bogus-simotukareさんの記事を読んでいて、またまた「どうもなあ」の気分になりました。静岡大学教授楊海英のツイッターより。
毛沢東語録は50億も翻訳された。習近平語録は何冊かな。左は毛沢東語録を「読む」アルジェリア人。右はどこの石油王?こうして、中国は世界に革命思想を輸出してきた。 pic.twitter.com/bUaUplvgGj
— 楊海英(Oghonos Chogtu, 大野旭) (@Hongnumongol99) July 31, 2021・・・(失笑)。これ、「アルジェリア」の写真はどうみても「なんじゃいな」と目を通しているくらいにしか見えないんですが(笑)。右側の写真にいたっては、明らかに単なるパブ写真でしょう(苦笑)。そもそもbogus-simotukareさんもご指摘のように、写真の出典が不記載なので、議論のしようもありません。たぶん「アルジェリア」のも、右と同様のパブ写真の類いではないか。そうでなくったって、そんなものは当時も現在も、さほど現実政治に影響などあるものではない。ていうか、中国がいくら毛沢東語録なんぞを翻訳して出版してそこら中に配布したって、そうそうそんなものが現実の政治に影響を与えうるものではないし、中国だってそんなことを期待もしていないでしょう。「革命思想」というより、「ソフトパワー」の類いに近い性質がないか。もちろん「毛沢東語録」は、文化とかの書籍ではありませんが、どちらかというと共産中国の紹介といった側面が強く、マジ論の政治介入というものでもないでしょう。ていいますか、60年代半ば過ぎ(つまり文革の時代)は、中国は北ベトナムへの援助が忙しく(ホー・チ・ミンを疎開させたりもしていました。たぶんホーとしては、中国との関係を維持したかったという側面もあったはず)、海外の革命運動に首を突っ込む余裕などありはしませんでした。せいぜいポルポトのカンボジアくらいじゃないですかね? ソ連との対立も激しかった。ちょっと後の話ですが、キッシンジャーの秘密訪中、ニクソン訪中、日本との国交正常化ほか、さまざまな外交の変化が生じた1971年~72年は、もちろんその間の国連での台湾(中華民国)からの代表権奪取(昭和天皇が佐藤栄作に「台湾を支援してほしい」と頼んだとかいうやつ。下に、その件に関する拙記事をはっておきます)もあったし、中国も毛沢東語録を世界中に配布するばかりが能だったわけではありません。当然ながらいろいろな方面に目を配っていたわけです。文革の時代ですらです。
昭和天皇というのも、時代錯誤な人だだいたい毛沢東語録の世界中への配布が
>革命思想の輸出
であるのなら、たとえばこれらはどうか。いちいちAmazonへのリンクはしないのは、乞うご容赦。
こういう本を出した出版社様は、中国からの革命思想輸出に嬉々として協力した売国出版社とでもいうんですかね? 余談ですが、中嶋嶺雄なんて人が翻訳しているのも、「時代だなあ」ですよね(苦笑)。あるいはこちらはどうか。
すごいですねえ、よりによって日本の出版社が毛の対日本戦争論の本を出版している。しかも出版社の親会社は、読売新聞という日本でも保守的・右派と見なされている新聞です。いいのか、こんなことで(笑)。これは文革の時代なんてものではない、2014年の出版ですからねえ。
だいたい現在日本人が手っ取り早く「毛沢東語録」に目を通そうとしたら、平凡社の本を読むことがおおいでしょうが、当の楊自身その平凡社から本を出版しているし(『モンゴル草原の文人たち 手写本が語る民族誌 静岡大学人文学部研究叢書』)、中央公論新社からも本を出しています(『モンゴル騎兵の現代史 チベットに舞う日本刀』『日本陸軍とモンゴル 興安軍官学校の知られざる戦い』)。このあたりどう整合性をつけるのか(苦笑)。つまりは彼自身、そんな本を出していたところで大したことではないと認識しているということではないのか。
まあつまりは、当時の日本では、多くの出版社が毛沢東語録を発売すれば金になると考えたから出版したし、(当然ながら)そんなものを日本の警察ほかの治安組織も「革命思想をあおる危険な本だ」とかなんとか抜かして発売停止に追い込むようなことはしなかったわけです。つまりはそんなものは「言論の自由」の範疇であり、革命思想の伝搬だとかとはみなさない、それほどの危険性はないと判断したのです。当たり前でしょう(苦笑)。
そもそも毛沢東なんて、一種の古典ですからね。その本を出しているからといって出版社がその本の内容に賛同しているというものでは必ずしもない。ヒトラーの『我が闘争』が角川書店から出版されているからといってさすがに角川がヒトラーやナチズムを支持しているというものではない。あるいは岩波書店は、『聖書』や『コーラン』の翻訳も出していますが、岩波はキリスト教やイスラム教の手先というわけでもないし、また岩波はリベラル系の大御所ではあっても、岩波文庫にマルクスやレーニンの著作が収録されていても、別にそれは岩波がマルクスやレーニンに追随しているというものでもないでしょう。そのあたり日本共産党系の出版社である「新日本出版社」やマルクス主義の本を多数出版している「大月書店」「青木書店」、聖書でいえば日本聖書協会のようなところとは立場が違うでしょう。また岩波からも、楊教授は著書を出しています。
