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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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詐欺というのは、現在から過去へ逆算していけば、だれも引っかからない(が、その場での判断を余儀なくされるのが厳しい)

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ポータルサイトなどでも紹介されているので、お読みになった方も多いかと思いますが、こちらの記事はなかなか興味深いですね。

 

「投資」に150万円支払った22歳女性 死を選んだ「なぜ」(1) [2022/09/08 11:00]

 

 

「お金返して」「なんで?へへへ」追い詰めた男の言葉 女性は命を絶った(2)2022/09/08 11:00

 

上のテレビ朝日の記事では、自殺した女性の実名(川上穂野香さん)と母親の名前(佐永子さん)も出ていますが、こちらのNHKの記事では、下の名前をひらがな表記にしたうえで紹介がされています。母親は匿名です。

そして娘は命を絶った ~“暗号資産”めぐる事件の果てに

内容の詳細については記事を読んでいただくとして、私が気になったのが、彼女が詐欺に引き込まれる過程です。(1)より引用します。

>始まりはその年の8月下旬。大学を出て社会人として働き始めたばかりだった穂野香さんの大学の同級生が「投資に興味ある人!」と書き込んだインスタグラムだった。懐かしさもあったのだろうか、穂野香さんが返信すると、同級生は男を紹介した。

8月28日、穂野香さんは同級生と男が入ったLINEグループに入れられた。男は「初月130万、2ヶ月目660万、3ヶ月目1200万(稼いだ)」「何もしなくてもお金が入ってきます」と畳みかけた。

 「紹介すれば+αでさらなる利益が出る」という。穂野香さんが「所謂マルチですか」と尋ねると、即座に「マルチとかネズミ(講)ではないです」という。

 投資は「最低3千ドル」。4月に大学を卒業し、働き始めたばかりだった穂野香さんにとってすぐにどうにかなる額ではなかったに違いない。「本当に大丈夫か」と悩んだはずだ。

LINEで「今すぐに決定したい訳じゃなくて」と送る。だが、男は「9月1日まで入金の方はレバレッジ4倍」「今やるのを強くおすすめしております」と返す。レバレッジとは、自分が預けた金を「保証金」としてその何倍もの取引ができる方法だ。利益が出た場合は大きいが、損失も莫大になる。

男は「アービトラージと言う先物取引」で「約40%を月利として分配」などと数字や根拠不明な言葉を使いながら大量のメッセージを送り、穂野香さんを追い込んでいく

この元同級生、どんだけ迷惑な野郎なんだよと呆れますが、それにしたってねえ、

なんてありえっこねえじゃんというレベルの話でしかないし、保証金での取引が非常に危険なのは常識だし、またよくわからぬ言葉を使ってたぶらかすなんてのは、典型的な詐欺の手法です。さらにこちらはどうか。

>驚いたのは、投資のための金策まで男が指示していたことだ。具体的な消費者金融会社の名前を出し、「一日で終わらせな信用情報回ってまうから借りられない!」「借入理由は引っ越しで」などと具体的に説明する。

金の出入りを急がせるのは、これまた詐欺の典型的なスキームです。また金策を、詐欺めいた方法にて指示するなんてするなんて、これまたまともな連中のやることではない。そしてその結果、

>穂野香さんは結局、消費者金融3社から計150万を借り、100万円を男の口座に送金し、50万円は現金で男に手渡した。LINEのやり取りから4日後のことだった。

ですからねえ。おまけに(2)によれば、

>「投資」を勧誘し、150万円を受け取った男はその後、いろいろと理由をつけて穂野香さんと会っていなかった。その男に、交際相手と穂野香さんが直接会ったという。「渡したお金の受領証を書いてもらおうとしたんやけど、うまくいかなかったみたいで」。

穂野香さんは100万円を銀行振り込みで、50万円は男に手渡ししていた。だが、男は直接受け取った現金の受領証すら、「後で」などと言い、渡していなかった。

これもねえ、受領証すら渡さないなんて、その時点で完全にアウトでしょうに。でも彼女は、その時「じゃあこの金は渡せない」ということもできなかったわけで、まあこういう言い方はよろしくないのかもしれませんが、「赤子の手をひねる」のレベルじゃないですかね。

