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金門島住民の状況が、中台危機’中台有事)が起きる蓋然性の実情ではないか

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bogus-simotukareさんが、また興味深い記事をご紹介してくださいました。

今日の中国ニュース(2023年4月7日分)

その記事で紹介されている次の記事です。

「永久非軍事化」声明も “中国に一番近い島”台湾・金門島で薄れていく危機感

タイトルからしてどういう内容かは想像ができちゃいますが、ともかく抜粋して引用を。

>では、中国本土に最も近い台湾が実効支配する島の今の様子は。

記者
「中国福建省厦門から2キロほどの台湾・金門島です。中国からの船の進入を防ごうとした戦時中の名残が残っています」

「金門島」は台湾有事の際、中国から真っ先に狙われるとも言われ、1958年以降、中国軍から50万発近い砲弾が撃ち込まれました。今も数千人の台湾軍の兵士が駐留しています。

ただ、島にはこんな現実も。

金門島の商店店主
「私たち(金門島の住民)は、中国との緊張なんて気にしてません。一般市民は商売が繁盛することが大事です」

金門島には目立った産業がなく、経済を中国からの観光客に頼っています。

コロナ前は年間のべ200万人の中国人が訪れていたといい、島民からは中国との往来再開を期待する声も聞かれました。

金門島の商店店主
「もちろん、中国人には来てほしい。台湾の客より多いからね」

(後略)

それで、このような記事も紹介されています。こちらは、1月3日発表の記事です。

中国人観光客を待ちわびる台湾海峡の最前線「金門島」

こちらも抜粋して引用します。

> 台湾本島の民主化が進み、1992年に金門島でも戒厳令が解かれた後は、駐留する兵士は徐々に減少していった。それに反して増えていったのが、台湾本島および中国大陸からの訪問者だった。台湾各地から金門への航空路線が整備されるのと同時に、廈門-金門間で船の往来が開始された。それは中国と台湾の間で通商、通航、通郵を認める「三通」に対し「小三通」と呼ばれ、島と大陸との交流を促した。

> 厦門-金門をつなぐ定期便が再開するまで、しばらくは閑古鳥が鳴く状態が続くだろう。それでも土産店を開く地元の人々は、私のような冷やかし半分の観光客には見向きもせず、爆買いする中国人民たちを待ちわび、彼らの財布に目を輝かせているのだ。

>金門大橋から廈門のビル群を仰ぐ
 金門島観光の見どころのひとつに、対岸の海岸線を仰ぐ、というものがある。島の東側からは遠目に泉州が見えるし、やはり台湾領の小金門島(烈嶼島)という西隣の小島にいけば、眼前に厦門のビル群を望むことができる。金門島(大金門島とも呼ばれる)から小金門島へは、かつては小船で渡っていたが、2022年10月30日には新たに橋が開通した。人口わずか1万数千人の小金門の島民のため、というには、正直に言って立派すぎる大橋だった。

>金門県選出議員の苛立ち

 「廈門側からはいつ橋を作っても構わない、とメッセージを送ってきています。ただ現与党の民進党が渋っているので、遅々として進まない」

 そう苛立ち混じりに話すのは、金門県選出の立法委員(国会議員に当たる)の陳玉珍女史(49)。国民党所属で、生まれも育ちも金門島。戦時体制だった1980年代には島民が組織する自衛団が残っていて、高校時代は女子でも軍事教練を受けたものだ、と語る。

 「金門島民は一刻も早い小三通の再開を求めているのに、民進党はなかなか定期船の往来を開放してくれない。それなら、“代わりに台湾本島からもっと金門観光に来てくれ”と要求したいくらいです」

(中略)

 彼女は中国側とのパイプも太いのか、台湾本土の政治家と違い、大陸ともっと積極的に交流を深めるべきだということを、何の躊躇もなく声高に主張する。陳議員に、台湾有事の勃発を憂慮していないのか尋ねてみた。

 「今は30年前より軍備も大きく進化していて、ミサイルが私たち金門島民の頭上をかすめて台湾本島まで余裕で届く時代です。金門と廈門の間に橋がかかったとしても、人民解放軍がそこを渡ってくるなんてことはないと思っている。戦闘機で台湾本土に向かったほうが早く着くのですから」

 そう一笑に付すのだった。

「武力行使なんて愚かな選択」
 陳議員が続ける。

 「だから我々は、丸腰でも何も怖いことはありません。元々、金門人は中国大陸にルーツがあり、大陸と往来してきた長い歴史がありますから。観光客を誘致し、経済を潤わせたい。インフラも中国側が整備してくれるというなら、享受するまでです。ウクライナとロシアのように武力で物事を解決しようというのは愚かな選択。中台問題は華人同士の知恵で、必ず話し合いで解決できる。少なくとも金門と福建省は平和裡に物事を進めます」

 中台危機が世界中で叫ばれている中、彼女の言葉はあまりにも楽観的に聞こえるかもしれない。だが少なくとも、私が今回滞在した4日間で出会った金門の人々は、予想以上に大陸との交流に前向きだった。

それで、地元住民の声がこちら。

 >「人民解放軍がやってきて国民党軍を追い払い、“金門を解放する”と言ったら従いますか?」

 と尋ねてみると、事もなげにこう答えた。

 「もちろん。私たちの土地をきちんと治めてくれるなら、台湾でも中国でもいい。今は民進党も国民党もダメ。中国本土のほうが景気もいいからね。それで金門島の経済が潤ってくれるなら、大歓迎だね」

