自民党総裁選というのも、「一政党の党首選に過ぎないじゃん」「いくら次の首相を決めるものとなるとはいえ、マスコミが事実上自民党の宣伝をしているじゃん」とかいろいろ指摘、批判もあろうかと思いますが、今回の総裁選に出馬している人間の中で、私個人の意見で、もっともまともな人間と私が考えるのが、野田聖子です。過大評価をするつもりはありませんが、彼女はほかの候補者3人よりはまともな人間だと私は考えています。たとえばbogus-simotukareさんがご教示くださったものですが、こちらの彼女の発言はどうでしょうか。
>野田候補
「拉致の問題は安倍政権、菅政権の重要な問題解決の一つだったと思います。しかしながら私達自民党にいて何か前進したかっていうようなことは私自身何も聞いていません」
野田氏は拉致問題は進展していないという現状認識を示した上で、北朝鮮への情報収集態勢の強化が重要と指摘します。
なお他候補の発言をみますと、
>高市候補
「もはや一刻の猶予もございません。何とかあらゆるルートを模索しながらですね、1対1の対談の場を私は作りたいと思っております」
高市氏は金正恩(キム・ジョンウン)総書記を念頭に1対1の会談を行い事態の打開をはかる考えを示したほか、国際社会への発信力を強化すると訴えました。
(中略)
>河野候補
「外務大臣時代、北朝鮮の外務大臣と何度か話をいたしました。しかし北朝鮮という極めて特異な政治体制の国であることを考えると、やはり首脳会談というのが必要になってくると思います」
首脳会談実現のためにはアメリカ・中国・韓国・ロシアの諸国としっかりと話し合い、北朝鮮への共通認識を持つことを訴えます。
岸田候補
「外務大臣在任中、ストックホルム合意等の取り組みに努力をした経緯がありますが、結果として十分な結果を出すことができていない。やはり最後はトップ会談に持ち込まなければいけない」
岸田氏は、首脳会談のためにはアメリカのバイデン政権の北朝鮮政策との連携も考えながらしっかりシナリオを考えていくことが大事としています。
首脳会談は当然ですが、しかし野田の言うように
>野田候補
「拉致の問題は安倍政権、菅政権の重要な問題解決の一つだったと思います。しかしながら私達自民党にいて何か前進したかっていうようなことは私自身何も聞いていません
という前提でいかないと、全く何もどうしようもないでしょうね。安倍晋三らも首脳会談したいみたいな話は散々していましたが、まったくの口先だけのものに終わりました。が、岸田と河野という外相経験者は、つまりは自分が何もしなかった(できなかった)というこのような前提は認められないでしょうね。そして安倍に近い高市も、やはりそういうことは認めがたいでしょう。それだけでも野田の発言はとてもまともだし、好感の持てるものです。が、私は普段自民党を支持していないし、どっちみち議員でも党員でもありませんから総裁選に投票はできません。それはまあ仕方ないとして、安倍晋三が高市早苗を支持しているのが興味深いですね。
前にも記事でもふれたように、安倍は自分の後継者として岸田文雄を考えていたという話があります。よって彼は、第二次安倍内閣時に、岸田を外相、あるいは政調会長といった要職につけていました。が、理由はともかく、安倍は、自分の次の首相(自民党総裁)として、官房長官の菅義偉を選びました。このあたりの彼の考えは、やはりこの状況では、岸田首相では何局を乗り切るのは厳しいという認識があったというところなのでしょう。
安倍晋三にとって第2次安倍政権を1人の官房長官で通したのは、強みであったが、同時にマイナスでもあったしまたその後もそれを引きずるのだろうそれで今回、安倍は、自分とイデオロギーが近いとされる高市早苗を支持しているということになっています。が、けっきょく彼の出身母体である細田派も、高市支持ということでは固められませんでした。高市では、最初から勝つのは難しいのではないかというのは誰でも想像のつく話ですが、ともかく彼は、高市支持というのを打ち出しているわけです。安倍も、最初から細田派ぐるみで高市支持にまとめるとか、そこまですることはできませんでした。あるいはする意思がなかったのかも。
さらに興味深いのが、その安倍から事実上の禅譲を受けて首相(自民党総裁)になったといって過言でない現首相が河野太郎を支持している問うことで、安倍と支持する候補者がちがうということですね。bogus-simotukareさんもご私的なように、
>細田派は高市氏か岸田氏を支持 総裁選一本化せず - 産経ニュース
つまり「高市支持」について安倍は事前に細田派(安倍の出身派閥)に根回ししなかったし、事前に根回ししなければ今の安倍の政治力はその程度の物だと言うことでしょう。根回ししなかった理由が1)根回ししなくても派閥は俺の意向に応じるはずだという過信か、それとも逆に、2)根回ししても高市支持で一本化は無理という諦めかはともかく。
ということなのでしょう。
そして今回の総裁選で高市がもし勝てば、安倍は「キングメーカー」(?)「院政」を敷くとかいうことになるのかもですが、おそらく今回高市は勝てない。そうなると、岸田あるいは河野が総裁になったら、たぶん安倍とは一定の距離を置くと思うので、ここで事実上自民党で9年間弱続いた「安倍時代」、そして首相として6年半以上(どちらも第二次安倍政権のみのカウント)続いた安倍時代は、一応の終わりということになるのでしょう。自民党は別に安倍の私党ではないのだから、そもそもそんなに安倍が総裁(党首)を続けたりするのも変な話ですが、ともかく安倍一強とまで言われた時代が何年か続きましたが、それも文字通り終わったのだと思います。高市の敗北が確定した時点で彼の時代が終わったということになりますが、現実問題としてはすでに終わっているでしょう。もちろん勝てば、事態は変わります。それで、たとえば次のようなところは、安倍時代の終焉を意識したうえでの行動かもですね。
