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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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これはなかなかすごい記事だ(江川紹子執筆の窃盗癖についての記事)

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過日こんな記事がありました。

>マラソン 原裕美子容疑者“万引き”で逮捕

2017年8月17日 15:37

 世界選手権にも出場した元マラソン日本代表の女が、栃木県足利市のコンビニエンスストアで化粧品などを万引きしたとして逮捕された。

 警察によると、窃盗の疑いで逮捕された元女子マラソン日本代表の原裕美子容疑者(35)は先月30日、足利市のコンビニで化粧水やジュースなど8点、2673円相当を万引きした疑いがもたれている。店が商品の在庫を確認した際に数が合わなかったことから、警察が防犯カメラの映像などを確認したところ、原容疑者が浮上したという。

 原容疑者の父親「いつどこで何をやったか何もわからない。(警察が来たときに)自分(本人)は気がついていた」「(Q.あのことかなみたいな?)そんな感じですね」

 調べに対し、原容疑者は「間違いありません」と容疑を認めているという。原容疑者は2007年の大阪国際女子マラソンなどで優勝経験があり、日本代表として世界選手権に2回出場していた。

事情が分からないのでなんともいえませんが、化粧品とか清涼飲料というのは、ちょっと万引きをするにしても意味の分からないものです。あるいは私が何回かご紹介している窃盗癖である可能性がありますね。そうでないのかもしれませんが、マラソンで世界選手権6位にもなった選手ですら、理由はともかく万引きをするというのがものすごく重大な事態なような気がします。原裕美子が生活苦なのかは当方の知るところでありませんが、仮にそうであっても本質的な問題ではないのではないかと私は(勝手に)考えます。それで彼女のお父様が次のように語っていますね。

>原容疑者の父親「いつどこで何をやったか何もわからない。(警察が来たときに)自分(本人)は気がついていた」「(Q.あのことかなみたいな?)そんな感じですね」

お父様のこの発言が事実かどうかわかりませんが、彼女の万引きはたぶん経済的な問題ではないのだろうなという気が(勝手に)します。

今回の万引きが初犯なのか、つかまっていなくても初めてではないのではないかと考えていました。そうしたらやっぱりです。

元マラソン代表・原容疑者「他にも万引き」

2017年8月18日 10:29

 元マラソン日本代表の女が、栃木県足利市のコンビニエンスストアで万引きしたとして逮捕された事件で、女が「他にも万引きをしていた」などと供述していることが分かった。

 18日朝に送検された元女子マラソン日本代表の原裕美子容疑者(35)は、先月30日、足利市のコンビニで化粧水やジュースなど8点、2673円相当を万引きした疑いが持たれている。

 原容疑者は警察の調べに対し万引き容疑を認めているということだが、その後の捜査関係者への取材で、原容疑者が「他にも万引きをしていた」などと供述していることが新たに分かった。警察は原容疑者の供述の裏付けを進める方針。

 原容疑者は、2007年の大阪国際女子マラソンなどで優勝経験があり、世界選手権にも2回出場していた。

また私が心配に思うのは、彼女は元マラソンランナーだということです。となると現役時代は食事なども厳しくコントロールされていたわけで、摂食障害を起こしていた(いる)可能性が一般人より高い。窃盗癖と摂食障害は重なり合う場合が多いので、このあたりも「あるいは・・・」と思わせる部分があります。これは私の当て推量でしかないのでなんともいえませんが。また上での万引きは、報じられている限りでは、清涼飲料であって、一般の食品ではないですね。それとも多食だけでなく多飲も?

なんてことを書いていたら、もう結論が出ていました。江川紹子の記事です。昨日(22日)の発表です。

女子マラソン元日本代表の万引き事件からみる、女子アスリートと摂食障害の問題

> コンビニエンスストアで万引きした疑いで逮捕された、女子マラソン元日本代表選手の原裕美子さんが、現役時代から摂食障害を患っていたことが分かった。万引きは、摂食障害にしばしば伴う問題行動として知られており、専門医は「摂食障害患者の万引きの多くは、症状の1つ」と指摘している。

>「吐くと体重が減って、調子がよく、いい成績が出た。それから、(嘔吐を)やめるのが怖くて……やめられなくなった」(原さん)

