Quantcast
Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

最低レベルのメンテナンスが不備で遊覧船が沈没した(しかも全員死亡の可能性が高い)というのは、かなりやばい話だと思う(たぶんトムラウシのツアー登山と同じようなものもあったのではないか)

$
0
0

報道されるところによると、どうも知床半島での遊覧船遭難は、生存者がいることは厳しそうですね。

水温も3℃くらいで、これはバリバリの低体温症による死亡の恐れが必至というものです。岩場に上がれて早急に救助があれば助かるとしても、それもなかなか難しそうです。タイタニック号での遭難も、海に放り出された人たちはほぼみな亡くなっています。

それにしても最悪26人もの方々がお亡くなりになった可能性があるというのもすごいですね。Wikipediaの海難事故の一覧の、21世紀以降(2000年もふくむ)を閲覧しましたが、日本近海ではここまでの大規模な海難事故は昨今起きていませんね。10人以上亡くなった事故を見てみますと・・・。

>2000年
9月11日
北海道浦河港沖で、操業中の漁船第五龍寶丸が上甲板下の漁獲物処理場からの浸水によりバランスを崩し転覆。乗組員18人中14人が行方不明。

>2004年
9月7日
平成16年台風第18号により山口県下松市笠戸島に貨物船「トリ・アルディアント号」が座礁。インドネシア人船員22名全員が死亡。

>2006年(平成18年)
10月6日
茨城県鹿島港外にてパナマ船籍の貨物船「ジャイアント ステップ」が急速に発達した低気圧による暴風のため走錨して座礁し船体を切断。10名死亡または行方不明。ほぼ同時・同位置にて「オーシャンビクトリー」「エリダエース」も座礁し、連続事故となった。同日には、女川港沖でサンマ漁船「第七千代丸」が高波をかぶって機関停止し座礁・横転。16名死亡または行方不明となる事故も発生している。

といったところです。死者の数が大きい海難事故は、多くは発展途上国で起きたものです。私たちの記憶に新しいであろう韓国のセウォル号沈没事故は、非発展途上国で起きた海難事故としては、昨今あまり例のない大規模なものです。

昔は日本でも、多くの死者を出した海難事故がありました。1958年の南海丸遭難事故などは、168人もの方々が亡くなり(行方不明者は死亡したと考えます)、生存者は皆無でした。しかし最近の海難事故では、その多くは漁船や貨物船であり、さすがに乗客を乗せた船で多くの死者を出す事故というのは起きていません。

それで今回の事故では、どうもよろしからぬことがいろいろ指摘されていますね。こちらに掲載されていた写真を。

さらに記事を引用します。「封印作品」で有名な安藤健二氏の記事です。

>2月に撮影された写真には「船首の亀裂」が写っていた

別の運行会社の男性は「去年、2回ぐらい座礁事故を起こしている。自分が見た限り、船の前側の方が割れていた。そこが大きく亀裂入って水が入った可能性がある」とテレ朝newsに話していた。

稚内市在住の「しろまる最北日記」(@Asuka_Shiromaru)さんは、2月に観光で斜里町を訪れた際に、流氷を避けるためにウトロ漁港に陸揚げされた「KAZU I」を撮影。その写真を24日にTwitterに投稿した。

この写真を見ると、船首に描かれた「KAZU I」のロゴの右側に、亀裂のようなものが走っていることが分かる。

あまり言いたくないけれど、事故を起こしてしまった会社の船は他社よりも屋根のあるキャビン内の席が多いので、多少天気が悪くても、他の会社を差し置いて出港しがちなところはありました。

当該船舶は同業者の間で『潜水艦』と呼ばれていました。

これはかなりやばい写真ですね。非常にやばい。記事の内容も事故を起こさなければまだいいですが、起きちゃったのだからこれは本当に大変なことです。

なぜ修繕しなかったのかとか、なぜ出航を強行したのか(たぶん「強行」と言って間違いはないのではないか)とかいろいろ言いたいことはありますが、日本でもこのような海難事故が起きてしまったかと考えると、かなり私はショックです。もう10年も前の記事ですが、私はこんな記事を発表しています。

