いろいろなメディアがとりあげていますね。記事を。上の表も、出典は同じ。
>
日本はドイツに抜かれ4位に IMFがGDP予測を発表 円安と物価が影響か
[2023/10/24 10:37]
日本のGDP=名目国内総生産が世界3位から4位に後退しドイツに抜かれることが分かりました。
IMF=国際通貨基金は2023年の各国のGDP=名目国内総生産の見通しを発表しました。
IMFによりますと、日本のGDPはおよそ4兆2300億ドル、ドイツはおよそ4兆4300億ドルになるだろうと予測しています。
世界3位だった日本の順位がドイツに抜かれることになります。
長引く円安ドル高でドル換算ベースで目減りしたのに加え、ドイツの物価上昇も背景にあるとみられています。
もうひとつ。共同通信の記事を。引用は東京新聞より。
>
GDP予測、日本は4位転落 23年にドイツが逆転、響く円安
2023年10月23日 18時25分 (共同通信)
【ワシントン共同】国際通貨基金(IMF)は23日までに、2023年の日本の名目国内総生産(GDP)がドルベースで世界3位から4位に転落し、ドイツに逆転されるとの見通しを示した。円安によりドル換算で目減りしたほか、物価変動が影響する名目GDPのため、日本よりも高いドイツの物価上昇率が反映されたとみられる。
GDPは為替の影響が大きく、実際の順位は年末までの為替動向に左右される。ただ日本は低成長が長期化している。経済規模は国際的な発言力につながっており、逆転されると日本の存在感が一段と低下しそうだ。
IMFが公表した経済見通しによると、23年の日本の名目GDPは約4兆2308億ドル(約634兆円)で前年比0・2%減。一方ドイツは8・4%増の約4兆4298億ドルとなる。
日銀によると、東京外国為替市場のドル円相場は22年平均の1ドル=131円台半ばに対し、足元では150円前後と大幅に円安が進行。一方、対ドルのユーロ相場は円相場ほど変動していない。
冒頭の表も同じ記事からです。
中国にはとっくの以前にGDPを抜かされていますし〈2010年)、インドもそんなに遠くない将来に日本を抜かすのは予想のついたものですが、ドイツはねえ。日本は、
>
ところで 2018 年は日本の GNP が、当時の西ドイツを抜いて世界第2位になって 50 年目に当たる年である。日本の GNP は、1966 年にフランス、1967 年にイギリスを抜き、1968 年についにアメリカに次ぐ規模に達した。
というわけです。つまり半世紀以上を経て、ドイツが日本を抜かすことになるわけです。ドイツも、西ドイツと東ドイツが合併〈1990年)したので当時の西ドイツとはまた違いますが、ともかく長きにわたって、(昔ながらの言葉でいう)「西側諸国」の中で、米国の次のGDP(国内総生産。日本が西ドイツを抜かした当時はGNP=国民総生産)大国を維持していた日本が、ついにドイツに抜かされたというのは、これもやはりエポックメイキングな出来事ではありますね。なにしろ現在日本の人口が1億2千5百万人弱、ドイツが8千4百万人強ですから、ドイツの人口はだいたい日本の2/3であり、それで追い抜かれたのだから、つまりは日本の経済状態がわかるというものです。
もちろんこれは、ドルベースの数字であり、日本が現状ひどい円安(ドル高)の状況であるということではあります。またドイツは昨今インフレもわりと進んでいるらしい。そうではありますが、しかしですよ。タイトルにもしたように、10年前、このような事態になると予想した人は、どれくらいいましたかね? 皆無ではなかったかもしれませんが、あんまりいなかったんじゃないんですかね。
大学所属の研究者、銀行や生命保険会社、証券会社などのシンクタンク、あるいは財務省や日本銀行などの政府や政府に近い組織に所属するエコノミストなども、たぶんそこまでの事態になるとは予想していなかったのではないか。(理由はともかく)日本の経済の先行きにやたら楽観的な人はもちろん、日本の将来にかなりシビアな見方をしている人も、そういう事態はあまり想定していなかったのではないか。
そう考えると、やはり多くの日本人にとってこの事態は想定外じゃないですかね。このような円安の激化は、商社や金融機関、ほかにも輸入産業・輸出産業ほか、自分たちでも独自に他から情報や予測を買ったりさまざまなブレーンを持ち、また自分たちのシンクタンクほかを駆使して今後の為替動向を判断しているそれ相応の規模の企業・組織も、なかなか予想するにいたらなかったのではないか。した人がいても、そのような意見が主流になったということはないでしょう。で、これは私たちのような一般の日本人もそうですよね。人間消費生活をしていれば、程度の差はあれ誰でもエコノミストではあるわけで、そういう私たちもやはり想像はしていなかったでしょう。
