まずは記事を読んでください。
>犯罪白書:65歳以上の高齢女性の万引き急増 刑務所へも
毎日新聞 2013年11月15日 10時29分(最終更新 11月15日 13時49分)
法務省は15日、「女性の犯罪・非行」を特集した2013年版の犯罪白書を公表した。昨年、刑法犯で検挙された65歳以上の高齢女性は全年齢層の27%を占め、1993年の6%から20年間で大幅に増えた。特に万引きで検挙される高齢女性が目立っている。
白書によると、昨年の女性刑法犯6万431人のうち65歳以上は1万6503人で、万引き(窃盗罪)が82%(1万3482人)を占めた。高齢男性の刑法犯のうち万引きは47%で、女性の方が際だって高い割合だった。
昨年、窃盗罪で刑務所に入った高齢女性は、やはり全罪名の82%に相当する234人。93年の18人から13倍に増え、万引き常習者が相当の割合になるとみられる。
万引きを含む窃盗には、薬物や性犯罪のような全刑務所共通の改善指導プログラムがなく、個々の施設が独自の再犯防止指導をしている。全国の9女子刑務所のうち、独自の指導をしているのは5施設。法務省矯正局は「高齢女性の窃盗の背景にはさまざまな要因があり、全国一律のプログラムは難しい」としている。
太田達也・慶応大法学部教授(刑事政策)は「高齢女性の犯罪増加の背景は経済的困窮や福祉の問題だけでなく、家族や近隣、行政から孤立し、心理的な閉塞(へいそく)感とともに支援を受けられなくなっていることが考えられる。万引きなど比較的軽い罪で起訴猶予となる者も、刑務所から釈放される者も、社会の中で孤立しないよう見守る仕組みが必要だ」と指摘している。【伊藤一郎】
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>犯罪白書:万引き高齢女性「イライラ募って…」と胸中
毎日新聞 2013年11月15日 10時46分
万引きで検挙される65歳以上の高齢女性が右肩上がりで増えていることが、15日に公表された2013年版犯罪白書で明らかになった。「イライラが募り、後先のことなんて考えられなかった」。刑務所から仮出所中の女性(67)が毎日新聞の取材に応じ、万引きを繰り返していた時の自分をそう振り返った。
最初の万引きは十数年前。15年ほど別居していた夫が「体が悪い。面倒を見てくれ」と戻ってきたのがきっかけだった。寝たきりの夫から毎日、食べたいものを書いたメモを渡された。仕事をしながら、メモ通りの食品を買って渡す日々。「なぜ、こんな人のために」。お金に困っていたわけではなかったが、怒りで冷静さを失い、総菜を万引きした。
3回目に店員に見つかった。この時は警察に引き渡されずに済んだが、捕まる怖さをイライラが上回り、やめられなかった。ついに逮捕され、執行猶予判決が確定したが、店に行くと「次は刑務所」という考えも「飛んでしまった」。実刑判決を受け、65歳で初めて刑務所に入り、1年半服役した。
今は夫から離れ、東京都渋谷区の更生保護施設「両全会」で立ち直りに向けた生活をしている。「なんてバカなことをしたのか。理性が働かなかった」と悔やむ。
両全会の小畑輝海理事長は「万引きの動機は人それぞれだが、地域や家族の絆を失った人が多いように感じる。施設では、出所者の人間性を回復するため、民間ボランティアなど他人と会話する機会をなるべく多く設けるよう努めている」と話している。【伊藤一郎】
最後の記事は、上の2つの記事とはやや事情が異なりますが、同じ万引きの関係です。
>摂食障害:女性被告に実刑判決…服役待機中に食品万引き
毎日新聞 2013年11月06日 22時12分
窃盗罪で実刑が確定した後に半年以上刑務所に収容されず、その間に食品を万引きした摂食障害の女性被告(31)に対し、さいたま地裁は6日、懲役2年2月(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。弁護側は「収容を待つ不安と恐怖で大量の精神安定剤を飲み、心神喪失状態だった」などと無罪を主張していたが、西村真人裁判官は「障害克服に向けた努力を怠っており、摂食障害を有利に考慮するのは相当でない」と述べた。
