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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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宮里藍は、女子ゴルフ界の大型化・パワー化に対応できなかった

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旧聞ですが、宮里藍が引退表明、そして一説によれば最後の日本ツアー参加となるらしい「サントリー・レディース」出場が話題になりました。

> 涙、涙の国内ラストゲームになった。今季限りでの引退を表明した宮里藍(31=サントリー)は33位から出て5バーディー、4ボギーの71で回り通算2アンダーで26位で終えた。今大会が国内最後の試合となることが確実で、表彰式後には涙ながらにファンにあいさつした。キム・ハヌル(28=韓国)が通算15アンダーで今季3勝目を挙げた。 

 これが最後――。宮里は18番グリーンに上がる前に一礼し、会場に足を運んだ9000人以上のギャラリーへ感謝の気持ちを表した。「一人一人ありがとうと言いたいけど、それはできないので精いっぱいお伝えしたつもりです」。5メートルのパーパットを沈めて、事実上の国内ラストゲームを締めくくると目を拭った。

(後略)

私はまったくゴルフには弱い人間ですが、しかし宮里藍のことは彼女がプロデビューする前から見たり知っていました。つまりは彼女は、ゴルフに興味のない人間にすらその名が知られるくらいの有名人だったわけです。

まだ今年(2017年)は半分も終わっていませんが、好き嫌いはともかく日本人なら誰でも知っているといって過言でない超有名女性アスリートが浅田真央に引き続いて引退したのだなと思いました。それで気付くに、浅田真央と宮里藍ってだいたい現役が重なっていますね。浅田が世間で名を知られるようになったのがだいたい2005年であり、宮里はアマチュアでプロトーナメントに優勝したのが2003年、引退が同じ年ですから、ほぼ同じ時期に活躍したアスリートということになるでしょう。年齢は宮里のほうが5歳上です(1985年生まれ―1990年生まれ)。

宮里藍の場合、あのいかにも沖縄出身者らしい強い顔が印象に残ります。3人きょうだい全員がプロゴルファーというのも、考えてみれば姉もフィギュアスケーターである浅田と共通しますね。

報じられるところによれば、家族、スポンサーばかりでなく、仲のいい選手たちにも昨年の段階で今シーズンでの引退の意向は伝えていたということですので、当然マスコミにもかなり詳細な情報は伝わっていたのではないかと推察します。それで実は私は、宮里って今年は日本でずいぶんプレーするなあと考えていました。上にも書いたようにゴルフに弱い私でもそんなことを感じたくらいですから、ゴルフファンの人は同じようなことを考えたかと思います。彼女の引退のニュースを聞いて、ああそういうことか・・・というところかもしれません。

私が宮里で印象に残っているのが、彼女の後輩、誰かは覚えていませんが、あるいは宮里美香だったかな? が(たぶん初)優勝したとき、笑顔で両手を広げてその選手にかけよって抱きしめたことです。プロのアスリートなら、かわいい後輩だったとしても他の選手の優勝を公然と祝福してはいけないのかもですが、たぶん宮里藍という人は、そういうことをする性格であり、また立場であるということでしょう。

さてさて、宮里藍は、引退の理由として次のように語っています

>モチベーション(意欲)の維持が難しくなったのが一番の決め手。難しくなったと感じたのが4〜5年前。自分の中でも、どう消化していけばと手探りで進むしかなかった。プロである以上、結果は残したい。自分が求めている、理想としている姿はそこにはもうなかったので、こういう形になった

この「モチベーション(意欲)の維持が難しくなった」というのは、つまりは現在の彼女の戦績と表裏一体なわけです。メキシコのロレーナ・オチョアは世界ランキング1位のまま引退しましたが、たぶん宮里は、現在世界ランキング1位なら引退はしないでしょう。今後かつてのような成績を残すのは難しいと認めざるを得ないから引退を決意したのだと思います。

