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私のような海外旅行好きには参考になる記事だ

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ちょっと前の記事ですが、面白い記事を見つけました。全文ご紹介します。

>格安航空チケットはどこへ消えた?~High discount rate, High riskの時代

中村智彦 | 神戸国際大学経済学部教授
4/29(土) 7:00

格安航空チケットはどこに行った?
・なぜ逆ザヤ販売をしたのか?

巨額の粉飾決算を行い、多くの旅行客へ損害を与えて経営破たんした格安航空券販売専門の旅行会社てるみくらぶ。多額の赤字の原因の一つとして、指摘されているのは、逆ザヤでの無理な販売である。逆ザヤとは、要するに仕入れ価格が販売価格を上回っていたということで、通常の商取引では考えられない事態だ。
つまりは、「格安航空券」そのものが、そもそも存在していなかったのではないかということになる。多くの人が信じていた「格安航空券」は、いったい、どこに消えたのだろうか。

・航空会社の旅行会社離れ

インターネットの普及は、旅行業界に大きな変化をもたらした。旅行者は、旅行会社を訪ねて、航空券やホテルなどの手配を依頼しなくてはいけなかったものが、自宅やオフィスから直接、それらを手配できるようになった。
かつて国際線を運航させている航空会社にとって、人々に航空券を販売するための販路は旅行会社に依存せざるを得なかった。航空会社は、旅行会社と代理店契約を結び、発券手数料や販売量に比例した歩合制のキックバック(払戻金)を支払った。今から30年ほど前の旅行会社は、航空会社に対して非常に強い立場だった。特に大手の旅行会社に嫌われれば、航空会社側は販売に支障をきたすため、接待や無料招待旅行などをせっせと行っていた。
しかし、インターネットの出現は、その関係性を大きく変化させた。最大の変化の象徴は、発券手数料の廃止である。従来、航空会社は旅行会社に発券手数料を支払っていたが、2008年頃に多くの航空会社でその支払いが廃止された。これによって、旅行会社は大きな収入源を失ったのだ。

・格安航空券が生まれた理由

かつては格安航空券は、市場にある程度、存在した。

まず、第一は新規就航会社などのキャンペーン特価チケットである。これも、現在ではネット経由などで販売されているが、かつては旅行会社を通じて販売されていた。これらは新規就航記念パッケージツアーなどと銘打って、旅行会社が格安で販売していたのである。

第二は、旅行会社間での取引で生じてくる格安チケットである。かつては大手旅行代理店を中心に、航空会社から大量の座席をまとめて購入し、それをパッケージツアー向けや個人客に販売するという方式が主流だった。航空会社からすれば、価格は値切られるものの、大量の座席を安定して長期間販売できるというメリットがあり、旅行会社側からすると、オフシーズンも一定の座席を仕入れる必要があるが、ハイシーズンにも座席が確保できる上、大量仕入れによって多額のキックバックが期待できるというメリットがあった。旅行会社側は、大量に仕入れた座席を自社内で振り分けて販売するわけだが、売れ残ったり、直前にキャンセルされたりする座席がどうしても出てくる。さらには、オフシーズンにも一定量の座席を仕入れているので、売れ残りが最初から見込まれる座席が出てくる。こうした売れ残りチケットは、ブランドイメージを守るためなどの理由から自社で販売することはせず、多くの場合、自社の関連同業社や業界内の他社に転売するという形をとっていた。

第三には、これは数は少ないが、航空会社によっては様々な理由からごくわずかであるが、出発日直前まで一定数の座席を空けておくことがある。これは緊急に乗務員を移動させる必要が生じた場合や、いわゆるフラッグキャリア(その国を代表する航空会社で、政府との協力関係を持っている)の場合などでは外交関係で急きょ座席が必要になった場合など様々である。こうした座席が出発直前になって、保留解除となり、低価格で航空会社から売りに出されるということもあったのである。

これらが格安航空券が生まれてきた理由であった。さらに以前は、同じ区間を購入しても、海外で購入する方がかなり安かった時代があった。つまり、成田からバンコクへ往復するチケットを日本で購入する場合と、バンコクから成田へ往復するチケットをバンコクで購入する場合とでは、同じ距離、同じ航空機に乗っているにも関わらず、かなりの差額が生じていたのだ。こうした様々な内外での価格差を利用して、海外発券の格安航空券を組み合わせるなどして販売していた中小旅行会社が多数存在していた。

・格安航空券はどこに消えたか

航空会社が旅行会社に発券手数料を支払わなくなったのは、支払ってまで販売してもらう必要がなくなったからである。インターネットによる販売が主流になると、航空会社はそれぞれ自社サイトで航空券を顧客に直接販売できるようになった。顧客は、航空券だけではなく、ホテルなども直接、予約を取り、旅行を組み立てることができるようになった。

こうした直販の体制を強みとして、登場したのが低価格航空会社LCCである。LCCは徹底したコスト削減を行うことで、収益性を確保する戦略である。削減の対象は、当然ながら旅行会社への手数料支払いも含まれる。彼らは最初から旅行会社を通じた航空券販売を志向していない。

