今年(2020年)5月3日は、2012年以来の、首相が安倍晋三でない憲法記念日となりました。そして今年は、去年同様コロナ禍において、あまり護憲改憲ともに、あまり盛り上がらない年となりました。それ自体は当然というものでしょうが、個人的に興味深い記事をいくつか。興味のある部分の抜粋を。
>――首相も示唆するところだが、東アジアの安全保障環境が厳しさを増すなか、自衛隊は地域防衛により柔軟かつより大きな役割を果たすべきではないか。菅首相は、自衛隊がより柔軟に対応できるよう日本国憲法を改正すべきだとの立場か。それとも、憲法改正は必ずしも必要ではないとの考えか。
自民党は結党以来、憲法改正をモットーなりマニフェストに掲げ、これまで何十年もその実現を目指してきた。
憲法改正の手続きについて言えば、まず国会で発議されなければならない。さらに主権者である国民に賛否を問うため、国民投票にかけることになる。発議には衆参両院で3分の2以上の賛成が必要だ。
何段階もの手続きを経るため、改正はそう簡単ではない。しかし現行の憲法は第二次世界大戦の終結直後に採択されたものであり、今日の現実に追いついていないのも確かだ。
実際、われわれは何度か改正を試みてきたが、現状では非常に難しいと認めなければならない。国会で可決されなければならないので、政権の考えで簡単に変えられるようなものではない。
その後産経新聞のインタビューとか改憲派集会のビデオメッセージなどで、改憲に前向きな姿勢の発言をご当人はしていますが、実態としての本音はおそらくこの雑誌のものでしょうね。その後他のメディアや集会ほかのいろいろな発言も、たぶんこのあたりは最初からの想定内のものでしょう。
さてさて、もう1つ、こちらも興味深いものがありますね。
>安倍氏、憲法改正推進本部最高顧問に 「喜んで」と快諾
楢崎貴司2021年4月20日 22時37分
自民党の衛藤征士郎・憲法改正推進本部長は20日にあった同本部の会合で、同本部最高顧問に安倍晋三・前首相が就任したと明らかにした。衛藤氏が安倍氏と直接会って就任を要請し、安倍氏は「喜んで」と快諾したという。
安倍氏の後退、狂う麻生氏の戦略 巻き返しにらむ衆院選
最高顧問には高村正彦氏が就いており、安倍氏が2人目となる。この日の会合後、衛藤氏は記者団に安倍氏の起用について「菅総裁から『憲法改正推進については挙党態勢でお願いします』と言われた」と説明。「挙党態勢でやろうということだ」と語った。
憲法改正の動きをめぐっては、衆院憲法審査会で改正の手続きを定める国民投票法改正案の審議が行われており、今国会での成立に向けた与野党の神経戦が続いている。会合の出席者の一人は、安倍氏の最高顧問就任について「あんまり表に出てこないほうがいい。逆効果だ」と述べた。(楢崎貴司)
正直いってこういうものに安倍をもってくるのもどんなもんかいなと思うのですが、ただ正直自民党の「憲法改正推進本部最高顧問」なんてものに祭り上げる価値のある(と考えられている)人間は、安倍晋三くらいしかいないのも事実でしょう。
そう考えると、私が以前書いた記事にご紹介したものにもかかわってきますね。引用の元記事はこちら。
安倍晋三にとって第2次安倍政権を1人の官房長官で通したのは、強みであったが、同時にマイナスでもあったしまたその後もそれを引きずるのだろう>「安倍総理の突然の辞任に今後の不透明感を抱いた人もいるだろう」。9日、憲法改正に向けた国民投票を実現するため自民党山口県連や県神社庁などが山口市で開いた連絡会議の冒頭。国会議員や地方議員たち約120人を前に県連常任顧問の柳居俊学県議会議長は険しい表情で切り出した。
県連は昨年6月、憲法改正推進本部を設置。県内19市町の首長と議長の全員が連絡会議に名を連ねる。憲法改正を目指す安倍首相は年頭会見でも「私の手で成し遂げる」と訴えた。
それだけに突然の辞任表明は地元改憲派を動揺させた。「残念だが総理の志を受け止め、新総裁に実現を強く要望したい」。柳居議長の鼓舞は10分以上に及んだが、出席の県議は「改憲は安倍さんが首相だからこそ現実的だった」と諦めの表情。別の県議は「辞める前に道筋だけでも付けておくべきだった」と悔やむ。
私は護憲派ですので、もちろんそうでなければそうでなくて大いにありがたいというものですが、記事中
>出席の県議は「改憲は安倍さんが首相だからこそ現実的だった」と諦めの表情。別の県議は「辞める前に道筋だけでも付けておくべきだった」と悔やむ。
というのは、安倍の怠慢、もしくは無能さというものだと言われてもしょうがないでしょう。安倍がそんなに改憲に政治生命をかけているのなら、ポスト安倍晋三の自民党における改憲の顔を育てるあるいは自分で後継者を指名する必要があったでしょう。第1期のように1年の政権期間だったのなら時間がなかったと言うことになりますが、第2期はそういうことをいえたものではない。稲田朋美に期待していたのかもですが、期待外れはなはだしく、まさか片山さつきというわけにもいかないだろうし、あるいは自民党の右翼系議員で安倍以上に強い右翼イデオロギーの持ち主であっても、(どういうわけか理由は知りませんが)安倍を上回るほど右翼連中から好かれている政治家は、(なぜか)いない。いったいどんだけ右翼も産経新聞(ほかの右翼マスコミ)も自民党も、安倍晋三に甘いんだかわかりませんが、ともかく現在ポスト安倍の、改憲の顔になり得る政治家は見当たらないといえるでしょう。だから右翼連中は、安倍再々登板とかそんなことを主張します。
購入サイトへのリンクはしません。悪しからず。また写真の大きさは、Amazonからいただいたものそのままです。
それにしてもこーんなことをほざいているようなクズ連中が、よく中国や北朝鮮の体制を批判したり馬鹿にできるもんだよね(苦笑)。中国や北朝鮮は、体制とトラブルがあったら投獄されたり粛清されたりしますが、日本はそこまでひどくはない。
が、それはともかく。けっきょくこういうアホな事態になるのも、ポスト安倍に、こういう連中(上の雑誌に名を連ねているような連中)にとってのふさわしい人間がいないということでしょう。安倍晋三は1954年生まれで今年67歳であり、今後安倍が何年政治家をするかはいざ知らずですが、近々に政治家引退するかはともかく(安倍は子どももいないしね)、安倍にものすごく長い時間があるわけではありません。が、いまのところ安倍以外に頼りになる人間がいないのでしょうね。それもどうかですが、あるていど安倍に首相の芽が出てきたのが小泉政権後半くらいとすると、それから15年以上はたっているわけであり、けっきょく安倍自身も安倍の周囲、安倍応援団連中も、現在のところポスト安倍としての人物を見つけ出すにいたっていません。そう考えると、やはり安倍晋三に匹敵するような人物は、後にも先にもいない(?)というふうに安倍自身も安倍の周囲、安倍応援団連中も考えているということなんでしょうね。上の引用記事にも書いたように、安倍は、自分が理想とする改憲を実現するのは自分しかいないという自負みたいなものがあるのでしょう。いろんな意味で無能な人間です(苦笑)。