記事にするタイミングが遅くなってしまいましたが、今年の6月の報道を。
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自宅で妻子3人殺害の元警察官 10月に最高裁弁論
2023/6/14 17:34
福岡県小郡市の住宅で平成29年、妻子3人を殺害したとして殺人罪に問われ、1、2審で死刑判決を受けた元県警警察官の中田充被告(44)について、最高裁第3小法廷(長嶺安政裁判長)は10月24日に上告審弁論を開くと決めた。2審判決が死刑の場合、最高裁は慣例として弁論を開く。
直接証拠はなく、弁護側は「外部による犯行の可能性を排除できない」などと無罪を主張した。
令和元年の1審福岡地裁の裁判員裁判判決は、3人の死亡時間帯に外部からの侵入形跡がないことから外部犯の可能性を否定。「3人の命を奪った結果は重大」として、求刑通り死刑判決を言い渡した。2審福岡高裁も支持した。
判決によると、通信指令課所属の巡査部長だった平成29年6月、自宅で妻の由紀子さん=当時(38)=と小4の長男、涼介君=同(9)、小1の長女、実優さん=同(6)=の首を絞めるなどして、いずれも窒息死させた。
死刑事件の場合、最高裁は、弁論後約1か月して判決をくだします。最高裁で死刑が確定した最近の事件を見てますと、筧千佐子死刑囚は、2021年6月8日に弁論、同29日に上告棄却となりました。岩間俊彦死刑囚は、2023年4月20日に弁論、6月5日に上告棄却です。現在もっとも新しく死刑が確定している上村隆死刑囚は、6月2日に弁論、7月3日の上告棄却となりました。おそらく中田被告も、2023年中に最高裁の判決が出るのではないか。そして、死刑事件ですのでめったなことは言えませんが、やはり上告棄却となり死刑判決が維持される可能性が高いと思われます。
とすると、今年は、上にあげた岩間・上村両死刑囚のほか、5月に今井隼人死刑囚が上告取り下げで死刑が確定しているので、現段階3人の死刑が確定しています。となると今年は4人の死刑確定囚が新たに出てくる可能性がありますね。今井死刑囚のように、控訴審・上告審で判決が出る前に(理由はともかく)上訴を取り下げる人もいるので、これ以上の死刑確定者が出る可能性もあります。
それで、この記事を書いている2023年8月14日時点で、上告している死刑判決を受けた被告人は2人、高等裁判所に控訴中の死刑判決を受けている被告人は3名です。つまり5名のみです。死刑確定囚は109名です。これは、執行停止で現在釈放中の袴田巌さんを入れた数です。私は、今年5月にこのような記事を書きました。
2年ぶりに死刑確定者が出た(今年は、あと少なくとも2人の死刑確定者が出る可能性がある)その記事の中で私は、
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そうすると、通例では7月に2番目の古い事件の判決が下りそうですから、そうなるとこの夏以降は、とりあえず最高裁に上告中の死刑囚は2人になりそうです。2番目の事件の高裁での棄却の日が21年2月19日ですので、2年4か月で最高裁の弁論となったわけです。中田被告に関しては、21年9月が高裁での棄却ですので、今年はまだ弁論にならないかもしれませんが、来年あたりにはなりそうです。今年の可能性もある。
と指摘しています。私の個人的な意見としては、中田被告の弁論は来年の可能性がつよいと思っていたので、彼の弁論が10月とはずいぶん早いなと思いました。中田被告の2審判決が21年9月15日ですので、2年1か月後の弁論ということになります。とすると、日立市で奥さんと子ども5人を殺害した小松博文被告は、今年の5月に高裁で控訴が棄却されていますので、そうなると25年あたりに弁論が開催されるのかもしれません。
そして現段階高裁係属中の死刑事件は3名です。これから死刑判決が予想される事件もありますが、今後はオウム事件のような極端に大規模な事件でもない限り、1年にあまりに多くの死刑判決が出たり確定したりすることはないんじゃないんですかね。21世紀に入ってから、2004年から2012年までは、2010年を除いて毎年10人以上の死刑確定者がでて、2008年と15年に死刑囚が15人も執行されましたが、このようなことは今後おきにくいのではないか。なお08年は、当時の鳩山邦夫法相が死刑執行に熱心だったため、18年はオウム真理教関係の死刑囚が執行されたため多数の執行となりました。
2013年以降に死刑が確定した人は、最高7人から22年の0人までです。2013年から22年までの10年間で死刑が確定した人は34人です。23年が現段階3名、こんご増える可能性もあります。日本でもだいぶ死刑は減っているようです。もともと他殺を死因とする人は、人口動態統計によれば2022年は213人で、2021年の256人と比べても相当な減り方です。つまり日本中で、1週間当たり他殺で死ぬ人は、4人くらいしかいないくらいです。これでは死刑判決が減るのも当然です。たいへんいいことです。
なお福岡県警警察官だった人物による事件については、こちらの記事で取り上げていますので、興味のある方はお読みいただけると嬉しく思います。
だから奥さんの側にも責任があるとまではいわないが、しかし奥さんのDVがなければこの事件は起きなかったのではないか(福岡県警元警察官による家族3人殺人事件(二審死刑で現在最高裁に上告中))