前にこんな記事を書いたことがあります。
たぶんだが、この埼玉県警深谷署の署長は、摂食障害者の万引き常習犯に近い精神状態ではないか(追記あり:「愛情では依存症は治せない」は至言だと思う)その記事でご紹介した当時の記事を再引用します。
>警察署長、自宅で飲酒後にトイレットペーパー盗んだ疑い
2021年6月3日 12時18分
埼玉県警深谷署の田中敬署長(60)=警視=が5月、商業施設でトイレットペーパーを盗んだとして、県警が窃盗容疑で捜査していることが捜査関係者への取材でわかった。
署長は容疑を認め、辞職願を提出。県警は3日、減給1カ月の懲戒処分にした。今後、同容疑で書類送検する。署長は同日、依願退職した。
捜査関係者によると、署長は休日だった5月29日、管外の同県鴻巣市にある自宅などで飲酒。同日夜、深谷市内の官舎へ戻る途中にJR鴻巣駅近くの商業施設に立ち寄った際、トイレ個室からトイレットペーパー5個を盗んだ疑いがもたれている。
トイレットペーパーを持って個室から出てきた署長を目撃した人が警備員に連絡。施設側が「トイレットペーパーを持っていった男を確保している」と近くの交番に通報し、発覚した。
署長は飲酒などの影響で腹痛を起こしてトイレに入ったと説明しているといい、トイレットペーパーは予備として個室内に置いてあったものという。
この警察署長がどういう理由でトイレットペーパーを盗んだのかは定かでありませんが、定年直前で辞職願を提出、依願退職という事態になったわけです。記事のタイトルにもしたように、万引き常習者の精神状態に近かったのかもしれません。
それで、この記事を読んだ際、いろいろなことを考えました。
〝魔が差した〟瞬間…まじめな駅員はなぜ落とし物を着服したのか? 年収1千万円超の時代も…転落した人生、後悔と現在
詳細については記事を読んでいただければよいとして、この元駅員は、
>
▽構内に落ちていたスマホを葛藤の末に…
公判や手紙から犯行当時の状況を再現する。
2018年9月の昼下がり、勤務中の男性は駅員室へ戻ろうとしていた。ふと、駅ホームから続く階段の踊り場に手帳型のケースに入ったスマホが落ちているのを見つけた。拾うと、中にはICカードが挟まっていた。
駅務室に戻りながら、よからぬ考えが頭をよぎったという。当時、業務中の食事代にも事欠いていた。
終業時間まで葛藤し続けた男性は、スマホを拾った場所が防犯カメラの死角だということに気付いた。この“気付き”が判断を誤らせ、一線を越えてしまった。スマホをそのまま自らのカバンに収め、持ち帰ったのだ。ICカードの残額は1188円で、コンビニの買い物や交通費に使った。
男性は手紙に当時の心境を「罪悪感はあった。しかし、その時だけでもしのげた安心感があった」とつづった。
2回目の犯行は半年以上たった19年5月の夜間勤務中で、ホームに落ちていた財布から現金約9万5千円を抜き取った。被害者への弁償のめどが立って不起訴処分となった1件を合わせ、計3回遺失物を着服した。
▽解雇、離婚、逮捕…
着服行為は誰にも気付かれなかったが、その後、駅務室の金庫に保管されていた現金を着服したことがばれ、男性は20年春に懲戒解雇された。収入を絶たれた男性は妻と協議離婚。子どもは妻が引き取った。
(中略)
2022年2月。自宅にいる男性のもとに突然、警察官が訪ねてきた。最初は何事か分からなかったが、逮捕状を読み上げられるうちに徐々に思い出していった。数年前の駅員時代に、拾得物を着服した罪だった。
解雇されマンションを退去する際に家財道具の一時的な保管のために契約したレンタル倉庫が、その後、賃料が未納状態となったため強制的に解錠されたという。すると中から着服したスマホや、男性と異なる名義のICカードが出てきたのだ。不審に思った管理会社が警察に届けたことで、事件は発覚した。
(後略)
というわけです。けっきょくこの人物は、懲役1年執行猶予3年という刑を受けています。本来なら保釈されるくらいの罪だったのでしょうが、保釈金を用意できなかったのでしょう、判決の日まで拘留され続けました。
引用部分でもわかりますように、
>駅務室の金庫に保管されていた現金を着服した
というあたりで、悪への抵抗感がだいぶ低くなったのでしょうが、ただスマートフォンやICカードの着服がなければ、刑事処分まではいかなかったわけです。つまりはこの人は、犯罪の素人さんのわけです。そんなものは、すぐ処分すればいいのに、根本的に気が小さい人だったのでしょう。懲戒解雇されただけでも決定的にまずいですが、前科者になってはさらにまずい。