判決によると、被告は5月、埼玉県内のスーパーで牛肉など10点を万引きした。別の万引きで昨年10月に実刑が確定し、服役を待っている間だった。今回の判決が確定すれば、前の刑の懲役1年2月が加算される。
女子刑務所は過剰収容状態にあり、被告と同じように摂食障害の女性が食べ物の万引きを繰り返すことも一因になっている。【山田奈緒、石川淳一】
◇被告「治したい」
被告は判決前の1日、さいたま拘置支所(さいたま市)で取材に応じ、「自分の意思だけでは万引きをやめられなかった。少しでも前を向けるようになるため、治療で摂食障害と盗癖を治したい」と語った。
10代で食べては吐くことを繰り返す摂食障害になり、同時に食品などの万引きを重ねた。拘置支所でも症状は改善せず、吐いたものを再び口に詰め込んだこともある。
逮捕前、入院先で同じように摂食障害と衝動的な万引きに苦しむ仲間と出会い、文通が心の支えになっているという。15分間の面会で被告は「ちゃんと治したい」と繰り返した。【山田奈緒】
前に、窃盗癖のある人(窃盗症)の記事を書いたことがあります。その際にいくつかコメントをいただきましたが、コメント返しはしませんでした。ごめんなさい。で、上で紹介した件が「窃盗症」かどうかはともかくですが、しかし困りますよねえ、上のような人たちは。
こんな奴らは厳罰にしてやれって、執行猶予判決や実刑判決まで科せられていてそれでなおやっちゃうんだから、これまたどうしようもないですね。さいたま地裁で判決を受けた女性にいたっては、実刑確定後にまでそんなことをしているのだからお話にもなりません。収監される恐怖すらこの愚行を防げなかったのだからひどいものです。
別に私は、この女性を無罪にしろとか主張するつもりもありませんが(刑務所に入るのは仕方ないでしょう)、やはり精神医療とセットにして考えないとこの件はあまり前向きな解決が望めませんね。刑務所に入って改心すればいいですが、残念ながらそうでもない人が少なくなさそうです。
ところで、前の記事を書くきっかけになった「報道特集」でも、摂食障害と万引きの関係はとりあげられていて、苦しんでいる人たちや治療の様子なども報道されていましたね。摂食障害という精神障害が、「万引きをしない」という程度の社会規範を守るという規範意識や社会常識を遵守することすらも侵害してしまうんですかね。ほんと、救いがありません。
それにしても、こういうことってほんとに万人が不快になるし迷惑になるし不利益をこうむるわけで、きわめて絶望的な気分になりますね。消費社会とか、モノがあふれる時代であるとか、万引きを誘発しやすい社会になったということもこのような犯罪が目立つようになった要因でしょう。あるいは、上の記事での指摘にもあるような、核家族化などによる人間関係の変化なども理由にあるのかもしれません。そして、消費社会であることや、核家族化、ということは、別に「悪い」ことじゃないですしね。いや、もしかしたら「悪い」ことなのかもしれませんが、仮にそうであっても消費社会化や核家族化の進行がとどまることはないでしょうから、そんなことを議論しても仕方ありません。
けっきょくこれは、、社会が更正プログラムを作ってこういう人たちに対応するしかなさそうですね。公金がかかりますが、刑務所を混雑させるよりはいいかも。
で、こういうことを書くのはどうかかもしれませんが、つくづく私、こういう窃盗癖とかがなくてよかったと思います。幸い、私の知る限り私の身内にもそういう人はいません。統計学的には、そういう人はいなくて当然なのかもしれませんが、それはともかく、よかった、(少なくとも)現段階では私、こういうことと無縁で。