>「摂食障害による万引きの典型ですね」――そう指摘するのは、日本摂食障害学会副理事長の鈴木眞理医師(政策大学院大学教授)だ。

詳細は、リンク先の記事を読んでください。

それにしても逮捕というのは、警察もかなり悪質と考えているということです。石原真理子が万引きをしたというニュースでも、彼女は逮捕まではされていないらしい。上の金額程度ならすぐ弁償できるでしょう。ご当人罪は認めているらしいし、それで拘留というのはそれなりの重大さを警察が考えているということでしょう。

私はあんまり日本の陸上選手に詳しくないので彼女のこともよく知りませんが、今回は仮に不起訴で済むとしても、このようなことを繰り返すと執行猶予付き有罪判決をうけて、次は実刑なんて事態にもなりえます。事実最近の女子刑務所は、この種の意味のない万引き(窃盗)を繰り返す人たちであふれているようです。こちらの記事を読んでください。私が以前ご紹介した記事です。

>摂食障害:女性被告に実刑判決…服役待機中に食品万引き

毎日新聞 2013年11月06日 22時12分

 窃盗罪で実刑が確定した後に半年以上刑務所に収容されず、その間に食品を万引きした摂食障害の女性被告(31)に対し、さいたま地裁は6日、懲役2年2月(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。弁護側は「収容を待つ不安と恐怖で大量の精神安定剤を飲み、心神喪失状態だった」などと無罪を主張していたが、西村真人裁判官は「障害克服に向けた努力を怠っており、摂食障害を有利に考慮するのは相当でない」と述べた。

 判決によると、被告は5月、埼玉県内のスーパーで牛肉など10点を万引きした。別の万引きで昨年10月に実刑が確定し、服役を待っている間だった。今回の判決が確定すれば、前の刑の懲役1年2月が加算される。

 女子刑務所は過剰収容状態にあり、被告と同じように摂食障害の女性が食べ物の万引きを繰り返すことも一因になっている。【山田奈緒、石川淳一】

 ◇被告「治したい」
 被告は判決前の1日、さいたま拘置支所(さいたま市)で取材に応じ、「自分の意思だけでは万引きをやめられなかった。少しでも前を向けるようになるため、治療で摂食障害と盗癖を治したい」と語った。

 10代で食べては吐くことを繰り返す摂食障害になり、同時に食品などの万引きを重ねた。拘置支所でも症状は改善せず、吐いたものを再び口に詰め込んだこともある。

 逮捕前、入院先で同じように摂食障害と衝動的な万引きに苦しむ仲間と出会い、文通が心の支えになっているという。15分間の面会で被告は「ちゃんと治したい」と繰り返した。【山田奈緒】

執行猶予中に(意味のない)万引きをするということ、服役待機中に(意味のない)万引きをするということ、拘置所の中でも吐き出したものを口に入れるというのも、なんともすさまじいものがあります。そしてこの件について興味深い記事がでました。江川紹子を好きなわけではありませんが、これはなかなかすごい記事です。

【塀の中の摂食障害】女子刑務所の患者増加~彼女たちはなぜ万引きを繰り返すのか

私が衝撃を受けたのがこちら。

>「吐いちゃいけない」と思うと、余計に吐きたい衝動にかられる。どこからか「吐け!」という”悪魔のささやき”が聞こえた。その”声”は、万引きへと彼女を突き動かすスイッチにもなった。

>幸せの絶頂期。それが暗転したのは、結婚式を3週間後に控えて実家に帰った後だった。実家で母親と喧嘩になった。それが引き金になったのかもしれない。東京に戻り、職場の上司を訪ねる際の手土産を買おうとデパートに入った時、あの「吐け!」という声が聞こえた。その後の記憶はない。気がつくと、和菓子を万引きしたとして、警備員に捕まっていた。

 これまでの事件も、万引きする時のことはほとんど覚えていなかった。店内のビデオを見ると、自分が商品を盗っているのは確かなのだが、どうしても状況が思い出せない。後に、2つの医療機関から「解離性障害」と診断された。摂食障害は、このように他の障害や病気と重なる場合もある。

>勤務先が北関東に変わった夫との新婚生活が始まった。環境の激変で、ストレスがたまり、またもや食べ吐きの衝動を抑えきれなくなった。ある日、買い物に出掛けると、また「吐け!」の声が聞こえた。

