メディアもいろいろ報じていたので、読者の皆さまもご存知であろう記事を。
>代ゼミ27校中20校閉鎖へ、希望退職者募る
スポーツ報知 8月24日(日)7時4分配信
大手予備校の代々木ゼミナールは23日、全国27校の7割超に当たる20校を、来春にも閉鎖する方針を明らかにした。少子化による受験生減少などが背景とみられる。
代ゼミによると、閉鎖の対象は、仙台、大宮(埼玉県)、横浜、京都、神戸、小倉(福岡県)、熊本など。20日、講師らに理事長の方針が伝えられた。今後、講師陣と交渉して残る7校に来春から出向させる予定。職員には希望退職者を募るが、対象や人数は明らかにしていない。
閉鎖する20校では来春以降の生徒募集をせず授業を打ち切り、所属する高校1、2年の塾生にはグループの進学塾を勧めていく。東京の本部校と造形学校(芸術系)、札幌、新潟、名古屋、大阪南、福岡の各校を残す。
代ゼミは1957年に創立。駿台予備学校、河合塾と並び「3大予備校」といわれた。学校法人高宮学園(東京都渋谷区)が運営し、全国17都道府県の大都市に校舎を展開している。代ゼミの広報担当者は「少子化だけが原因ではなく、コンパクトな拠点を増やし、生徒が通いやすくなることを目指す」と話した。生徒や保護者には、9月以降に順次説明していくとしている。
最終更新:8月24日(日)7時4分
これは私もなんとなく、けっこう予備校は苦しいんじゃないかなくらいの考えでいたのですが、こちらの記事はちょっと驚きました。
>代ゼミ、センター試験の自己採点集計も中止へ
読売新聞 8月24日(日)8時44分配信
全国の拠点の大幅な閉鎖方針を打ち出した大手予備校「代々木ゼミナール」(本部・東京都渋谷区)が全国模擬試験を来年度から廃止することが23日、わかった。
来年1月の大学入試センター試験の自己採点結果集計・分析は実施しない。模試の分析データは受験生や高校の進路指導などでも参考にされており、影響は大きい。
代ゼミ広報企画室によると、全国27校のうち、来年3月末で閉鎖するのは、仙台や横浜、京都、熊本など20校。本部校と、札幌、新潟、名古屋、大阪南、福岡の各校、造形学校(東京)の計7校に集約するという。
4月以降は、「センター試験プレテスト」や「国公立2次・私大全国総合模試」などの全国模試を廃止。大学入試センター試験の自己採点結果を集計・分析し、志望大学の合格判定などを示す「センターリサーチ」は2013年度、全国で約42万人が参加したが、とりやめる。「東大入試プレ」など個別大学志願者向け模試は、存続の方向で検討している。
最終更新:8月24日(日)8時44分
えー、模擬試験業務からも撤退するんですかー、おまけにセンター試験の自己採点までも。これって半ば大学受験業務から撤退するに近いものがありませんかね。ってことは、来年以降代ゼミに通う予備校生(浪人生以外もふくむ)は、他社(他校)の模擬試験をするんですかね。あるいは、通っている生徒だけは、独自のものをするのかな。
けっこうこれって重大な話ですよね。つまりは、模擬試験とかセンター試験の自己採点結果集計・分析って、やればかなりの赤字なんですかね。その事情に私は詳しくありませんが、あるいは代ゼミって、でかい校舎をつくっちゃったのがまずかったのかなとかつまらんことを考えます。真相は知りませんが、内実はそうとうにやばいのかも。
読者の中にも、かつて代ゼミに通ったことのある方もいらっしゃるかもしれません。私は、せいぜい模擬試験を受けたことがあるくらいの付き合いしかありませんが、しかし受験生をしていたころはいろいろ耳にしていたわけで、ずいぶん時代が変わったんだなと思います。
それにしても、なぜこのようなことになってしまったのか。もちろんそれは、代ゼミの拡大路線とかが時代にそぐわなかった(3大予備校と呼ばれる駿台予備校とか河合塾は、代ゼミほどの拡大−地方への進出はしていない)とか、少子化が最大の理由でしょうが、少子化といいうのは統計を見れば予想できる話で、昨今の受験生の気質の変化とか、大学受験における志望校選択の変化、といったことをやはり注目すべきでしょう。こちらの記事の指摘を引用すれば・・・。
