ジョン・モルダー=ブラウン(John Moulder-Brown)は、日本ではおもに1970年代前半の数年間人気のあった俳優です。実は彼は、私が好きなアニセー・アルヴィナと同い年の1953年生まれです。彼のほうが芸能活動開始は早かったのですが、残念ながら日本での人気がフェイドアウトしてしまったところまで似てしまいました。
なお、このブログでもおなじみのビョルン・アンドレセンは1955年生まれです。モルダー=ブラウンとほぼ同い年なのですね。モルダー=ブラウン自身ヴィスコンティ作品に出演しています(後述)。
実はつい先日、ジョン・モルダー=ブラウンは60回目の誕生日をむかえたのです。というわけで、私が見つけることのできた近影とわかった範囲での近況をお伝えしたいと思います。また、上の写真は1979年撮影ですので、彼が25〜26歳の時のものです。
なお、以下彼の出演作品について書きますが、日本で公開された作品中心に紹介させていただくことをご了解ください。
ジョン・モルダー=ブラウンは、1953年6月3日、英国ロンドンに生まれました。幼いころ両親が離婚し、父親に育てられます。5歳ごろから演技を学びはじめ、IMDbによると早くも58年には5本も映画に出ています。ただしクレジットされているのは1本だけです。ほかはその他大勢の役だったのでしょう。また、1959年には、シモーニュ・シニョレが出演した「年上の女」(シニョレはこの作品で、アカデミー賞とカンヌ映画祭の主演女優賞を獲得)にも出演しています。ただしこれもクレジットはされていません。
日本で公開された映画では、「ベケット」(1964 クレジットなし)「テレマークの要塞」(1965 クレジットなし)「心を繋ぐ6ペンス」(1967 クレジットなし)などに出演しています。68年ごろからテレビドラマ、テレビ映画に起用されるようになり、そして1968年、米国NBC製作のテレビドラマ「アルプスの少女ハイジ」(題名は、allcinemaより)にペーター役で出演します。それなりの大きな作品での大きな役は、これが初めてでしょうか。なお、このドラマは日本でもテレビ放映はされたとのこと。ハイジを演じたのは、ブレイク・エドワーズの娘(ってことは、ジュリー・アンドリュースの娘(血はつながっていませんが))であるジェニファー・エドワーズ、ほかにもマイケル・レッドグレイヴ(ヴァネッサ、コリン、リンの父親)やマクシミリアン・シェル、ジーン・シモンズが出演しているなかなか面白そうなドラマです。米国ではDVDが出ているから取り寄せてみるか。英語版wikipediaによると、現在でも定期的に放送されているようで、評価は高いようですね。
そしてついに、1969年にスペインで製作された映画「象牙色のアイドル」に主役級で出演します。映画の内容は
>根暗な少年ルイスは女校長である母親に女生徒達と顔を合わせることを禁じられている。だが彼はひそかに少女イザベルと密会していた。そんな中、彼女が何者かに殺害された。やがて他の娘たちも次々と姿を消して行き……。古びた寄宿学校を舞台に展開するサスペンス・ホラー。
だそうです。日本で公開されたのは72年ですので、たぶんモルダー=ブラウン人気にあやかって公開されたのだと思われます。なにしろこの映画の宣伝文句が
>〈初恋〉のジョン・モルダー・ブラウンが美しい少女をコレクションする!
