昨今話題のこちらの件を。
>河井案里氏 1億5000万円「違法ではない」
2020/1/23
国会内で記者団の質問に答える河井案里氏
自民党の河井案里氏(参院広島)は23日午前、初当選した昨年7月の参院選の公示前、党本部から計1億5千万円の資金が河井氏側に入っていたとの報道について「もらいましたが、違法ではありません」と答えた。参院本会議の開会前、国会内で記者団の問い掛けに答えた。
午前の本会議後の記者団の取材では「昨年3月13日に公認され、選挙(に向けた)活動を始めたのは4月半ば以降だった。わずか2カ月半で党勢拡大をしなければならず、短い期間に資金が集中したと考えている」と説明した。
案里氏が初当選した参院選広島選挙区を巡っては、案里氏の陣営が車上運動員13人に対し、公選法が定める上限の倍額を払った疑惑がある。広島地検が案里氏と夫の克行前法相(衆院広島3区)の自宅や地元事務所などを家宅捜索し、公設秘書たちの任意聴取を連日、進めている。
党本部からの資金が車上運動員の買収などに充てられたのではないか、との指摘には「捜査中なので、お答えは差し控えさせていただく」と述べるにとどめた。その上で、疑惑について「私自身も知りたいことで、本件について十分把握していない」と釈明した。
参院選広島選挙区は、自民党が改選2議席の独占を目指して2人を公認し、与野党入り乱れた激戦となった。関係者によると、1億5千万円は昨年4月から参院選公示前までの間、案里氏と克行氏が支部長を務める二つの自民党支部の口座に振り込まれた。
参院選で案里氏の応援には安倍晋三首相(党総裁)や菅義偉官房長官たち政権中枢や党幹部が駆け付け、当選を果たした。
一方、同じく党公認を得ながら落選した現職の溝手顕正氏に関して、党本部が公示前に溝手氏の党支部へ入れた資金は1500万円だった。案里氏側にはその10倍の資金が渡っていたことになる。金額に法的な制限はないが、党関係者からは「異常な額だ」との指摘が出ている。
1億5千万円てのもすごいですねえ(苦笑)。そして同じ選挙区のもう1人の自民党候補にはその1/10というのが、あまりに露骨で笑っちゃいます。溝手氏にかぎらず、落選した候補の中には、「ふざけんな。おれ(あたし)にも少しはまわせ」と考えた候補も、少なくないはず。前にこんな記事を書きました。
野党共闘しなければ、参議院1人区は野党全敗ものだから、共闘しか道はないだろう(その他雑多な参議院選挙への感想)それでその記事に引用した産経新聞の記事に次のようなものがあります。
首相応援先は「12勝8敗1分」 東北1人区は力及ばず - 産経ニュース
「力及ばず」って、どんだけ安倍応援団なんだよ(苦笑)というところですが、その記事の「1分け」というのが広島選挙区のわけです。記事のその部分を引用しますと、
>首相は21都道府県で自民候補の応援に入り、結果は12勝8敗。広島は応援した現職と新人のうち現職が落選し「引き分け」だった。新元号を発表した「令和おじさん」として人気だった菅氏は6勝9敗だった。広島では新人のみを応援したので、これを「勝利」とすれば7勝9敗だった。
とあり、自民党執行部は、新人である案里候補をやたら積極的に応援したわけです。
つまり昨年の参議院広島県選挙区での選挙は、自民党としては、事実上2議席を奪う選挙でなく現職を落とす選挙だったと考えられます。過去の広島県選挙区で自民党候補が取った票を見てみると、21世紀以降の選挙ですと、溝手氏が立候補した選挙では2001年が408,857票、2007年が389,881票、2013年が521,794票です。13年はだいぶ票が多いですが、溝手氏はだいたい40万票弱から50万票を超えるくらいの票を獲得する力があるわけで、2人自民党から出馬して当選させるのはさすがに無理筋です。ましてやこの選挙は、共産党以外で旧民主党系候補の票を食いそうな候補もいなかったので、自民党候補のどちらかは落ちる選挙となります
実際、参議院で2人区はだいたい自民党か旧民主党系の候補が取ります。例外は、京都府選挙区の昨年の改選で、共産党現職の倉林明子氏が勝ったくらいでしょう。それで裏の改選では、京都でも現在共産党候補は勝てません。そういう中でわざわざ自民党から2人立候補を出すというのはやはりまともではありません。で、安倍晋三は溝手氏を恨みかつ憎んでいます(笑)。2012年に溝手氏が、安倍を過去の人だと批判したからです。これには私も、「よく言った」と思い(今もそう思います)、つい記事を書いてしまいました。