><代ゼミ>25校舎整理で7拠点に集約へ 少子化に伴い
毎日新聞 8月23日(土)2時31分配信
(前略)
少子化に伴う受験人口の減少が理由とみられる。代ゼミ広報担当者は「情報を把握していないので確認できない」としているが、少子化が進む中、大学とともに予備校や塾の受験産業も大きな転換点に立たされている。
(中略)
関係者によると、代ゼミは今月、講師らに対し、受験人口の減少や受験生の現役志向を受け、全国的な校舎展開が困難になったと説明。
(中略)
大学志願者数は、18歳人口が205万人となった1992年に92万人とピークを迎え、その後年々減少。2012年には66万人になり、20年で26万人も減った。今春入試では4年制私立大の46%が定員割れするなど厳しい状況が続いている。
上にも書いたように、受験人口減少は予想できることとして、
>受験生の現役志向
はたしかにだいぶ進んでいるように思います。また、こちらの記事では触れられていませんが、国立大学志向もあるでしょう。理科系志向もあるかも。特に代ゼミなんてのは、私立文系の大学受験生を対象にして運営をしていたところがあり、それらの学生が現役で受かるところを受験して合格・入学するようになると、代ゼミはかなり苦しくなるでしょう。
そう考えると、最近「受験地獄」なんて言葉も聞かなくなったよね(苦笑)。昔ほど○○大学がどうした、××大学がどうしたなんて言う人も多くなくなったし、小中の入試(「お受験」系といわれる入試)には一生懸命になっても、大学入試にはかつてほど目の色を変える人(親も子も)が少なくなりましたよね。いいとか悪いとかはともかく、社会がそのように変化しているということです。
で、上の記事に
>今春入試では4年制私立大の46%が定員割れするなど厳しい状況が続いている。
とありまして、私の親戚に、40過ぎで某私立大学で准教授をしている人物がいるのですが、彼(男性です)も、その大学も経営状態が芳しくないようで、事務職員が大幅に減らされて、教員なのに事務仕事もさせられているみたいな話をしていました(というのは、本人から聞いたのではなく、間接的な話ですが)。そもそもポストも任期制で、契約が更新されるかどうかは疑わしいみたいな話もあります。これではおちおち大学教員もやっていられません。一定レベルの私大ならともかく、そんなに知名度の高いわけでもない大学の教員は、労働条件がさほどいいわけではない場合があり、また仕事の内容も余裕がない場合もあるようです。親戚が教員をやっている某私立大学が定員割れをしているかどうかは確認していませんが、たぶんそうである可能性が高いし、そうでなくてもそんなに受験生がわんさと押しかける大学ではないと思います。
そうなるとこれからの浪人生を相手にする予備校というのは、現役で入るつもりが入り損ねた受験生か、何が何でも△△大学(あるいはそれ以上の大学)に行きたいという、昔ながらのコア(って言っていいのかどうか)な受験生を対象にすることになり、その絶対数はどんどん先細りする、っていうことになりそうですね。受験生の絶対数の減少は仕方ないとして、浪人しても何が何でも・・・という受験生の割合が減るというのは、予備校としてはかなり厳しいし、それは同時に日本の学歴社会がだいぶ空洞化、形骸化、あるいは○○大学入学、なんてことにこれまで以上に社会が興味関心を失ってくる、ということかもしれません。そして受かった受験生も、たぶん昔ほどは自分の合格、入学を自慢したり誇りに思わなくなっているのかもしれませんね。他人が大したことだと考えなければ、自分だって大したことだと考えはしませんから、それはある意味当たり前な話。それは善悪の問題ではありませんが、日本の社会の変化の1つの流れかもしれませんね。岸信介は優秀な人間だったのでしょうが、安倍晋三は岸など比較にならないくらい成績も悪いし頭も悪い男ですが、それでも首相に復活したというのは、その理由の1つには、昔ほど頭の良さとか学歴に価値が見出されていないということもあるでしょう。
いずれにせよ、受験産業というものの1つの大きな曲がり角が、まさに今年から来年にかけて起きるということです。私なりに今後を見守っていきたいと思います。