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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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古谷一行氏の死を知り、『87分署シリーズ・裸の街』と映画『凶弾』の関連を思い出した

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何をいまさらですが、俳優の古谷一行氏がお亡くなりになりましたね。記事を。

>俳優の古谷一行さん死去 多くのテレビドラマや舞台で活躍 78歳
2022年9月2日 23時33分 

人間味あふれる演技で多くのテレビドラマや舞台で活躍した俳優の古谷一行さんが先月23日、東京都内の病院で亡くなったと所属事務所が発表しました。78歳でした。

古谷さんは東京都出身で、大学在学中に俳優座の養成所に入り、俳優の道を志しました。

1977年から始まった民放のドラマ「横溝正史シリーズ」で、名探偵の金田一耕助役を務め、愛きょうあふれる演技で幅広い人気を得ました。

また、1983年から放送された民放のドラマ「金曜日の妻たちへ」で女性を惑わす二枚目の役を演じて話題を集めたほか、1996年のNHKの大河ドラマ「秀吉」では竹中半兵衛を、また、2002年の「利家とまつ」にも出演するなど渋みを増した演技で存在感を見せていました。

2011年に肺がんが見つかりましたが、手術をして復帰し、その後も2017年のNHK連続テレビ小説「ひよっこ」など数多くのテレビドラマや映画、それに舞台に出演し、活躍してきました。

所属事務所によりますと、古谷さんは、トレーニング中に突然、体調を崩し、先月23日、東京都内の病院で亡くなったということです。

以下、複数の方々による追悼の言葉がありますが、それは省略します。

ある時期くらいまでは、古谷氏は、日本でテレビドラマを観ていれば、実にしょっちゅう見かける俳優さんであり、特にファンでなくても、かなり印象に残る方であったと思います。ご冥福をお祈りいたします。

さて古谷氏は、もともと俳優座の研修生であり、舞台からテレビに進出した人であって、あまり映画には出演していないのですが、彼が1982年に出演した映画に、『凶弾』があります。主演は、石原良純です。

この映画は、Wikipediaに

>客の不入りにより興行収入が振るわず、公開からわずか二週間で上映が打ち切られたことが当時マスコミで話題となった。

と書かれるくらいメタメタの興行成績で、「こりゃひどい」と世間でも呆れられたというくらいでしたが、ある時なんてことなくこの映画のWikipediaの配役を観ていて、「?」と思ったのです。

あれ、これなんかとキャストがやたら重複しているな・・・。

まもなく、これが1980年に放送されたテレビドラマである『87分署シリーズ・裸の街』とのキャスト一致であることに気づきました。以下参照を。『裸の街』―『凶弾』という順で。双方とも、松竹が製作しています。『裸の街』は松竹とフジテレビとの共同制作、『凶弾』は、松竹と富士映画の製作です。

古谷一行 - 友成寿美雄刑事(スティーブ・キャレラ二級刑事)―福本刑事部長(特別出演) 田中邦衛 - 竜間達磨刑事(マイヤー・マイヤー二級刑事)―岩井部長刑事 高橋悦史 - 林能三警部(ピーター・バーンズ警部)―井口県警本部長 岡本富士太 - 栗本信次刑事(バート・クリング三級刑事)―飯島刑事 阿藤海 - 牛島豪刑事(ロジャー・ハヴィランド三級刑事)―中川警部補

さすがにこれは一致のしすぎでしょう。『凶弾』の脚本家の1人の押川國秋は、『裸の街』で競作をふくめ26本中4本脚本を担当しているし、そしてこれが決定的と思ったのが、製作を、『裸の街』と『凶弾』で、松竹の升本喜年が担当していることです。たぶん『凶弾』の刑事たちのキャスティングは、升本の考えで、『裸の街』のメンバーが起用ということになったのではないか。なお升本氏は、こちらによると、2017年暮れにお亡くなりになったそうです。その記事にも出てくる氏のご子息の弁護士である升本喜郎氏は、2021年9月12日にお亡くなりになっています。ちょうど1年前ですね。

おそらく升本氏が主導したのでしょうが、どういう事情で『裸の街』と『凶弾』のキャストが大幅に重複しているのか定かでありませんが、たぶんですが、升本氏にとっても『裸の街』というのは、それなりに思い入れのある作品だからではないか。前にもそのような記事を書きましたが(私がこのキャスト一致に気づいたのも、この記事を書いたが故です。正確な期日は記録していませんが、2019年3月発表の記事で、たしか同じ年の5月ごろに気づいたのかと記憶します)、その『87分署シリーズ・裸の街』は、現在封印状態で観ることができません。つまりは、エド・マクベインの原作のドラマ化で、ソフト化や再放送の権利料がべらぼうなので、二次コンテンツとして利用できないようなのです。90年代にドラマ化された火曜サスペンス劇場わが町』は、ソフト化もされていますが、つまりは『裸の街』の時は、それが契約書に書き込まれていなかったのでしょう。ただし『わが町』も、VHSにはなっていますが、DVDにはなっていない模様。再放送も、まったくではないかもですが、あまりされていない? たぶん再放送困難という事情が、升本氏に、あらためてキャストを再結集させた理由の1つであるというのも、そんなに突飛な想像でもないと思います。そうだとすれば、再結集させた映画が作品的にも興行的にも惨敗したというのは、氏にとってもやはり相当に不本意だったのではないかと感じます。なお『太陽にほえろ!』も、571話が『キングの身代金』を原作としているのでDVD不可のようですね(正式に事情が説明されているわけではない)。CS他での再放送はOKのようですが。『キングの身代金』は、『裸の街』『わが町』でもエピソードがつかわれていますし、そのほか、黒澤明監督『天国と地獄』の原作です。

「封印作品」というのは、思った以上に多い(理由も、差別表現ばかりでなく著作権や出演者の不祥事などいろいろ)

ところで『裸の街』の翌年(1981年)に公開された市川崑監督作品に『幸福』という映画がありまして、これもマクベインの『87分署シリーズ』「クレアが死んでいる」を原作としており、やはり映画公開後、1度テレビ放送があったのち完全お蔵入りになったのですが(権利問題)、ようやく2009年にソフト化が実現したという経緯があります。2009年にソフト化された事情はいろいろありますが、たぶん2005年に原作者が亡くなったということも、ソフト化実現の1つの理由であろうかと推察します。そう考えれば、『裸の街』も、ぜひソフト化あるいはCSでの放送、もしくは配信による鑑賞を可能にしてもらいたいのですがねえ。マクベインの権利がなくなるときまで難しいんですかね? まったく見込みがないわけでもないとは思いますが、やっぱりないのかな。

古谷氏をはじめ、田中氏、高橋氏、阿藤氏、あるいは上には出てきませんが、ろうあ者であるテディ・キャレラ(ドラマでの役名は、「寺西房子」)を演じた坂口良子さんもすでに亡くなっている。42年前に製作・放送されたドラマですからそれも当然でしょう。やっぱりこれは、ぜひ見てみたいですよね。なかなか難しでしょうが、そんなことを書いて、あらためて古谷氏の死を追悼してこの記事を終えます。

あ、忘れていました。『裸の街』は、私が何回も紹介している町田義人氏(現在メルボルン在住)の歌が主題歌です。いい歌ですので、あらためてはりつけさせていただきます。町田氏の近影については、下の記事を参照してください。

元歌手の町田義人氏の近影と近況を知る(メルボルンで頑張っておられる模様です)

愛 - 町田義人


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