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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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世界的に少子化、合計特殊出生率が落ちている時代だと、このような映画はだいぶ時代錯誤になってしまう(映画『赤ちゃんよ永遠に』公開は1972年、日本の合計特殊出生率が2を切ったのは1975年)

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昨年12月、このような映画のDVDが発売されました。

赤ちゃんよ永遠に SFロボットベイビーポリス

この映画は、1972年に制作され、日本では73年に公開されたとのこと。いわゆるディストピア映画です。なおこの映画も、日本語版Wikipediaのディストピア映画のタグに入っています。

で、誰がこの映画のDVDなんか買うんじゃいという気がしますが、ここにいるというので、早速購入手続きをしました。まだ届いていませんが、買えるうちに買っておかないといけません。映画ソフトに限りませんが、あとで買えばいいと気楽に考えて、ひどいプレミア価格になったり入手不能になった苦い記憶と経験わが人生で多数。

余談が過ぎました。この映画は前々から存在は知っていたのですが(ラストの落ちも知っています)、まだ観たことがなかったので観てみたいなあとは考えていました。が、YouTubeとか海外からDVDを取り寄せるほどの熱意はなかったし(だいたい私、映画なんか字幕なしでは観られまへーん)、また以前出ていたVHSも、ネットオークションやAmazonほかで数回あたったのですが、見つけるにいたりませんでした。が、ちょっとAmazonで再確認したら、VHSが出品されていましたね。もっともこれは、いつまで出ているか定かでありません。

赤ちゃんよ永遠に/SFロボットベイビーポリス【字幕版】 [VHS]

現在では、事実上マニア、コレクター以外にはこれを購入する意味はないでしょうが、日本版DVDは94分とあり、他の資料、このVHSなどは97分とあるので、編集のバージョンが違うのかもです。それを確認するためにこちらを購入してもいいかもしれません。私は、もちろん買いません。

そんな話はともかく、この記事を書いている時点でのこの映画のWikipediaの記事は、5つの言語でしかありません。英語、ドイツ語、日本語、イタリア語、セルボ・クロアチア語だけです。この映画の制作の一翼を担ったと思われるデンマークの言語すら記事がない。つまりはあまり有名な映画ではないということです。監督はマイケル・キャンパス(Michael Campus英語版Wikipedia)という人で、全然知らない人ですが、英語版WikipediaにもIMDbにも大して情報がないのですが、この映画がデビュー作、IMDbによると、70年代にあと4作監督して、2008に最後の作品を監督して、2015年にお亡くなりになっているとのこと。80年代はプロデュース作1作しか仕事の記録がないので、あるいはあまり目立った仕事はしていなかったのかもです。どうもあんまり日本で知られている活動は少ない(たぶんこの映画のみ)の人のようですが、実は日本と米国とカナダの合作である1995年制作の『ヒロシマ 原爆投下までの4か月 』に彼は、制作でクレジットされています。ちなみに日本側のスタッフは、監督が蔵原惟繕、脚本が石堂淑朗です。日本ではNHKが製作を担当しています。たぶんですが、このドラマが放送されたとき(1996年)も、プロデューサー(の1人)が『赤ちゃんよ永遠に』の監督だったなんて知っている、あるいは気づいた日本人はほとんどいなかったんじゃないんですかね。いや、わかりませんけど。今だってどれくらいの人が知っていることか。というわけで、例によってこのブログをいまお読みのあなたは、なかなか貴重な情報を目にしているのかもです、ってこんなこと誰も興味はなさそうです。

上の広島の映画については私も未見で何とも言えませんが、原爆投下という未曽有の戦災に直面する広島の運命と、この『赤ちゃんよ永遠に』のモチーフは、極限状態の人間とかいうつながりはありそうです。こちらの方も、ぜひ見てみたいと思います。

それでは『赤ちゃんよ永遠に』のストーリーを紹介しますが、ラストのネタバレは書きませんが(私はこの記事を書いている時点で映画は未見ですが、ラストの落ちは知っています)、知りたくない方は、ここでこの記事を読むのをやめてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いいですか? では書きますよ。面倒ですので、日本語版Wikipediaを全面引用します。

>概要
人口が過剰に増加しすぎて天然資源の枯渇と動植物の絶滅が起き、妊娠と出産が大罪となってしまった近未来を描いたSF映画である本作。原題の『Z.P.G.』は『Zero Population Growth』の略で、「人口増加ゼロ」の意味となる。日本でVHSが発売されたときは『赤ちゃんよ永遠に/ SFロボットベイビーポリス』という副題がつけられた。そんな出産禁止の世界で、危険を承知で一人の赤ちゃんを出産する夫婦を『オリバー!』などで知られるイギリス出身の俳優オリヴァー・リードと、チャーリー・チャップリンの実娘であるジェラルディン・チャップリンが演じた。

