映画監督の大島渚氏が亡くなったのは、2013年1月15日です。テレビのニュースでその死を知り、すぐに追悼記事を書いたことを覚えています。
それで、こんどの日曜深夜(月曜早朝)、その追悼を兼ねてでしょう、大島監督の傑作ドキュメンタリー「忘れられた皇軍」を扱ったドキュメント「反骨のドキュメンタリスト 大島渚『忘れられた皇軍』という衝撃」が放送されます。拙ブログにいろいろ貴重なコメントをいただきさまざまなことをご教示いただいているRawanさんからもお教えいただきました。
>2013年1月、大島渚監督が逝った。「大島渚は不器用で、反国家むきだしにして体を張って闘っていた」そんな大島の魂がこめられたドキュメンタリーが、日本テレビに遺されている。『忘れられた皇軍』(1963年放送) 日本軍属として戦傷を負い、戦後、韓国籍となった旧日本軍の兵士たち。片腕と両眼を失った白衣の傷痍軍人が何の補償も受けられぬまま、街頭で募金を集める…大島は一体何を訴えようとしたのか?当時の制作スタッフや妻・小山明子の証言からひもとき、テレビと映画2つのフィールドで活躍する是枝裕和監督や同時代を生きたジャーナリスト田原総一朗と共に考える。50年を経た今、大島の映像は少しも古びることなく、見る者を激しく揺さぶる。テレビを考え抜いた映画監督、大島の遺言とは?
前にも記事で書いたように、大島監督の映画というと世間で話題になるのが「愛のコリーダ」と「戦場のメリークリスマス」です。初期の松竹での作品も、創造社(ATGとの提携作品をふくむ)の作品も、また「戦場の・・・」以降の2作品も、あまりとりあげられているとはいえません。劇映画でそれなのだから、監督が60年代から70年代にかけて製作したドキュメントは世間で忘れられた存在であるのも仕方ないところでしょう。
で、上の「忘れられた皇軍」は、大島が実質映画界から干されていた1963年に製作したものです。在日韓国人(まだ日韓は国交回復前です)の傷痍軍人たちが、韓国代表部(国交回復前ですから大使館ではないわけです)や日本の役所などにも陳情に行きますが、相手にされません。それでこんどは飲み会をするのですが、トラブルが起きて、失明した男性の目から涙が流れる、という衝撃的なシーンがあります。
私はこの作品を見たことがありますが、私の知る限り大島監督の死に際してもこの作品に限らずドキュメントの特集上映は見かけませんでした。(同じ日の追記・こちらなどで上映はされていますが、大学の研究室主催ですから、情報もいきわたりにくかったと思います)やはり権利上の問題や興行上の問題があるのでしょうが、これも貴重な時代の証言であるわけで、たとえばDVDなどでまとめてくれればいいのだがと考えます。なかなか難しいのでしょうが。
50年以上前の製作ですが、昨今なにかと話題の従軍慰安婦の問題などとも関連しますし、今日でも大いに通じる内容ではないかと思います。「ライプツィヒの夏」の読者の皆さまにもぜひ見ていただければと思いまして、ここに宣伝させていただきます。
ところで大島監督のドキュメント作品は、こちらでそのいくつかを閲覧することができます。
また、こちらも大島作品のいくつかが所蔵されています。電話確認したところでは、図書館の貸し出しカードなどがなくても閲覧可能だそうです。
川崎市民ミュージアムのほうは私も行って何本か閲覧していますが、龍ヶ崎のほうはまだ未訪問です。行くことがあったらこのブログでまた記事にいたします。
同じ日の追記:上に引用した上映会についての記事によりますと、ほかにも横浜の放送ライブラリーでも閲覧できるようですね。しかしここでは、貴重な講演もあったとのこと。行きたかった。残念です。
情報をくださったRawanさん、また関連する記事をお書きになったApemanさんににお礼を申し上げます。