遅すぎるがよくぞ言ってくれましたその後安倍は、私にとって大変遺憾ながら、「過去の人」から復活しましたが、やっぱり安倍は、溝手氏に対する怒りがすさまじかったのでしょうね。それで、2013年の改選時はさすがにできなかったが、2019年には刺客を送り込んで、溝手氏を落選させたと。どんだけ馬鹿なのよと思いますが、安倍という人物は、そういう人間なのでしょう。
で、今回の河井案里の不祥事も、そういうめちゃくちゃな選挙であるが故の部分が大きいのでしょうね。そもそもまともな実績という点では、溝手氏にかなうわけもないわけで、執行部からの大々的な応援や資金援助が、やっぱり彼女や周囲に無理をさせたんだろうなと思います。Wikipediaによると、溝手氏は、
>落選直後、支援者に「2人出すのは、やはりばかげた話。今後、自民党として考えなくてはいけない」と述べた
といいます。彼からしても、安倍の個人的な悪意としか思えなかったのでしょう。なお上の件を報道した朝日新聞の記事にも、
>過去2回の参院選で自民候補は、2位の倍以上の得票で圧勝。独占の可能性があるとみた党本部が県連の反発を押し切って河井氏を追加公認していた。河井氏の夫は安倍晋三首相に近い党総裁外交特別補佐の河井克行氏(衆院広島3区)。県連の支援が得られないなか、党本部や安倍首相の事務所スタッフらが広島入りして企業や団体を回り、無党派層への浸透を図った。
というわけで、県連は「筋が悪い」と(当然ながら)反対したわけですが、それを押し切ってその結果こうなっては、ろくでもないにもほどがあります。おまけに元同僚議員にも、
>河井案里議員に「裏切られた」 車上運動員紹介の広島県議を任意聴取 広島地検
毎日新聞2020年1月21日 09時15分(最終更新 1月21日 12時07分)
河井案里参院議員の陣営が2019年参院選で車上運動員に公職選挙法の上限を超える日当を支払ったとされる事件で、案里氏が広島県議時代に同じ会派だった自民系の渡辺典子県議(35)が20日、県庁で記者会見し、広島地検に自宅を捜索され、任意の聴取を受けたことを明らかにした。
渡辺氏によると、19年春ごろ、案里氏に頼まれ、夫が車上運動員の経験がある女性を1人紹介した。夫は選挙カーの運転もした。この女性は陣営で車上運動員はしなかったが、女性が集めた数人が、法定限度の2倍にあたる3万円の日当を受け取ったことを認めているという。
地検が案里氏の事務所を捜索した翌日の16日に、自宅の捜索を受けて携帯電話やパソコンを押収され、18日に任意の聴取に応じた。夫も19年12月から4回聴取されたという。
渡辺氏は「私も夫も公選法に違反することはしていない」と説明し「案里氏を信頼していたが、裏切られた。夫妻が平気な顔をして国会に出ていることが許せない」と述べた。【池田一生】
◇
自民党の河井克行前法相の妻で同党の案里参院議員が初当選した2019年の参院選を巡る公職選挙法違反事件について、20日記者会見した渡辺典子県議(35)=広志会、安佐北区選出=は「裏切られた」と語気を強めた。発言要旨は次の通り。
――なぜ会見を?
渡辺氏 私の自宅が家宅捜索を受け、広島地検で取り調べを受けた。なぜ捜査対象になっているかというと、案里さんから依頼があり、問題となっている車上運動員の一部は私のルートで紹介した。どのようにお金を支払うように決めたかなど経緯は知らない。
――紹介の経緯は?
渡辺氏 2019年4月の統一地方選が終わってすぐ、電話で依頼があった。私の選挙を手伝ってくれている女性1人を夫が紹介した。その女性が何人か集めたと聞いている。私も夫も違法なことは一切していない。
――河井夫妻への思いは?
渡辺氏 出処進退を含め、早く説明してほしい。2人の背中を見て政治活動をしてきた。信頼していたが、裏切られた気持ちだ。
と、迷惑をかける始末です。自民県連の幹部も、
>「『説明する』というのにしないから困っている。(容疑が)事実と違うのであれば違うと言うなど、政治家としてのけじめをつけてほしい」と注文をつけた。
と述べます。我々は反対しただろうと呆れるにもほどがあるというものでしょう。
いずれにせよこのような無様で無残な光景を見ていては、根本的に安倍晋三などという人物は首相など務めるような人間ではありませんね。そんなことははじめっから知っていますが、やっぱりそうだったというところです。が、これは安倍よりこんな馬鹿でクズを党のトップや首相にし続ける自民党や有権者の問題でしょう。もちろん公明党などもです。何をいまさらながら、実に愚劣な光景です。