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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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鈴木瑞穂氏も引揚者だった(警察や官僚、金持ちの役が多かったと思うが、日本共産党の熱心な支持者でもあった)

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俳優であり声優でもある鈴木瑞穂氏がお亡くなりになりました。記事を。


俳優・声優の鈴木瑞穂さん死去 96歳 名脇役 NHK大河やダース・ベイダー役の吹き替えなど
[ 2023年11月28日 19:50 ]

 映画「スター・ウォーズ」シリーズのダース・ベイダー役の吹き替えをはじめ、名脇役として数々の映画・ドラマ・舞台で活躍した俳優・声優の鈴木瑞穂(すずき・みずほ)さんが今月19日午後11時1分、心不全のため東京都内で死去した。96歳、旧満州(中国東北部)生まれ。28日、劇団銅鑼が公式SNSで発表した。葬儀・告別式は近親者で執り行った。
 「故 鈴木瑞穂 儀 かねてより病気療養中の処、去る令和5年11月19日に96歳、心不全にて永眠いたしました。故人の生前の意向により葬儀告別式は近親者のみにて執り行いました。故人が生前に賜りましたご厚情に深く感謝し、謹んで御礼申し上げます」と伝えた。

 1952年、宇野重吉らと劇団民藝の設立に参加。72年、劇団銅鑼の設立に参加し、代表を10年間務めた後、フリーとなった。2006年、「夜の来訪者」「女相続人」で紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞した。

 映画「白い巨塔」「日本沈没」「母べえ」、NHK大河ドラマ第2作「赤穂浪士」や「徳川慶喜」「葵 徳川三代」、TBS「ザ・ガードマン」「水戸黄門」など、多数の映像作品に出演。洋画の吹き替えはダース・ベイダー、「ゴッドファーザー」のヴィトー・コルレオーネなどの悪役を数多く担当した。個性的で存在感のある演技で親しまれた。

最近大映テレビ制作のドラマを、連続ドラマから「ザ・サスペンス」での2時間ドラマなどでいろいろ観ていまして、そこでは鈴木氏のお顔をよく拝見していました。有名どころでは、『赤い絆』での通産省の局長役(国広富之の父親)、『スチュワーデス物語』での片平なぎさの父親である実業家役など。で、タイトルにもあるように鈴木氏は、役人や金持ち、あるいは医者(前にも記事にした『君は海を見たか』では、主人公の萩原健一が頼る医者を演じていました。ほかにもこちらで取り上げた『翼は心につけて』でも医学部教授をやっていました)など、社会エリートの役が多かったし、あるいは警察官や自衛隊の幹部の役なども多くこなしました。その1つが、私がこのブログでよく取り上げる1975年の『新幹線大爆破』です。以下その映画から鈴木氏の写真を。私の手元にあるDVDからのスクリーンショットです。

犯人である高倉健と通話するシーンです。この映画では、直接高倉と絡むシーンはありませんが、1980年の山田洋次監督『遙かなる山の呼び声 』では、高倉の兄を演じていました。

ファクシミリを受け取るシーンです。

そして鈴木氏は、声優としてもすぐれた能力を持っていました。引用記事にもありますように、私は、『ゴッドファーザー』でのドン・コルレオーネマーロン・ブランド〉での声が印象的です。普段の美声でなく、おもいっきりマーロン・ブランドの声に似せていました。まさに絶品だったと思います。ほかには、『ペーパーチェイス』でのキングスフィールド教授〈ジョン・ハウスマン〉も、これまた最高でした。なお野沢那智氏は、『ゴッドファーザー』で、次代のドンになるマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)の声をあてていまして、鈴木氏とは、『家族の肖像』や『エデンの東』でも共演しています。『エデンの東』では、鈴木氏が父親のアダム・トラスク〈レイモンド・マッセイ〉役、野沢氏が息子のジェームズ・ディーンの声で、こちらでも親子役を演じたわけです。

それで鈴木氏は、旧満州国の出身でした。前にこんな記事を書きました。

2か月弱死が伏せられていたのだから、立花隆もたぶん世間的には「過去の人」だったのだろう(外地・旧植民地で生まれたり育った人たちもどんどん亡くなっている)

Wikipediaによると、鈴木氏は「安東中学校」というところを卒業されているということで(これは「満洲国」の中学です。こちらに名前が掲載されています)、1927年生まれならたぶん旧制高校を卒業して京都大学経済学部に入学したのだと思いますが、そのあたりどうなのかは(どこの旧制高校を卒業したのかなど)私は現段階確認していません。Wikipediaによれば、


終戦で満洲より帰国後

とのことですので、彼の人格形成は外地であったということでしょう。詳細については私は承知していませんが、おそらく相当いろいろな経験をされたのではないか。で、敗戦時18歳の年齢(鈴木氏は10月生まれとのことで、年齢は8月15日で17歳)の方が、今年96歳でお亡くなりになったわけです。78年もたったわけですからね。

そう考えると、上の記事でも指摘したように、おそらく世間でいう「引揚者」の中では一番若いほうであろう1945年生まれの櫻井よしこ(ベトナム・ハノイ生まれ)が今年78歳ですから、いわゆる人格形成まで外地で過ごした人たちも、まさに社会から消え去るのが時間の問題ということになりそうですね。上でも名前を出した山田洋次は1931年生まれ、五木寛之は、1932年生まれです。

さてこれは知る人ぞ知るのたぐいですが、鈴木氏は熱心な日本共産党支持者でもありました。警察や自衛隊、官僚、財界人など、あまり共産党といい関係にない役柄が多かった鈴木氏ですが、昔からの新劇人らしいところではあります。宇野重吉らとともに1952年に劇団民藝の設立に参加したわけで、弱冠25歳の若さだったわけです。

もっとも1929年生まれで演劇人でありまた声優としても超一流だった納谷悟朗氏は、警官である銭形警部 が当たり役でしたが、彼もまた熱心な共産党支持者でもありました。前掲の宇野さんや杉村春子御大も自他ともに認める共産党支持者でしたから、つまりはそういう時代だったということです。

鈴木氏に、共産党支持者である自分と役柄の齟齬について問うたインタビューや彼自身が書いたものがあるかは知りませんが、鈴木氏はたしかにその容姿といい体格といい、いかにも官僚や警察関係、金持ちが似合う人でした。そして時代劇の出演も多く、舞台、映画、テレビとまさに貴重なバイプレーヤーでした。主演ではないが、すごい存在感がある俳優さんだったと思います。鈴木瑞穂氏のご冥福を祈ってこの記事を終えます。これからも、さまざまな出演作を私は観て氏の演技に感銘を受けていくのしょう。


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