過日読んだ「おいおい」の記事を。
>聴導犬:同伴、入店拒否 梅田・阪急百貨店内2飲食店
毎日新聞 2015年10月09日 大阪夕刊
阪急百貨店梅田本店(大阪市北区)内の飲食店2店で今月3日、聴覚障害者の女性(46)が聴導犬の同伴入店を拒まれていたことが分かった。女性は梅田本店であった補助犬啓発イベントに参加した直後だった。身体障害者補助犬法は飲食店などでの補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)受け入れを義務づけるが、従業員が理解していなかったという。阪急百貨店側は再発を防ぎたいとしている。
女性側と阪急百貨店を傘下に置く「エイチ・ツー・オー リテイリング」によると、女性は厚生労働省主催の補助犬啓発イベントに参加し、終了後、聴導犬を連れてNPO法人「日本補助犬情報センター」の橋爪智子事務局長らと計4人で喫茶店に入ろうとしたが、従業員に聴導犬の同伴を拒まれた。補助犬法を説明しても受け入れられなかったという。
その後、別の飲食店に行ったが、ここでも従業員に拒否された。百貨店の社員が従業員に説明したが聞き入れてもらえず、3軒目の喫茶店でようやく入店できた。女性は「イベントで補助犬の同伴の受け入れを訴えた後だけにショックだった」と話している。
阪急百貨店は補助犬法成立(2002年)以前の1999年に介助犬の受け入れを始め、補助犬受け入れを示すシールを店内に張るなど、先進的に取り組んでいる。女性に「補助犬法について周知徹底できず申し訳ない」と謝罪し、ホームページにおわびを掲載、グループ全店に再発防止を通知した。
聴導犬の入店を拒んだ店側は毎日新聞の取材に、従業員が動物の入店をだめだと思い込んでいたと説明した。いずれも「従業員への研修や指導を見直したい」としている。【釣田祐喜、田辺佑介】
よりによってそのようなイベントがあった日に、補助犬の入店を拒否しなくたっていいじゃんねえ。これまたひどい話です。
それで私が興味深く思ったくだりがこちら。
>百貨店の社員が従業員に説明したが聞き入れてもらえず
えー、大家の立場であり指揮監督権限があるといっていい百貨店の社員が店子の立場である店舗の従業員に説明しても、それでも拒否したんですかあ。それまた大胆というか、なんというか。
それで、こちらに、当事者がお書きになったさらなる詳細な内容が書かれていました。それによると
>「犬はダメです。阪急全店でダメなんです。」
一緒にいた日本補助犬情報センターの智子さんが、
「先ほどまで、すぐそこで啓発イベントをしていたんですよ。」
懸命に補助犬ガイドブックを開いて説明しようとすると、お店の人が頑なに拒否して、「結構です」と受け取らず、別のスタッフに相談に行きました。
更に智子さんがお店のカウンターまで行って説明し、阪急担当者の名刺を提示して、確認を依頼するが、それも拒否。
あげくの果てに
「通路に居るんですよね。だったら良いですよ。」と・・・。
唖然とした私は何も言えませんでした。
(中略)
仕方ないので、隣のクレープ屋さんに行ったのですが、
そこも拒否。
「ダメ!」(店長に確認しても)「たぶんダメです!」
私は聴導犬レオンをお店のカウンターまで行こうとしたのですが、軽蔑な目で見られました。
そこで智子さんが、阪急百貨店のイベント担当者に電話で連絡し、すぐ飛んできてクレープ屋に説得してくれたのですが、
それでも
「盲導犬も断りました」
と頑なに拒否。びっくりしました。。。
同じ阪急百貨店でも各店舗は阪急から部屋を借りているテナント。
そこに問題があるのは事実。同じ施設内でも全てのお店の末端に伝わっていないのだ。。。
なんか様子が想像できますね。相当けんもほろろな態度で拒否したんじゃないんですかね。
いまどきコンビニにだって「ペットはお断り、ただし補助犬はOK」という趣旨の掲示がありますけどね。断った店員だって、そういうことを知らないわけでもないでしょうに。
こちらの記事によると
>入店を断られた時、百貨店の担当者も当事者の女性とともに涙ながらに説得にあたったそうです。
とあります。当事者はもちろんですが、百貨店の担当者が涙ながらにというのはどうもなあという気はします。百貨店の担当からそういわれれば、本来店舗の(ことによったらアルバイトの)店員が拒否できるような性質のことじゃないはずですが、たぶんこの店員は知識もなかったし、そのような事態に対応する権限もなかったのだろうとは思います。でもこの件で、この人(ことによったら)クビになったのかもという気はします。少なくとも責任者からは相当厳しい注意があったはず。自分の保身のために、かえって自分の立場を悪くするというのはありがちな話ですが、それもどうかです。まあ確かに人間心理として、じぶんより数段立場が上な百貨店社員の言葉よりも、日々接している自分の直属の上司である店舗の責任者の方が、この拒否した店員にとっては重大だったのでしょうけどね。
ただし補助犬の入店拒否というのは、別に珍しいことではありません。だいぶましになったでしょうが、日常茶飯事なのが現実です。では念のため法律を参照しましょう。「身体障害者補助犬法」です。
>(不特定かつ多数の者が利用する施設における身体障害者補助犬の同伴)
第九条 前二条に定めるもののほか、不特定かつ多数の者が利用する施設を管理する者は、当該施設を身体障害者が利用する場合において身体障害者補助犬を同伴することを拒んではならない。ただし、身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りでない。 疑義が生じるとすれば、 >ただし、身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合は、この限りでない。 でしょうが、しかし記事を読んだ限りでは、この件で >身体障害者補助犬の同伴により当該施設に著しい損害が発生し、又は当該施設を利用する者が著しい損害を受けるおそれがある場合その他のやむを得ない理由がある場合 というのは該当しないんじゃないんですかね。もっともこの件については、実は・・・という可能性が全くないとは私もいいませんが、まあでも該当はしないでしょうね。 ただ今回の件は、阪急百貨店側が誠実に対応してくれたから騒ぎになったという側面もあります。中小のところや、デタラメなところでは、まともに話も聞いてはくれないでしょう。今回の店の対応と同じです。そういう意味では、やはりいろいろ考えさせられる事件です。 なお都合により、この記事は12日発表ですが、14日の日付とします。