たいへん痛ましい記事を読みました。
>女子生徒が死亡、大宮高の強歩大会中 以前も意識失う…小雨の中決行
埼玉新聞 10月27日(火)21時10分配信
さいたま市大宮区の県立大宮高校(渡辺春美校長)が16日に開催した「強歩大会」で、2年生の女子生徒(17)がゴール手前で倒れ、搬送先の病院で死亡していたことが27日までに、県教育委員会などへの取材で分かった。県警によると病死という。
県教委や同校によると、女子は13キロのコースで、さいたま市西区の西遊馬公園から荒川沿いなどを歩いた。女子生徒は16日午前10時半にスタート、同11時45分ごろ、ゴール手前約1・6キロの地点で倒れたという。近くにいた生徒が教諭を呼び、教諭が119番と自動体外式除細動器(AED)による蘇生措置を続け、救急に引き継いだという。
大会は雨天中止の予定だったが、同校は当日朝の天気予報を参考に実施を判断。大会開始の時点で、小雨が降っていたが決行した。
女子生徒は9月中旬、体育の授業で30分間走った際、意識を失い倒れたことがあった。翌日訪れた病院の診断で異常はなかった。
事故を受け、県教委は21日、体育の授業や学校行事での事故防止に万全を期すよう、県内の全県立高校に文書を通知した。
渡辺校長は「学校管理下で重大な事故を招き、亡くなられた生徒のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご両親、ご家族に心からお悔やみ申し上げます。再発防止に全力で取り組みます」とコメントした。
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>高2女子、強歩大会で死亡 ゴール直前で心肺停止
朝日新聞デジタル 10月27日(火)12時40分配信
埼玉県立大宮高校(さいたま市大宮区)で今月行われた「強歩大会」に参加した2年の女子生徒がゴール前で倒れ、その後死亡していたことがわかった。同県警によると、死因は病死。同校は「大会との因果関係は不明」としているが、事故を受けて大会のあり方を見直す方針だ。
同校によると、強歩大会は男子は16・5キロを3時間以内、女子は13キロを2時間半以内で、走ったり歩いたりしながらゴールをめざす恒例行事。今月16日午前10時半にスタートし、女子生徒は同11時45分ごろ、ゴール直前で倒れた。近くにいた教諭が119番通報し、心肺停止の状態で同県川越市内の病院に搬送され、17日夜に死亡が確認された。
雨天中止の行事だが、当日は小雨が降る中で決行したという。浅賀敏行教頭は取材に対し、「大会を中止していれば防げたかもしれない」と答えた。
女子生徒は9月14日の体育の授業で、強歩の練習中に倒れていたが、医師の診断で異常はないとされ、大会に参加したという。
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朝日新聞社
一読して、学校側に落ち度があるかどうかはなんとも言いかねますが、しかし学校側の人が
>大会を中止していれば防げたかもしれない
と言っているのなら、やはり相当過酷だったのでしょうね。すると
>9月14日の体育の授業で、強歩の練習中に倒れていた
女子生徒が参加するのが妥当かと考えるとどうもなあです。医者の見立てでは大丈夫だったとのことですが、こういった行事の参加は見送るべきだったのでしょう。
また
>大会は雨天中止の予定だったが、同校は当日朝の天気予報を参考に実施を判断。大会開始の時点で、小雨が降っていたが決行した。
というのはどうかです。雨が降っていたらこの種の学校行事は中止すべきでしょう。雨で屋外を走ったら危険でしょう。
そう考えると、この生徒がどのような考えでこの行事に参加したのか気になります。本人が全く気にならないで参加したというのなら正直どうしようもない部分もあるかもですが(親や友だちなどはどう考えていたのかという気はします)、もし本人が気がすすまないところがあったり不安があったとしたら、これもどうもなあです。家族・友だちその他周囲の人間に、なにかの気持ちを伝えてはいなかったか、伝えていなかったとしても内面はどうだったか。内面については他人は伺えませんのでどうしようもない部分はありますが、いずれにせよ非常に残念な事件です。
それで過日の組み体操の件も同じですが、けっきょく学校体育は強制参加です。それがいろいろ問題になります。
組み体操で事故を起こした大阪府八尾市の中学校では、過去2年骨折を出す事故が発生しています。そういった情報が保護者に開示されていなかったのかどうか知識がありませんが、されていなかったとしても、全く情報がないというわけでもないでしょう。仮に強い不安を感じた親がいたとして、「危険すぎる。うちの子どもを参加させるわけにはいかない。組み体操自体をやめてほしい」と学校側に申し入れることは困難ですよね。なにしろこれだけ騒ぎになってすら校長は、来年の組み体操の実施を
