以前したのような記事を書きました。今回はその第二弾ということで。
治療とセットにして考えたほうがいいと思う
いつとはとか、誰がとかというのは、先方と当方の個人情報保護のため書けませんが、私の職場の同僚で、酒気帯びで人身事故を起こしてしまい、問答無用で懲戒解雇された人間がいます。懲戒解雇自体は仕方ありませんが、その同僚は酒好きで知られていました。アルコール依存症ではなかったのかもですが、酒との付き合い方が良くなかったのだろうと思います。
それで次のような記事を読みました。
>アルコール依存症かも…治療勧める大阪府警
毎日新聞2016年1月6日 16時00分(最終更新 1月6日 16時00分)
アルコール依存症が疑われる飲酒運転の検挙者を対象に、大阪府警が医療機関の受診を促す独自の取り組みを進めている。飲酒事故を繰り返し、府警の勧めで治療を始めた府内の40代男性は取材に「心のどこかで救いを求めていた」と打ち明けた。飲酒で家族や職も失った男性は依存症と闘い続けている。【千脇康平】
「仕事と家庭のストレスから逃げたい一心だった」
男性が強くなかった酒に溺れたのは営業マンだった20代後半。職場で退職者が相次ぐほど、上司から厳しいノルマを命じられた。結婚して2人の娘も授かったが、休日返上で仕事をし、夫婦げんかが絶えなかった。いらだちを紛らわせようと、毎晩のように約1リットルの焼酎を流し込むように飲んだ。
30歳を過ぎたある日の夜、飲酒して自家用車のハンドルを握り、駐車中の車に突っ込む物損事故を起こした。逮捕されて勤務先に解雇された。妻には断酒を誓ったが、数カ月後には押し入れに隠した焼酎の紙パックに手を付けていた。離婚し、家族を失った。
職を転々として自暴自棄になった。仕事中の飲酒運転や出勤前の迎え酒も増えた。自宅アパートの3部屋は焼酎のペットボトルで埋まった。2014年暮れ、再び飲酒運転で物損事故を起こし、頭などに大けがをした。しかし、罪悪感は薄れていた。
そして昨年6月の夕暮れ。商店街の飲食店で焼酎のロックを2杯飲み、数キロ離れた自宅へ車を走らせていた際、助手席側のミラー付近で鈍い音がした。歩行者の女性の腕に車をぶつけてけがを負わせ、現行犯逮捕された。10日間の勾留後に釈放された。その際、警察官からアルコール依存症のテストを受けるよう勧められた。
しかし、その帰宅中にコンビニに寄り、焼酎カップを一気に飲み干した。「わらにもすがる思いだった」。釈放から1週間後、警察署に電話して府警でテストを受け、医療機関の受診を勧められた。病院でアルコール依存症と告げられた。
今も通院を続け、服用を指導されている粉末の抗酒剤は手放せない。以前の勤務先の社長からは断酒することを条件に復職を認められ、同じ境遇の人が集う自助グループの会合にも毎日通っている。
人身事故から半年余り。酒は一滴も口にせず、車も運転していないという。「飲酒運転はかけがえのないものを失い、人の命も奪う。もう誰も裏切りたくない」。男性は飲酒運転との決別を誓っている。
東布施辻本クリニック(東大阪市)の辻本士郎院長の話
アルコール依存症は本人の意思で飲酒の欲求を抑えられない病気だ。2013年の厚生労働省調査では全国に推計109万人の患者がおり、10年前から26万人も増えた。治療を拒む人も多く、警察だけでなく社会全体で向き合う問題だ。治療方法は投薬の他、丁寧な話し合いで飲酒への考え方や行動を変えていく心理療法があり、適切に治療すれば3年程度で症状が安定する。
◇
大阪府警によると、警察が検挙者にアルコール依存症の専門医療機関の受診を勧める制度は珍しいという。府警がこの取り組みを始めたのは2014年12月。過去5年間に飲酒運転で2度以上検挙された人らが対象だ。
府警では世界保健機関(WHO)作成のテストを活用し、普段の飲酒量、頻度、飲酒トラブルの有無など10項目を尋ねる。依存症疑いの人には府内12カ所の医療機関での受診を促すが、本人の同意が前提で強制力はない。
