何をいまさらのニュースですが、フランスの大統領選挙が、エマニュエル・マクロンとマリーヌ・ルペンによる決選投票で決着がつくことになりました。記事を。
>World | 2017年 04月 24日 13:34
仏大統領選、マクロン氏とルペン氏が決選投票へ
[パリ/ブリュッセル/ベルリン 23日 ロイター] - 23日に実施されたフランス大統領選の第1回投票は、投票終了直後に発表された出口調査で、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン前経済相と極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首が5月7日の決選投票に進む見通しとなった。
妻の不正給与疑惑が打撃となり支持が伸びなかった中道右派・共和党のフィヨン元首相は敗北を認め、決選投票でマクロン氏を支持すると表明した。
仏内務省の開票速報によると、2000万票時点ではルペン氏の得票率が24.38%、マクロン氏22.19%、フィヨン氏19.63%、極左候補のメランション氏18.09%だったが、大都市で作業が進むとマクロン氏が逆転。有権者数4700万人中ほぼすべての4600万票の開票が終了した時点で、マクロン氏23.82%、ルペン氏21.58%、フィヨン氏19.96%、メランション氏19.49%となっている。
イプソス/ソプラ・ステリアの出口調査によると、マクロン氏の得票率が23.7%、ルペン氏は21.7%。ハリス・インタラクティブの調査では、マクロン氏23%、ルペン氏22%。Ifopによると、マクロン氏23.8%、ルペン氏21.6%となっている。
パリでは、出口調査の結果が報道されると、マクロン氏の支持者らが歓声を上げ、国歌を歌うなどした。
マクロン氏は、「私はナショナリストの脅威に立ち向かう愛国主義者の大統領になりたい」と述べ、支持を呼びかけた。
ルペン氏は支持者らに「この選挙の最大の争点は、われわれの文明をリスクにさらしているグローバリゼーションの蔓延だ」と訴えた。
フィヨン氏は会見で、敗北の責任は自分にあると述べ、今後はマクロン氏を支持する方針を示した。
マクロン氏は、金融市場が歓迎する穏やかな規制緩和路線や、財政健全化を掲げる。対するルペン氏は、減税や社会保障の拡充、さらに欧州連合(EU)からの離脱を訴えている。
決選投票の結果がどうなっても、60年にわたり中道左派と中道右派の主流派が担ってきたフランスの政治を大きく変えることになる。
決選投票に関するイプソス/ソプラ・ステリアの世論調査では、マクロン氏が62%得票し、ルペン氏(38%)を破ると予想。ハリス・インタラクティブの調査では、マクロン氏が64%得票して勝利すると予想されている。
出口調査を受け、ユーロが対ドルで一時1.09395ドルに上昇し5カ月半ぶり高水準を付けた。一方、円は対ドルで2週間ぶりの円安水準となる110.64円に下落した。
<EUでマクロン氏祝福の声>
EU内では、マクロン氏の決選投票に進出する見込みとなったことを喜ぶ声が出ている。欧州委員会のユンケル委員長の報道官はツイッターで、「ユンケル氏は、第1回投票の結果を受けマクロン氏にお祝いの言葉を述べ、決選投票の勝利を祈ると伝えた」と述べた。
ヨルダンを訪問中のドイツのガブリエル外相はマクロン氏の健闘を称え、「マクロン氏が次期仏大統領になると確信している」とツイート。メルケル首相の報道官もツイッターで「マクロン氏が強いEUと社会的市場経済を支持する政策を掲げて成功したことはすばらしい」とし、決選投票での勝利を望むとした。
*内容を追加しました。
昨年世界中が注目し、世界のおおよその期待と予想を裏切る結果となった2つの選挙、英国のEU離脱を問う国民投票、米国大統領選挙も、世論調査の多くはやや残留優位、ヒラリー・クリントン優位という調査結果を出していましたが、それでもその差は僅差でした。今回はかなり差がついているので、たぶんマクロン有利は動かないと思います。
ただそれにしても極右が選挙で勝つ可能性があるというのはやはり驚きであり脅威ですね。極右がフランスで決選投票に進んだのは2002年の選挙以来ですが、このときは現職のシラクの勝利が分かりきっていたので、ある意味決選投票は儀式めいたものがありました。ルペン娘の父親であるルペン父にいかに差をつけて勝つかが問題でした。今回はそういうものでもない。
