昨日(2月4日)にあったニュースを。NHKのサイトより。
>警察官射殺 元巡査に懲役25年求刑「未成年考慮の必要なし」
2019年2月4日 18時15分
去年、滋賀県彦根市の交番で教育係の上司を拳銃で撃って殺害した、当時19歳の元巡査の裁判で、検察は「現職の警察官が起こした前代未聞の事件で、未成年だったことも考慮する必要はない」などとして、懲役25年を求刑しました。
当時19歳の元巡査は、去年4月、勤務していた彦根市の交番で、教育係だった上司の井本光巡査部長(41)を拳銃で撃って殺害したとして、殺人と銃刀法違反の罪に問われています。
大津地方裁判所で開かれた4日の裁判員裁判で、検察は「当時は精神的に追い込まれていたが、判断能力がそれほど低下していたとは言えない。現職の警察官が貸与された拳銃で起こした前代未聞の事件で、強い非難に値する。みずから志望して警察官になり10か月間にわたって警察学校で学んでいるので、未成年だったことも考慮する必要はない」などとして、懲役25年を求刑しました。
一方、弁護側は「判断力と行動をコントロールする力が著しく低下していた」として、刑を軽くするよう求めました。
元巡査は最後に「今まで聞いたこともないような大きな事件を起こしてしまい、絶望の底に落とされたご遺族はもちろん、命を奪ってしまった井本さんに対して本当に申し訳なく思っています」などと述べ、井本さんの妻に向かって頭を下げ謝罪しました。
判決は今月8日に言い渡されます。
それで犯人の主張によると、この事件で文字通り犯行の引き金になったのが、どうも教育係の巡査部長の言葉にあったようですね。こちらより。
>家裁は決定理由で、犯行の動機を「上司である被害者からの指導や扱いに不満や不遇感を募らせていた中、被害者に両親を侮辱されたと感じた」と指摘。犯行の悪質性や社会的影響を含む結果の重大性、動機の身勝手さを挙げ、元巡査の思考傾向の特性や反省の状況を考慮しても、刑事処分以外の措置が相当とは認められない、とした。
断っておきますが、監視カメラはあったようですが、録音はされていなかったようですから、実際にどういう会話があったかはわかりません。そもそも本当に、殺された(当時)巡査部長がそのような発言をしたかも定かでありません。が、ここでそれを言ってもしょうがないので、ここでは確かにそういう発言があったということを前提とします。こちらによると、
>お前があほなのは、親があほなんちゃうけ
という発言があったとのことです。
これ、当時の巡査部長の真意はまたわかりませんし、この程度のことは、警察社会では珍しくとも何ともないものなのかもですが(どうなのか知りません)、いい年した大人が、成人直前とはいえ未熟な少年に言う発言としてはどうもなあと個人的には考えます。もちろんこんな程度のことで殺人なんかする価値もないと思いますが、この時は
>井本さんが死んだら楽になると考えるなど、まともに考えることも行動することもできず(拳銃の)引き金を引いた
と考えたとのことで、かなり発作的な犯行かと思います。たぶんですが、親がどうしたこうしたという一言がなければ、殺人にはさすがにならなかったんじゃないんですかね。なお、被害者の奥さん(この人も、滋賀県警の警官)は、同じ日に出廷して証言し、
>元巡査が犯行の直前に親の悪口を言われたと主張していることについては、「夫は理由もなく人を怒ったり愚弄したりするような人ではありません。他人の両親をばかにするようなことは言っていないと信じています。ふだんから友達とか家族を大事にしている人だったので、知らない人のことを悪いように言う人ではありません」と述べました。
と語ったとのことで、それはそう考える気持ちを私も理解しないではありませんが、家裁の決定などでも言及されているところからしても、それをどう評価するかはともかく、そのような発言はあった可能性が高いと関係者は考えているということは留意すべきだと思います。
それでこの件で私が思い出した事件があります。このブログでも数回取り上げている宮崎県の、義母と奥さん、子どもを殺害して死刑が確定した事件のことです。Wikipediaから引用すると、
>義母から犯行2日前に「部落に帰れ。これだから部落の人間は。」
という暴言があったようで、これがどうも事件に至る最終的な動機になったようです。慰謝料うんぬんの発言もあったようですが、この差別暴言(実際には、死刑囚は被差別部落出身ということもないようですが)には我慢がならなかったというところだったのでしょう。
でですよ、もちろん職場の上司である当時巡査部長と、同居していた義理の母親とでは、また立場も状況も異なりますが、どちらも家族とか故郷とか、その人にとってかけがえのないものに対して非常に軽率な暴言を吐いたということは、もし発言が事実であるのなら、共通はしていますよね。
宮崎の義理の母親のほうは、ろくに考えもせずに暴言を口にしたというところなのかもですが、当時巡査部長のほうはどうか。主観的には叱咤激励のつもりであっても、こういう事態になってしまってはしょうがありませんね。警察の取り調べなんかでも、親とかを侮辱したり罵倒したりするのがあるみたいですが、これも相当ひどい人権侵害ではあります。
警察の取り調べとかはまさに被疑者を動揺させて供述を撮ることを目的としているわけですが、そういうはじめから目的としてやっているとかは、もはやどうこう言う次元のものでもないですが、そして警察の教育マニュアル(?)のたぐいに、部下への指導でも同じようなことをしろと書いてあるかは当方知りませんが、やはりいい年齢の大人が言うようなものではないと思います。あらぬトラブルが生じる。言っている人は大したことはないと考えているのかもですが、世の中気にする人はものすごく気にするし、怒りも爆発させるわけです。そして誰が怒りを爆発させるかは、だいたいにおいて事前に予想がつきません。これを言ったら射殺されるとかハンマーで撲殺されるとかが予想できていればそんなことを言う馬鹿はいない。
殺された人たちは気の毒ですが(特にとばっちりを受けた宮崎の事件の奥さんと子ども)、殺されたり何らかの被害を受けたらほんと取り返しがつきません。自分から不幸を呼ぶことはないと思います。