それだけではない。インターネットやAIなどの管理システムを航空会社が導入したことによって、販売状況によっての価格の調整などが自ら行えるようになったのである。こうした一連の変化は、格安航空チケットが流通することを減少させた。

・旅行会社で買うより、航空会社のサイトから買う方が安い

数年前にある旅行会社に勤務する知人に、今までと同じように航空券の手配を頼んだことがある。すると返事は、「エアオン(航空券のみ)だったら、うちで買うよりも航空会社から直接買う方が安いよ。」というものだった。「もう前みたいに格安航空券が航空会社から旅行会社に流れてくるっていうことは、ほとんど無くなったし、空席が多くて安売りする時は、航空会社が自分のサイトで売るよ。」

航空会社が新規就航する場合のキャンペーンも、旅行会社を通さず、自社でテレビやネット広告で告知し、直接、自社サイトから販売する方法に変化した。

さらにここに日本国内だけではない、大きな変化が起きている。それは東南アジア諸国や中国、韓国からの日本への観光客、ビジネス客の急増だ。20年以上前は、日本の観光シーズン以外はオフシーズンとなり、航空会社は売れ残った座席に悩んでいた。また、日本発のチケットは、当時は諸外国から見れば高額で販売されており、仮に安売りしたとしても、それなりに利益を確保できたのだ。

しかし、現在は違う。日本の観光シーズンに関係なく、諸外国から観光客が日本にやってくるようになり、航空会社にとってオフシーズは無くなりつつある。南アジア諸国の所得水準が上昇し、以前のように日本発のチケットが他国発と比較して高額であるということはなくなってきた。つまり、航空会社は、オフシーズン対策のために、日本の旅行会社にシーズン関係なく大量に低価格で購入してもらい、なおかつ販売量に応じた高額のキックバックを行う必要がなくなったのだ。

・「昔の旅行会社が良い時代の思い出が忘れられなかったんだねえ」

旅行会社に勤務する知人の一人は、今回の旅行会社の経営破たんのニュースを見ながら、そんな一言をつぶやいた。航空券が高額なだった時代。若い世代はいかに安く海外旅行に出かけるかを競った。「来週出発だけど格安のがある」と聞けば、それに飛びつく若者がたくさんいたのだ。そんな時代に、格安航空券専門の旅行代理店は、航空会社、旅行者の双方のニーズを捉えて、急成長してきた。若く華やかで明るい業界だった。

しかし、今、旅慣れた人たちは、LCCのホームページから格安航空券を直接購入し、ホテル予約サイトで宿泊先を予約する。大手航空会社も、細かい発券管理を行っている。かつてのように売れ残った座席が、大量に業界の中で回ってくるという時代では、すでになくなっているのだ。今回の事件は、この時代の変化を恐らく頭では理解していたはずであるが、受け入れられなかった経営者の判断が、今回の巨額の赤字と負債による旅行会社の破たんを招いた結果だろう。

「格安航空券」を売りに大々的な宣伝を打って出て、多くの申し込みがあったものの、すでに売るべき格安航空券は存在しなかった。それでも過去のように大量に売れば、航空会社側がキックバックを上乗せしてくれて、利益を確保できるのではないかと一縷の望みをかけて、粉飾決算を続けてきたと考えられる。古き良き時代の航空会社と旅行会社との関係は、すでに存在せず、いわば幻の「格安航空チケット」を販売しつづけなければならなかったである。

・航空券はどこで買う?

旅行者側も、航空券を購入する際に、その目的や予算によって使いわける必要があるだろう。航空券だけではないが、市価よりもあまりにも安いものは疑ってかかる必要がある。要するに ”High discount rate, High risk” 安い分だけリスクも高いことを理解しなくてはいけない。

ビジネスやスケジュール的に詰まっている際の旅行には、フルサービス型(既存)航空会社のチケットを自社サイトから購入するのが最も確かだろう。大手旅行会社に航空券やホテルなどを合わせて手配させるというもの良いだろう。大切な旅行であれば、その分を支払わないと、充分なサービスは提供されない。旅慣れていない場合などは、航空券とホテル、空港からの移動手段などがパッケージされている方が安心だろう。

一方でできるだけ安くということを優先するのであれば、LCC(格安)航空会社のチケットをやはりその会社のサイトから購入するのが一番確実だろう。ただし、LCCは遅延したり、欠航した時の保証がない場合がほとんどである。また、乗り継ぎサービスを行っていないことも多い。そうした「リスク」を勘案した上で、どの航空会社を選ぶかを判断すべきだ。

格安航空チケットの専門業者は、今回の一連の騒ぎで顧客の眼が厳しくなるのは避けられない。もちろん運よく格安航空チケットを見つけられることが全くないとは言えない。ただし、20年前のようにアウトレット的な格安航空チケットが流通する可能性は、限りなく低くなった。その点は、旅行者側も理解しておくべきである。その上で、航空会社からの直販、旅行会社のパッケージツアー、格安航空チケット専門業者の格安チケットなどを、その用途とリスクに応じて選び分けることが重要なのだ。

もう一つ。こちらの記事も面白いですね。

>てるみくらぶ破綻にみる格安旅行会社苦戦の理由 

石鍋仁美・論説委員に聞く
2017/4/17 10:00

小谷:海外旅行の格安ツアーを手がけていた中堅旅行会社、てるみくらぶが先月、経営破綻しました。旅行会社としては2008年のリーマン・ショック以降で最大規模の破綻です。この背景には、旅行業界を取り巻く環境が大きく変わったことがあるといいます。どういうことなのでしょうか。企業のマーケティングに詳しい日本経済新聞の石鍋仁美・論説委員に聞きます。春休みの旅行シーズン中に突然の破綻となりました。業界にどんな変化が起きているのですか?

