本日は、東京都知事選の投票日です。仮に現職(小池百合子)が勝てば再選となります。2期目になりますが、戦後の東京都知事で3選以上をつとめたのは、安井誠一郎、美濃部亮吉、鈴木俊一、石原慎太郎の4人だけです。今回は、美濃部以降の3人について考えます。
この3人は、イデオロギーや政治家になる以前の経歴、行政手腕などはいろいろ違いますが、時代背景とかの違いもあるとはいえ、選挙がものすごく強かったことは共通しています。美濃部の3期目の選挙(1975年)では、石原慎太郎を35万票差で破っていますから、たしかに彼は選挙には強かったのでしょう。
それで都知事最終期の選挙も、3人とも確実に勝利しましたが、任期最終期はいろいろ問題がありました。美濃部の場合、1975年の第3期目の選挙では、部落解放同盟の関係で、解放同盟を支持基盤とする社会党と逆に対立する共産党との対立が激しくなり、一時出馬を取りやめる騒動にすらなりましたが、出馬して石原に勝利をおさめました。が、2期目の間からオイルショックの関係などもあり東京都の財政が悪くなり、財政赤字の負の遺産をもたらしました。
鈴木は、都の財政赤字の削減に尽力しましたが(といいますか、それを売り物して知事に当選したわけですが)、鈴木のWikipediaにもあるように、
>しかし3期目以降、都庁舎の丸ノ内から新宿への移転をはじめ、東京国際フォーラム、江戸東京博物館、東京臨海副都心の開発に代表される箱物行政の推進で多額の起債を発行した結果、都の財政は再び赤字に転じ、美濃部革新都政下の水準にまで悪化した。
という無様な事態になりました。4選目では、自民党東京都連が彼をおし、自民党本部は別の候補をおすという異例の事態になり、選挙自体は鈴木の圧勝でしたが、バブル経済の崩壊で都の財政はさらに赤字がひどくなるという事態になり、正直老残といってよかったと思います。
それでこちらは記憶に新しい石原はというと、こちらもずっと選挙は圧勝でしたが、3期いっぱいでの退任を考慮しましたが、けっきょく出馬。当選するも、1年半強での辞任となりました。それからまもなくの国政選挙(2012年12月執行の衆議院選挙)で国政に復帰します。
以上3人とも、選挙の際に、本来の支持母体がトラブルを起こしたり、あるいは明らかに本人にやる気が失せていたり(特に石原)など問題はあったわけです。それでも選挙には強いから当選はしますが、しかし彼ら、この3人の中で生きているのは石原だけですが、ほかの2人も、最終期はしないほうがよかったなあとか考えていませんでしたかね。石原の場合、たぶん辞任した2012年にあった尖閣諸島国有化での東京都による購入計画が挫折したことが、彼が最終的に都政にやる気をなくした大きな原因ではないかと私は考えていますが、そのあたりの真相はともかく、正直特に最終期は、石原は都政というものにやる気がなかったと思います。
小池の場合、本日の選挙で再選となってもまだ2期目ですので、やる気とかはまだあるかもですが、ただ彼女もまた国政に色気があるともいわれていますから、特にオリンピックが最終的に中止になるような事態になったら(たぶんその可能性は大きいはず)どうなるか、いろいろ興味のあるところです。
さてそれで自民党総裁であり首相でもある安倍晋三について考えてみます。自民党の総裁というのは、1974年から2期までということになっていたのですが(任期は、2年~3年の変化あり)、2017年に3年の任期で3期までという規定になりました。そういうのを自分で決めて自分が3期やるというのも、さすが安倍晋三らしい図々しいやり方であり態度ですが、それはともかく、2018年9月からの安倍政権3期目って、どうなんですかね。安倍にとっても自民党にとってもパートナーの公明党にとっても、そしてさらには、安倍の支持者、自公の支持者ほかにとっても、満足のいくものなんですかね?