なおこれは引用をしませんが、彼女とその交際相手の男性が、何とか先方の詐欺師野郎と連絡をつけて(なお、

>私の交際相手が投資に興味がある

として、なとか面談を実現させたとのこと。これはなかなか巧み)会うことができたものの、まったく相手にされず、その翌日自死にいたったとのこと。交際相手の人は、

>(男に会いに)行ったときにお金返してもらえたらよかったんかなとか

と語っているそうですが、これはできない相談ということでしょう。先方、失礼ながらそんな素人がかなう相手ではない。あえていえば、この種の詐欺事件に強い弁護士にでも立ち会ってもらうくらいのことが必要だし、そもそもご当人がフロントに出たのはやはりまずかったとしか言いようがないでしょう。なお(1)のYahoo!ニュースでのコメント欄で、昨今元統一協会信者としていろいろ登場している多田文明氏は、

>騙された方は、お金を取り戻したと思います。しかし騙した相手はお金を戻すつもりはないため、交渉は厳しいものになります。しかも、その話をすることで、本人は騙された自分を思い返すことになり、さらに心が苦しくなります。 真面目で優しい人ほど「自分が悪い」と責めてしまいがちです。しかしそうではありません。騙す側が圧倒的に悪いのです。若い方の場合、裏切られる経験がないためによりショックが大きいかもしれません。 その時は、お金を戻すことから、いったん、心を離してみて下さい。弁護士などに相談して誰かに任せることも大事です。大切なことは自分の心を守ることです。親身になってくれた恋人や母親がいても、悲劇を防ぎ切れませんでした。それだけに難しい問題です。

と指摘されています。また防犯アドバイザーという京師美佳氏は、

> 確かに150万は大金ですが人生を終わらせるお金ではありません。最悪自己破産と言う道もあります。思い詰めずに周りに相談してください。命が何よりも大切です。

と書いています。破産すればそれまでだし、150万円なら、利息の軽減ほか任意整理も十分可能でしょう。どうするかは、弁護士らに相談すれば、十分対応が可能ではないか。たぶん彼女は、具体的な返済に悩んだというより、騙された自分に対する自己嫌悪が自殺する決定的な理由になったんじゃないんですかね。いや、もちろん詳細はわかりませんが。

それで、これはこの件に限りませんが、こうやって後付けで観ると、こんな愚劣な詐欺にどうして引っかかるのかねえという疑問が生じます。現在から過去へ逆算して物事を見れば、「ばかばかしい」ということでしかありませんが、現実の詐欺は、冷静になって物事を考える前に決定を強います。上で引用した

>「9月1日まで入金の方はレバレッジ4倍」「今やるのを強くおすすめしております」

>一日で終わらせな信用情報回ってまうから借りられない!

なんてのは、まさにその類です。それで、騙される側も冷静でなくなるから、

>穂野香さんは100万円を銀行振り込みで、50万円は男に手渡ししていた。だが、男は直接受け取った現金の受領証すら、「後で」などと言い、渡していなかった。

なんてめちゃくちゃなことが起きてしまうわけです。まともな精神状態なら、こんなこと成立するわけがない。

ところで以前このような記事を書いたことがあります。

悪徳商法に引っかかるパターンは、やはり人間関係で攻められることが多いようだ(大東建託など)

この件も、やはり

>始まりはその年の8月下旬。大学を出て社会人として働き始めたばかりだった穂野香さんの大学の同級生が「投資に興味ある人!」と書き込んだインスタグラムだった。懐かしさもあったのだろうか、穂野香さんが返信すると、同級生は男を紹介した。

というのが1つのポイントだったように思います。同級生からの紹介という点が、彼女が早く詐欺師連中と縁を切ることをためらわせる何らかの事由になっていたのではないか。それにしても、8月下旬にインスタにかかわって、お亡くなりになったのが10月1日とのことで、1か月強でしかありません。なんともはやです。

私のように、基本的にそういうこととかかわらなければいいのですが、世の中そうもいかない人もいるらしい。他人には何もどうしようもないので、ぜひお気を付けいただければです。詐欺は、莫大な損をするわりには、なかなか事件化しにくいし、刑も厳しくない。1回詐欺にかかわると、足が抜けなくなるくらいです。


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