あらすじ
時は21世紀。人口が異常なほど増加した結果、スモッグがたちこめ、人類以外のほとんどの動植物が絶滅。またそれによって引き起こされた食糧危機により、ある年の初めに人口増加を抑制するために30年間の妊娠および出産禁止令が発令される。その禁止令を無視して妊娠もしくは出産した者は、処刑ドームと呼ばれる装置で処刑されるほどの厳罰が待っていた。そこで政府は、夫婦のために赤ちゃんの代用品としてロボットベビーを発明・販売を開始する。ロボットベビーは、見た目はロボットだが実際に歩いたり話したりし、子供が幼少期にかかる病気にもかかり、本物の赤ちゃんと変わらないという特色が売りだった。

妊娠および出産禁止令発令から数年後、子供がいない博物館職員の若夫婦のキャロル(ジェラルディン・チャップリン)と夫のラス(オリヴァー・リード)もロボットベビーを購入する行列に並んでいたが、キャロルはそんなロボットベビーを実際に目の当たりにするとその存在を受け入れようとはせず、結局二人は購入せずに帰宅する。キャロルは自分の赤ちゃんがほしいという願望が日に日にましていき、とうとう二人は禁止令を破って一人の男の子をもうけた。二人は息子にジェシーと名づけ、住人たちから知られないように息子を育てようとするが、夫婦の友人であるエドナ(ダイアン・サイレント)とジョージ(ドン・ゴードン)夫妻に見つかってしまう。

オリヴァー・リードは、特に70年代に活躍した英国の俳優です。キャロル・リードの甥でもあります。ジェラルディン・チャップリンは、上にもあるようにチャップリンの娘、ドン・ゴードンは、俳優の(映画監督の方にあらず。念のため)スティーヴ・マックイーン の絶頂期の作品によく共演した俳優です。マックイーンも全面的な信頼を寄せていたのでしょう。ゴードンの奥さんを演じたダイアン・サイレントについてはよく知りません。オーストラリア出身とのこと。この映画の主要な4人の登場人物のうち、記事発表時点でご存命なのはジェラルディンだけです。最近でもウォリス・シンプソン演じたりと現役で頑張っています。

さてさて、上の紹介では、

>時は21世紀。人口が異常なほど増加した結果

とありますが、現在世界的に少子化が進み、欧州、日本など先進国は人口減少に困っています(苦笑)。英国やフランスなどは人口が増えていますが、これは莫大な移民が来ているからです。私が日々勉強させていただいているサイト「世界経済のネタ帳」によると、ドイツも80年代に徐々に人口が減り始め、半ば過ぎにまた盛り返したものの、2002年をピークにまた減り始め、2011年からまた増加に転じています。が、どっちみち大した増え方ではありません。ドイツは、合計特殊出生率(女性が一生に子どもを産む平均の数)がもともと低い国でしたが、1992年~1995年までは1.2という極めて低い数字で、これでは人口は減ります。ドイツの合計特殊出生率は現在は1.6弱くらいですが、これは移民が押し上げている数字かと思います。移民もドイツ社会に定住すれば、子どもは減ります。

現実問題として、私たちがなんとなく「多子国」であるかのような印象のある東南アジアも、ベトナムは2001年に合計特殊出生率が2を切り、その後若干回復しましたが、2017年は2.04です。これではたぶん人口は減少基調です。、タイも2017年の合計特殊出生率は1.53で2を1993年に切っています。ラオスは2017年で2.71とだいぶ高いですが、しかし1991年まで6をこえています。ミャンマーも、2017年で2.17で、1980年では4.89ありました。いまだ高い出生率を維持しているのは、ブラックアフリカの国々くらいです。が、これらの国々も、戦乱が収まり、難民などがなくなり(減り)、子どもが普通に学校に行けるようになれば、時間の問題で出生率は低くなると思います。実際合計特殊出生率が高いランクにある国を見ると、2017年のランキングで上から21番目までアフリカで、次がアフガニスタン、それ以降もアフリカの国々が続きますが、やはり政治的に安定していない国が出生率が高く、落ち着いている国は、順調に出生率も下がっているわけです。ブラックアフリカではありませんが、モロッコ、チュニジアなどは順調に合計特殊出生率が下がっています。以上の数字は、「世界経済のネタ帳」からいただいています。さらに参考までに、Wikipedia「各国における少子化の状況」を引用します。

>欧米の先進諸国は世界でもいち早く少子化を経験した地域である。ヨーロッパの人口転換は戦前に終了していたが、アメリカ合衆国では1950年代後半にベビーブームが起きた。

1960年代には欧米は日本より合計特殊出生率が高かったが、1970年代には日本の緩やかな低下とは対照的に急激な低下が起こり、1980年代前半には日本ともほぼ同水準に達した。ただし、欧米では移民を受け入れていたので、これが人口低下には直接通じなかった。

1980年代中頃までは多くの国で出生率は低下し続けたが、1980年代後半からはわずかに反転あるいは横ばいとなる国が増えている。アメリカやスウェーデンなどは1990年に人口置換水準を回復したが、その後再び低下した。多くの国では出生率回復を政策目標とはせず、育児支援などは児童・家族政策として行われている。

