Quantcast
Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

そういうのを、領有権を実質的に放棄している、というのだと思う

$
0
0

過日(11月23日)bogus-simotukareさんのブログを見ていて、次の記事を読みました。

別冊正論「ロシアから今こそ南樺太を取り戻せ!」と叫ぶ


その日は別の本を探しに本屋に行くつもりだったので、早速それも探してみて、手にとってみました。

別冊正論25号「樺太-カラフト」を知る

さすがに2015年にもなって、南樺太うんぬんなんて話をしたって時代錯誤じゃねーのと思います。北方領土や竹島、尖閣諸島とちがい、政府ですらそんなこと相手にしてくれてないじゃないですか。では目次を。

>ニッポン 領土問題の原点!!
「樺太-カラフト」を知る
侵奪―回復―放棄―不法占拠―そして?
【発行所:産経新聞社 発売所:日本工業新聞社】

・十六世紀から「日本」でも現在は死語? 「樺太」をめぐる学外からの一視点…高橋是清
・アジア同様に列強の領土侵奪受けた日本 幕末・維新期の蝦夷地をめぐる日露関係…淺川道夫
・日露戦争は樺太回復の戦いでもあった―明治の国民世論と国際条約の現実…岸本昌也
・赤軍の大規模虐殺と樺太全島回復 尼港事件が現在に投げかける教訓…福井雄三
・移民政策めぐる官と民とのすれ違い 「植民地研究」からみる樺太…竹野学
・「棄景」の語る樺太産業と鉄道の関係誌 未完に終わった開拓・殖産の実像…三木理史
・樺太の朝鮮人と抑留帰還裁判のまやかし なぜ「強制連行」が捏造されたのか…新井佐和子
・〝別天地〟樺太の家庭、くらし、喜怒哀楽 忘れ得ぬ我が故郷の思い出…元樺太住民
・地上戦、占領、抑留、避難―樺太の終戦 40万住民の思いを語る…小嶋正吉
・非道な住民虐殺と姑息な洗脳教育 ソ連が樺太で続けた悪行とその影響…金谷哲次郎
・北樺太オハの日本人捕虜収容所―証言とソ連記録から見たその実態…松井憲明
・シベリア抑留―ロシア国家犯罪の検証を 実数は七十万人・死者十万人だった…長勢了治
・疎開三船殉難の悲劇と樺太最新事情 言い逃れ困難なロシアに遺族ら要望書…山名俊介
・ロシアとせめぎ合う北洋漁業の苦悩 北方領土の「母都市」根室の将来…石垣雅敏
・露の樺太・千島・四島占拠は侵略だ 強硬発言は国際法違反自覚の裏返し…有馬哲夫
・「南樺太返還期成同盟」という運動が存在した 講演と資料「樺太返還問題と国際関係」……渡辺国武
・南樺太の法的な領有権は? ゆくえは日本国民しだい…阿部寛
・功名心で国家・国民を大きく損ねる 父祖の代から続く「鳩山・河野コンビ」…本誌編集部
・党略で樺太を投げ棄てた日本共産党 おかしな領土解釈はロシアを利するだけ…篠原常一郎
・北方領土返還運動―女たちの闘い 全地婦連の半世紀とこれから…柿沼トミ子
・サハリンプロジェクトのルーツは戦前 石油天然ガスめぐる日露のつながり…杉本侃
・ロシアの領土観と日露の安全保障―北方領土問題を俯瞰して考える…兵頭慎治
・北太平洋沿岸諸民族の歴史―北海道太―樺太―千島―カムチャツカ―アリューシャン…渡部裕
・日本カラ、フト消えし島 先人の背骨の強さに思い馳せれば…黒鉄ヒロシ ・樺太地図と地名・ロシア占拠名対照表

筆者を見ると、いわゆる産経文化人ではないですね。私の知らない人たちがほとんどです。そう考えると、これ産経からしてもある程度固定読者が見込める特集ではないですから、あえて新たなところへ踏み込んだものなのかもですね。

現在日本の地図は、南樺太の部分は、白くなっています。つまり日本政府の立場としては、「領有権未定」ということです。日本の政府ですら、その程度のことしか主張できないのだから、これを日本側が今後どうこうできる見込みはないでしょう。北方領土や竹島だってどうこうできなさそうですが、日本は建前はともかくとして、南樺太なんか実質的に放棄しているでしょう。

ところでWikipediaの「樺太」に、次のような記述があります。

>南樺太を巡る領土問題

(略)

この問題について、日本政府は豊原(ユジノサハリンスク)での日本総領事館設置や航空協定等の締結によって、南樺太のロシア連邦への所属を事実上認めているという説がある。しかしながらこの説に対しては、領有を主張しているものの実効的支配を奪われている場所について国民保護のための措置として領事館を置く、ということは成り立つのであるから、総領事館があるということをもって直ちに領有権を追認しているとはいえない。これに類する例としては満州国へのソ連領事館設置があげられる。なお、日本政府自身は領事館の設置と領土の問題とは無関係であり、仮に将来において何らかの国際的解決手段により南樺太の帰属が決定される場合にはその内容に応じて必要な措置を取るとの見解を示している。

いや、

>日本総領事館設置

というのは、まさに領有権を実質的に放棄しているということじゃないですかね。領土について、それなりの疑義があると本気で考えていれば、総領事館なんか設置しないでしょうに。

政治的建前は

>総領事館があるということをもって直ちに領有権を追認しているとはいえない。

だとしても、いまさら日本政府がこんなことに異を唱える意志も見込みもないんじゃないんですかね。だいたい紹介されている

>満州国へのソ連領事館設置があげられる。

なんて、当時の「満州国」とソ連の関係と、現在のロシア連邦と日本じゃ、時代や国際情勢や状況その他事情が違いすぎて比較などしたってしょうがないでしょう。

外務省には、大使館なり領事館を設置する際の基準となる内規というかガイドラインみたいなものがあるはずで、それは機械的に当てはめるものではないのか、日本との関係の強弱などである程度弾力的に運用されているのかどうか知識がありませんが、ユジノサハリンスクにおける領事館設置というのは、それがどのような判断で設置にいたったかはともかくとして、事実上南樺太はロシア領であることを認めた行為だと思います。政治的建前はともかくとして。

また特集では、編集部執筆として

>功名心で国家・国民を大きく損ねる 父祖の代から続く「鳩山・河野コンビ」…本誌編集部

とありますが(たぶん外部の人でこんなこと書いてくれる人がいなかったのでしょう)、そんな過去の話したってしょうがないじゃないですかねえ。するんなら、現安倍政権、日本政府にすればいいじゃないですか。いま言わずしていつ言うです。産経にとって、神聖にして侵すべからずの安倍晋三にそんなこと言えないですか? 鳩山、河野両氏を批判するのは、お2人が、産経が大嫌いな鳩山由起夫、河野洋平両氏の祖父・父だからですか? 馬鹿もいい加減にしてくださいよ。

ていいますか、産経は、やはり大嫌いな民主党政権時はこういうことを主張したんですかね。したのかもですが、どっちみち本気でしてはいないでしょう。いずれにせよ口先だけにもほどがあります。

それにしても、これって新たなる顧客開拓の意図かもですが、南樺太の話なんかしたって、世間からほとんど相手にされるとも思えませんけどね。それもどうかです。

なおこの記事は、bogus-simotukareさんの記事を全面的に参考にしました。感謝を申し上げます。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>