■空席が出にくく


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 「まず挙げられるのは、飛行機の空席が出にくくなったということです。格安ツアーを手がけるてるみくらぶは、今から20年ほど前の1998年に設立されました。当時、国際線の飛行機は大型のものが多く、航空会社はバブル崩壊後の消費低迷もあり、席を埋めるのに苦労していました。そこでてるみくらぶのような海外旅行の格安ツアーを手がける旅行会社は、航空会社から余った座席を安く仕入れて格安の海外ツアーを企画し、それを販売することで成長してきました。ところが今はその空席が出にくくなっているというわけです」

小谷:空席が出にくくなったのはなぜですか?


 「原因は大きく2つあります。1つは中国人をはじめとした新興国の旅行者の急増です。そして2つ目が機体の小型化です」


小谷:中国人をはじめとした新興国の旅行者の急増で空席がだんだん取れなくなってきたということですが。

 「中国人の海外旅行者は日本だけではなく世界各地で爆発的に増加しています。日本発着便はもちろん混雑しています。また、欧米などに安く行きたいときに例えば韓国の仁川経由で欧州へ向かいますが、この経由地の発着便も中国人旅行者の増加により混雑するようになっています。

 さらに、中国人旅行者は数が多く今後も成長が見込めるため、日本の旅行会社はホテル客室の仕入れで彼らに買い負けるようになってしまいました。日本人は買い手として相対的に弱くなってきているという一面もあります」

小谷:2つ目が機体の小型化ということですが、これはどういったことでしょうか?

■機体の中型化も逆風

 「技術の進化が背景にあります。昔は燃料タンクが大きくないと遠くまで飛ばせないため燃料タンクの大きさに合わせて機体も大型が主流でした。しかし現在は機体の軽量化などで燃費がよくなり中型機が主流になっています。座席も少なくなり、先ほどの中国人旅行者の急増とあいまって、ますます混雑する傾向にあります。


 このため旅行会社は座席を安く仕入れることができなくなり、コストが上がりました。さらに最近は航空会社が直接、インターネットで座席を販売するようになりましたし、日本語で予約が可能な外国の旅行サイトもあります。若い人を中心に、旅行会社を通さずに直接、航空券やホテルを予約する人も増えています。このため、てるみくらぶはシニア層を取り込もうと新聞広告に力を入れましたが、経費がかさんで業績が悪化。破綻に追い込まれてしまいました」


小谷:今回の破綻では、支払い済みのお金がほとんど戻ってこないのではないかとも言われていますが、保証制度はどうなっていますか?

 「日本の旅行会社の場合、破綻をしてもある程度のおカネが返金される弁済業務保証金制度という仕組みがあります。これは旅行会社が売上高に応じてお金を共同でプールしておき、参加企業が破綻したときに、その会社のプールしたお金に応じてその何倍かのお金を元手に、代金を先払いしていた旅行者に返金するという仕組みです。


 今の制度が始まった2006年以降、42件の弁済案件があったのですが、このうち31件で弁済を申し立てた客に全額返金できており、残り11件もおおむね3割から9割が返金されました。ただし、てるみくらぶの場合は、1%ぐらいしか返金されないだろうと言われています。現時点の情報で旅行者向けの債務が99億円と前年度の売上高195億円と比べ異常に大きく、このことが被害を大きくしている面があります」


小谷:なぜ、負債がそこまで膨らんでしまったのでしょうか?

 「普通、破綻する企業は売上高も減っていくので、客への負債はそう膨らまないのですが、てるみくらぶのケースはかなり不自然と言わざるを得ません。決算を粉飾していた疑いも出ていますし、間際になって運転資金をかき集めたのではないかという疑念の声も上がっています。こういったおかしな経営をしている旅行会社があったとき、どうすれば被害の拡大を防げるかは今後大きな課題といえます」

小谷:大型連休が直前に迫り、夏休みの旅行の計画もそろそろ立て始める頃かと思いますが、消費者が気をつけるべきことはありますか?

■追加の保証制度加入がポイントに


 「旅行会社の選び方でポイントがあります。従来の弁済業務保証金制度に上乗せするボンド保証制度という保証制度があるのですが、そもそも経営に余裕があり、顧客への補償への意識も高くないとお金を出せないので、旅行会社がこのボンド保証制度に加入しているかどうかが判断基準になるかと思います。加入していれば、このマークが店頭やパンフレットに掲示されていますので、参考にしていただきたいと思います」


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