先日こんな記事を書きました。
けっきょく日本側からは何もすべきでないと主張しているということだ(櫻井よしこの北方領土についての主張、ただし元島民ほかの関係者の賛同は得られていないと思う)それでこの記事を書いていてつくづく感じたのが、櫻井よしこって、北方領土についてロシア側と交渉しようという考えがまったくないということです。何しろ記事が、
>では日本ができることは何か。丸山氏の暴言のような「戦争」でないのは言うまでもない。
外交感覚を研ぎ澄まし、世界情勢をよく読み機会を待つことではないだろうか。ソビエト連邦崩壊の好機をとらえたのが西ドイツだった。ベルリンの壁の崩壊と世界史の大転換を巧みにとらえ、ドイツ統一を果たした。
あのとき、好機は日本にも与えられていた。しかしわが国の外交官は全く、その好機を掴めなかった。だが、必ず、チャンスはまた巡ってくる。情勢の大変化でロシアが困窮に至るときである。
それまでじっと私たちは見詰め続け、好機を窺い続けることだ。国家として長い闘いを勝ち抜く気力と気迫を持続することだ。
でおしまいですからね。ロシアが困窮にいたるなんてことがあるとは私には考えにくいのですが、ここは櫻井の意見に譲るとして、問題はその次でしょう。そのあとどう交渉するかです。でも櫻井は、それについて何も書いていないわけです(苦笑)。
だからその時点で日本はどうするのです。ロシア側に経済援助を持ちかけて北方領土を返還する交渉をするしかないと思いますが、櫻井がそのような当然の帰結を書かないのは、彼女がロシア側と交渉したくないということなのでしょう。で、これは私は断言しちゃいますと、そういう態度では北方領土なんかぜったい返ってきませんね。櫻井が、北方領土なんか返ってこなくても構わないと考えているか、どうせ北方領土の返還なんかないと考えているのかはつまびらかでないですが(たぶん彼女は、両方考えているのでしょう)、櫻井はそれでいいのでしょうが、やはりそういう考えはとてもよろしくないと思います。この櫻井の駄文には、この記事執筆時点(6月24日午後8時45分ごろ)でFBの「いいね!」が779ついていますが、たぶんこれをつけた人たちも大半は、櫻井同様「ロシアなんかと交渉しなくていい」「どうせロシアは北方領土なんか返還しない」と考えているのでしょう。私も正直、ロシアが北方領土を返還する見込みははなはだしく低いと思いますが。しかし交渉はすべきだと思います。交渉しないでは物事は始まらない。
それで「絶対先方と交渉したくない」という主張が跋扈しているのが、やはり北朝鮮・拉致問題ですよね。いかんせん何とも現状話の進展がない北方領土よりは、日本人拉致被害者5名の帰国を勝ち取った拉致問題のほうがはるかに交渉に意味があったと私は思いますが、巣食う会とか家族会の意見はそうではないようです。いや、上の櫻井よしこなんかはしょせん北方領土については部外者、善意の第三者というやつであって、彼女が何ほざこうが、上の記事のタイトルに私が書いたように、北方領土元島民ほかの関係者は、彼女のような意見に賛同はしてないでしょう。している人もいるかもですが、現段階そのような意見が主流になっているとか今後なるとは考えにくい。
が、拉致問題では、当事者である家族会がそのような主張に固執していますからね。そして家族会の絶対的なパートナーである巣食う会は、もちろん交渉絶対否定論者です。けっきょく拉致問題で、家族会の人たちの主張というのは、巣食う会の主張と変わらないんですよね。連中の意見が妥当ならそれでもいいですが、現状とてもそんなことをいえる状況ではない。先日の、横田拓也氏の発言より。
救う会:★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2019.05.07)家族会・救う会・拉致議連訪米4横田拓也さん訴え
> 日本の立場は一貫しており全拉致被害者の即時一括帰国が果たされない限り経済支援をする事はありません。
部分的な解決や段階的な解決では納得しません。
いやだからそういうことを言っていたら話が先に進まないでしょう。それがどうにかなるのなら、2019年の今日まで拉致問題がこんなような状況になっているなんてことはあり得ない。
>拉致被害者達を帰国させず、双方の国に事件究明の為と称する連絡事務所の設置や調査委員会の立ち上げと言う「聞こえの良い隠蔽工作」には絶対反対する立場を私達は貫きます。
これも同じじゃないですか。連絡事務所の設置は必須でしょう。これも、そういうことを拒否し続けていることが、2019年現在の状況であるということをなぜ認められないのか。米国とキューバだって、連絡事務所を設置して、双方ともどもいろいろ交渉や折衝をやっていたわけです。拒否する理由がない。それを設置するのが、なーんで聞こえの良い隠蔽工作なんですかね。そういうことを言っていたら、やっぱり話が先に進まない。国交樹立前、キューバで米国がスイス大使館でどのように動いていたかは、下の拙記事をお読みください。
