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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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自分や子どもへの虐待などのDVで警察などに駆け込めない女性(ら)の心理も同じようなものかもしれない(京都での生活保護ケースワーカーの死体遺棄事件)

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コロナウイルスの騒動ばかりでなく、事件の発覚からだいぶ時間がたったので世間からは忘却されているニュースかもですが、昨年こんな事件がありました。ますは逮捕の記事から。

>女性の遺体遺棄容疑で逮捕 京都・向日市職員ら2人
2019.6.12 08:45産経WEST

 京都府向日(むこう)市上植野町藪ノ下にある集合住宅の駐車場で11日午前、成人女性とみられる遺体が見つかった事件で、京都府警向日町署は12日、遺体を遺棄したとして、この集合住宅に住む職業不詳、橋本貴彦容疑者(55)とその知人で向日市地域福祉課の主査、余根田渉容疑者(29)を逮捕した。両容疑者とも「遺体を運び出して駐車場に遺棄したことに間違いない」と容疑を認めている。

 同署によると、橋本容疑者は生活保護を受けており、余根田容疑者はケースワーカーとして橋本容疑者を担当していた。

 逮捕容疑は、共謀して11日午前11時20分ごろ、女性の遺体を2階の部屋から10メートル程度離れた隣接の駐車場に遺棄したとしている。遺体は腐敗が進み、全身が白い粘着テープで巻かれていた。

 同署によると、2人は署員が遺体を発見した際に駐車場近くにいた。初めは関与を否定していたが、詳しく事情を聴いたところ遺棄を認める内容の供述をしたという。

 同署は遺体を司法解剖し、女性の身元と死亡の経緯について調べる。

それで死体遺棄で起訴されたケースワーカーの判決公判の記事です。

>京都・女性死体遺棄 ケースワーカーに有罪判決 京都地裁
毎日新聞2020年3月26日 12時34分(最終更新 3月26日 20時30分)

 京都府向日市のアパート駐車場で2019年6月に女性(当時43歳)の遺体が見つかった事件で、死体遺棄罪に問われた同市職員、余根田渉被告(30)の判決が26日、京都地裁であり、柴山智裁判官は「(共犯者の)指示に従い、重要で不可欠な役割を果たした」として懲役1年6月、執行猶予3年(求刑・懲役1年6月)を言い渡した。

 判決によると、余根田被告はケースワーカーとして生活保護を担当していた橋本貴彦被告(56)=死体遺棄と傷害致死の罪で起訴=と共謀して19年6月1日ごろ、アパート1階の橋本被告の部屋で、橋本被告の交際相手だった女性の遺体をシートで隠した。同4日ごろには防炎シートで包み、粘着テープを巻き付けて大型冷凍庫に入れ、2階に自ら借りた部屋に同5日ごろに業者に運ばせた後、同11日に駐車場に運び出して遺棄した。

 柴山裁判官は「橋本被告から長期間理不尽な要求を受け続け、どう喝されることもあり、周囲の協力も得られず孤立し、疲弊していた」「暴力団との関係がうかがわれ、傷害致死の前科もある橋本被告への恐怖心から要求に応じた」などと情状を酌量しつつ、「死体の発見が遅れ腐敗が進行し、悪質だ」「死体遺棄は一連の要求とは質が異なり、上司や警察に相談もできた。一定程度の非難は免れない」と指摘した。

 言い渡し後、柴山裁判官は余根田被告に「苦しい面があったかと思う。十分反省していると思うが、今後はこのようなことがないよう気を付けてほしい」と説諭した。【添島香苗】

この余根田という人は公務員ですから、執行猶予付きとはいえ懲役刑が確定すれば自動失職します。たぶん検察も被告人側も控訴はしないでしょうから、おそらく判決が確定することになるでしょう。