教育再生実行会議を廃止 高等教育検討する新たな会議開催へ | 教育 | NHKニュース
多分ですが、安倍時代が続くのなら、この時点での「教育再生会議廃止」ということにはならないのではないかと私は考えます。またこれは私的なことであって公的なことではないですが(行政訴訟ではありますが)、現首相が首相を続けるのなら、あるいはですが提訴に至らなかった可能性がありますね。
うんなもん提訴時点の首相がだれであろうが、提訴したければすればいいだけのことですが、さっさと提訴しないのだから、こいつらのチキンぶりもひどいものです。
ただ安倍が日本の政治のトップ、あるいはそれに準ずる地位にあるということが終わったということは、これによって「安倍的なもの」をも終わるということを意味しません。当然の話ですが、たとえば安倍もまだ隠居には早いでしょう(私はじゅうぶん隠居の時期だと思いますが、ご当人はそうは思っていないでしょう)。可能ならご当人はまた首相になりたいでしょうし、当然なるべく自分とものの考え方が似ている人物が首相であればいいと願っているでしょう。それが可能かどうかはともかく、私にとっては極めて遺憾ながら、安倍ほどではないにしても自民党の極右ぶりというのは相当ひどいレベルに来ていると思います。けっきょく安倍が、自民党総裁再登板、首相再登板、首相在任歴代1位、自民党総裁が今まで2選までだったのを3選可にして、自分が3選で総裁を継続するなんていうマンガチックなことになったのも、理由はいろいろでしょうが、1つには安倍の極右的部分が自民党の中の琴線に触れたということはあるのでしょう。だから、一応「宏池会」のトップである岸田も、
>森友問題「再調査考えぬ」 軌道修正、安倍氏に配慮か―自民・岸田氏
なんていうことになるわけです。また、
>自民総裁選 岸田氏、憲法改正「総裁任期中に実現」
という発言もあります。
現段階で、安倍にそのような配慮をすることが、どれくらい自民党総裁選を戦う上でプラスになるのか私は知りませんが、やはり現在の自民党でトップになろうと思っていたら、安倍に配慮すいるとか改憲とかには積極的であるという姿勢(をとるポーズ)が必要、あるいは有利に働くのでしょう。正直さすがに高市も岸田も河野も、安倍ほどの長期間首相で居続けることはできない相談だと思うので、彼(女)らの任期中に改憲を実現するのはほぼ不可能だと私は思います。しかしここはそういう建前でいくということなのか。
かつて無役時代の安倍を「過去の人」と批判した溝手顕正を安倍が逆恨みして(当時の安倍は現実に「過去の人」でした)、2019年参議院選挙で刺客を出して落選させた(しかしその後刺客と法相までしていた夫まで逮捕)なんていう、どんだけ馬鹿で非常識なんだよというような愚劣な事態も起きたのも、さすがに安倍でなければあんな愚劣なことはしないし、またさすがにそれが少なくとも自民党の中では事実上の不問とされた(かどうか正確なところは知りませんが、まあそんなに外れてもいないでしょう)というのも、安倍ならではでしょうが、しかしそういう悪い部分がかなりの部分日本の政治や自民党に浸透したことも否めません。そういう影響を払しょくするためには、それ相応の時間と努力が必要でしょう。残念ながら世の中、安倍があそこまでして許されたんだから、自分もしてみたいとか勘違いする馬鹿もいないわけではない。もちろん私も期せずして多少なりともかかわってしまった森友や加計などもご同様。あんなことを積極的にしたがる人間がそう多いとも思いませんが、安倍の負の影響力を馬鹿にするのも妥当でないでしょう。たとえば安倍シンパによる性犯罪について、その人物の逮捕状の執行停止を命じたとされる中村格が、警察庁長官に就任するなんて言う愚劣にもほどのある事態がつい先日もあったばかりです。中村は、被害者(伊藤詩織)の取材に対して逃げ回ったそうであり、どんだけ馬鹿でクズで恥さらしなのよと思います。前にも記事に書いたように、若き日の中村が今日の中村を見たら、ああいうクズには自分はなりたくないと思ったでしょうし、中村に子どもがいたら、自分の親をあんまり自慢はできないでしょう。中村の子どもは、周囲から「てめえの親は、伊藤詩織の取材から逃げたんだろ」と言われて、本心から親をかばえるのか。まともなモラルを持っていれば、とてもそれはできないでしょう。
高校生、大学生、警察庁に入庁したばかりの中村格が現在の自分を見たら、ああいうクズにだけはなりたくないと思ったろうさすがに高市が自民党総裁になって首相になったとしても、そこまでひどいことをすることはないのかもですが、しかし今の高市が、そういうことを批判するような人間でもないのも確かだし、野田はどうかですが、安倍政権で幹部だった岸田や河野は弱腰な態度に終始するでしょうね、きっと。
いずれにせよ高市が勝てばもちろんのこと、岸田か河野でも、やっぱり安倍時代はなかなか払しょくできないのだろうなと思います。そしてそれが日本の政治にプラスになるとはとても思えませんね。今ではたいていの人間から忘却の彼方かもですが、統計不正の問題なんて、目も当てられないとはこのことです。私は、日本は、少なくとも統計のようなものはインチキは最大限しないと思っていましたが、とてもそんなことは言えたもんじゃない。かつては、中国や北朝鮮はデタラメな統計を発表しているが日本は違うなんて言う人が多かったしまたそれは正しかったかと思いますが、もはや日本の統計なんて自慢できるような代物ですらない。なかなか遠い道のりです。