表しています。現在なら掲示板でなくツイッターのようなSNSを利用する犯罪になるのではないか。いや、この件では掲示板そのものは犯行予告の道具という位置づけですから、「利用する犯罪」ではないのかもですが、ともかくこのような道具を延々使うというのがまさにネット時代だし、掲示板よりより多くの人間の閲覧の可能性があるツイッターなどのSNSの存在というのが、たとえば犯行予告のようなものですらいろいろな変化を社会にもたらしているのではないかと思います。

山上容疑者の場合、自分が旧統一協会(統一教会)のおかげで非常に迷惑を受けて、そしてつい2年前まで安倍晋三が長きにわたって首相だった。安倍は、自他ともに認める統一協会と深い関係にある政治家でしたが、山上容疑者は長きにわたってそれを知らなかったらしい。それまで安倍政治を支持していたらしい彼は、安倍が統一協会の関係するイベントにビデオメッセージを送るくらい関係の深い人物であることを知り、それまでの支持や好意などが吹っ飛んでしまったわけです。これも1990年代前半の、世間が統一協会に厳しい態度をとっていた時代からずいぶん時間もたち、山上容疑者は、岸信介→安倍晋太郎→安倍晋三のラインが統一協会と蜜月関係にあることすら知らなかった。彼からしても「裏切られた」という思いがあったのでしょう。

私は、前にこのような記事を書きました。

3期目の自民党総裁を続けなければ、安倍晋三も殺されるほどは憎まれなかったのではないか(記事発表直後ほかの追記あり)

この記事の中で、例えば

>多分ですが、彼が2期目、つまり2018年で自民党総裁を辞任して首相から身を引けば、今日の日は起きないと断言したら言い過ぎかもですが、より起こらない可能性は高かったはず。

というのは、あからさまに間違っているわけでもないでしょうが、安倍がもっと慎重に統一協会と付き合っていればということを前提としたうえでの議論ということになりそうですね。安倍は、首相になったから統一協会と一線を引くという人物ではなかった。彼が、首相になってから全く付き合う人間を変えないということはなかったのかもですが、ともかく彼にとっては、統一協会というのは付き合い続ける価値のある組織だったわけで、そのような脇の甘い人間がえんえん首相を続けていたというのが、この暗殺の背景にあったわけで、これもまさに安倍のひどさがその暗殺を引き起こしたわけです。これも時代ですね。かつてなら、さすがに自民党といえども自民党の総裁に安倍をあそこまで延々させることはなかったはず。けっきょく安倍は、首相(自民党総裁)という立場にこだわったから暗殺されたわけで、まさに安倍のような人物を日本憲政史上最長の首相にした政治が、安倍を殺す最大の原動力になったわけです。

ほかにも加藤死刑囚と山上容疑者の関係を見ていきますと、いわゆる正職につきにくかった(犯行時20代だった加藤死刑囚と40を過ぎた山上容疑者とでは、ずいぶん立場は違いますが)ということも、まさに時代背景としての2人の共通点でもあります。これもよく指摘されることですが、無差別殺人をする人間は、失うものがないという部分がある。これは金や資産だけでなく、人間関係もそうです。もっとも山上死刑囚に関して、金銭的に窮したことも犯行の理由ではないかとも指摘されていますが、私はむしろ手持ちの金銭を逆算して事件を起こしたという可能性が高いのではないかと思います。2022年の選挙で、安倍が応援演説をする可能性が高い。この次の国政選挙は、最長2025年の参議院選挙まで3年後になる可能性がある。それなら今回の選挙で決着をつけると山上容疑者は考えたのではないか。そのあたりの真偽はともかく、この選挙での暗殺を彼は決意していたはずで、それを外すことはなかったのです。

ところで上の本を読んだ日、私は、何の因果か御殿場線に乗っていまして、加藤死刑囚が、御殿場線沿線の裾野駅を利用していたことを知りました。そういえば彼は、そのあたりの自動車工場に勤めていたはず。この日は用事があったのでどっちみち駅に降りることはできませんが、この時は富士山も撮影できませんでしたので、今度は富士山撮影とともに、裾野駅にも下車したいと思います。

山上容疑者についても今後いろいろな報道がされるかと思います。そのあたり私も注意して、必要な場合には記事を書いていきます。


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