そしてまた、こちらのツイートがひどい(呆れ)。
時代は確実に前進している⁉️左は文化大革命期に毛沢東語録を手にして踊る日本人の「ハグルマ座」。右は習近平語録を学ぶアラブ共産主義者か。もう少しで、今の日本人も習近平語録を手にして踊り出すかもしれない。ウイグル人ジェノサイドとモンゴル人弾圧を無視する人々が。 pic.twitter.com/8Tzf5Rw8Nr
— 楊海英(Oghonos Chogtu, 大野旭) (@Hongnumongol99) July 31, 2021何が何だかさっぱりわかりませんが、左の写真の
>ハグルマ座
というのは、「劇団はぐるま座」のことですかね。この劇団について知りたい方は、Wikipediaでも読んでいただくとして、正直言いまして、こんなものを取り上げて楊氏は完全に気でも変になったんじゃないんですかね(苦笑)。まず彼自身もツイートしているように、これ
>文化大革命期
の話ですからね。おそらくこれ1967年頃の中国公演の写真かその近辺のものであり、そんな半世紀を超える以前の話をしてどうする(呆れ)。また右の写真は上のツイートと同じ写真ですが、これ単なるパブ写真じゃん(笑)。bogus-simotukareさんがご指摘のように、
> 「文革時代の毛沢東語録宣伝ならともかく、今日本国内のどこで中国関係者(大使館職員など)が習近平語録の宣伝なんかやってるんだよ(呆)」ですね。
ということでしかないでしょう。だいたいこの劇団は、かつては日本共産党(左派)などというところと密接に関係していましたが、さすがに最近は(まだ解散はしていません)そういうところとも一線を画している。はぐるま座のHPを拝見しますと、2020年までで更新がストップしていますが、『動けば雷電の如く』平川中学校・全校鑑賞が終了しました。(6月27日)という活動報告(2019年)でわかるように、つまりは現在のはぐるま座は、公立学校での公演も可能なわけです。そうでなければこんな劇団が未だに存続できるわけもない。当たり前でしょう。なにをこんな愚劣なデマをほざいているのか。
まあこういうことを言うのも馬鹿馬鹿しいというレベルでしかありませんが、文化大革命やそれを支持した日本人の姿なんて、しょせん時代のあだ花に過ぎないでしょう。そんなものは現在の中国だって否定しているし、また現在の中国は毛沢東思想などというものを国家理念として掲げてはいないでしょう。それは建国の父ですから、そんなに一刀両断に否定はしてはいないとしても、とても肯定しているようなものではない。
それにしてもさあ、こういうツイートを読んでいると、ほんと楊教授という人も完全にトンデモの域に達していますね。「一線を越えた」(とっくに超えていますが)なんていう生やさしいレベルじゃないでしょ、これ。先日私はこんな記事を書きました。
ここまで白を黒というレベルの嘘をついてどういうつもりなのか(苦笑)(日本に国籍をかえた楊海英静岡大学教授)その記事でご紹介した彼のツイートなんて完全なデマツイートです。
首相の親書まで書き換えてしまう勢力が跋扈する日本の政界。彼らを選んだ国民の責任。その結果が今、中国リスクとして日本人を苦しめている。https://t.co/3cGE82GFPj
— 楊海英(Oghonos Chogtu, 大野旭) (@Hongnumongol99) May 18, 2021拙記事でも指摘したように、
>それ安倍が承知の話じゃないですか(笑)。書き換えたのは安倍の同意あってのものであり、二階氏や今井氏が安倍の意向を無視して動いたというわけではない。当たり前でしょう(苦笑)。
ということでしかない。こんなデマほざいて楊教授はなにを考えているんですかね。いいかげん彼の周囲も、彼をたしなめたらどうか。彼のデマぶりは、どうみても「言論の自由」「学問研究の自由」なんてことでかばえるようなものではないでしょうに。いわゆる右派系の出版社はともかく、岩波書店とかは、彼の本を出していていいのか。学術書としてはレベルが高いから、彼のデマには目をつむるなんてことで済むような状況じゃないでしょうに。ある段階で彼は、反中のためならデマも辞さないという心境になったのでしょうね。そして現在の日本では、そういう彼を受け入れる土壌があると。それまたどうかですね。少なくとも、こういう人物を野放しにしているのはお話にもならんとしか言いようがないでしょう。全くもって無様で無残な光景です。
bogus-simotukareさんに感謝してこの記事を終えます。