昨年の参議院選挙で、改憲を発議できる2/3は超えられなかったが、しかし10月からの消費税増税は成し遂げたなんてのは、安倍の周囲、あるいは支持者らにとっても、たぶんそんなに「成果」「自慢できること」ではないでしょうしね。
自他ともに認める安倍絶対支持新聞の産経新聞も、たとえば昨年の参議院選挙で2/3に改憲勢力が満たなかった際も、「国民民主党を切り崩して絶対国民投票まで行く!」なんて主張はしていませんでしたからね。いや、していたのかもですが、そんなに声高ではなかったですね。たぶん「現実問題としてそれは難しい」と考えていたんじゃないんですかね。それでこの記事を書いている現在その参議院選挙から1年弱です。その時から改憲の話は進んでいるかというと、全く進んでいないといって過言ではないでしょう。安倍の総裁任期満了が近づいているので、事態はさらにかなり厳しくなっている。
さてその産経新聞の中でも安倍狂信者といっていい阿比留瑠比が興味深い記事を書いていました。
【阿比留瑠比の極言御免】ポスト安倍 どんどん出馬を - 産経ニュース
> 興味深いのは記事タイトル「(石破元幹事長、石原元幹事長、岸田政調会長などが?)どんどん出馬を」でわかるように、阿比留ですら建前では「安倍四選で何の問題も無い」、あるいは「安倍総理の指名による禅譲でいい」として「総裁選など不要」とは言わないし、言えない点です。
ということは非常に注目すべきですね。阿比留の本音からすれば安倍に永久に首相をやってほしいのでしょうし、産経は(なにしろ日枝久に産経を助けてやってくれと頼んだくらいの人間ですから)やっぱり安倍を絶対的に支持しているはずですが、安倍4選は難しいと考えているのでしょう。事実最近の産経にも、ポスト安倍関係の記事が頻出しています。
そんなことを考えていたら、こんな報道が流れました。
習主席国賓来日の中止要請 香港国家安全法で自民が非難決議へ - 産経ニュース
中国による香港への統制強化を目的とした「香港国家安全維持法」が可決、施行されたことを受け、自民党がまとめた非難決議の内容が3日、分かった。すでに同法違反を適用した逮捕者が出ていることについて「重大で深刻な憂慮」を表明。日本政府には、延期の状態となっている習近平国家主席の国賓来日の中止を求めた。
(後略)
安倍がこんな要請を受けるとは思いませんが、もしこれを受けたとしたら、これは安倍晋三という政治家にとって最高レベルの挫折になりますね。それを産経ほか安倍狂信者連中ははどう考えるのか(苦笑)。
現実には、こんな記事がその後流れました。
二階氏サイド、自民の「習主席来日中止」決議案に猛反発 「待った」の可能性も - 毎日新聞
毎日新聞2020年7月3日 22時24分(最終更新 7月4日 09時50分)
自民党外交部会と外交調査会が3日の役員会で、中国による「香港国家安全維持法」制定に反発し、中国の習近平国家主席の国賓来日中止を求める決議案をまとめたことに対し、二階俊博幹事長サイドが猛反発している。部会側は来週中に党内手続きを終え首相官邸に申し入れる構えだが、中国との太いパイプを持つ二階氏が「待った」をかける可能性もあり、党内で緊張感が高まっている。
岸田文雄政調会長は3日、決議案について、部会側に対して党内全議員が出席できる部会総会で諮るよう指示。6日の総会開催が決まった。二階氏サイドが岸田氏に掛け合い、決議案の文面を外務省と調整するよう求めた。
かつて田中角栄元首相に師事した二階氏は独自の中国人脈を築き、2016年の幹事長就任以降は習氏ら要人との会談を重ねて日中関係の改善を後押ししてきた。だが決議案については事前に報告がなく、二階派関係者は「中国と摩擦を起こしても仕方がない。勝手なことはさせない」と述べた。それに対し、党内の保守系議員で構成する「保守団結の会」(代表世話人・高鳥修一筆頭副幹事長)は3日、決議案の内容を後退させるべきではないとし、会員43人に部会総会への出席を呼びかけた。【野間口陽、飼手勇介、遠藤修平】
今後どうなるかはわかりませんが、ともかく明日(7月6日)開催される総会に注目ですかね。しかしこのような事態になること自体が安倍政権の求心力低下なのでしょうね。私は、中国国家主席の国賓来日中止というのに賛成をしませんが’(よってこの件については、安倍らを支持します)、それはともかくいくら安倍に対して日本の右翼らが甘くても、この件にはそれなりに(決定的な対立はしなくても)「言うべきことは言う」という状況なんですかね。このあたり私も今後の情勢を注視したいと思います。
いずれにせよ、自民党総裁3期目である安倍晋三が、以前と比べてだいぶ立場が悪くなっているのは事実なようです。やっぱり自民党総裁3期目というのは、ちょっと無理があったんじゃないかなと思います。上にあげた3知事の最終期と同じです。現状「やらなきゃよかった」と論評されるレベルではないか。もちろん安倍としてもこのまま黙っているというものでもないでしょうから、甘く見ていてもいけませんが、しかしその前途はそんなに明るくないと私は思います。
この記事は、bogus-simotukareさんの上で引用した記事を参考にしました。感謝を申し上げます。