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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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世の中の家族間における殺人や傷害事件は、想像以上に発達障害や知的障害、精神障害がからんでいそうだ

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最初にお断りしておきますと、この記事で私は、この被告人に対する量刑が妥当かどうかという問題については触れません。また、記事で引用されている精神科医の鑑定の意見についても、論評はしません。それらは、もちろん重大な問題ですが、この記事でのテーマではないということです。ご了解願います。

たまたま読んで、いろいろ考えさせられた記事を。

「正嗣(まさし)、愛してる」最愛の息子に刺されながら、父親は最期に伝えた…父親を刺殺した28歳の男が抱える生きづらさの背景

抜粋して引用します。


 去年8月、当時61歳の父親を包丁で刺殺したとして、殺人の罪に問われていた北海道深川市の28歳の男の裁判員裁判で、10月23日、旭川地裁は、男に懲役11年を言い渡しました。

 公務員を定年退職したばかりの父親と、仕事が長続きせず、事件当時は無職だった男。

 一軒家に2人で暮していた親子の間に何があったのか。

 裁判の記録からは、男が抱えていた生きづらさの背景が見えてきました。

(中略)

 起訴状などによりますと、正嗣被告は、もともと両親と3歳年下の妹と4人で暮していました。

 しかし2年前、正嗣被告は妹とけんかをした際、暴力を振るったことから、母親と妹は自宅を出て別居。それ以来、父親と2人で暮していました。

 正嗣被告は、地元の中学校と高校、短大を卒業後、自衛官候補生や農協、レンタルスキー店などの仕事に就きましたが、仕事はどれも長続きしませんでした。

 2年前に、父親の紹介で働き始めたガソリンスタンドでも、危険物の取り扱いに必要な資格を持っていなかったことから、同僚に見下されていると思い込み、わずか2か月で辞めています。

 この資格をめぐっては、正嗣被告は「乙種第4類」の取得を希望していましたが、父親から難易度の低い「丙種」から順に取得した方がいいと助言されていました。

 そして正嗣被告は、無職になったのは、父親が最初から「乙種第4類」の取得を認めてくれなかったせいだと、強い不満を抱くようになっていきます。

 父親は、無職の息子を見放すことはなく、家事を担いながら一緒に暮らしていました。そうした暮らしの中で、事件はささいなきっかけでおきました。

 正嗣被告は事件直前、「たばこを買いに行く」と告げて外出しようとすると、父親からとがめられ、2人は口論となります。

 そして「ガソリンスタンドを辞めて無職になり、人生が狂ったのは、父のせい」などといった強い不満がこみあげ、殺意を決意。自宅の台所から包丁を持ち出し、父親の身体を何度も突き刺すなどしました。

 検察が正嗣被告を聴取した記録によりますと、父親は「やめろ」「助けて」と懇願し、手を前に出して抵抗したといいます。手や腕には、抵抗する際にできる傷=防御創が11か所確認されています。

 そして、刺されながら父親は、最期に「正嗣、愛してる」と、最愛の息子、正嗣被告に向けた言葉を口にしていました。

ここまででも、相当に読むにつらいといわざるを得ないですが、ここからしばらくして、私は「やっぱり」と思ってしまいました。もっともそれは、タイトルを読むだけでもだいたい想像はつきます。少し省略してまた引用します。


事件後の正嗣被告は、鑑定で「軽度知的障害」「広汎性発達障害」と診断されています。こうした障害が犯行に影響を与えたかどうかが争われました。

弁護側は障害が犯行に関与したとして情状酌量を求めた

 正嗣被告に、こうした障害があることがわかったのは、この事件後の診断が初めてです。

 鑑定した医師は、被告について、障害の影響で、他者の言動を曲解する傾向にあり、コミュニケーションがうまく取れず、仕事も長続きしないなどストレスの原因になったものの「犯行は障害の影響ではなく、本人の性格によるもの」と証言しました。

(後略)

冒頭でも書きましたように、ここでの医者の

犯行は障害の影響ではなく、本人の性格によるもの

という意見の妥当性についてはここでは論じません。私には論じる能力もありません。それはともかく、このくだり、知的障害と発達障害があるというところを読んで、私は、「やっぱり」「予想通り」と思ったわけです。

上の引用で、私が興味を感じたのが、

正嗣被告に、こうした障害があることがわかったのは、この事件後の診断が初めてです。

というところです。ということは、この被告人は、学校では普通学級に通ったのでしょう。短大まで進んだということですが、どこの短大かはわかりませんが、あるいは地元の拓殖大学北海道短期大学かもしれませんね。私は、数年前のこちらの事件を思い出しました。その事件を取り上げた拙記事をご紹介します。

精神疾患か発達障害か境界知能かそういうこととは関係ないのか定かでないが、この伯父も生きづらさを抱えて孤立していたのだろう

この事件は、妹の家に居候(どうしてそうなったのかは定かでありませんが)していた兄が、妹の子ども(甥2人)を、家に放火して焼き殺してしまった事件です。この人物がなぜ甥2人を殺すにいたるまで思いつめたのか、それとも衝動的なものだったのかはわかりませんが、上の拙記事のタイトルにもあるように、この人物は他人から見てどうこうという問題ではなくとも、相当精神的によろしくない状態にあったように思いますね。