インフラの整備よりも既存分の維持管理のほうが優先される時代なのかもしれない

この記事で問題としたのは、トンネル崩落事故が発生した笹子トンネル (中央自動車道) の件ですが、その記事の中で10年前の私は、

>甘い考えでしたが、私は日本でこのような事故は起こるとはあまり想像していませんでした。

と書いています。それは今も同じですが、この海難事故は、笹子トンネルの事故よりずっとひどいですね。亀裂が入っていたのにそれを修繕しないでしかも時化で同業者も不安なくらいの中を出港したのだから、かなりすさまじいレベルでよろしくない事態ということにならないか。間違いなくなるでしょう。

そして私が思い出したのが、これまたずいぶん以前ですが、同じ北海道で起きたこの遭難事件です。トムラウシ山遭難事故が2009年に起きています。この遭難では、遭難当日悪天候にもかかわらず小屋をでた登山ツアーのパーティーが低体温症にやられてガイドをふくむ9名が亡くなりました。それで、遭難の決定的な原因となった強行出発が、あれは同じ会社の登山ツアーの客が小屋に入るので、無理に出発したんだという指摘となりました。その責任者であるガイドは亡くなったのでその理由は定かでありませんが、そうであると仮定したほうがそうでないと考えるより合理的にいろいろ説明できそうです。

ツアー登山でも、本来なら撤退すべき状況で、会社がキャンセル料を払うのを嫌がるので、雇われガイド(ツアー会社の社員にあらず)がやばい状況でもツアーを遂行するなんて言う話がいろいろ言われます。キャンセルが多いと、そのガイドの雇用が怪しくなるというわけです。人命にかかわるので、そういう話が大っぴらにいわれるわけでもありませんが、これもそういうことがあると考えたほうがよさそうです。それでこの遊覧船の件も、似たようなところがありませんかね。亀裂の修繕が不十分だった可能性があるというのは、もしそうなら論外ですが、運航のほうも、あきらかに無茶なことをしていた側面がないか。インタビュー取材に応じている地元の方々の話を見ていると、どうも相当心配されていたのように思われますね。起こるべくして起きた事故といわれても仕方ないし、見て見ぬふり、あるいは行政が運航会社に甘い態度をとっていたというのも十分ありそうです。

ところでinti-solさんが、この件で記事を書かれています。

遊覧船沈没

私は知床に行ったことはないのですが、inti-solさんは3回行かれたそうで、遊覧船にはお乗りにならなかったとのことですが、しかし昨年行った際偶然今回の船を撮影されたというのです。写真をこちらでご紹介することをお許しいただいたので、下に掲載します。

船のアップの写真が下です。

昨年の7月23日撮影とのことで、ちょうど私は、京都へ向かった日でした。オリンピックの開会式の日でした。そんな書き入れ時の日になぜ陸に上がっているかというと、事故があって修理・点検中だったためと思われます。

東京オリンピック開会式を無視すると称して京都と大阪へちょびっと行ってきた話

それで、inti-solさんも記事で紹介されている、今回の船の出港時の写真です。出典はこちら

inti-solさんもご指摘のように、決して解像度が高いとはいえない粗い写真ですら、外洋はだいぶ波が高いですね。船長は決して操船技術が高いわけでもないらしいし、これでは危険でしょうがない。

それにしても、おそらくこの会社は今後経営た成り立たず廃業になるでしょうし、資産も大してあるわけでもないでしょう。保険はしっかりしているのか。そのレベルで心配です。つまり記事のタイトルにもしたように、最低レベルの船のメンテナンスすらできておらず、まともなスタッフ育成あるいはスカウトもなく、安全の意識もはなはだしく低かったというのでは文字通りお話にもなりません。まったくひどい話です。私も、1年に1回くらいはこういった遊覧船にも乗るし、たまにはフェリーを利用します。こんなひどい事故がそうそう起きるとは思いませんが、それにしたって新型コロナウイルスの関係でこの種の観光事業を営む会社は、経営がよろしくなくなっていることも多いはず。おそらくコロナウイルス蔓延以前よりも、無理な出航などは、ほかでも多くなっていないか。

というようなことを考えていたら、おいおいの記事を見つけました。詳細は、動画をご覧いただくとして、ここでは、記事削除の時のための意味もふくめて、要所のスクリーンショットを掲載します。字幕スーパーにご注目ください。