南欧では1970年代後半から合計特殊出生率が急低下し、イタリアスペインでは1.1台という超低出生率となった。伝統的価値観が強く、急激に進んだ女性の社会進出と高学歴化に対応できなかったことが原因とみられる。1990年代後半以降、法制度面の改善と規範意識の変革により、出生率の持ち直しが見られる国もある[38]

東欧・旧ソ連では計画的な人口抑制政策や女性の社会進出が早かったことなどから、もともと出生率が低かった。また1980年代以降、経済停滞や共産主義体制の崩壊などの社会的混乱による死亡率の上昇が生じ、20世紀中に人口減少過程に入った国が多い。

韓国台湾香港シンガポールなどのNIESでは1960-1970年代に出生率が急激に低下し、日本を超える急速な少子化が問題となっている。2003年の各国の出生率は、香港が0.94、台湾が1.24、シンガポールは1.25、韓国は1.18である[39]家族構成の変化や女性の社会進出(賃金労働者化)、高学歴化による教育費の高騰など日本と同様の原因が指摘されている。

中国タイでも出生率が人口置換水準を下回っている。多くのアジア諸国では出生率が人口置換水準を上回っているものの低下傾向にある国が多い。

また、出生率の統計は出所によって数値が大きく食い違う国(ナイジェリア、韓国ほか)があることが指摘されており、ザ・ワールド・ファクトブックを含めてすべての調査機関が独自の修正を行っている。

そういうわけで日本の合計特殊出生率の推移を見てみますと、戦後ほぼ一貫して下がっています。1966年には、特殊な事情(丙午)でガクンと落ちていますが、翌年回復、しかし1974年に最後の2以上の数字を記録して以降、75年に1台となりほぼ下がり続けています。途中の上がりは、子どもを産む年齢の女性が増えた事情によるものです。理屈の上では、合計特殊出生率が2を切ればいずれ人口は減ります。日本は平均寿命が長いなどの理由で、その後も比較的長く人口が増え続け、2011年頃にピークとなったようです。いずれにせよこの映画は日本を舞台にした映画ではないわけですが、映画が製作されてからたかだか40年くらいで人口は減少に転じたわけです。現実問題としては、映画が製作されてからたった3年後には、日本では合計特殊出生率が2を切っているわけで、この当時はすでに人口減少も視野に入っていたというわけです。なお下のグラフの出典はこちら

いちおうおことわりしておくと、当時はローマクラブが、映画が公開された年でもある1972年に発表した「成長の限界」が話題になったり、日本も公害がひどく、また日本で公開された1973年は第1次オイルショックが起きたりと(ただし映画の公開は2月24日で、オイルショックは10月から)、たしかにこの映画で描かれていることが、まったくの荒唐無稽なフィクションであるともいえないとみなされる事情もありました。実際、今にしてみるとちょっと信じられないような気もするのですが、1974年の時点ですら、日本は人口抑制政策を取っていました。詳細は下の記事を。2010年取材の記事ですが、非常に勉強になるのでぜひお読みになってください。

実は、日本は少子化を目指していた

正直言って人間の人口がいつの間にやら頭打ちになり減少に向かうのは、神の見えざる手みたいなものではないかなと私は思います。あんまり人口が増えすぎてそれがエネルギーの大量消費をしていたら、そんな生活が長続きするわけがない。そう考えると、私は、現代日本のような人口減少のトレンドは、仕方ないといった後ろ向きの意味合いばかりでなく最終的にはそれも悪くないという認識でいます。

ところで日本で現実に30年出生禁止ということになったら、どうなったでしょうか。試みに、1989年~2018年までの出生数を数えてみます。すると、33,488,747人のようです。こちらの記事の表から足しあげました。そして総務省によると2019年10月1日現在の日本の人口は1億2616万7千人だそうです。すると、ここから上の数字を差っ引くと、9261万8千なにがしという数字になります。同じ2019年10月時点での元号別の人口は、「平成」生まれが27.1%ですから、「平成」生まれと1989年~2018年の出生数はイコールではありませんが、上の日本の総人口に0.271を乗ずると3419万1257人という数字が出てきます。実際には概数としても3400万人強くらいの人たちがいるということです。1989年1月1日~7日に生まれた人をのぞき、2019年1月1日~4月30日に生まれた人を足して、さらに何らかの事情で(死亡、行方不明、海外への出国など)すでに人口としてカウントされない人をのぞき、さらには日本での出生数にカウントされないが移民ほかで日本にやってきた人を足しあげる、ほか出入りを調整すれば、総務省の数字になるんですかね。そのような事態になったら移民は受け入れられないでしょうから、ともかく9200万人台くらいの人口に今の日本はなっているのですかね。30年出生厳禁という措置での効果としては、どんなもんなんでしょうか(苦笑)。個人的には、するほどのことはないという気がします。ただし子どもが皆無になる社会というのは、たぶん社会の活力が失われ、平均寿命なども伸び悩む、あるいは低くなるような気がします。いや、わかりませんけど。

なおこちらの記事を書くにあたって、ヒントを私が日々勉強させていただいているサイト「居ながらシネマ」さんの『赤ちゃんよ永遠に』の記事からいただきました。感謝を申し上げます。


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