この人物に同情する気もありませんが、ただこうなる前にもうちょっと何とかしないとなとは思います。たとえば記事中
> 男性は後に「このころから人生が狂い始めた」とふり返る。収入は途絶え、生活保護を受けながら治療した。再び就労できるまでに回復し、52歳で契約社員として就職したのが、後に事件を起こすことになる鉄道の運営会社だった。
男性は駅員としては着実な働きぶりだったようだ。遺失物や金庫の管理を任されるまでになっていた。サラリーマン時代を思い出しては「もうひと花咲かせたい」との思いに駆られたが、気持ちに折り合いをつけまじめに働き続けたという。
だが、家に戻ると育ち盛りの男の子が2人おり、妻のパートの収入も合わせて月収は30万~40万円弱。「我慢すれば家族でなんとか生活していける」ギリギリの生活を強いられていた。それがさらに苦しくなる事態に見舞われた。
妻の両親が2人とも治療や介護が必要となり、男性宅へ身を寄せることになった。義理の両親は年金未払いの期間が長く、年金の受給資格がないため介護費用がかさんだ。家計は一気に火の車となった。一家の大黒柱だった男性が経済的、精神的に追い詰められていく中、その日は訪れた。
とありますが、この場合義理の両親の介護費用を男性の家計でまかなわないといけないのか。経済的に無理がありすぎたんじゃないのという気がします。生活・家計を分離して、義両親のほうは生活保護の介護保護を受けてもらうくらいのことでいいのではないか。とてもこの男性がなんとかできるものでもないでしょう。事実できなかったから、けっきょくつまらん犯罪をしてしまったわけです。
たとえば原裕美子が万引きを繰り返して、いわば衆人注目の立場になったように、つまらん犯罪をくりかえせば、一生いろいろ冷たい目で見られます。また昨今話題の特殊詐欺の関係ですが、こちらの記事はどうか。
「詐欺ではないと思った」受け子で有罪、上告趣意書を提出 弁護側は「故意」の認定めぐり批判
>特殊詐欺で多額の現金を受け取り、一審、二審ともに有罪判決(詐欺罪)を下された事件の裁判で、被告人女性(43)の弁護側が無罪を訴え、2月20日、最高裁に上告趣意書を提出した。
女性は仕事を受ける前に「違法じゃないですよね?」と確認したことや「長らくうつ病で、思考・判断能力が低く、言葉巧みに虚偽の説明や病状に寄り添う言葉をかけられるなどした結果、正規の仕事だと信じた」(弁護人の林大悟弁護士)という。そのため「違法行為を行うことを認容しておらず、詐欺の故意がないから無罪である」と主張する。
2人の被害者がいる事件で、被害金額は計1800万円。被告人の両親(70代)は、被害弁償のために現在も働き、これまでに約200万円の被害弁償をしてきた。被害者2人からは、被告人の寛大な処分を求める嘆願書が得られている。
林弁護士らは「特殊詐欺の厳罰化に反対するわけではないが、それはあくまで本当にその人が悪いことだとわかっていて、主体的に関わっていた場合に限ります」と疑問を投げかける。林弁護士に詳しく聞いた。(ライター・高橋ユキ)
弁護側の言い分に一定の理があるかどうかは、記事を読んでもらって個々人で考えていただくとして、ともかくこのままいけばこの被告人の女性は実刑となり、刑務所への収監は避けられません。特殊詐欺は、受け子のような末端であっても、初犯でも実刑となることが多々あります。下でご紹介した女も、初犯でしたが受け子として詐欺をした金額が大きかったので、実刑となっています。
そのような安易な考えで、特殊詐欺や強盗なんぞをするかという気はする。なおこれは偶然気づきましたが、この事件の弁護士と原裕美子の弁護士は、同じ人ですね。こちらの記事を参照してください。
>今回、原被告の担当弁護人であり、これまで多くの「クレプトマニア」の公判を担当してきた林大悟弁護士に話を聞いた。
とあります。特殊詐欺の女性も精神疾患を患っているというので、そちらの事件に強い弁護士なのでしょう。
いずれにせよ、遺失物の着服、万引きなどは大した罪ではないし、特殊詐欺の受け子はさすがにまずいですが、といってそんなにものすごい重罪ではない。そういう罪をしたことが、人生本当にその人の一生に響きます。というわけで、世の中悪いことをするのはやめましょう。ほかにも盗撮とか痴漢とか、そういう下らんことで一生をだめにしてもしょうがない。