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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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フランソワーズ・ドルレアックとカトリーヌ・ドヌーヴの対談(1966年)(1)

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以前記事にしましたように、フランソワーズ・ドルレアックカトリーヌ・ドヌーヴの姉妹対談記事を翻訳しましたので発表します。「ロシュフォールの恋人たち」の宣伝記事かと思われます。それでは・・・。

フランソワーズ(以下「F」):私はフランソワーズ・ドルレアック。24歳です。身長は1m72cm。10本の映画に出演しました。

カトリーヌ(以下「C」):私はカトリーヌ・ドルレアックです。ただ芸名として、母が若い娘だった時代の名前をもらっていて、それがカトリーヌ・ドヌーヴです。22歳半です。身長は1m70cm。14本の映画に出演しました。

F:え、あんた私よりたくさん映画に出ているの?

C:それは大した意味はないわね。ただ・・・

シャラント=マリティーム県ロシュフォール。雨が降っている。雨が降っているので、「ロシュフォールの恋人たち」は撮影一時中止に追い込まれた。カトリーヌ・ドヌーヴと姉のフランソワーズ・ドルレアックが主演するこの作品は、すでに6日間の遅れとなっている。費用は、1日あたり100万旧フラン。地元のシックなホテルである「グラン・バシャ」に避難しているドルレアック姉妹は、自分たちの想い出や意見、希望を比較するためにホテルを利用する。ドルレアック姉妹は、長きにわたってお互い本当に口をきく機会がなかった。

F:実生活のように、「ロシュフォールの恋人たち」では、私たちは姉妹です。ただ双子です。ガルニエ姉妹です。デルフィーヌ・・・こちらをカトリーヌが演じていまして、ブロンドでダンスの先生です。ソランジュ・・・これが私で、赤毛で音楽の先生です。私はカトリーヌの役のほうが好きだな。自分の役より興味があります。

C:やだ、もう沢山よ。なぜ姉さんの頭にそんなことが浮かぶかわからないわ。

F:彼女はただしいわ。映画はコメディ・ミュージカルでとても陽気です。さて、私が陽気なとき、私は歌うことでなく踊ることが好きなんです。私は、音楽は・・・。

「ロシュフォールの恋人たち」はおとぎ話であり、それゆえコメディ・ミュージカルだ。フランス人の最初に制作されたコメディ・ミュージカルである。むしろほとんどフランス人の出演だ。というのは、「巴里のアメリカ人」に出演したジーン・ケリーと「ウェスト・サイド物語」のジョージ・チャキリスが出演している。この2人の名前によって、米国の配給業者は、最初の予算の4割である2億8000万旧フランを貸し付けた。残額は、「シェルブールの雨傘」のプロデューサーであるマグ・ボダールから出資された。音楽は、ミシェル・ルグランであり、脚本はジャック・ドゥミ監督である。それはおとぎ話だ。2人の姉妹のお互いの愛情が込められた…。

C:私たちって、すばらしい子ども時代をすごしたわね。

F:ええ、すばらしかったわ。いつも口げんかをしていたし、取っ組み合いもしてたわね。

C:フランソワーズはとても神経質でした。私たちの妹であるシルヴィーは怒りっぽいんです。彼女は19歳でバカレロアの試験を受けようとしています。いちばんしっかりしているのは私かな・・・。

F:私たちは、シルヴィーをいらだたせる少女時代を過ごしたわね。あんたも覚えているでしょうけど、編み物の針を手にしたシルヴィーに私たちは追いかけられたわよね。「姉さんたちの鼓膜を破ってやるわ、姉さんたちの鼓膜を破ってやるわ」って叫びながら。

C:私たちは同じ部屋だったんです。お姉さんと私が。ベッドは2段でした。姉ったら、毎夜桃を食べて私の洋服ダンスに芯を投げちゃうんです。毎朝ママから私が叱られるんですけど。

F:よくいえるわね。あんた煙草吸っていたじゃない。最低ね。

C:姉さんだって、ずっと本読んでいて、動物といっしょに寝ていたわよ。

F:それは事実です。私は動物が大好きです。2匹犬を飼っています。

C:私はというと、ハツカネズミとネズミが大好きなんです。今は、ハムスターとインドフクロウを飼っています。

F:インドねえ、私はあんたの厳密なところが好きよ。

動物といえば、ドルレアック姉妹は、幼い時代に動物を飼った。ヴィニューズ通りのカトリーヌの家−(ロジェ・)ヴァディムが離婚の後彼女に残したアパート―と、ミュラ通りのフランソワーズの家―ちょうど1年前彼女がスターになってから初めて購入した―では、拾われて、集められて、甘やかされた動物たちがひっきりなしにぞろぞろうろうろしている。家族と友人たちは、外に投げ出されるという咎をうけようとしなければ、有無を言わさずそれらを受け入れなければならない。

F:家でそっと育てたハツカネズミを覚えているかな。ネコを、ネズミと遊ぶようにしつけたわ。

C:パパは、それらを片付けることを命じたわ。部屋にはとても多くの動物たちがいるのよ!

F:次に、同じ日、偶然ハツカネズミが凍え死にかかっていたわ。私たちとても悲しかったわ!

