こんな記事を書きました。
映画・旅行についての本の感想を記事にしていきたいその記事の最後の部分で私は、
>まずはてっとりばやく読める本の代表としての新書を考えますと、それについていろいろ勉強していきたいですね。これについては、また記事を書きたいと思います。
と書きました。そういうわけで、まずは新書本を。2018年の発売ですのでタイトルにも書いたように、やや現在の実情をそぐわない部分があるということは否めませんが、それは仕方ないということで記事を書いていきます。
この本は、産業編集センターという出版社が出している旅行関係の叢書新書の最初のものとして出版されたものでした。旅関係のシリーズで最初に依頼したのが、旅行関係の著名なライターである下川裕治氏を起用しているあたりに、彼が旅行業界でそれなりの大御所の位置にいるということがうかがえます。また、本の内容も、総論的なものであり、シリーズの最初の本としてはふさわしいところでしょう。
それでは内容をみてみましょう。こちらから。
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第1章 LCCには乗らない 第2章 ホテルは予約しない 第3章 同じ店に何度も通う 第4章 英語を喋らない 第5章 ホテルの部屋で夕食を食べる 第6章 下痢を怖がらない 第7章 Wi-Fiに頼らなくてもいい・・・いや、それ別に「極意」というほどじゃないんじゃないんですかね(苦笑)。
>LCCには乗らない
いや、これはやや誇大、本文とそぐわない見出しでして、実際にはせいぜい「LCCがいつも一番安いわけではない」というくらいの内容です。実際下川氏も「LCCには乗らない」なんてことは書いていない。これでは週刊誌ほかの誇大広告でしょうに。
LCCのダイヤが常に悪いわけではないし、また私が以前よく利用していたピーチのソウル便は、早朝出発、深夜到着というものでしたが、これ自体はそう悪いものではありませんでした。仕事が終わった後ゆっくり羽田空港に行き、帰国時点では羽田のホテルに泊まって翌朝出勤するなんてことをよくやりました。これは、現地での宿泊は1泊でしたが実際には週休2日でも、土曜の早朝(午前2時頃の離陸)で月曜になった時間に帰国というのでも、かなりゆっくり旅行ができました。日曜日に地方に行って地元の名物で自慢の焼肉をいただいたこともありました。この時も余裕でソウルから往復できたわけで、こういうある意味非常に贅沢な旅ができるのも、LCCならではでしょう。別にそういうことをそんなに推奨することはしませんが、1泊だけの旅であれば、2泊の旅よりも良い宿を利用するということも考えてもいい。これは、次の部分にもつながりますかね。
ソウルとDMZツアー他の韓国紀行(2017年9月)(8)またバンコクへ行くエアアジアなども、普通に午前に出発、夕方に帰国できる便なんてのもありますからね。それは、スケジュール的には他のメジャーキャリアと変わらない。
>ホテルは予約しない
これはケースバイケースとしか言いようがないですね。特定の泊まりたいホテルというのもあるし、また決めておいた方が無難な場合もある。私も旅では、ガチガチに予約を固める場合もありますが、もちろん現地で決める場合もある。著者も、ホテル側からネット予約をすすめられて、フロントの前で予約したという事例を紹介しています。これは、すでに泊まるホテルを決めてからの話ですから著者の言う「予約しない」という趣旨とは若干異なりますが、しかしそういう場合もあります。私も何回か旅先で予算以上に妙にいい部屋をあてがわれた経験がありまして、これも事前の予約があればこそです。そういえば下川本だったかどうかは定かでないですが、日本人がバンコクのホテルに泊まろうとしたら、ホテルの前の旅行会社で予約すればより良いレートで泊まれるといわれたという話を何かで読みました。ホテル側からすれば、そういう便宜を客にはかることもあるわけです。私もアイルランドと英国を旅したときは、日本では事前に初日(ヒースロー空港近辺のホテル)、ゴールウェイでの3泊分(2泊ホテル、1泊B&B)、ダブリンでの最終泊は予約しましたが、ほかは現地調達しました。それで特に問題は、ありませんでした。1泊ダブリン港で過ごしたことはありましたが、それは自分で考えて決めたことですから、特に問題はありません。つまりは、予約をしなかったから、そういうフレキシブルな日程にできたということではあります。