>今後の実施について検討する
と言っているくらいですから。神戸市の小学校では
>組み体操は市内の小学校で164校中162校、中学校では84校中65校が実施。市内では、中止などの動きはほとんどなく、力のこもった演技を“看板”にしている学校が多い。
くらいで、そんなことを言っても無駄になる可能性が高いし、子どもがいじめられる可能性もある。なにしろ大阪教育大学付属池田小学校の教諭が
>55人規模の大きなピラミッドにおいて、最も大きな負担のかかる子どもたちは、外からはその姿を見ることはできません。それでも、その子どもたちは、たとえ膝に小石が食い込んでも、歯を食いしばりピラミッドの完成を願っています。そんな彼、彼女らを信頼しているからこそ、最後の一人は、勇気を出してピラミッドの頂上で両手を広げることができるのです。
もちろん最初からそんな信頼関係が存在しているわけではありません。何度も失敗を重ねながら、何度も練習を積んでいくからこそ、その信頼が生まれていくのです。保護者たちも、子どもたちのその努力を知っているからこそ、感動してくれるのです。そして、私たち教員も、その過程を知っているからこそ、ピラミッドが完成したとき目に涙を浮かべるのです
とまで書いているくらいなのだから、阻止は現実には困難でしょう。つまりは強制参加になるわけです。それでケガをしたら目も当てられません。そしてそのような子どもはたくさんいるわけです。
で、今回も学校行事ですから、やっぱり(事実上)強制参加ですよね。出なかったら「なんで出ない」くらいのことを言われる。強制参加の運動行事で死亡したらこれまたお話にもなりません。どうしようもない。
マラソン大会などでも死亡者は時に出ます。タレントの松村邦洋氏も、心肺停止の重篤な状況になり、AEDで救命救急を受けたくらいです。しかしこういったものは成人の場合自分の意思で出るものですからまだいい。企業や大学の部活動などで参加が強制となっている人もいるかもですが、しかしそういった人たちはある程度運動に対応している人たちだからこれもまだいい。しかし高校もそうですが、義務教育の学校の生徒では運動能力は文字通り千差万別であって、はたして彼(女)らに一律に上の高校のような強度の高い運動をさせることが妥当か疑問です。とくにわざわざ雨(さすがに小雨でしょうが)の日にこのような催しを挙行しなくてもいいんじゃないんですかね。死ぬとまでは言わずとも、非常に身体に悪いと思います。
夏の高校野球での健康管理について、いろいろ問題となりますが、このような(原則)全生徒参加の運動行事で事故が起きるのはやはりなおさらまずいですよね。それでこの種のイベントは事実上強制参加です。本人嫌なのに強制的に参加して、それで後遺症の残るケガや最悪死んだりしたらお話にもなりません。
それにしてもこういうのって、好きな人はほんとに好きですからねえ・・・。記事ではさすがに
>事故を受けて大会のあり方を見直す方針だ。
とありますが、はたしてどうなることか。
それにしても、「ことなかれ主義」なら、組み体操とか(この高校のイベントについては、そこまで言っていいかやや躊躇するところもあります)は中止にしろよと私は思いますが、学校とか教育委員会とかの感覚はまた違うんでしょうね。彼(女)らにとっては、「ことなかれ主義」とは事故があっても組み体操を続行することのようですね。そうしたほうが教育委員会や地域や保護者その他からのあつれきが少ない(本当に少ないかは知りません)と考えているのでしょう。そのためであれば児童がケガをしても仕方ない(さすがに死んではまずいと思っているでしょうが)と考えているのでしょう。前の記事で印象に残った言葉を再引用すれば、
>ハイリスクでも感動を......
ということなのでしょう。なんとも惨憺たる光景です。
同日の追記:記事と直接関係ない話ですが(しかし組み体操の件は、inti-solさんの記事を読まなければ執筆しませんでした)、私がいろいろ勉強させていただいているinti-solさんのブログが100万アクセスを突破したとのこと。おめでとうございます。昨日(28日)遅くから本日日付が変わってすぐくらいに突破したようですね。inti-solさんからは、
>本当に少しずつ増えてきたアクセス数ですが、その増大に寄与した要素は二つあります。(中略)
もう一つは、常連コメンテーターのBill McCrearyさんです。Bill McCrearyさんのブログは、私のところの10倍もアクセス数が多い。そこで時々私の記事を紹介していただくことがあり、そうするとアクセス数が増えます。紹介していただくと増え、やがて減り、また紹介していただくと増え、やがて減り・・・・・・だんだん紹介していただいて増えたアクセス数が減らなくなってきました。
との過分なお言葉までいただきました。本当にありがとうございます。inti-solさんこれからもよろしくお願いします。