沢尻エリカが薬物で逮捕された際、読者の皆さまはどう感じたでしょうか。私個人の印象を書くと、彼女ならそうなっても何ら意外ではないというところです。彼女はどう考えても薬物をやっていても当然な雰囲気がありましたし、また大麻常習疑惑なども週刊誌報道されていたくらいです。
で、昨日(月曜日)職場で数人に聞いてみたところ、「また捕まっていなかったんだ」とか「いや・・・彼女なら・・・」とかろくな回答が返ってきません。土曜の7時のNHKニュースで、渋谷の若者たちに話を聞いていたら、番組に登場した人たちは「驚いた」という趣旨のことを答えていましたが、私の勝手な推測では、たぶんNHKが相当回答を取捨選択したのだと思います。やはり「怪しいと思っていた」という趣旨のことを語る人の意見は使いにくいし、またNHKとしても大河ドラマに鳴り物入りで出演する人が世間一般ではヤクをやっていてもなんら意外ではないというのはあまりよろしからぬところでしょう。
それで突然思いついたのですが、沢尻エリカって、今年亡くなった大物俳優と立ち位置というのが近くなったと思います。萩原健一です。
萩原健一の死に際して、私はこのブログでいくつか記事を書きました。
萩原健一が亡くなった 萩原健一というのも、むちゃくちゃな人間だと思う 萩原健一の、1970年代に出演した東宝映画がまとめてDVD化される(ただし12月18日発売予定)ほかにも記事はありますが、今日のところはこの記事の趣旨にそぐうこの3記事をリンクしておきます。
最初の記事でご紹介したように、萩原は絶頂とも思えた1980年代半ばにドラッグ関係、交通事犯、暴力事件を起こします。現在なら再起不能だったかもですが、その後なんとか持ち直します。しかし21世紀になってもまた不祥事を起こし執行猶予付きとはいえ懲役の判決を下されてしまいます。
で、沢尻も今回まさにドラッグでパクられたわけで、ちょっとやそっとではすまない立場に追い込まれたわけです。大河ドラマも撮り直しだそうだし、NHKやCMのクライアントに対する迷惑も半端ではありません。NHKは、「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」のMCに彼女を2年起用していたりしたくらいで、かなり彼女に期待していた節があります。
それで萩原も、また奇行でも知られました。彼が亡くなった後、萩原のやばいエピソードがいろいろ報じられたくらいです。たとえば佐藤浩市の主演映画の撮影中に「親父に似てヘタクソダなあ」とヤジを飛ばしたとか、渡哲也が萩原のあまりの態度の悪さに激怒したとか(こちらに詳細に書かれています。82年の「誘拐報道」のころらしいとも)、さらにこれは悪いことではありませんが、「君は海を見たか」では、Wikipediaによれば
>演技に集中するために、撮影中スタッフが台本をめくるかすかな音さえ出ないよう、美術やカメラマンなどその場の全てのスタッフに台本を暗記させ、憶えられないスタッフには霧吹きで台本を湿らせるという徹底ぶりをみせた。
というくらいで、やはりいざというときの集中ぶりというのはすごかったようです。
一方沢尻エリカといえば、例の
>2007年9月29日自身が主演する映画『クローズド・ノート』の舞台挨拶で不機嫌そうな振舞いを行い、世間・マスコミなどによりバッシングを浴びせられる。同年10月2日には、この件に関して公式ページに本人名義で謝罪したが、2010年CNN GOの英語インタビューで「あれは間違いでした。前の事務所が謝罪しなくてはいけないと言ったけれど、ずっと断っていたんです。絶対したくなかった。これが私のやり方なんだから、と。結局私が折れて。でも間違ってた」と告白した。
(以上彼女のWikipediaより。注釈の番号とリンクは削除)といった感じの奇行があるし、また演技の集中ぶりも
>女優としてのポリシーは、まず脚本を読んで、その役をイメージできるかが重要で、イメージできればやるし、できなければやらない。役に入っているときは集中するので、そのあと休暇をとって「役落し」をしないと次の作品に入れない。
2012年5月、一連の騒動からの本格的女優復帰主演作となった映画『ヘルタースケルター』では、『りりこ』役に深く入り込み、監督である蜷川実花をして「現場での彼女はりりこそのものでした」と言わしめた。ただ、精神を病み、心身ともに破滅へと向かっていく役柄に集中したためか、体調を崩し、PR活動の休止が発表された。
(上の注釈と同じ)
といった具合で、まさに役に集中する人です。
そういうわけで萩原は危険人物だったので、最後の記事でもご紹介したように、東宝は彼の主演作品のソフト化を渋りました。「青春の蹉跌」のような評価の高い映画も、彼の死後のDVD化となりました(この映画に関しては、VHSにはなっています)。DVD化が遅れた事情は定かでありませんが、たぶん彼の度重なる不祥事に東宝が警戒したのは間違いないと思います。
それで沢尻エリカの映画ほかの出演作品等のソフト化なりなんなりにこの件が支障をきたすかは定かでありませんが、たぶん向かい風にはなっても追い風にはならないでしょうから、このような部分も萩原に似たのかなという気がします。
こうやって対比していくと、ドラッグほかの不祥事で逮捕、演技力抜群、役への集中力もすごい、しかし周囲からも強い警戒心に晒されている、なんてところは2人ともよく似ています。たぶん沢尻エリカは、そういう点ではショーケンの正統的な後継者なのでしょう。ただショーケンが不祥事を起こした時代とは、芸能人に要求されるコンプライアンスも相当厳しくなっているので、沢尻の今後はかなり大変だと思います。萩原の時代は、83年の4月10日に薬物で逮捕されたあと同じ年の6月18日から彼の主演映画「もどり川」が全国公開されたくらいで、現在ではこれは無理でしょう(私個人は、それとこれとは関係ないと思いますので、主演俳優が不祥事を起こしても、映画やドラマの公開や放送を中止することはないと考えますが、現実問題としての話をここではしています)。沢尻エリカも、これで芸能界永久追放ということにはならないと思いますが、たぶん相当大変なことになるはず。まあここは、ぜひ復活をしていただきたいと思います。そんなに彼女のファンでもないですが、やはり才能のある人ですから、今後も彼女には期待せざるを得ません。たぶん彼女は、天才となんとかは紙一重の人なのでしょう。萩原もそうだし、角川春樹みたいな人間もそのようなところがあるのでしょう、たぶん。