アイルランド・英国紀行(2015年9月)(1)>同じ店に何度も通う
ここでいう「同じ店」というのは、もっぱら食堂(レストラン、ビストロ、飯屋ほかいろいろな呼び名あり)のことです。これは勤め人、学生などでもそうでしょうが、人間そんなにいろんな店を訪れるということもないでしょう。どうしても好みの店というのはある。私もソウル、香港、ヤンゴン、日本でも大阪や名古屋、福岡など地元でなく繰り返し訪れる街では常連の食堂(レストランほか)はあります。それは当然の話であって、「極意」とまで称するほどのことかなあというが正直なところです。
>英語を喋らない
これもケースバイケースですよねえ。英語を話さないで済むのならそれでいいですが、否が応でも話さざるを得ないシチュエーションはいくらでもあるでしょう。下川氏が若いころと比べて話す量が減ったなんて話は、それはあまりに下川氏の個人的な話であって、あくまで「世間が想像するほど旅行(ビジネスにあらず)の際に、現地語(あるいは英語ほかの第3の言語)を話す機会はない」ということであり、「喋らない」ということとはまた話が違うでしょう。ていうかある程度スマートフォンに翻訳アプリみたいなものもあるわけで、「喋らない」というよりコミュニケーション不全は防げる時代になっているのでは。
>ホテルの部屋で夕食を食べる
これは趣味の問題ですね。貧乏旅行をしているのでコンビニあるいは屋台みたいなところで食い物を調達して部屋で食べるなんてのは、それは昔からそういうことをしている人はいくらでもいるわけで、とりたてて「極意」なんていうほどのものでもないでしょう。だいたいここで下川氏が例に挙げているのは、モスクワなどで食い物代が高いのでそれでホテルで仕入れた食い物を食べたという話であって、いわば緊急避難的なものです。せいぜい「外で食べることにこだわる必要はない」程度の話ではないか。
>下痢を怖がらない
うーん、こういうのを「極意」っていうんですかねえ(苦笑)。私も旅先でひどい下痢に襲われたことが、記憶にある限り2回あり、1回はシリアからレバノンに行った際で、シリアで食べたものが悪かったらしくレバノンで下痢を起こし、オランダに1泊トランジットした際はある程度軽減しましたが、日本に帰国したらきわめて状況が悪くなり、医者に行きました。それで何とかなったので、赤痢とかそこまではいかなかったようですが、我ながら人生でも最悪の下痢でした。2回目が、ヤンゴンの食堂で食べた食い物に当たったらしく、バンコクのホテルで惨憺たる目にあいました。が、これは翌日にはなんとか軽快したので(たぶん下痢で出し尽くしたのがよかったのでしょう)、それ以降はなんとかなりました。
バンコク・ヤンゴン紀行(2013年12月)(20)>Wi-Fiに頼らなくてもいい
当方ルーターを持って行って現地ではホテルやレストラン、カフェなどのWi-Fiを使いまくっています(いました)。韓国では、現地でルーターをレンタルしています。それで特に問題ないですけどね。まあもちろんSIMフリーのスマートフォンで、現地SIMを買ってもいいのですが、それと並行して適宜Wi-Fiを使っていればええんじゃね、という気はします。
ていうか、私は大した旅人ではありませんが、それでも私程度の人間でも「そんなん『極意』なんていうほどのものじゃないじゃん」という気がしますね。私より旅に慣れていない人なら参考になるかもですが、でもそれくらい自分で何とかなるんじゃないかなあではないか。
それでこれは、書籍の内容と必ずしも関係ないですが、
>しかしフィクションではない旅行記の世界だから、嘘を書くわけにはいかない。(p.122)
って、え、下川さん前、シンガポールのゲイランの話で、明々白々なフィクション書いていなかったっけ。
下川裕治氏はそんな初心な旅行者じゃないだろ やっぱり下川裕治氏は、そんな初心な旅行者ではなかった(笑)要は下川氏が、シンガポールのゲイランなるところへ行って、そこが売春街で彼が顔を赤らめたという話ですが、下川氏がゲイランを知らないわけがないし、彼がその程度で顔を赤らめるようなうぶな人間のわけがない(当たり前)。その後彼は、最初の話がフィクションであるということを事実上認めることを書いています。彼の書いている文章を読んでいても、ああこれ彼大げさに話を書いているなと思うことは少なくありません。
なお私も、ゲイランに行って泊ったことがあります。宿泊代は高くないので悪くないところです。
シンガポールほか2か国2都市紀行(ついでに北京も)(2017年3月)(2)