C:パパが死体を放り投げると思ったわ。でもあたしたちの悲しみを見て、ハツカネズミに心臓マッサージをして、蘇生させたんです。

F:あんたもわかっているだろうけど、両親を私が愛するのは、このことがあったから。生き物を苦しめることを親たちはできないから。

C:基本的には、私たちはごくまともな少女時代を過ごしました。父はモーリス・ドルレアックで喜劇俳優です。もまた舞台で活動していました。私たちにとって、他の家族のように仕事が関係しています。家では、仕事の話はしません。

F:そうね。私たちは演劇という職業を他の職業と同じだと、いつも思っていたのよ。演劇学校では、芝居を演じて生計を立てるという事実を変てこだと男の子たちが思っているらしいのがどうしてなのか、わかっていなかったのは私たちだけなんです。

C:それが、いまの仕事に私たちが抵抗がなく、幼年時代にいきなり映画関係で過ごした理由です。

F:私はいつだって舞台で活動したかったわ。そして、舞台で活動していました。「ジジ」を演じていて、私はコンセルヴァトワールの生徒だったわ。プロデューサーのフランシス・コスヌが「閉まった扉」での出演契約を私としたわ。彼がすでに、私の妹役の女の子を探していたので、カトリーヌのことを話したんです。コスヌは私に言いました。「妹のことを、ブリジット・バルドーが自分の妹の話をするように話すね」

C:ありがとう!

F:それは、私が彼に答えたときの言葉ね。

C:一言で言っちゃえば、私たちは「閉まった扉」で共演しました。それで私は仕事を始めたわけです。

F:妹は15歳半でした。まだ家を出ませんでした。子どものように取っ組み合いをしました。ヴァディムと暮らし始めてからそれは終わりました。ママは一度に10歳くらい老けちゃったわね。

C:ママの体調はいいわよ。

F:私は、2年の間あんたに期待したのよ。もっともあんたのことを絶対許さないって思っているわ!

C:大げさだわ。その後も会い続けたじゃない。

F:ええ、たまにあんた家に帰ってきたじゃない。お互い訪ね合うようになったわ。もう同じことにはならないわね。

2年間ほとんど仲たがいがつづき、たやすく水に流すわけにいかなかった。映画がそこでどうこうというわけではなかった。そのころはまだだった。そのあとですぐに映画がかかわりあうようになってくる。 

C:「閉じた扉」で、私をとても気に入っていた美容師さんがいたんです。その美容師さんの夫も美容師で、カルブッチア氏(訳者注:Adry De Carbuccia のことか? メル・ファーラーとの作品は確認できませんでした)の奥さんの髪も担当していました。カルブッチア氏はメル・ファーラーとの作品の準備をしていたんです。話の成り行きで、メル・ファーラーは私が話題になっていることを耳にしました。私を呼びつけました。私の髪の毛が褐色で短かったから、奥さんであるオードリー・ヘプバーンに私が似ていると感じたのね、「L'homme a femmes」の撮影を私と契約したのです。そうなると私の経歴は、いくらかは髪の毛のおかげかな。「L'homme a femmes」で私を見た後、ジャック・ドゥミが「シェルブールの雨傘」を撮影しようと私に持ちかけたのです。 

F:一方私はというと、その間、何もしていなかったんです。妹のおかげでものすごく不幸でした。彼女は映画への関心を持たなかったのに、彼女への出演依頼はあったんですよ。 

C:そうです、私はすっかり映画への関心を失いました。映画の仕事への興味を失ったんです。 

F:それで私は、映画の仕事をしたくて、したい願望ではちきれそうでしたが、依頼がなかったんです。死んだようなものでした。 

C:それは奇妙ね。今日では、私は全面的に見解を変えたわ。もし私のキャリアが突然ストップしたら、それは惨憺たるもので、立ち直れないわね。 

F:それは私にとってもね! それは大失敗で、ぞっとするし、言い表すことすらもできないわね。おわかりでしょうけど、私はスターになりたいんです。笑わないでください、スターになりたいし、トップになりたいし、さもなければつまらないものになってしまいます。自分の判断では、まだ十分に高いところまで行っていません。生まれ性からして満足しにくいし、いま頂点になっていると到達しているとしても、私はまだ低い段階にあると思ったんです。 私が現在頂点だと想像しているところに到達したとしても、それはまだまだ低いのだと思うでしょうね。

C:私はというと、世界で2番目にすばらしい女優になりたいと思います。たとえば、常に獲得できる地位にいなければいけません。努力を怠りません。 

そんなに悪くもない。栄光への熱烈な歩みの中で、彼女らの無分別な真似をしでかす心配はとても大きいので、彼女らは専門家に相談するより、自分たちの本能に従うことにしたのだ。彼女らは、人の意見を求めることなしに映画を選び、何よりも姉妹のそれを求めない。そんなにひどくうまくいかないことがないので、それゆえカトリーヌ・ドヌーヴは、「シェルブールの雨傘」の際の3倍の金額である300万旧フランのギャラを得て、いまは8倍以上になっている。フランソワーズ・ドルレアックのギャラの上昇はより大きなものだった。彼女は今日では、妹と同じギャラである。

 

(つづく)

翻訳者注:フランソワーズが10本、カトリーヌが14本出演したという発言がありますが、IMDbによれば、「ロシュフォールの恋人たち」出演より前に、フランソワーズは18本、カトリーヌは19本の出演作品があります。あるいは、端役やテレビ出演などは除いて、自分が出演したと認識している作品のみカウントしているのかもしれません。


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