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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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「日置市5人殺害事件」の控訴審がいっこうに始まらないのは、被告人の精神状態がきわめて悪いための可能性がありそうだ

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昨年(2023年)12月からこの1月にかけて、日本では、死刑の確定、死刑求刑、死刑判決が相次いでいます。12月に福岡県警元警察官による家族三人殺害事件が死刑確定、同月に、山梨県での特定少年による殺人と京都アニメーションの事件において死刑が求刑され、1月に両方とも死刑判決が出ました。そして同月に兵庫県での甥への放火殺人事件も公判が始まりました。2月中に判決が出る予定で、これも死刑の判決が出る可能性があります。

個人的には、この12月に死刑が執行されるのではないかと私は予想していましたが、これはありませんでした。理由は定かでありませんが、ともかくこの記事執筆時点で、2022年7月の、秋葉原での通り魔殺人の犯人である加藤智大死刑囚への執行が、現段階最後の死刑執行です。

それで、今回は、以前からちょっと私が気になっていた死刑判決事件についての記事を書かせていただきます。日置市5人殺害事件です。

この事件は2020年12月11日に、鹿児島地裁で死刑判決が下されまして、控訴されましたが、現段階控訴審は開かれていません。2021年8月に福岡地裁で死刑判決が出た事件では、23年9月に控訴審初公判となり、この3月に判決が予定されています。現在最高裁に唯一係属している日立市の事件では、21年6月に判決が出た後23年1月に控訴審が始まり、4月に控訴棄却となっています。福岡県警元警官の事件では、19年12月に1審死刑判決、2審が21年4月に開始、9月に控訴が棄却されています。

つまりここ最近の死刑判決が下された刑事裁判では、地裁判決から1年半弱~2年くらいのタイムラグで控訴審が始まっているわけです。となると3年も控訴審が始まらない日置市の事件は、特異にその期間が長いように思います。

そしてこの控訴審が開かれない理由なるものが、私が確認したところ公表されていません。ということは、どうも控訴審を開くに開けない理由があるような気がしますね。それが何かはわかるわけもありませんが、あるいはですが、被告人の精神状況が非常に悪い可能性がありそうですね。以下は、Wikipediaからの引用です。注釈は削除します。以下のWikipediaからの引用も同じです。


争点は加害者(被告人)Iの事件当時の責任能力と、父親A・祖母Bに対する殺意の有無などである。起訴前後に被告人Iの精神鑑定を担当した2人の精神科医は、ともに「Iには妄想性障害があった」とする鑑定結果を示しているが、起訴前の鑑定を担当した医師は「深刻な精神状態で、統合失調症の可能性もある」という見解を示している一方、起訴後に鑑定を担当した医師は「妄想性障害の影響はわずか」という見解を示している。


続く第5回公判(11月25日)では引き続き被告人質問が行われたほか、被告人Iの起訴後に精神鑑定を担当した精神科医が出廷し、「被告人Iは妄想性障害に罹患していたことが認められるが、事件の根底には幼少期からの祖母Bへの悪感情がある」「障害が犯行に与えた影響は少ないか、まったくない」と述べた。一方、第6回公判(11月26日)には起訴前に地検から依頼を受けて精神鑑定を担当した精神科医[注 10]が出廷し、起訴後の鑑定を担当した医師とは逆に「精神障害が事件に大きな影響を与えた」とする意見を述べた。

というわけです。減刑すべきか無罪にすべきかはともかく、被告人の精神状態がよろしくないのは確実と考えられます。その後さらに被告人の精神状態が悪くなったとしても不思議ではない。控訴審には、被告人の出廷義務はありませんし、また非常に精神状態が悪かった被告人を出廷させて、死刑から無期懲役に減刑した裁判もあります。その1つが熊谷連続殺人事件です。日置市の事例がどうであるかはわかりませんが、仮に私の想像が正しいとしたら、そうすると、そのような人物に死刑判決を下していいのかという問題も生じます。

刑事訴訟法第314条


(公判手続きの停止)

第314条
1.被告人が心神喪失の状態に在るときは、検察官及び弁護人の意見を聴き、決定で、その状態の続いている間公判手続を停止しなければならない。但し、無罪、免訴、刑の免除又は公訴棄却の裁判をすべきことが明らかな場合には、被告人の出頭を待たないで、直ちにその裁判をすることができる。

とありますので、あるいはこれが関係しているのではないか。実際堀江守男死刑囚は、1991年3月に仙台高裁で死刑判決への控訴が棄却となり最高裁へ上告した後精神状態が悪化、一時公判停止、2005年にようやく上告が棄却されましたが、今日に至るまで執行がされていません。やはりどうも非常に精神状態が悪いらしい。日置市の被告人も、堀江死刑囚は、再審請求もしていないのに死刑が執行されていない。精神が悪いということがあるのではないか。なお堀江死刑囚の件については、こちらから情報をえました。

ところで熊谷連続殺人事件の一審判決では、Wikipediaから引用すれば、


弁護人の「統合失調症により被告人は犯行当時心神喪失の状態だった」とする主張を「妄想が犯行に一定の影響を与えていることは否定できないが限定的だ」と退けた。

とあるわけです。統合失調症の影響が一定あるということを判決も認めているのなら、何らかの減刑や無罪判決も必要なんじゃないのと思いますが、死刑なわけです。その後高等裁判所で無期懲役に減刑され確定していますが、裁判所が認めたのは「心神耗弱」であり、弁護側は「心神喪失」を主張して無罪を主張していたので、上告をしたわけです。ご当人現在府中刑務所に収監され、1審の弁護人が面会しているとのことですが、かなり状態は悪いということを2022年時点で語っています(下記書籍p.102における村木一郎弁護士の発言)。

加藤智大さんの死刑執行 (年報・死刑廃止2022)

同じ書籍でも指摘されているように、加古川7人殺害事件では


2006年10月12日、神戸地裁(岡田信裁判長)で開かれた公判で、神戸地裁は弁護側の請求を受けて実施した精神鑑定の結果として「Fは精神障害の一種である妄想性障害」と診断し「犯行時、物事の是非や善悪を判断する能力は著しく低下していたが、完全には喪失していなかった」とする結果を公表した。


2012年7月13日に大阪高裁の公判で、新たにFの精神状態を診断した精神科医が鑑定人尋問で「Fは事件の約2年前から妄想性障害となり、近隣住民とのトラブルを気に事件を起こした。犯行当時、善悪の判断能力は完全には失われていなかったが著しく低下しており、その判断に伴う行動が難しい心神耗弱状態だった」という鑑定結果を報告し、完全な責任能力を認定した第一審判決とは別の見解を示した。

という鑑定結果がでているわけで、それなら減刑の必要もあろうかと思いますが、これも理由はともかく死刑判決が維持され2021年12月の執行となったわけです。熊谷の事件や淡路島5人殺害事件では死刑から無期懲役判決となったわけで、この違いは何なんだろうかという気はします。また山口連続殺人放火事件 では、精神に問題があるという鑑定結果が出ていますが、死刑が確定しています。やはり死刑判決というのは慎重にあるべきだと思いますので、こういう「ぶれ」はよろしくないと考えます。今後日置市の事件の裁判がどのように推移するかは定かでありませんが、ここは私もどうなるか見守りたいと考えます。


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