で、ここで問題となるのが、ルペンが仮に負けるとしても、それで何パーセント、何票くらいの票数となるかですね。2002年の選挙のときですら、決選投票でルペン父は17.79%、5,225,032票を得ています。02年のときは、ルペンに投票しない人間は反ルペンといってよかったのでしょうが(第1回投票では、ルペンの得票数は4,804,713票でした)、17年の今回の選挙は、率直なところそうでもないでしょう。第1回投票なら違う候補に投票するが、決戦でも相手次第でルペンに投票する有権者はかなりの数にのぼるはずです。2017年の選挙で仮に35%~40%くらいの票をルペン娘が得るとすれば、選挙自体はもちろんマクロンの完勝ということになりますが、ルペンにしたって、仮に35%であっても百分比だったら15年前の選挙で父の得た倍の比率の票を得ることができたわけです。これは極右にとってのかなりの躍進であり勝利でしょう。
そうなると次の2022年の選挙だって、ルペン、極右、あるいはルペン以外、国民戦線以外の極右が今回以上の躍進を遂げる可能性がある。といいますか、当選するかはともかく、私はそうなる可能性が高いのではと考えています。
仮にマクロンが当選したとして、彼がそれなりの実績を出すことができればたぶんルペンあるいは極右に当選する隙はないでしょうが、オランド同様政権運営があまりうまくいかなくなり、サルコジのように再選できない、あるいはオランドのように立候補すら断念する、といったことになれば、ルペンが今回の選挙以上の人気を集めることはありうるでしょう。そしてそれは十分可能性があると思います。
もしルペンが当選したとして、彼女にまともな政権運営ができるかはまた別の問題ですが、やはりトランプとか安倍とかが大統領になったり首相になったりすれば、それなりのことはできるわけだから、やっぱりいろいろ可能な範囲でめちゃくちゃなことはするんでしょうね。再選はしないかもですが、いずれにせよフランス国民ばかりでなく地域大国であるフランスの周囲は相当に悪い影響をこうむると思います。
今回のフランスの大統領選挙で、決選投票に進む可能性のある候補者で極右と一番の左派(彼は「極左」ではないでしょう)がそろってEU脱退を公約に揚げていたのも、これもなかなかすごいですよね。つまり右翼と左翼が、EUに否定的という点で一致している。英国のEU離脱国民投票の際も、米国大統領選挙も、どちらかというと決して豊か、先進国の豊かさを享受しているとは言えない有権者が離脱に賛成し、トランプに投票したという話もあります。トランプの場合、非白人の支持は少なかったようですが、プワーホワイトが彼に投票したとされます。そしてその貧しさの問題は、移民の問題ともかかわります。移民の問題というのも、失業の問題とかいろいろですが、2022年のフランス社会が、この移民の諸問題をうまく解決できているかはあまり期待できなさそうです。おそらくEUについての問題も、フランス以外でも相当いろいろな点で問題がさらに悪化している可能性が高い。そうすると、難民とかにも厳しい態度を取る極右が現在以上に力を伸ばしている可能性はじゅうぶん予想できます。実際5年あれば、フランスはそうはならないかもですが、欧州のどっかの国でEUを離脱する国が出てくる可能性はあるでしょう。そしてそれは、たぶん他のEUの国々にも大きな影響を与えるはずです。
とすると、フランスの反ルペンの有権者としては、絶対ルペンに投票するという人以外をいかにルペンに投票させないかということを目指すかということですね。とりあえず3割未満の得票率ならば大成功でしょうが、実際はどうなるか。私も大いに注目したいところです。もちろんルペンが勝つ可能性も、ないではないですから、それも注目です。
しかしそう考えると、日本はすでに極右が政権を握っている極右国家だなあという気がします。安倍晋三も自民党も、とてもルペンや国民戦線と自分たちを比較して「自分たちは極右でない」なんて言えたものではないでしょう。。自民党の憲法草案を見たって、とてもGなんとかとか先進国なんていわれる国々の政権与党が国民に提起するものではありません。つまりは、日本国は極右の首相と極右政党が支配する極右国家であり、その内閣が50%以上の有権者の支持を受けている国だということです。それもどうもなあです。まさに林博史氏が紹介したように、
>最近のフランスの極右は、われわれは、日本の自民党に比べれば、よっぽど穏健だと言うそうです。
ということでしょう。日本が極右国家であればいいと考える人たちはともかく、とてもこのフランス極右の発言を日本人は笑えません。