この人の判決が3月中にあるということは知っていたのですが、あらためて判決を確認し、「どうもなあ」という気にはなりました。懲役刑の執行猶予判決は仕方ないし、またこの人は仮に失職を免れる判決が出たとしても(その可能性は限りなく低いですが)市役所に復職する意思はないという意向だったそうですが(市役所の中で、なんとか彼に市役所に残ってもらえないかという動きがあったようです)、これは私の個人的な意見でしかないことを強調したうえで私見を述べると、たぶん復職というのは、この人の心を決定的に傷つけるだけだと思いますね。しないほうがいいと思います。いいと思うも何も、現実に裁判でその可能性は否定されたし、また他人から何を言われようがたぶんこの人は復職しないでしょうが。

で、多くの人間がだいたい次のようなことを考えるのではないでしょうか。

「そんなん警察に通報すればいいじゃん」

こんなの警察に通報すれば一発で解決です。すぐ逮捕してくれます。だいたい自分が殺した人間の遺体の遺棄を自分を担当する生活保護ケースワーカーに手伝せるなんて、どこの馬鹿がそんなことをするんだと思いますが、まさに京都府向日市にいたわけです。またどうもこの人物は、電話でこのケースワーカーに死体遺棄の手伝いを命令をしたらしいって、こんなことを電話で命令する馬鹿がどこにいると思いますが、やっぱり京都府向日市にいたわけです。つまりこの男は、自分が何を言ってもこのケースワーカーは動かすことができると確信していたのでしょう。そしてまさにそれは正しかったのです。

さすがにこの件は、裁判官もそして検察すらも、かなりこの被告人には同情していたようだし、また彼の勤務先である市役所も、市のHP

>亡くなられた被害者のご冥福を心からお祈りいたしますとともに、市民の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを改めてお詫び申し上げます。

裁判や検証委員会を通じて、組織対応に不十分なところがあることや、担当ケースワーカーを守り切れなかったということが明らかになり、本市としての、不当要求への脆弱さ、福祉事務所の体制、組織マネジメントなど、多くの反省すべき点が、職員を追い込んでしまったものと重く受け止めております。

と市長名の文章を出しています。なお日付は、判決のあった3月26日付です。また下にPDFの報告書もリンクしておきます。この報告書に関しては、ケースワーカー出身の大学教授である道中隆氏が検証委員長をつとめています

生活保護業務上の職員逮捕事案に係る検証委員会 検証報告書(PDF:962.9KB)

いずれにせよこの人物は、この事件で殺した人間が3人目(殺人でなく傷害致死の扱いのようですが)だそうで、はっきり言って精神異常者、サイコパス、キチガイです。まともな人間が対応できるような代物ではありません。が、それにしてもです。このケースワーカーは、警察に電話すらできなかったわけです。それでそういうことを考えると、なーんかDVとかで夫らからひどい目にあう女性らが、往々にして警察ほかに駆け込めないというのと共通のことを感じますね。

ちょいちょい報道される父親による子どもへの虐待死などで、同じく虐待を受けていた母親に「なんで逃げないんだ」という非難がされることがあります。その際、父親(夫)の子ども(奥さん)への精神的支配などが理由に挙げられますが、まさにこの向日市の事例もそのたぐいですね。家族、家庭の場合まさに四六時中一緒ですが、さすがにこの事件は、そこまで密着しているわえでない。その程度の関係でも、時と場合によってはこういうひどい事件が起きてしまうのです。ほんとこわいですね。それでこういうことは、やっぱり本人が訴えてくれないと他人が助けるのは難しいですからね。そして訴えればすぐ解決しちゃうケースも多々ある。警察沙汰になってよりが戻ってまたDVが繰り返されるというパターンも少なくないですが、この件ではそういうこともないでしょう。しかしそれができなかったわけです。こういうのは、人間心理の不可解なところで、第三者には理解しにくいところが多々あります。繰り返しますが、本当にこわいし残念だしまた私たちは、そういう時に警察なりなんなりに通報できる人間になりたいと改めて考えます。


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