この1年間で21人がテストを受け、5人が受診した。府警交通総務課は「検挙直後は本人が飲酒運転を強く反省している。その時に受診を促しているので、効果が期待できる」としている。府警と似た取り組みは福岡県や三重県が条例を制定し実施している。
警察庁が09年に公表した調査によると、警視庁と神奈川県警の飲酒運転による免許停止・取り消し処分者177人の約6割が再犯だった。そのうち4割はアルコール依存症の疑いがあった。
飲酒運転の事故は厳罰化を背景に減少傾向にあるが、近年は下げ止まっている。昨年も北海道砂川市で家族5人が死傷、大阪・ミナミでも看護師ら3人が死傷するなど、悲惨な事故が相次いでいる。
いまの時代で飲酒運転をする人間は、相対的にはアルコール依存症の可能性が高いですよね。厳罰化が進んで、さすがに多くの人間が、運転前にアルコールを摂取することは控えるようになったし、また摂取したらタクシーなり、家族の迎え、運転代行サービス(飲酒した運転手のかわりに自家用車を運転するサービス、地方都市でさかん)などを利用するようになりました。
そのように、飲酒運転自体は厳罰化や意識がすすんだこともあり減ってきたと思いますが、正直アルコール依存症の人はどうにもならんですよね。彼(女)らは、治療の対象ですから。本人の気構えとか努力ではどうしようもない。そういっちゃ身もふたもないですが、なんらかの治療をしなければいけません。
そう考えてみると、やはり治療をセットにしないとどうにもならんなという犯罪をこのブログでも何回か記事にしています。万引きや性犯罪などです。
窃盗癖の持ち主の人間は、度重なる万引きで執行猶予を取り消されて実刑判決が確定したにもかかわらずまたまた万引きをして更なる刑期を重ねたし、性犯罪で逮捕された野球選手(当時)は、以前性犯罪をして警察沙汰になり、社会人野球でのキャリアをふいにし、ドラフト会議でも忌避され、米国からのオファーも性犯罪歴がたたって反故になりました。それでせっかく更生したと認めてもらえて晴れてプロ野球選手になれたのに、またまた性犯罪をして球団からの解雇は当然として、実刑判決を受ける始末です。彼(女)らを「馬鹿だ」といえば、ご説ごもっともですが、しかしそんな話はなんら解決になりません。上のような犯罪は、同じことを何回も書けば、被害者ばかりでなく、加害者自身も、警察も、検察官も、裁判官も、弁護士も、加害者と被害者の家族も、その他加害者と被害者の周囲の人間も、刑務官も、不愉快にもほどがあります。直接の関係者でもない私のような第三者も、ありとあらゆる点で不愉快です。なんら同情にも値しないし、あらゆる人間が精神的にも傷つくし、ご当人も刑務所に入って嫌な思いをするし、税金も浪費されます。だいたい1人の囚人あたり1年間に300万円の経費がかかるといわれます。懲役作業をしたって、1年間に300万円以上の付加価値は出ません。それなら、治療をした上で社会復帰させたほうが、次なる罪をしない歩留まりを高くできそうです。だめな人もいますが、可能な人もいる人もいるはずですので、そういった人たちを何とか更生させなければいけません。
依存とかとはまた違いますが、行政からも地域からも徹底的に見捨てられた知的障害者である人間が、ついには強盗殺人までしてしまった事件について記事を書いたことがあります。知的障害者は、治療とはまた違いますが、行政がもう少しこの人物にまともに対応していれば、たぶんこの人物も2人も人を殺すことはなく、自分も死刑判決(この記事を書いている時点では、執行はされていません)は受けないで済んだでしょう。彼は、自動車窃盗ほかで刑務所を出入りしていましたが、障害者手帳の交付もなく(親兄弟も極貧で、すくなくとも一部は障害者だった模様)、ついには行きつけのスナックでの付けが重なり店に行けなくなったので、強盗殺人をしてしまったわけです。彼は、金を奪って即刻早朝にその付けを返しに行ったとか。犯罪自体に同情の余地はありませんし、死刑判決も仕方ないかもですが、でも「この犯罪は、まったく個人の問題だ。