Quantcast
Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

ソフト化されていない珍品映画『孤獨の人』を観てきた

$
0
0

前にこのような記事を書きました。

情報(藤島泰輔原作で西河克己監督の『孤獨の人』が、横浜で上映される)

で、嬉々として観にいきました。映画の出来はともかく、やはりエポックメイキングな映画であることは確かでしょう。

それで私の正直な感想を書きますと・・・。

意外とまともな映画だなというのが正直なところです。さすがに「名画」とか、観てよかったと思うような映画ではありませんが、それなりに面白く観ることができました。

脚本を書いたのは、中沢信という人で、数年しか活動しなかった人ですが、あるいは有名な人の筆名かもです。

映画は小説をだいぶ再構成、映画化できる部分に絞り込んでいて、修学旅行も奈良でロケ(原作は東北)したりと、あまり出来がいいとは言えない小説を、映画のシナリオとしてうまく再構成していると思います。西河監督も、彼からすればまさに仕事としての映画で、あまり芸術家として創作意欲がかきたてられるようなものでもないでしょうが、それなりに手際よくまとめているなというのが個人的な感想です。

事前の予想では、これは相当なキワモノ映画ではないかと思ったのですが、そうでもありませんでした。皇室がからむので、右翼系の連中の抗議などにも対応しなければいけないし、そのあたりは丁寧に作ったということなのでしょう。

さて、この映画で話題になったのが、皇太子を演じたのが、黒沢光郎という公募で選ばれた人物で(この映画のみの俳優活動だった模様)、しかもWikipediaの記述を借りれば

>画面上ではロングショットや主観ショットのみで、白い手袋をして登場した

というわけで、顔はあからさまには写らないわけです。

ここでちょっと考えるに、明治天皇や昭和天皇は、たまに映画やテレビドラマなどにも登場します。たとえば、先日までNHKでやっていた『西郷どん』では、明治維新とかを舞台にしますから明治天皇が当然登場するし、昭和天皇も敗戦時を扱ったドラマでは登場します。しかし大正天皇が映画やドラマに出てくるということはあまりないし(当方見たことがなく、大正天皇のWikipediaにも記載はありません)、たぶん現天皇も、今後役として映画やドラマにでてくるこということは、あまりないんじゃないんですかね。象徴天皇になって政治実権がなくなったから、出す意味がない。そう考えると、明仁という人が、登場人物として本格的に登場する映画は、これが最初で最後かもですね。いや、あるいはほかにもあるのかもですが、でも「孤独の人」(孤獨の人)を今後再映画化、ドラマ化されるということもあまり現実味がありません。

ところでこの映画とだいたい同じ時期の制作といっていいでしょう、『ベン・ハー』という有名な映画がありますが、この映画でもイエス・キリストは正面からは写されません。まったくどうでもいい話ですが、これが日本初の天覧映画になったとのこと。いずれにせよ、イエスを映画でどう扱うかということも、映画史におけるいろいろな論争点であるし、問題点であるということかと思います。もちろん同時代の存在である皇太子と、映画制作時で1900年強の昔の、しかも歴史的な厳密さでの描写でなく、聖書や様々なフィクションのオブラートに包まれたイエスではまた立場も状況も違いますが、たとえば北朝鮮の映画で、金日成をどう描写しているかなんてのも、いろいろ興味深いものはありそうです。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>