まあつまりは、与党(自民党・公明党)の政治家も、(まともな人は)対北朝鮮対応に限界を感じているのだろうだいたい連絡事務所については、石破茂衆議院議員が昨年の自民党総裁選でも設置を主張したし、また日本政府(つまり安倍晋三ですが)も、その設置を北朝鮮側に打診したという報道もあります。そういうことを拓也氏は、絶対否定するのか。するんでしょうが、それではどうしようもないでしょう。
>私達は金王朝を打倒し、レジームチェンジさせるための政治活動をしている訳ではない。
いや、当方にはそのような活動をしているようにしか思えませんが。上で私が指摘したようなことは、「金王朝」を打倒するのだという決意と不可分じゃないですかね。つまり、このような主張は、けっきょくのところ、まったくもって巣食う会の主張でしかないわけです。
何回も同じことを書きますが、家族会は独自のHPすらも持っていないみたいで、巣食う会のHPを自分たちの情報発信に使用しています。これでは巣食う会の見解や意見から外れる主張をするのは難しいでしょう。現在の巣食う会は、家族会に対して「我々は皆さんを支援しますが、ご意見はご自由に」なんていう組織ではない。自分たちの意見を家族会に押し付けます。それで、巣食う会の意見を批判した蓮池透氏は、家族会を追い出される始末です。実際問題として、これは何回強調しても強調が足りないということはないので繰り返し主張しておきますと、2002年に日本に拉致被害者が返されたのは、日本側が北朝鮮に経済支援を約束したが故です。それをしなければ、今日でもたぶん拉致被害者は日本に帰国出来ていない。そういうことは、家族会と巣食う会は絶対認めないでしょうが、日本側の圧力に屈して北朝鮮が拉致被害者を返したなんて話には、なんの論拠もないわけです。
それでそういう基本的なことを認めたうえで話を考えないと、やれ経済制裁で圧力をかければ北朝鮮が白旗を上げるとかデタラメな話に終始します。昨年このような映画を観ました。
ワンダーランド北朝鮮(Wikipedia)
北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイ(公式サイト)
これらの映画を観れば、北朝鮮の現体制をどう評価するかはともかくとしても、とてもそんな容易に崩壊するような国家体制ではないことくらいは、誰だって認めざるを得ないとおもいますが、けっきょく家族会の人たちは巣食う会の主張をオウム返しに繰り返すだけじゃないですか。正直な話、家族会の人たちが巣食う会に「あんたたちの言っていることはあてにならん。もう縁を切る」と通告すれば、巣食う会なんてすぐ力を失います。解散を余儀なくされるでしょう。荒木和博や西岡力らも、力を無くすでしょう。が、現状、そのようなことを家族会がする可能性は低そうです。なぜかといえばその理由はいろいろでしょうが、けっきょく巣食う会が、家族会に「北朝鮮憎し!」と憎悪をたきつけていて、家族会のメンバーがそれに依存しているというところが大きいんでしょう。そういう現状を「悪い」と私が言う権利はないのかもですが、現実問題としては徹頭徹尾家族会が巣食う会に利用されつくされているだけじゃないですか。あまりにひどすぎて目も当てられません。それで、拓也氏の次の話を読者はどうお考えになりますかね。
>私の父は昨年4月から体調を崩し、入院を強いられています。救出活動の先頭に立っていた頃とは違い、驚くほど弱っています。
いや、これだって、もっと早い段階でさっさとお孫さんと面会できていれば、それが横田滋さんにとってずっとよかったじゃないですか。これも何回も書きますけど、彼と奥さんがお孫さんと長きにわたって面会しなかった大きな理由が、滋さんは奥さんに流されたのでしょうが、奥さんは、最終的には、巣食う会の主張する大要「まもなく北朝鮮の現体制は崩壊するから、急いで面会しなくてもいい」とかいうデタラメな話を真に受けたかどうかはともかく、それに従ったんじゃないんですかね。で、とてもそんな事態ではないと考えて、巣食う会にも家族会にも内緒にしてモンゴルで面会したと。そういうことをするのなら、蓮池透氏や元外務省の田中氏や小泉元首相に陳謝しろよとか、巣食う会と縁を切って家族会も脱退するべきじゃないのと私は思いますが、そういう行動をとっていないらしい(陳謝の件についてはあるいは陰でしている可能性もある、たぶんしていないと思いますが、断言はできないので、「らしい」と表現しておきます)というのもひどいですよねえ。どこまでデタラメでいい加減なのか。
なお今回の記事は、例によって例のごとく、bogus-simotukareさんの記事を参考にしました。感謝を申し上げます