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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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沖縄戦の番組を見て、「ペリリュー・沖縄戦記」を再読しようと思った(6月24日発表)

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沖縄戦というのは、このようにすれば非戦闘員(民間人、住民)に甚大な被害、膨大な死者が出る、と容易に予想できることを方端から実行した戦闘だったと思います。

もちろん初めから、沖縄に上陸した米軍に勝てるわけもありませんが、普通なら首里が陥落した時点でどこの軍隊も降伏します。それ以上戦っても、敵味方双方無用な戦死傷者を出すだけだし、しかも南部に下がって住民を巻き込みながら戦闘を続けた。しかも司令官は、Wikipediaの沖縄戦の記事の文言を借りれば、

>この戦闘継続の原因は、牛島中将の最後の命令が「最後の一兵まで戦え」として降伏を許さないものであったことや

というわけで、これでは甚大な被害が戦闘員だけでなく民間人にも生じるのは当たり前です。6月14日にNHKで、「沖縄戦 全記録」という番組が放送されました。HPでは、

>日本軍は沖縄戦を、本土進攻までの“時間稼ぎ”と考えていた。しかし戦争も末期、兵力不足は深刻で、女性や子どもまでも戦場に動員。軍民が“一体”となった状態で持久戦を行った結果、住民の犠牲が激増していた。一方、沖縄戦を短期間で決着させようとしていたアメリカ軍。住民の犠牲を極力避ける方針を掲げていたにもかかわらず、実際に戦闘が始まると、ゲリラ的戦いを繰り広げる日本軍に手を焼き、攻撃は無差別に。地形が変わるほどの砲弾の雨を降らせ、日本兵と住民が混在する洞窟を焼き尽くすなど、戦いは凄惨なものになっていった。

と解説しており、番組でも、首里陥落以降に南部で膨大な住民が死亡したことが取り上げられています。

なお、NHKの番組のHPでは、

>なぜ、9万人超もの住民の命が奪われるに至ったのかー。

とありますが、私がいろいろ勉強させていただいているinti-solさんは

>引用記事には「日米合わせて20万人以上、県民の4人に1人が命を落とした」とあります。これは、沖縄戦の犠牲者数についての一応の公式見解である、日本側約18万8千人、米軍側約1万4千人という数字に基づいています。このうち、民間人の犠牲者は9万4千人とされています。
ただし、実際の犠牲者数は、この数字よりは大きい可能性が高いようです。軍人の犠牲者数については、日米ともに比較的正確(誤差はあるはずですが、何万もの差ではない)と推定されています。問題は民間人の犠牲者数です。民間人の犠牲者数は、じつは調査されていません。1944年と46年の人口統計の数字の差を基にして、そこから県外への疎開者数を引いて、先島諸島での犠牲者数(これも、沖縄本島の犠牲者数の1割という、きわめてアバウトな推定)を足してはじき出したのが民間人の犠牲者数です。つまり、簡単に言えば、人口統計で減った分が犠牲者だ、というわけです。
ところが、ここにいくつかの問題があります。まず、1944年の人口統計には、軍人軍属は含まれていないのに対して、1946年の統計には復員した元軍人軍属は含まれています。島外への疎開者は、全員が生きている前提での計算ですが、実際は対馬丸撃沈など、島外疎開者から多くの犠牲者が出ています。また、1944年時点では沖縄に在住していなかったが、46年には在住していた人もある程度の人数存在します。戦前、サイパンなど南洋諸島には多くの沖縄住民が移民していましたが、その多くは1944年には沖縄におらず、46年には帰ってきていました。島外に出征していた沖縄出身の元軍人も同様です。
さらにいえば、1946年の人口統計は数字の水増しがあった可能性が指摘されています。食糧の配給が、人口統計の数字によって決められたため、人口を多く報告するほうが多くの食料がもらえたためです。そしてもちろん、この間2年間の人口の自然増というものもあります。
これらの要素を加味すると、44年と46年の人口統計の差より、実際の犠牲者数のほうがはるかに多い可能性が高いのです。民間人の犠牲者は15万人以上ではないか、という研究者もいます。

1944年の時点での沖縄の人口は約49万人ですから、民間人の犠牲者を9万4千人としても、人口の1/5近く、沖縄出身の軍人軍属2万8千人を加えれば、引用記事にあるように、人口の1/4が亡くなっています。しかし、もし民間人の犠牲者を15万人とすれば、軍人2万8千人とあわせて18万人近く、全人口の1/3以上が犠牲になったことになります。

書かれています。たった3か月弱の戦闘でこの犠牲者数ですから、そのすさまじさには声を失います。

それで読者の皆さまに、ぜひおすすめしたい本があります。この本です。

ペリリュー・沖縄戦記 (講談社学術文庫)

著者のユージン・スレッジは、海兵隊員として沖縄戦に参加しています。本来彼は、全線で戦わなくてもいい立場だったようですが、あえて一兵卒として志願して、ペリリュー島と沖縄で戦ったわけです。「プラトーン」の主人公のような趣があります。

内容は、すさまじいの一言に尽きます。米軍でこれなのだから、日本軍やましてや民間人の地獄の状況は推して知るべしです。細かく解説する必要はないでしょうから、私のこの記述を読んでこの本にご興味をお持ちになったら、是非お読みになってください。

私がこの本を読んだのは、ずいぶん以前のことだと記憶しますが、今年は戦後70年でもありますので、また再読したいと思います。

なお、この記事は、inti-solさんの上に引用した記事に大きく依存しています。いつもながらありがとうございます。またこの記事は、6月25日の日付ですが、24日に発表することをお許しください。 


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