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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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言っていることが事実と全然そぐわないじゃないかよ

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過日こんな報道がされました。産経新聞の記事より。

>2015.10.20 09:05

【中国GDP発表】低水準で日系企業の中国事業縮小、関連倒産に拍車 日本への影響じわり

 中国の7~9月期GDP成長率が7%を割り、日本企業の対中国輸出の縮小、チャイナリスク関連倒産の急増などが懸念される。19日の金融市場への影響は限定的だったが、中国失速による輸出、生産の停滞が長引けば好調な個人消費や設備投資に悪影響を及ぼし、国内景気の回復が遅れる恐れもある。

 GDPが公表された19日午前、外国為替市場では安全資産とされる円が一時的に売られるなど、世界の金融市場ではリスクオフ(回避)ムードがそれほど広がらなかった。

 「GDPが市場予想(6・8%)を上回ったため、安堵感が広がった」(みずほ証券の鈴木健吾氏)とみられる。菅義偉官房長官も19日の記者会見で「市場は織り込み済みだ」との見方を示した。しかし、各種統計をみると中国の9月の輸入は前年同月比20・4%も減少。日本からの輸入はマイナス幅が19・3%と10カ月連続の減少を記録した。

 企業実績にも影響は出始めている。9月29日には東証1部上場の中堅海運会社、第一中央汽船が民事再生法の適用を申請した。負債総額は約1196億円で東京商工リサーチによると今年最大。神戸製鋼所など業績予想を下方修正する企業も増えている。

 パナソニックは9月に北京のリチウムイオン電池工場を閉鎖した。日本企業の先陣を切って中国に進出し、約100事業所を抱える同社の中国事業も縮小を余儀なくされつつある。

 第一生命経済研究所の熊野英生氏は「中国の景気悪化が現地法人の販売減につながり、その販売減が日本からの輸出減に直結している」と分析している。大和総研の試算では、対中国輸出が半年間で1割減少すれば日本の名目GDPは5220億円減少する。9月の日銀企業短期経済観測調査(短観)では強気の設備投資意欲とは裏腹に3カ月先の景況感は大企業製造業が2ポイント悪化、大企業非製造業も6ポイントの大幅悪化を見込む。

 菅氏は会見で「市場を見ながら必要な対策は取る。国内の民間需要の押し上げで対外的な影響を受けにくくすることも大事だ」とも強調した。(藤原章裕)

こちらも。これはSankeiBizの記事です。内容の引用は省略しますが、タイトルを読めば記事の趣旨はわかるでしょう。

>中国減速、安倍政権に逆風 財政出動か追加緩和か…国内企業萎縮で模索

ね、読者の皆さんわかるでしょ。私が繰り返して書いているように、中国経済が良くないと日本は大変困るわけです。産経新聞ですら、経済部は相対的にはまともですから、中国経済の悪化を喜ぶようなアホな記事は書きにくいわけです。つまりこういうことが、私がくりかえし書く「経済のほうが政治よりよっぽど現実(実状)に正直だ」ということのわけです。

さて、最初の記事中 大和総研による

>大和総研の試算では、対中国輸出が半年間で1割減少すれば日本の名目GDPは5220億円減少する。

という見立てがありますが、大和総研というと、昨年こんな記事が発表されました。このブログでちょいちょい取り上げる「国家基本問題研究所」なる組織のHPより。

>2014.05.28 (水)

対中関係悪化しても日本経済へ甚大な影響ない 大和総研・熊谷氏の見通し

大和総研執行役員・チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は4月18日、国家基本問題研究所企画委員会で、ゲスト・スピーカーとして「中国経済の行方と日中関係」について語った。この中で、熊谷氏は、中国経済について短期的には楽観しているが、3年から5年の時間軸でみると「バブル崩壊」の可能性が強まるとの見方を明らかにした。

 また、熊谷氏は、日中関係悪化の場合の日本への影響について、自動車など一部の主要産業では悪影響があると思うが、マクロ経済の視点からは日本経済に甚大な打撃を与えるものではないとの見解を示した。(後略。太字化は引用者)

なんだよ、それって全然事実とそぐわないじゃん(笑、呆れ)。

といいますか、そもそも論として、

>自動車など一部の主要産業では悪影響があると思うが、マクロ経済の視点からは日本経済に甚大な打撃を与えるものではないとの見解

というのは、初めから話の前提がおかしいんじゃないのと思います。自動車産業に影響があれば、それは日本経済に大きなダメージがあるのは避けられないでしょう。なにを考えているんですかね、熊谷氏って。

熊谷氏という人物は、著書に

パッシング・チャイナ 日本と南アジアが直接つながる時代

というのがあるくらいなので、いわゆる「反中」とまでは言わずとも、中国よりその他の国に期待する人なのかもしれませんが(本を読んでいないので、どんな内容かは知りません)、いずれにせよどこが

>日本経済に甚大な打撃を与えるものではない

なんでしょうか。いや、氏が語ったのはあくまで

>日中関係悪化の場合の日本への影響

であって、

>中国減速

の場合は上の意見はあてはまらない、とでもいうんですかね。

>日中関係悪化の場合の日本への影響

ってのは輸出が不振になるという意味でしょうから、さすがにそんな話は通用しないと思いますが、いずれにせよ完全なデマじゃないですか。どうしようもないとはこのことです。

たぶんですが、熊谷氏は、顧客(国家基本問題研究所、以下「国基研」と略称)が喜びそうな話をしただけなんでしょうね(笑)。つまりは客観的事実や予想より、顧客の願望を優先させたのでしょう。呆れたエコノミストです。あてにならないにもほどがあります。こんな与太を堂々と外に発表する国基研というところも、これまたあてにならないにも、どうしようもないにもほどがあります。

それにしてもこういう馬鹿も休み休み言えというレベルの話を堂々と講演する(もちろんお金はもらっているわけです)なんて、熊谷氏も国基研を馬鹿にしているよね(笑)。彼にとっては、国基研なんて金づるとしか思っていないのでしょう。しかし熊谷氏って、大和総研のヒラ研究員じゃなくて、執行役員を務めているくらいで、いわば幹部ですからねえ。またこの国基研との会合では、記事の「(後略)」とした部分によると

>熊谷氏には、同総研の川村雄介副理事長も同行、討論に参加した。

とある。つまりは、熊谷氏が自分だけの判断でそのような発言をしたわけでなく、会社ぐるみでそのような対応をとったってことですよね。そういうことであれば、大和総研というところもあてにならんところです。大和総研も国基研もシンクタンクだそうですから(後者はシンクタンクなんて代物ではなく、実態は単なる右翼団体ですが)、そういうものを自称するのならもう少しまともな対応をしてほしいと思います。

なおこの記事は、bogus-simotukareさんの記事を参考にしました。感謝を申し上げます。


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