今回の事件での、ご当人が非常に気を悪くしたらしいことに、

2年前に、父親の紹介で働き始めたガソリンスタンドでも、危険物の取り扱いに必要な資格を持っていなかったことから、同僚に見下されていると思い込み、わずか2か月で辞めています。

 この資格をめぐっては、正嗣被告は「乙種第4類」の取得を希望していましたが、父親から難易度の低い「丙種」から順に取得した方がいいと助言されていました。

 そして正嗣被告は、無職になったのは、父親が最初から「乙種第4類」の取得を認めてくれなかったせいだと、強い不満を抱くようになっていきます。

というのがあるようです。「大したことない」「なんだそれくらい」と思われるかもしれませんが、そして私もそう思いますが、ご当人にとってはs、かなり決定的によろしくないことだったのでしょう。もちろん詳細は書けませんが、私の周囲にも、そういうことで相当な不満を持っているらしい人物もいます。

当方無知なので、「乙種第4類」というのと「丙種」というのが資格としてどう違うのか、どれくらいの難易度の違いがあるのかとか、待遇などでどれくらいの差が生じるかは存じ上げませんが、たぶん父親が「乙種」取得をすすめたのは、子どもの能力からしていきなり前者取得を目指すのは難しいと判断したということであり、父親も、子どもに知的障害があると覚悟していたかはわかりませんが、たぶん本人の努力不足だけではない頭の悪さがあると考えていたのではないかと思います。上の記事では、無職になった原因を親のせいにしたという側面が強調されていますが、たぶん「親から軽く見られた」「親は自分を信頼していない」という悔しさや怒りもそうとうあったのではないかと思います。なかったということもないでしょう。記事の中での

危険物の取り扱いに必要な資格を持っていなかったことから、同僚に見下されていると思い込み、わずか2か月で辞めています。

というのも、まさにこちらの件と酷似しているような気が。


流山母姉殺害 求刑通り懲役30年 「短絡的で身勝手」 母は引きこもりの被告世話も… 千葉地裁
2022年1月29日 05:00 | 

 千葉県流山市の自宅で母と姉を殺害したとされる事件で、殺人罪に問われた無職、本多新被告(40)の裁判員裁判の判決公判が28日、千葉地裁で開かれた。岡部豪裁判長は「短絡的で身勝手な犯行」として求刑通り懲役30年を言い渡した。

 岡部裁判長は判決で、犯行の約2カ月前の2020年10月に凶器の柳刃包丁(刃体約24・7センチ)を購入したことなどから計画性を認め「強固な殺意に基づく悪質な犯行」と指弾。長年の引きこもり生活を送っていた被告に対し、母親が身の回りの世話をしていた点などを踏まえ「被害者に特段の落ち度はない」とも述べた。

 弁護側は、被告に発達障害の疑いがあり犯行に影響したなどとして懲役20年を主張したが、岡部裁判長は「影響は間接的かつ若干」と退け、有期懲役刑の上限である懲役30年が相当とした。

 判決によると、姉の文さん=当時(42)=と母の育子さん=当時(72)=の「何もしない、優柔不断、勇気がない」という会話を耳にしたことから非難されたと思い込み、20年12月31日夜、自宅で、2人を柳刃包丁で複数回、突き刺し殺害した。

引用中の

何もしない、優柔不断、勇気がない

というのが、被告人のことを言っていたのかはわかりませんが、被告人も自分のそのような側面は重々理解していたのでしょう。その鬱屈していた部分がこのように爆発した理由の1つなのではないか。ただこのような事例をみると、北海道の事件の犠牲者が父親だけだったのは、むしろ幸いだった可能性もありますね。事実母親と妹は、ご当人のDVに耐えかねて家を出ている。同居していたら、最悪3人殺害ということにもなりかねない。そうしたら死刑にされても文句は言えなくなる。前にご紹介した福岡での両親殺害事件も、似た側面があるはず。

けっきょくこの被告人のメンタリティは、佐藤忠志氏と共通するところがあるのだと思う(追記あり)

それにしてもこの父親が語ったとされる

正嗣、愛してる

てのもねえ。

世の中「毒親」であるがゆえに殺される親もいますが(滋賀の事件は、そうだと考えられます)、この父親はたぶんそうではない。彼が息子と同居したのも、1つには、奥さんと娘さんへの暴力に対しての防波堤としての役割を持つためだったわけであり、また子どもに取得の容易な資格を最初に受けるように勧めたのも、子どもの能力の低さをわかってのものであり、それは子どもへの愛情だったわけですが、それが実に悪く転化してしまったわけです。非常に残念ですが、世の中こういうことはあります。

それで、やはりこの事件で、いろいろな意味で「これはなんとかならなかったのか」と思える件に、ご当人の知的障害や発達障害が、(たぶん家族はそうではないかと疑ってはいたと思います)事件を起こしてから明らかになったということです。おそらく被告人は、「境界知能」(知能指数70以上~85未満の場合をさす。