それにしても遺憾ながらこれが日本経済の現実というやつなんでしょうね。10年前の2013年は、自民党と公明党の連立政権が民主党政権から政権を奪取した事実上の初年といっていいかと思います(政権交代があった第46回衆議院議員総選挙が執行されたのは、2012年12月16日、第二次安倍政権が発足したのは同26日)。それから首相も安倍から官、現首相の岸田となっていますが、つまりは自公政権の経済政策やその成果などというものは、その程度のものだったということです。アベノミクスなんて言葉も、(当然)死語です。つまりは、自民党のここ10年の経済政策は失敗に終わったということです。民主党政権の経済政策が良かったとは言いませんが、自民党も自慢できるものではない。これは、自民党や自民党ブレーン、自民党支持者のほか安倍晋三支持者らがどう詭弁・強弁・牽強付会・嘘・デマ・はったり・デタラメをとばしたところで決着のついた話だと思います。連中にとっては「不都合な真実」というやつです。
そう考えていくと、まさに現在の日本は、昔の「英国病」なんて言葉同様の「日本病」の状況じゃないですかね。たとえばドイツだって、日本と同様出生率の低下がはなはだしいわけですが、少なくとも経済については、日本よりはうまくいっているということなのでしょう。日本のよろしくなさは相当にひどいといわざるを得ないのではないか。お隣の韓国でも、韓国の物価も昨今日本とほぼ同等くらいですからね。交通費などはまだ日本より安いですが、外食代やホテル代などは日本と同じくらいと言えそうです。「世界経済のネタ帳」さんの「世界の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング」を見ても、2022年現在で、日本と台湾、韓国は、世界31位~33位でつながっていてだいたい同等です。香港は、日本よりだいぶ上です。これは前に拙ブログでもご紹介しました。
けっきょく香港の中国における相対的地位の低下、利用価値の低下に話は尽きると思うまた、日本と韓国の、USドルベースによる一人当たりの名目GDPの推移の表をお見せします。上掲「世界経済のネタ帳」さんから作成したグラフです。
韓国が順調に上がっているのは事実ですが〈97年のアジア通貨危機やリーマンショックなどの時期の落ち込みはあるとはいえ)、日本はまさに1990年代初頭ごろの水準です。1992年の数字が32,069.07USドル、2023年のIMFによる推計が、33,949.71ドルとなります。93年は、この23年の数字を追い越しています(おいおい)。これでは韓国に並ばれるのも仕方ない。
というわけで、どうも日本の経済というのは世界の中でも特異によろしくないということになりそうです。昔は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」なんて言葉すらありましたが、過去の時代ならともかく、いまの日本では冗談にもならないということです。で、思うに、いま50歳、あるいは大学を卒業して30年の50代としてもいいですが、その人に「あなたは、20歳の時(あるいは大学を卒業した時)、自分の姿を想像していたと思いますが、現在のあなたはどうですか?」と聞かれて、「だいたい想像通り」という人は、どれくらいいますかね。あんまりいないんじゃないんですかね。役人とかになった人でも、現在の自分の姿は、当時の予想とだいぶ異なっていたのではないか。だいたい人間の世代というのは、私は「30年」というのが1つのくくりになると(勝手に)考えていまして、私の意見の妥当性はとりあえずおいておくとしても、おそらく多くの日本人は、30年前のことを思い浮かべると、「予想と違う」「こんなはずじゃなかった」「想定外」ということになろうかと思います。それこそマクロの日本経済から、ミクロの自分の周囲についてにいたるまでです。そしてそれは、たぶん外国よりも、30年前の日本人よりも、そう考える人の割合がずいぶん大きいのではないかと思います。上のグラフを見れば、そうであるのはきわめて当然、自然なものであると私は考えます。まったくもって、困ったものです。