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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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北朝鮮と全然関係ないじゃん(そもそも取り上げているものが、自分たちの主張とそぐわないことを認識しているのか)

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先日荒木和博のブログを読んで「どうもなあ」という気分になりました。

茅ヶ崎のスパイ騒ぎ【調査会NEWS3416】(R03.3.26): 荒木和博BLOG

それで記事の出だしは、次のようなものです。

>「やはりそうだったか スパイ基地だった茅ヶ崎 県警は複雑な表情」

 こんなタイトルの新聞記事を特別調査班が見つけました。読売新聞昭和48年(1973)3月15日付(おそらく神奈川版)。

ここまで読んで私「1973年の北朝鮮スパイの話なんかしたってしょうがないだろ」と思ったのですが、実際はそれのはるか上をいっていました(苦笑)。記事をさらに引用します。なお一応断っておきますと、記事に出てくる年号は「昭和」を略したものです。昔はこういうやり方をしたのですが、今は一般的ではない。私はアンチ元号なので、これは大変よいことだと思います。

>CIA基地だった茅ヶ崎ー。中国政府に二十年間抑留され、このほど釈放されて米国に帰った元CIA(米中央情報局)工作員、ジョン・ダウニー氏が米紙に「朝鮮戦争当時、CIAは茅ヶ崎市に、対中国工作基地を置いていた」と公表したことについて県警外事課では、これまでも同市ではスパイ騒ぎが多かったことから「やはりそうだったか」という複雑な表情で受け止めている。

 県警がダウニー氏の証言が事実無根のものでないとみているのは、同市南湖に米軍通信基地があったため。この基地は終戦後の二十二年に開設され、二十五年ごろまで戦車部隊が駐留していた。しかし、二十五年六月、朝鮮戦争がぼっ発したあと通信基地になり、同基地での通信活動は三十一年一月まで行われていたから、ダウニー氏が証言通りの活動を行っていたとすれば、この基地が利用された可能性は強いとみている。

 減に元CIA工作員だったと名乗り出たM氏は「同市内に住んでいた作家鹿地亘氏が、さる二十六年、CIAのキャノン帰還に誘かいされたといわれている事件で監視役をしていた男が、同通信基地に出入りしていた」と同基地とCIAの結びつきを裏づける証言をしている。

北朝鮮の話なんかどこにも出てこないじゃねえかよ!!!(苦笑)

関係ないにもほどがある。このあと荒木はいろいろ書いていますが、北朝鮮拉致なんかとは関係ないことです。上にも書いたように、私最初は、茅ヶ崎で北朝鮮スパイだかなんだかが逮捕されたっていう話の紹介かなと予想したのですが(そして、いつものこととはいえ、そんな過去の話をしたってしょうがないだろと思ったのですが)、実際はそんな私の予想のはるかに超越していますね(苦笑)。こういっちゃなんですけど、荒木の迷走ぶり、トンデモ度の進行、劣化、デタラメぶりがそうとうひどくなっています。これはかなり末期的な状況でしょう。

が、これだけなら記事にするほどのこともありません。私が興味を持ったのは、上の引用のこちらのくだりです。

>中国政府に二十年間抑留され、このほど釈放されて米国に帰った元CIA(米中央情報局)工作員、ジョン・ダウニー氏

記事からするとダウニー氏なる人物は、1973年に中国での拘留から釈放されて米国へ帰国できたということになります。ってことは、これはおそらくキッシンジャーの秘密訪中からニクソン訪中にまでいたる米中両国の関係改善によるものだなと考えられます。それで調べてみました。ダウニー氏の項目が、英語版Wikipediaにありました。「釈放」の項目を。注釈の番号は削除します。

>Thanks to efforts by Downey's mother, Mary Downey, and President Richard Nixon, Downey was released 21 years into his life sentence, on March 12, 1973,the year after Nixon's visit to China.

釈放の日が1973年3月12日ですから、上の記事はまさに釈放直後の記事ということになりそうです。それでWikipediaの記述にもあるように、家族は当然としても、ニクソン大統領の努力、働きかけがあったことが、ダウニー氏の釈放の大きな決めてだということになりそうです。当然の話です。

それで、ニクソン大統領がそのように動けたのは、当然米中関係が改善したからですよね。仲が悪いときに「返せ」といったって、中国もなかなか返してはくれないでしょう。ニクソン大統領が訪中するまでになった関係改善が功を奏して、ダウニー氏の釈放が実現したわけです。ダウニー氏は朝鮮戦争の関係で中国に拘留されたとのことですので(1952年とのこと)、それでは中国側の態度もかなり厳しいものになるはず。

それでここからどういう話が導き出せるかというと、このような捕虜、拉致、その他何らかの理由で、国交のない国に拘留、あるいは滞在している人間を母国、自国に帰してもらうには、その国との関係改善が必要なのだなということでしょう。結局ダウニー氏の件も、中国との関係改善、中国への働きかけと交渉で釈放されたわけで、米国は軍事行動なんかしていない。エンテベ空港とかは例外中の例外で、こんなの軍事作戦なんかとても出来るものではない。2002年の小泉訪朝から19年もたっているのに巣食う会も家族会も、「北朝鮮混乱時に自衛隊を派遣して拉致被害者を救出する」とか「日本政府が平壌に連絡事務所を設置するなんていうことは利敵行為であり絶対許さない」とか、そういうことを建前としては引っ込めていないというのは、まさに正気の沙汰ではないのレベルですね。荒木は、自衛隊による拉致被害者救出は可能であると主張する本まで出している。そういうことを主唱している人物が、交渉によって釈放された人物の話を持ち出しているなんて、語るに落ちるにもほどがあります。こんな愚劣な光景見たことがない。

北朝鮮における拉致被害者の救出とぜんぜん関係ないじゃん(4月12日更新)

だいたい関係改善によって先方の譲歩を引き出す、あるいは先方の態度が軟化するなんてのは、シベリア抑留者の帰国、中国在留日本人孤児の日本への帰国、またこれは、中国による拉致でなく自発的に中国に行ったのですが、伊藤律の中国からの帰国などもそうでしょう。ソ連と国交が樹立されたからシベリアでの日本人抑留者も帰国できたわけだし(そもそも国連に加盟するに当たっては、ソ連の了解が必須です)、日中の国交が回復、平和条約が締結されなければ、日本人孤児や伊藤律だって、中国から日本へ出国することなどできるわけがない。当然にもほどがある。

なおこの記事は、bogus-simotukareさんの記事をヒントにしました。感謝を申し上げます。


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