先日読んでいて、思わず苦笑してしまった記事がありました。
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カンヌ映画祭から消えたもの 新人女優のホットな売り込み 高級ホテルの現金精算…
[2023年6月4日5時1分]
是枝裕和監督の「怪物」が脚本賞(坂元裕二)に輝き、ドイツのヴィム・ヴェンダース監督の「パーフェクト・デイズ」で役所広司が主演男優賞となった。北野武監督の「首」も好評価を得た。今年のカンヌ映画祭では、例年以上に日本の映画人の動向が注目されたと思う。
ドレスアップした出演者がレッドカーペットを歩き、上映後のスタンディングオベーションの長さが現地紙に詳報される。76回を迎えてますます洗練されながら、いつか見た光景が今年も繰り返された。一方で、時代を感じさせる変化もある。
何度か現地取材した80年代後半には「恒例行事」だったものが今は跡形もなくなっている。会場近くのビーチで新人女優がヌードを披露するにわか撮影会だ。
世界中のメディアが集まる映画祭に便乗して、売り出し中の女優が露出の多い衣装で現れ、やがてははらりとその衣装も落としてしまうスタイルだった。
エージェントも絡んだ事前告知があり、レッドカーペット並みにカメラマンが集まった記憶がある。若い人には信じられないかもしれないが、09年に禁止令が出るまでは欠かせない「名物」だったのだ。
(以下略)
このくだりを読んで、「ああ、あれなくなったんだ」と思いました。そういえば最近見た記憶がない。もちろんそういったことにやたら興味関心を持って日々ネットほかをいろいろチェックしていたわけでもありませんから、知らなかったのも特に不可解ではありませんが。
gooからヌードの写真はNGと言われているので写真の紹介あるいはリンクはしませんが、ヴァレリー・カプリスキーも、上でいう売り出し女優だった時の無名時代にカンヌの海岸で撮影したヌード写真を観たことがあります。下の写真は、カプリスキーとほぼ同時代の1980年ごろのもの。後ろ向きの写真であることは、乞うご容赦。
実際1980年代は、南仏でのトップレスは今より人気があったし、またそういう美女がやたら出てくる映画もありました。前出のヴァレリー・カプリスキーが主演した
『サロメの季節』や、コメディの
『ザ・カンニング アルバイト情報』など。ただしこれらの撮影は、カンヌでなくサントロペです。
ただそれらもだいぶ昔の映画だし、また今はだいぶ時代も違うしね。やはり昔なら見て見ぬふりとか、「それくらいなら面白い」とされていても、現在では「まずい」ということになるのでしょう。これは、禁止になったのが2009年とのことで、もうだいぶ以前の話ですが、当時より今の方が「まずい」ということになっているはず。上の記事の筆者(相原斎氏のクレジットあり)が、
>若い人には信じられないかもしれないが
と書いているのはそういうことでしょう。
そういう意味合いでは、現在は、上でご紹介したようなトップレスの美女満載の映画みたいなものも、製作がなかなか難しくなっているのでしょうね。今時南仏のトップレスの女性も昔ほどいるわけもありませんが、それ以前の問題でしょう。おそらくですが、#MeTooの関係も、そういった動きを助長しているでしょうし、またジャニー喜多川の関係が
>死後BBC(イギリス国営放送)による2023年3月のドキュメンタリー番組「Predator: The Secret Scandal of J-Pop(邦題:J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル)」の放送以降、実名での被害の証言者も現れ、日本でも問題が表沙汰になりつつある。
というふうになったのも、こういった性関係について社会が厳しくなってきたことのひとつです。なお上の引用はWikipediaからですが、BBC(英国放送協会。British Broadcasting Corporation)は国営放送ではありません。「公共放送」です。日本のNHKと同じ。ところでNHKのWikipediaに、「ジャニーズ事務所との密接な関係」という項目があります。NHKのような公共放送がジャニーズに遠慮しているのだから、民放はなおさらです。しかしこれは、あえていえば、ジャニーズの問題は、NHKほか民放、出版社などのジャニーズと直接商取引のあるところばかりの問題ではない。けっきょく警察ほかも、ジャニーズ事務所における性問題については、見て見ぬふりをしていたわけですから。どれだけ闇の世界が深いのか。ていうか、ジャニーズ側も、ジャニー氏存命中はしょうがない、死んだら・・・という認識でいたんじゃないんですかね? さすがにジャニー氏が亡くなった後でもあのようなことがありとは、事務所関係者誰も思っちゃいないでしょう。埼玉西武ライオンズの山川穂高 の性犯罪不祥事も、昔ならここまで大騒ぎにならなかったはず。ジャニーズの問題については、inti-solさんも記事にされていますので、乞うご参照。
そう考えると、カンヌでの(元)名物(?)がなくなったことも、そういった社会の変化にカンヌ映画祭の主催者側が敏感に反応したことであるのだろうなと思います。そういうふうに社会というものは変わっていくのだなと改めて思いました。