周囲に何の責任もない」と言ったら、そうでもないと思います。別にご当人そういう意識はないでしょうが、社会や地域に徹底的に見捨てられた人物の復讐のようなものだと感じます。日本の刑務所には、彼のような累犯障害者がたくさんいます。たぶん強盗殺人をした人が、他の累犯障害者より飛びぬけて悪質であるなんてこともないでしょう。単なる運や出会い、周囲にめぐまれたかどうかといった要素のほうが強いはず。けっきょく、本来自力で生きていく能力のない人間を、何の援助もなく社会に投げ出しておいてそれで暴走しちゃったということでしょう。
そうこう考えていくと、やはりとおりいっぺんの矯正教育なんてものではなく、可能な範囲で医学的治療を行うというのも視野に入れていいんじゃないんですかね。やれ万引きした、性犯罪だ、自動車窃盗をした、最初は起訴猶予だ、執行猶予だ、再犯をしたら実刑だ、っていう対応では、やっぱり進歩がないと思います。明らかに依存性その他が見えた場合には、それなりに治療をする必要があると思います。医学的にも、ある程度対応できるのなら、それなりでも仕方ないから対応したほうがいいでしょう。刑務所を往復している人生から脱却できる(可能性がある)のなら、そちらのほうがいい。
それには莫大な公費もかかりますが、刑務所の服役囚に金を使うよりは、そちらのほうが前向きな金ではないかと思います。上にも書いたように、どうせ刑務所だって金がかかるんだからさ。
なんて記事を書いていたら、次のような記事を読みました。
>性暴力は病気」認知高まる薬物療法 揺れる医学界
西日本新聞 2015年11月30日(月)17時40分配信
「性暴力は病気。治療で止められる」
5年前にNPO法人「性障害専門医療センター」(東京)を立ち上げた福井裕輝医師(46)は、抗男性ホルモン剤による治療に取り組む。
診療の拠点は都内と大阪市内。それぞれオフィスビルの一室にある。ホームページ上などで所在は公表しておらず、看板のない部屋で、患者たちがひっそりと診察を受ける。
錠剤を飲んで男性ホルモンの量を抑え、性欲を減退させる治療。もともとがん患者などに行っている治療を応用した。より強い効果を望む人には皮下注射も打つ。「本人の同意が前提。強制はしません」
犯行に至る行動と思考パターンを省みさせる「認知行動療法」も施し、性衝動のコントロールを身に付けさせる。強姦(ごうかん)や痴漢、盗撮、のぞきと罪名を問わず、1カ月の受診者は二百数十人。治療には3~5年を要し、きちんと継続した人の再犯率は「ゼロ」という。
「実質的な去勢につながり、倫理上問題がある」根強い意見も
取り組みが少しずつ社会に浸透してきたのだろう。福井医師のもとには近年、全国から新しい患者が相次ぐ。今年10月にはJR博多駅近くに事務所を借り、九州の拠点として、福岡での診療準備を進めている。
人気が高まっているように映るホルモン剤治療だが、実は、国内ではほとんど取り入れられていない。
「実質的な去勢につながり、倫理上問題がある」。こんな意見が医学界に根強いためだ。
2年前から性暴力の加害者を受け入れている「のぞえ総合心療病院」(福岡県久留米市)は「性依存症」「小児性愛」などと診断して薬物療法を行うが、ホルモン剤は投与していない。
20年近く性被害者の治療も続けてきた堀川百合子副院長は「過去にいじめや性虐待といった傷を持つ加害者は多い。加害の要因は複合的であり、直接ホルモンにアプローチする手法になかなか踏み出せない」と打ち明ける。
「生まれたことを呪ったこともある」「逮捕されてほっとした」…。
「自分自身の力では抑えられない。薬でも何でもすがっていきたい」
今春、わいせつ誘拐罪などで実刑を言い渡された20代の男は、判決後、拘置所で記者にこう打ち明けた。男は女児にわいせつな行為をし、カメラで裸を撮影していた。判決では、裁判長から「性犯罪はカウンセリングだけでは難しい面もある。薬物療法という手段もあるから、ぜひ立ち直って」と説諭を受けた。法曹界でも、この治療法の認知度は高まってきている。
