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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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京都アニメーション放火事件の犯人が、もっと他人から優しく扱われる経験をしていれば、また事態は変わっていたのかもしれない

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先日、京都アニメーション放火事件の犯人が、治療を受けていた大阪の病院から京都の病院に転院しました。

 それでマスコミは、この2つの病院がどこの病院であるかということを明かしていませんが(搬送するドクターカーに記されている病院名も画像処理で隠しているくらいです)、これは大阪の病院が近畿大学病院、京都の病院が京都第一赤十字病院のようですね。京都の病院は、もともと容疑者が搬送されていたところだし、また近畿大学病院のHPを確認すると、この病院がやけどの治療に強い病院であることがわかります。

それはともかく、ちょっと私が気になった報道がありました。京都新聞より。上の写真も、同じ記事から。京都の病院に搬入された際の写真です。

>京アニ事件容疑者「こんなに優しくされたことなかった」 医療スタッフに感謝、転院前の病院で

2019年11月15日 7:00

 京都市伏見区桃山町因幡のアニメ製作会社「京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオが放火され、男女36人が死亡、33人が重軽傷を負った事件で、大阪府内の病院に入院していた青葉真司容疑者(41)=殺人などの疑いで逮捕状=が14日、京都市内の病院に転院した。命に別条がない程度まで回復したためで、京都府警は勾留に耐えられる状態になるのを待って逮捕する方針。

 病院関係者によると、青葉容疑者は現在、感染症などの合併症を起こす危険な状態を脱している。自力歩行はできないが、会話は可能という。転院前、治療に携わった医療スタッフに対して「人からこんなに優しくしてもらったことは、今までなかった」と感謝の言葉を伝えたという。
 青葉容疑者は14日午前9時ごろ、ストレッチャーで救急車に乗せられて大阪府内の病院を出発し、午前10時15分ごろに京都市内の病院に到着。青葉容疑者はタオルで全身を覆われ、医療関係者に取り囲まれながら院内に運び込まれた。
 青葉容疑者は事件で全身やけどを負い、京都市内の病院に救急搬送された。7月20日、より高度な治療を受けられる大阪府内の病院に転院し、皮膚移植やリハビリなどを重ねてきた。
 事件は7月18日午前10時半ごろに発生。青葉容疑者が京アニ第1スタジオ1階でガソリンをまいて放火したとされ、建物内にいた20~60代の男女計69人が死傷した。

この記事で私が注目したのがこちら。

>人からこんなに優しくしてもらったことは、今までなかった

ほかの報道も、容疑者が医療スタッフに感謝の意を表したということは報じていましたが、私が確認した限りでは、京都新聞のこの記事が具体的に報じていました。

言うまでもなく医療スタッフというのは職業的に患者に「親切」にしているわけで、それは別に何らかの感情をもっているわけではありません。放火して30何人の人間を焼死させたような人間であっても、そのことを理由にして治療をおろそかにするとかそういうことはあり得ない。しかし、そういう職業的な親切も、彼は人生の中で受けることがなかったんですかねえ。そうなのでしょうが、それはまたかわいそうですね。

私もこの事件の容疑者の人生というのは、報道されているところでしか知らないし、そんなに一生懸命読んでいるわけでもないので不十分にしか知りません。しかしそれでも読んでいて、彼があまり、愛情をいっぱいに受けて育ったわけではないということはうかがえます。それでたぶんというかまちがいなくこの容疑者は、この人の責任とは言えない部分でずいぶん理不尽な目に遭い、家族や他人からもひどい目に遭ったことも多いのだろうなと思います。残念ながら、そのような人間のうちの誰かは、京都アニメーションにガソリンをまいて放火するとまではいわずとも、このような暴発をしてしまうのでしょう。

そう考えるに、けっきょく人間やはり優しい扱いをされる、愛情深く育てられる、そういうことは想像以上に重要ですね。虐待の連鎖ではありませんが、ろくでもない扱いを受ける人間は、やはり他人にろくでもない扱いをするのです。相模原の障害者施設での殺人事件の犯人については詳細を知りませんが、大阪教育大学付属池田小学校の犯人は、親からひどい虐待を受けています。彼は最終的な事件をする以前もろくでもないことを散々していますが、その原因のいくばくかは、彼の成育歴にあるでしょう。

そうとなると、京都アニメーションの容疑者(犯人)も、彼がもっとまともな幼少期、青年時代を送ることができれば、この事件は起きなかった可能性がより高くなったであろうと思います。「起きなかった」と断言してもいいのかもですが、ここでは一応「可能性がより高くなったであろう」と書いておきます。

もちろんたとえば大久保清は、親から溺愛されたようですから、親から愛された子どもがひどい犯罪をするわけではないというものでもありませんが、たぶんですが、性犯罪などはまたちがうのかもですが、民族やジェンダー、身体障害、出自(? 池田小学校の事件は、犯人の主観ではそっちの系統の犯罪かと思います)などを理由として大量殺人、無差別殺人をするような手合いは、あまり成育環境がよろしくない人間である可能性は高いと思います。おそらく人間、親きょうだい親戚をふくめた他人から親切にされる、優しく接してもらえる、そういう経験がないと、他人にろくな対応をしてしまいがちなのでしょう。特に成人すれば、金銭を媒介にして他人に(いろいろなことで)親切にしてもらうことが可能かと思いますが、少なくとも京都アニメーションの犯人は、たぶん金銭を媒介にした経験すら、ろくになかったのでしょう。そう考えると金銭を媒介にするということも、そう馬鹿にしたものではないのかもと思います。非常に残念ですが、彼は自分の身の不幸を非常に悪い形で社会に還元、復讐したのでしょう。

なお上の記事中、「容疑者」と「犯人」を大して意味もなく使い分けました。本来ならまだ逮捕されていないので「容疑者」と書くべきなのでしょうが、事実上「犯人」と書いて問題はないと判断しましたので、このようにしました。


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