パリには、ずいぶん昔1度行っただけなのですが、今回のテロは、パリが非常に危険な状況であることをあらためて認識させられました。なにしろ1年に2回、大規模なテロが起きたのです。ここ最近、いわゆる先進国、あるいはそれに準ずる国で、このようにテロが続けざまに起きた事例は、イスラエル以外は、いやイスラエルだって最近は、このような大規模なテロは起きていないんじゃないんですかね。ロシアでチェチェンがらみのテロが頻発したことがありましたが、それ以来かな。そうでなくても非常に危険です。
今年1月のシャルリー・エブドの事件などと比較しても、規模や死傷者数の違いもさることながら、私が危険に思うのは、シャルリー・エブドでは、目標は設定されているテロリズムだったわけですが、今回は無差別テロだったことです。先進国でこのようなテロは、日本の2つのサリン事件(松本サリン事件、地下鉄サリン事件)や米国での9.11同時多発テロ事件などが思いだされます。今回は、9.11にははるかに規模が小さかったとはいえ、地下鉄サリンよりずっと大規模です。先進国では、そうそうめったにない規模のテロです。
私は、ユダヤやキリストやイスラムの神、あるいはイエスやムハンマドを揶揄るのは良くないと思いますが、しかしだからといってあんな殺戮をしなくてもいいと思います。「いい」なんて思う人もめったにいないでしょうが、今回の事件は、おそらく犠牲者にイスラム教徒は確実にいるし、またことによったらイスラム過激派やイスラム国を支持している人たちだっていないとも限らない。しかしもうそんなことは知ったことではないわけです。ともかく人を大勢殺して社会を震撼させること自体に意義を見いだしているのだから、これもどうしようもない。
それで、今回の事件といい、シャルリー・エブドの事件といい、犯人たちは助かろうと思っていないのが怖いですね。9.11もそうでしたが、地下鉄サリン事件などは、実行犯はみな逃げている。けっきょくみな逮捕されましたが、実行犯(ついでに麻原彰晃も)死ぬ気だったり自殺する気はなかったわけです。今回の犯人たちは自爆をするつもりだったわけで、それで多くは自爆を既遂しています。どうしようもないですね。
死んだっていい、じゃなくて初めから死ぬ気だったら、どうにもなりませんね。犯罪の規模とか性質は違いますが、ストーカー殺人などで犯人が殺人後に自殺することがあります。ストーカー殺人は、刑罰は死刑をふくむそれなりの厳しいものになることもありますが、犯行をする際は、そんなことは消えているのだから、死刑その他の刑罰の恐れも大したことはないわけです。あるいは自殺はしないかもしれませんが、犯行を実行してしまえばこれまたどうしようもない。
この種の、一般市民を巻き込み、しかも自分の命をも顧みないテロ事件は、そのはしりと思われるものの一つが、いわゆる日本の赤軍派のメンバーが1972年に起こしたテルアビブ空港乱射事件でしょう。岡本公三ら3名によって実行されたこの事件では、Wikipediaによると
>この無差別乱射により、乗降客を中心に26人が殺害され、73人が重軽傷を負った。
>死者のうち17人がプエルトリコ人(アメリカ国籍)、8人がイスラエル人、1人はカナダ人であった。
というわけで、まさに被害者数の多さといい、死者がイスラエル国籍ですらない人たちが多数を占めるくらいの、無差別襲撃、虐殺ぶりでした。Wikipediaではこの事件について
>当時は、テロリストが無差別に一般市民を襲撃することは前代未聞であり、事件は衝撃的なニュースとして全世界に伝えられた。赤軍による民間人への無差別虐殺には国際的な非難が起こった。
とあります。
ここで重要なのは、あきらかにこの時赤軍派は、ひとつのタブーを打破したということです。つまり無関係な一般市民も殺害してかまわないと。そういうことをしたら、支持も集まらんぞというような常識は通用しません。一部の人間が支持してくれるかもしれないし、そうでなくったって最終的には構わない。それにしても、パレスチナにしてもチェチェンにしても北アイルランドにしても、バスクにしても、フランスでひところ激しかったコルシカ島でのテロなどは、いわば分離・独立、そうでなくても自治権、北アイルランドなどは、カトリック側はアイルランドとの統合を要求しているわけですが、フランスのこの一連のテロは、日本のオウム真理教同様騒ぎを起こして世界の注目を集めることが目的の1つですから、ある意味めちゃくちゃですよね。いかに凄まじいことをすることかということに目標の一つを置いているわけですから。
それにしても、日本赤軍も、この事件以降はさすがにこのような大量虐殺テロ事件を起こすことはなかったし、オウム真理教も犯人たちと麻原が逮捕されてからはテロをさらに実行することは出来ませんでしたが、今回の連中はどうなんですかね。次なるテロリスト志願者なんかたくさんいませんかね。それで、今回の事件では、スタジアムは警備の対象になりますが(この時オランド大統領がいたくらいで)、ほかは劇場とかレストランなどで、こんなの警備のしようがないですよね。オリンピックとかサミットのように短期集中で警備するとか、政府の建物、軍事産業の建物(かつて三菱重工がねらわれたことがありました)、大使館などの危険性が明らかなところではありません。フランスなり日本なりのようなそれなりに自由な社会でそんなに厳しい警備をし続けるわけにはいかないし、することもできないでしょう。それで、つぎなる実行犯のリクルートもそんなに難しくないかもです。
おまけに武器だって爆弾のほかにAK-47とかなんだから、入手もそんなに難しくない。つまりこんなのは、米国でしょっちゅうある銃乱射事件と同じく、防げないわけです。あの種の乱射事件も、警官に射殺されなければ自殺する場合が非常に多い。どうしようもありません。
だから私が何を言いたいかというと、こんな事件防げないし、当分テロの脅威は続くということです。日本も、集団的自衛権なんて言っていたら、格好の標的になるでしょう。