 はっと気がついたら、警備員に捕まって、店の事務所に連れて行かれていた。カバンにパンやお総菜を詰め込んでいたのだった。

これ読んでいて、正直背筋が寒くなりました。

こういうくだりを読んでいると、やはり江川って人は優れたジャーナリストなのかなと思います。幻聴が聞こえて意識が飛んで、万引きをする・・・というのは、他人に理解できるものではないし、家族も周囲も司法も、厄介にも程があるというものです。この記事が発表されたのが8月16日、原裕美子の万引きが報道されたのが17日、最初に紹介した江川の記事が昨日23日の発表です。私が腹の万引きの記事を読んで、あ、これもしかしたら窃盗癖かもと考えたのは、前々から私がこの件に興味関心があったことと、直前に江川の記事を読んだからです。

私もさすがにこのような事件で「心神喪失状態だ。罪に問うべきではない」と主張するつもりもありませんが(主張したところで現状ちょっとどうにもならないでしょう)、ただ刑罰や刑務所、人間関係など、このような行為をためらわせるいかなる要素も、すべてを超越しちゃっていますから、店や警察、家族などからの繰り返しの説諭、検察による起訴、裁判所による実刑判決、刑務所内の忍耐・屈辱、家族関係・人間関係の破壊、勤務先解雇などによる経済的損失、すべてが彼女らの行動を止めることができなかったのだから、やっぱり逮捕→起訴→実刑→それに付随する様々なトラブルだけで話を終わらせたらどうしようもないわけです。

それで私は、このような事件の加害者は、釈放後に精神科の治療を受けることを義務付ける必要があると思います。精神科医がスコアをつけて、一定の点数を超えたら釈放後に強制治療を受けさせるくらいのことをしたほうがいいのですが、しかし人権や予算の問題があるから難しいでしょうね。コストという点で言えば、むしろ一定レベルで治療効果が見込めれば、多少は再犯率が減るわけで、刑務所の維持管理費その他もプラスではありますが、でも治療でどれくらい抑えられるかという問題はあります。

いずれにせよ「窃盗癖」あるいは医学的にそう診断されなかったとしても、万引きを繰り返す人間への対応というのは率直に言って司法その他の直面する大問題ですね。刑務所の収容人員の問題から刑罰の厳罰化にいたるまでいろいろ議論はあるでしょうが、世の中こういう無意味な犯罪で無意味に前科を重ねていれば社会に居場所がないし、それで失職、家庭生活の破綻(離婚もそうだし、親や子とのトラブルも深刻です)、世間の冷たい目、その後の人生の困難さ、本人だけでなく社会が背負うコストもあまりに甚大です。

それにしても

>どこからか「吐け!」という”悪魔のささやき”が聞こえた。その”声”は、万引きへと彼女を突き動かすスイッチにもなった。

というのもすごいし、前にご紹介した

>最初の万引きは十数年前。15年ほど別居していた夫が「体が悪い。面倒を見てくれ」と戻ってきたのがきっかけだった。寝たきりの夫から毎日、食べたいものを書いたメモを渡された。仕事をしながら、メモ通りの食品を買って渡す日々。「なぜ、こんな人のために」。お金に困っていたわけではなかったが、怒りで冷静さを失い、総菜を万引きした。

 3回目に店員に見つかった。この時は警察に引き渡されずに済んだが、捕まる怖さをイライラが上回り、やめられなかった。ついに逮捕され、執行猶予判決が確定したが、店に行くと「次は刑務所」という考えも「飛んでしまった」。実刑判決を受け、65歳で初めて刑務所に入り、1年半服役した。

というのもどうしようもないですね。「吐け!」も「イライラ」も、別にそれ自体が万引きと直結しているわけでない。人間の脳内の奇怪な構造が奇怪に働いて、このような奇怪な行動に出てしまうわけです。それでこのような件は、本当に万人が不快になります。本人、家族、友人、職場などのの同僚、店の人、警察、検察、弁護士、裁判官、看守、囚人仲間、医療スタッフ、この話を書くライター、担当編集者、読む読者、それを紹介する私、この記事を読むあなた、たぶんみな不快になるでしょう。意味なく不快になる。実に救いがありません。


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