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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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やっぱり下川裕治氏は、そんな初心な旅行者ではなかった(笑)

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以前こんな記事を書いたことがあります。

下川裕治氏はそんな初心な旅行者じゃないだろ

下川裕治氏とは、旅行関係に強いライター兼エディターです。で、その氏が、2001年にシンガポールを旅した際のエピソードを下の2002年に書いた本で紹介しています。

アジアほどほど旅行

シンガポールに詳しくない(?)下川氏は、空港のホテル案内所で紹介されたリーズナブルな宿へ、他のホテルへの客と一緒の送迎車両にて向かいます。すると氏が予約したホテルの所在地は、ゲイランという売春街だったわけです。

>ホテル名の先にCerryとかGeylangという名称で区別はされているが、どうもチェーンホテルのようだった。そこには住所も記されていて、すべてゲイラン地区だった。シンガポールはそれほど詳しくないから、そのエリアがどんな一体なのか想像もできなかった。(p.15~p.16)

>人生を四十七年もやっていると、ここがどんな街なのかは簡単に想像がつく。しかしここはシンガポールなのだ。これほど露骨に春を売る街があるのだろうか。疑問と驚きはやがて不安に変わっていく。

「ひょっとして・・・ここがゲイラン?」

(中略)

「このおじさん・・・」

冷たい視線が背中に痛い。

「いや、ぼ、僕は、そういう目的でここに泊まるわけじゃないの。たまたま空港のホテル予約オフィスでみつけただけなんですよ。これまで安宿ばかり泊ってきましてね。これじゃいかん、と中級ホテルを探そうとしてましてね。いや、ただそれだけなんです」

そんな弁解をしたところで、疑いが晴れるわけがなかった。(p.20~p.21)

これを読んだとき、私は面白いとは思いましたが、でもこれは作った話だと思いました。アジアを旅行し続け、アジアに詳しいたくさんの友人知人がいる下川氏が、「ゲイラン」なんていう有名なところを知らないとは考えにくいし、また万が一知らなくても、いまさらそんなことに困惑したり顔を赤らめるほど彼が純情な人間とは思えないということです。

私は当時の記事で、

>そういった経験豊富な人物が、いまさらその程度のことでショックを受けるというもちょっと無理な設定じゃないか、っていう気がします。

と書きました。

それで昨年1月こんな本が出版されました。

週末シンガポール・マレーシアでちょっと南国気分

私が本を読んだのは、昨年12月でしたが、いろいろ興味深いところがあります。

>第三章 【シンガポール】
三日目――ゲイランで不良になる

お、ゲイランについて章立てまでしているじゃないですか(喜)。これは面白そうです。

それで読んでみると、第二章に、2002年の本でのホテルの話が出てきます。

>二〇〇一年にこのチェーンホテルに泊まったことがあった。場所はやはりゲイランだった。チェーンホテルといっても、ゲイランに三軒ほどあるだけだったが(以下略)(p.41)

別に、ゲイランに困惑したなんて話は出てきません(笑)。

それで第三章に入りますと・・・

>チャンギ空港のホテル案内所に出向くと、そのリストの最下位、つまりいちばん安いホテルとしてHOTEL81があった。僕は迷わず予約を入れた記憶がある。(p.92)

まさにホテル手配の話です。さらに読みますと・・・

>はじめてゲイランを歩いたのは、二十年ほど前のように思う。(p.92)

この本が出版されたのは2016年1月で、実際には15年中に発売されたのかもですが、つまりは90年代半ばに初めて下川氏はゲイランに行ったってことですかね。ということは、やっぱり氏が01年の時点でゲイランを知らなかったなんて話は、まるっきりのフィクションだったってことですね(笑)。まあそんなことははじめっから予想がついていますが、でもこんなに堂々と過去の自分の本の記述はフィクションだったなんて書いちゃっていいのかなあという気はします。

ゲイランで困惑したエピソードを執筆したのは2002年の本で、その本はとっくに品切れ重版未定だからもう時効だっていうご判断なんですかね。過去自分が書いた記述が忘却の彼方であるなんてことでもないでしょう。

それにしてもゲイランの話なんてのは、あまりに作りであることが明々白々だとしても、正直下川さんの本にはこの種の作った話がいろいろあるんだろうなあという気はします。下川さんに、あれフィクションでしょ、あれ誇張しているんでしょ、なんて聞くわけにもいきませんが、それもどうかです。

だいたい下川氏は、特に双葉社とか徳間書店あたりから出している本の中では、非常にだらしないことが好きで優柔不断だったり小心者であるかのように自分を描写していますが、実際には彼は世界中を旅していて様々な危険な目に遭遇しているし、本の企画もこなすし、雑誌の編集長みたいなこともしたし、非常に危険な状況のアフガニスタンを取材したこともあるくらいの人間ですから、実際には相当なやり手なわけです。当然な話ですけどね。

すみません、こういう話は書かないほうがいいのかもですが、私は根性の悪い人間なので記事にしました。


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