「生まれたことを呪ったこともある」「逮捕されてほっとした」…。記者が面会し、手紙のやりとりを重ねた性加害者の多くが、自分では抑えきれない性衝動に悩んでいるように見えた。実際に、記者に「ホルモン剤治療を受けていい」という加害者は複数いた。
倫理と犯罪抑止。そのはざまで、性加害者とともに医師も揺れる。
性犯罪者の情報公開 海外はGPS使用も
性犯罪の再犯を防ぐ対策は各国で異なる。米国や韓国は出所した性犯罪者の住所などをインターネットで公開したり、衛星利用測位システム(GPS)で所在確認したりする監視制度を導入している。ただ、出所後さらに不利益を与える「二重処罰」や「人権侵害」との批判も根強い。
法務省などによると、米国は「メーガン法」(ミーガン法)で、性犯罪出所者の氏名や、顔写真などをネットで公表。転居すれば警察から学校や自治組織に通告する制度を整えている。性衝動を抑えられない出所者には、本人の了解を得た上で性欲を抑制する薬物を投与する。一部の州は、再犯の恐れの強い対象者に電子足輪を強制着用させ、GPSで常時監視する。
韓国も対象者の氏名をネットで公表。電子腕輪の制度もある。韓国やカナダでは、裁判所が出所者に薬物投与を命令できる。英国やフランス、カナダは、対象者に所在地の届け出を義務付けているが非公開としている。
日本では子どもへの性犯罪の受刑者が出所する際、居住予定地などの情報を法務省が警察庁に提供。警察は所在確認するとともに対象者の面談も行う。今年3月の対象者は817人、所在が確認できているのは771人。日弁連刑事弁護センター事務局長の秋田真志弁護士(大阪)は「海外並みの監視制度には人権上の懸念があるが、公費による薬物治療や所在把握の仕組みをどう矯正に組み込むのか、総合的に検討すべき時期に来ている」と話している。
◆性加害者治療の費用
性暴力の薬物療法やカウンセリングは国の保険適用外。NPO法人「性障害専門医療センター」では抗男性ホルモン剤が月5000円、認知行動療法が同2万5000円程度。実施している病院は国内では限られている。海外では、欧米や韓国で既に普及している。
西日本新聞社
記事にもあるように、性犯罪に関しては、治療が「去勢」につながりかねないのが問題ですよね。ここで正直に書きますと、おそらく性犯罪を繰り返してしまった元野球選手は、たぶん治療の対象になりえると思います。彼は、一般人以上に性犯罪の前科のために過酷な目にあったのだから、そういったことを考えれば、彼は再犯なんかしないはずです。しかししてしまった。たぶん性犯罪をした際は、そういうことをしたらどれだけとんでもないことになるかといったことが頭の中から消えていた、抑制できなかったのでしょう。ここまでくると、本人の努力とかそういったことの次元ではないと思います。努力すれば我慢できるのなら、たぶん彼は我慢しているでしょう。それができなかったのは、病気だからです。しかし強制的に「去勢」をするわけにはいかないし、するべきでもないと思います。本人の同意が必要ですが、彼(や、その他、この種のことで苦しんでいる人たち)はそれを受け入れるかという問題もあります。それで、また出所後に再犯してしまったら、これまた目も当てられません。
こういうのは、人権のからみもあるから難しいですよね。あえていえば、再犯を防ぐためにその人間の人権を制限することにより、再度の懲役などを防止することによる人権擁護になるということもある。やや逆説的なところがありますが、性犯罪は、被害者は当然として、加害者もその周囲も、想像を絶するほどその後の人生にダメージがあります。被害者はともかく、そんなのは加害者の不徳のいたすところだと突き放してもいられません。いろいろな点で、多大なコストが私たちに課せられます。善意の第三者にも迷惑がかかるのです。そういったことも考えなければいけません。
いずれにせよなかなか困難で大変なことだと思います。