いかがでしょうか。動画をご紹介くださった男性もおっしゃっているように、そういう話を運航側がしているのではお話になりませんが、ハインリッヒの法則でいうように、いわゆる「ヒヤリ・ハット」が相当にあったんじゃないんですかね。それはもちろん、この動画を観る前から確実に予想できたことですが、それにしたってこのような客の前でそのようなアナウンスをすること自体まともではありません。ほんと、なるべくしてなった遭難事故ではないか。そして、これまた私には「どうもなあ」です。海に関するリゾートが盛んで離島も多い長崎県での話です。引用はこちらから。

>知床で観光船遭難 「なぜ…」長崎の遊覧船事業者 運航会社の判断疑問視
2022/4/26 10:30 (JST)4/26 10:43 (JST)updated
© 株式会社長崎新聞社

 北海道・知床の観光船海難事故は、悪天候が予想される中での出港が惨事につながったとの見方がある。長崎県内で遊覧船を運航する事業者から「客の命を預かる事業。安全をないがしろにしてはいけない」などと運航会社の判断を疑問視する声が上がった。
 周辺海域は当時、2~3メートルの波があったとされる。九十九島で遊覧船を運航する「させぼパール・シー」(佐世保市)は風速13メートル以上、波高1.5メートル以上などに該当する場合は欠航している。遊覧船事業部の久野英樹次長は「3メートルで船を出すのはありえない」。
 長崎市で軍艦島クルーズを運航する「やまさ海運」(同市)も風速10メートル超、波高1メートル超、見通し500メートル以下は出港しないと規定。伊達昌宏社長は「大変痛ましい大事故。言葉がない。行方不明者全員が早く見つかることを祈りたい」と沈痛な表情を浮かべた。
 安否不明の船長、豊田徳幸さん(54)は2016年8月~17年3月、島原市の林田観光バスで水陸両用バスのドライバーとして働いていた。林田正剛社長は「用心する人だった。なぜ荒波の中、出港したのか。会社が無理をさせたのでは」と推測する。
 林田社長によると、豊田さんは他のドライバー2人に熱心に指導するなどリーダー的な存在。「陸も船も運転が上手で、波がひどい時は彼の判断で運航を中止した。当時の彼なら『無理です』と止めてると思う。1人でも多く助かってほしい」と願った。

記事に登場する

>九十九島で遊覧船を運航する「させぼパール・シー」(佐世保市)

を、2020年に私は利用しています。

雨にたたられた東海・関西・九州の旅(2020年7月Day4-2)(10) 雨にたたられた東海・関西・九州の旅(2020年7月Day4-3)(11) 雨にたたられた東海・関西・九州の旅(2020年7月Day4-4)(12) 雨にたたられた東海・関西・九州の旅(2020年7月Day4-5)(13)

記事中

>周辺海域は当時、2~3メートルの波があったとされる。九十九島で遊覧船を運航する「させぼパール・シー」(佐世保市)は風速13メートル以上、波高1.5メートル以上などに該当する場合は欠航している。遊覧船事業部の久野英樹次長は「3メートルで船を出すのはありえない」。
 長崎市で軍艦島クルーズを運航する「やまさ海運」(同市)も風速10メートル超、波高1メートル超、見通し500メートル以下は出港しないと規定。

とありまして、3mもすごいですが、2mの波というのも、尋常ではありません。とても遊覧などできるようなものではない。写真でもわかりますように、私が佐世保で遊覧船に乗ったときはべた凪だったと思いますが、楽しむための娯楽の遊覧船なのだから、波浪でするものでもない。

書きたいことがあまりに多すぎて、散漫な記事になってしまって申し訳ございません。こういう事件では、知床の事業所はもちろん他の地域の事業所も大変な損害を受けますからね。風評被害なども起きるでしょう。ほかにもいろいろ書くべきことはたくさんありますが、ともかく他人の運転・操縦する乗り物に乗っている際は、他人様に命を預けているのです。たとえば寒冷な海に入るとなると、低体温症の死は避けられないのだから、ボートの設置の拡充も図るべきではないか。無線での助けの求めも、ややタイムラグなど不審なところが多いし、まだまだ追及されなければいけないことがたくさんあります。私も注視します。実際この記事を書き上げて以降も、いろいろなことが報道されています。、

なお写真を提供していただいたinti-solさんに感謝を申し上げ、またお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りします。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4143

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>