ですから。「早春」の公開直後に続けざまに公開されています。
写真は70年の彼。
さらに70年トゥルゲーネフ原作の「初恋」に当時新進女優だったドミニク・サンダとともに主演します。実はこの映画は、マクシミリアン・シェルが監督・脚本・出演をしていまして、たぶん上記「アルプスの少女ハイジ」で共演したモルダー=ブラウンを気に入って起用したのでしょう。
同じ年、彼は「早春」に出演して、年上の女性(ジェーン・アッシャー)を恋する少年を演じました。この作品が彼の代表作になりました。たぶんこの映画に出演していなければ、彼は今ほどにも記憶に残る役者ではなかったでしょう。
写真は、「早春」撮影時のスナップとのこと。
「初恋」の日本公開が71年12月末で、翌年8月に「吸血鬼サーカス団」が公開されています。そしてこの後、モルダー=ブラウンの出演作品が日本公開されることは長きにわたってありませんでした。詳しくはわかりませんが、たぶん日本でのモルダー=ブラウンの人気はこの72年に最高潮に達し、その後は彼についてあまり消息が伝わらずにやきもきしたファンも多かったのではないでしょうか。いまならネットなどでいろいろな情報を収集できる時代ですが、当時はたぶん映画雑誌以外に情報を得る手段はあまりなかったと思いますので、もどかしい想いをしたのではないかと。
写真は、1973年に日本の映画雑誌で発表されたものとのこと。「スクリーン」か「ロードショー」でしょうが、出典は未確認です。
モルダー=ブラウンは、1972年にヴィスコンティの「ルードヴィヒ」に出演しています。彼の役は、主人公バイエルン国王ルードヴィヒ2世(ヘルムート・バーガーが演じました)の弟でルードヴィヒ2世後のバイエルン国王であるオットー1世です。世間で知名度の高い映画の出演は、これが最後でしょう。
ついでながら「ルードヴィヒ」は、前出のバーガーのほかにも、ロミー・シュナイダーやゲルト・フレーベのようなドイツ語圏俳優のほかに、モルダー=ブラウンにトレヴァー・ハワード(ワグナーを演じました)らの英国の俳優、シルヴァーナ・マンガーノなどのイタリア人俳優など、まさに欧州中から俳優を集めたすさまじい映画です。もともとヴィスコンティという人は、米国人のバート・ランカスターを主演に起用するなど、幅広いキャスティングをする人でした。
1982年の彼。
1984年の彼です。
その後彼の出演作品が日本で公開されることもありませんでしたが(「ルードヴィヒ」自体日本で公開されたのは1980年ですからずっと後です)、彼自身は主に英国のテレビドラマに出演していました。日本では、「ミス・マープル」などが放映されています(ソフトも発売されています。彼の出演したエピソードは、「スリーピング・マーダー」)。その出演も、1992年で途絶えました。
なお、彼自身は1997年に英国サセックスで演劇学校みたいなものを設立したのですが、これのHPには現在彼の名前を確認できません。運営その他から手を引いたのか、あえて名前を出していないのかはわかりません。wikipediaにも記述があるので、興味のある方はお読みになってください。
ところで彼自身は、最近映画出演を再開しています。なにかの心境の変化があったんですかね。こちらは「Young Alexander the Great 」 より。
イギリス映画『早春 DEEP END』/リマスター版☆公開記念インタビュー
またこちらは、2011年の彼の動画です。上の写真ではなんともわかりませんが、この動画を見た限りでは、彼ぜんぜん顔が変わっていませんね。ただし大人の役を演じるという点では、やや線が細いというところもあったかもしれません。あえて書いてしまえば、美男子すぎて今の時代には対応できないというか、あまりお呼びではないところもあったのでしょう。
こちらの写真は、上の動画と前後しての時期の撮影かと思われます。
こちらは2011年の写真、ジェーン・アッシャーと。彼は結婚指輪をしていませんね。モルダー=ブラウンが独身かどうかは未確認です。
そして彼は、「Summer Night, Winter Moon」「Margery Booth: The Spy in the Eagle's Nest 」という映画にも出演するそうです。日本公開は望み薄かもしれませんが、いちおう紹介しておきます。
モルダー=ブラウン自身は、現在第一線で活躍している俳優とはいいかねますが、しかしそれなりにがんばっていますね。彼の演じる姿を日本で見るのはなかなか難しいところもありますが、今後も彼の近況や近影を私なりに追っていきたいと思います。