知的障害と平均域のボーダーに当たる知能を表す。そんな境界知能の人は日本人の7人に1人いると言われている。

ということです)でなく70未満の人物だったのでしょう。被告人は現在27歳とのことで、となると1995年~96年の生まれであり、小学校入学時21世紀だったことになります。ということは、そのような特性のある子どもに対する扱いも、以前よりは改善されていたはずですが、この人物に関してはそうでもなかったのか。何回も同じことを書きますと、私が中学時代に手の付けられない不良がいて弱い者いじめ、授業中の徘徊・乱暴狼藉、暴言などひどいものでしたが、成績もまず最悪で、中二になっても助詞の「は」や「へ」も書けませんでした。つまり「おれわ」とか「えきえ」とかいったことを書く。私が思うに、どう考えてもこの男は知的障害があったかと思います。が、学校も、「お客さん」みたいに教室に置くだけでした。けっきょくご当人家出をして保護されて施設に送られその後教室に戻っては来ませんでしたが、この被告人も、たぶん普通学級で学べるような人間ではなかったはずで、学校でも理由はともかくいろいろ嫌な思いもあったはず。そういったところも、さらに彼の精神状態を悪くしたのは間違いないところかと思います。そういった診断がしっかりされなかったのも、親の息子への対応の悪さの原因の1つだったはず。それなら就労も無理にさせないとか、積極的に障害者枠での採用を目指すとか、早々に施設に送り込むとかいろいろな方法があったかと思います。

それにしても仕事をやめるということを繰り返したというと、こちらを思い出しますね。

元プロ野球選手のセカンドキャリアの関係もふくめていろいろ考えさせられる(入来智氏の事故死によせて)

入来智は、10年で10回転職したらしい。クビになったというより自分で我慢できずに辞めたケースも多いはずであり、彼も我慢ができない人間だったのでしょう。おそらく彼も、何らかの発達障害があった可能性が高いと私は考えています。

やや記事の幅が広くなり過ぎましたが、私は、この事件は、典型的な発達障害者の家族への殺人と思います。親に落ち度があったとは言いませんが、この人物は、

判決を前にした最終陳述で「大変、遺族(母親や妹)に申し訳ないと思っています」と述べた正嗣被告。

というわけであり、父親に申し訳ないでなく、家族のことを「遺族」と表現したうえでの謝罪だったわけで、今日でも父親あるいは家族へのくすぶる思いを感じないではありません。現在の彼は、本音では、自分の家族を世間一般でいう「家族」とはみなせない、あるいはみなしたくない心情もあるのかもしれません。

お亡くなりになった父親の方のご冥福を祈ってこの記事を終えます。

というところでおしまいにしようとおもったのですが、こちらの記事を読んでしまいました。

「一緒に生まれ変わりたかった」 父と姉を刺殺したひきこもりの男 姉は最期に「ごめんね」と言った

CBCテレビ 2023年11月4日(土) 05:00   詳細は元記事を読んでいただくとして、一部抜粋してご紹介。   >

智被告は高校を中退後、当時の交際相手がいた静岡県に移り、ファストフード店で働いた。しかし、レジから売上金500円を盗むなどして、事件前年(2020年夏ごろ)には仕事を辞めて実家に戻った。その後、焼き肉店で働いたものの、人間関係がうまくいかず2か月で辞めた。

事件の4か月前、実家を建て替えることになり、輝男さんと礼さんは事件現場となった市営団地に入居。そこに、智被告もなだれ込んだ。

智被告は、近くのショッピングモールにあるファストフード店でアルバイトを始めたもののすぐにやめ、輝男さんの年金と礼さんの収入に頼りながら、家事もせず、自室でネットゲームをしたり、動画を見たりする生活だった。

深夜に通話しながらゲームをすることもあり、そうした生活態度を輝男さんに注意されるも改善せず、輝男さんと礼さんは次第に智被告との関わりを避けるようになった。

自分だけ不遇な扱いを受けるのは、「2人から嫌われているから」…

そう考えた智被告は自殺を考えるようになり、事件当日(2021年7月19日)の午後10時ごろ、リビングでテレビを見ていた輝男さんに「家族関係の改善」などを求めた。

しかし、輝男さんからの返事は、智被告が望んだものとは180度違ったという…

(智被告)「『お前なんか家族じゃねぇ。息子だと思ってない』『死ぬなら迷惑かけない方法で死ねよ、電車には飛び込むなよ』と言われました」

懲役30年の求刑に、判決は28年でした。

で、この記事には特に記載がないですが、たぶんこの人物もおそらく知的障害や発達障害、精神障害がありませんかね。

自分だけ不遇な扱いを受けるのは、「2人から嫌われているから」…

というのは、北海道と千葉の被告人らの心理と酷似しているように感じますね。甥2人を焼き殺した人物も、似たような心境ではないかと思います。ともかくこれからもこのような事件には、個人的に注目していきたいと思います。これでは殺害した人物といい殺された家族といい、救いがないにもほどがあるというものです。お話にもなりません。


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