さてそうとなると、宮里藍はなぜ不調に陥ったかですが、これはもっぱら腰痛とかパットの正確さが失われたからだとされています。私はまったくゴルフには詳しくないので、パットうんぬんについては統計の数字を見ることしかできませんが、腰痛というのはつまりゴルフというスポーツの宿命みたいなものでしょう。そしてより本質的には、身長155cmという彼女の体格では、なかなか世界のトップに立つのも維持するのも難しい時代になって来たのだと思います。

私の持論に、スポーツというのはレベルが上がると選手が大型化し、パワーが重要になるというのがあります。たとえばサッカーも、かつてはマラドーナの身長160cm代前半というのは別格としても、ペレもジーコも決してそんなに大柄ではありませんでした。だいたい170cmかそれをちょっと超えるくらいです。大男の民族であるオランダ人のクライフ(Wikipediaによれば176㎝。以下出典同じ)も、仲間のニースケンス(178㎝)などのすごい選手も、これまたオランダ人としてはそんなに背は高くない。しかし現在のスーパースターたち、クリスチャーノ・ロナウド(185㎝)など大型化が進んでいるし、メッシ(169㎝)や引退した選手ですがラームのような170cmというのはかなり小柄です。日本代表に限っても、かつては170cmそこそこの選手もけっこういましたが、現在はそうでもない。GKも、大型化がすすんでいるのは言うまでもありません。

ラグビーも、日本のレベルでしたらロックで190cmというのは80年代から90年代のラグビーではすごい長身でしたが、現在のラグビーではそんなことはありません。95年のRWCで活躍したニュージーランドのロムー(前にも記事でご紹介したように若くしてお亡くなりになりました)が196㎝という身長でウィングであり、同じ95年のRWCで活躍したこれも最近亡くなった南アフリカのSHファン・デル・ヴェストハイゼンなどは、188㎝でした。当時はSHでは異例の長身でしたが、現在は選手の大型化が進み選手の底上げも進んでいます。95年はラグビーのプロ化が進んだ時代でした。この大会で日本がNZに145-17という空前絶後の大敗をした理由も、その1つはちょうどプロ化の過渡期の時代で、日本がプロ化にまったく対応できていなかったことが大きな要因です。

野球に関しては、私は詳しくないので良く知りませんが、たとえば王とか長嶋といった人たちは身長が180cmに満たないわけです。それで松井秀喜とか大谷翔平とかのような化け物みたいな連中はやはり190㎝前後の身長はあるし、また抜群のパワーを持っている。パワー系のアスリートでないイチローも180cmを超えている身長です。もちろん以前も大男の野球選手はたくさんいましたが、選手全般における身長の伸び、パワーの増強は間違いないところです。

これがたとえば背が高いことが圧倒的な武器となるバスケットボールやバレーボールなどになったら、選手の身体のレベルが高くなったら日本の女子バレーも非常に厳しい戦いを余儀なくされます。欧米や中国の選手たちの身長とパワーはやはり日本と違います。

そしてゴルフ界も、やはりパワー化が進んでいるわけです。宮里の155cmという身長は、日本人女性の平均身長より低い。いくら運動神経が良く筋肉の質も高く、日々努力を怠らなくても、正直負担の大きさが体格のいい選手とは比較にならないくらい厳しいわけです。そう考えると彼女が昨今あまりいい成績を出せないのも仕方ないでしょうね。身長と体格がハンディになる。これはどうしようもない溝です。なおオチョアの身長は、Wikipedia英語ばんによると168㎝とのこと。

そうすると、宮里の言う

>難しくなった

というのもよくわかります。もはや自分のような体格の人間が活躍するのが難しい時代になっていると彼女も感じているのでしょう。いや、宮里が世界ランキング1位になった時だって彼女の体格は活躍するためには大変なハンディだったはずですが、それをはねかえしての活躍を長期間維持するのは難しいということです。できない相談ということでしょう。彼女は、選手以外のことでもゴルフに関していろいろ活躍できる人間ですから、今後はその方面で動くという考えなのだと思います。

宮里藍さんの今後に期待してこの記事を終えます。なお写真は、サントリーレディースの最終日のものです。


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