 市場で麺を売っていた20代の夫婦にも同じ質問をしてみた。夫は金門島に生まれ、台湾本島の大学を卒業後、島に戻って4カ月間の兵役に就いた。兵役後も島に留まり、実母が営む飲食店を手伝っている。

 「中共がここを占領したら? その時の政治状況を考えて最善の選択を考えればいいさ」

 台湾本島の彰化県出身の妻も、「台湾に戻るかどうかは分からない。まずは夫の判断に従うわ」とのこと。

2つの、特に関係のないメディア(TBSと『フォーサイト』)が同じことを書いているのが興味深いですね。どちらも、特に中華人民共和国に好意的ということもないでしょうから、まともに現地を取材すれば、同じことになるのでしょう。

私はこのような記事を書いています。

経済のほうが政治よりよっぽど現実(実状)に正直だ

同じような記事はいくつも書きましたが、これも題名で分かるように、世の中、イデオロギーだなんだより、経済の方が人間の行動なりなんなりを優先させると論じた記事です。

で、上の記事の趣旨自体に特に訂正することはないと思いますが、しかし(当然ながら)それも程度の問題です。さすがに中国と台湾が、本当に一触即発の状況になったら、金門島の住民だって、引用した記事のような態度はとらないでしょう。逃げ出すか、島にとどまるとしても戦々恐々となるでしょう。政府が、住民を強制退去させる可能性もある。

が、上の記事のような意見が、台湾の国会議員(立法議員)のものであり、また地元住民のものですからね。台北ほか本土の住民でなく、まさに大陸のフロントの位置の島に居住している人たちの意見が、これなわけです。bogus-simotukareさんは、

 >いくら「中国人観光客が金を落としてくれるから」といっても中台有事に現実性があればこんなことにはならないでしょう。
金門砲戦 - Wikipedia(1958年)ということで、過去(1950年代)には中台が激突した金門島も今や戦争の危険など住民は全く感じないわけです。
 金門島民の発言(景気が良ければ中国支配でも一向に構わない)も本心と言うより「中台関係を悪化させて中国人観光客を減らす」一方で、「減った中国人の代わりに金門島観光に来てくれるわけでもない台湾主流派」への反発の表明でしょう。
 勿論「中台有事に現実性がない」からこそのこうした「反発表明」でしょう。

とお書きになっています。まったくその通りとしか言いようがない。

まったくの余談ですが、たとえば日本などでも、先日のJアラート(全国瞬時警報システム)騒動などはどうか。参考記事を。

政府のJアラート 与野党から検証や改善を指摘する声
2023年4月14日 10時54分 

13日の北朝鮮の弾道ミサイルの発射をめぐり、政府は北海道周辺を対象にJアラートを出しましたが、その後、訂正情報を発表しました。与野党からは、国民に混乱が生じたとして検証や改善の必要性を指摘する声があり、政府は今後、対応を求められることになりそうです。

13日の北朝鮮による弾道ミサイルの発射をめぐっては、政府は当初、北海道周辺に落下するおそれがあるとして、Jアラート=全国瞬時警報システムを出し、住民に避難などを呼びかけましたが、その後、訂正情報を発表しました。

この経緯について、政府関係者は「ミサイルは探知後にレーダーから消失したものの、限られた情報の中、システム上で北海道周辺に落下する航跡が生成されたため、国民の安全を最優先して発出を判断した。その後、落下の可能性がないことが確認され、改めて情報を提供した」と説明しています。

松野官房長官は「結果的に領域への落下の可能性はなくなったことが確認されたが、Jアラートの役割にかんがみれば、発出の判断そのものは適切だったと考えている」と述べました。

ただ、一連の情報発信などについて、与野党からは国民に混乱が生じたとして検証や改善の必要性を指摘する声があり、政府は今後、対応を求められることになりそうです。

松本総務相「発出判断そのものは適切だった」
一連の対応について、松本総務大臣は記者会見で「緊急の事態では、迅速さと確実さが求められる中で、総合的に判断すべきものであり発出判断そのものは適切だった」と述べました。

そして「総務省としても、引き続き関係省庁と緊密な連携を図り、Jアラートによる国民への情報伝達に万全を期していきたい」と述べました。

いろいろな意見はあるでしょうが、野党ばかりでなく与党議員からも苦言が出ているあたりに、本音→北朝鮮なんてぜんぜん脅威と考えてはいないということがわかっちゃいます。本気で脅威だと考えていたら、国会議員から国民にいたるまで、こんな反応であるわけがない。もっともこんな話は、「じゃあ、日本海側に原子力発電所があんなにあるのはおかしいじゃん」というレベルのことであり、前々からのことです。

大陸中国と台湾の関係は、元同一国家だったわけでありまた日本と北朝鮮などとの関係とはちがいますが、ロシアとウクライナの戦争も、また中国に台湾への軍事オプションを取ることのマイナス要因になっているでしょうしね。現在の中国は、とてもあそこまでの無茶ができる国ではない。過去に金門島の砲撃まではしましたが、それもずいぶん昔の話です。

そう考えれば、金門島での住民たちの動向は、中台関係を考える上での貴重なメルクマールになりそうですね。無用に楽観してもよくありませんが、無意味に危険をあおってもしょうがない。そのあたりは私たちも冷静に物事を見ていかなければならないでしょう。なおこの記事は、上掲のbogus-simotukareさんの記事を参考にしました。感謝を申し上げます。


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