オードリー・ヘプバーンの生涯について取り扱った映画『オードリー・ヘプバーン』が公開されています。
個人的には、私はヘプバーンならキャサリンのほうが好きな人間なので、あまりオードリーには興味がないのですが、それはこの際どうでもいい話です。本日は、彼女の命を奪った病気について書いてみます。
オードリー・ヘプバーンは、1993年1月20日に、スイスの自宅で亡くなりました。彼女の死因が虫垂がんです。
Wikipediaによると、日本人の虫垂がんの発症率は年間 0.12人/100万人 程度とのことで、ということは、日本の人口が12600万人とすれば、年間15人くらいの発症なんですかね。かなりまれな疾患ということになりそうです。
ほかにもWikipediaから引用すると(注釈の番号は削除)、
>虫垂癌は自覚症状が少なく、大腸内視鏡検査での発見率は30%程度との報告 がある様に手術前確定診断が難しいため別の疾患の検査や手術に伴い発見されることも多い。
>発見されているときにはすでに腹膜やリンパ節に転移していることが多い ことから、外科手術により虫垂および転移箇所を除去した上で化学療法を行う。しかし、他のガンとは異なり虫垂癌固有の標準術式は確立されていない。
というわけで、発見困難、発見されたときは手遅れの場合が多い、治療法も確立していないというわけで、非常に怖い病気です。では、実際にこの病気にかかった人たちの経緯を見てみましょう。
前出のオードリーはというと、Wikipediaの死去というところを私の責任で要約すると、1992年9月末に腹痛を起こし、10月に精密検査のためにロサンゼルスへ向かいます。末にがんが判明、11月1日に手術をしました。一時退院して化学療法を受けますが、腸閉そくになり12月1日に再入院、同日に再手術をしたものの手の施しようのない状態でした。人生の最後を自宅で過ごさせるため、生きるか死ぬかの危険なフライトで(体調が悪すぎて、気圧の変化で腸閉そくを起こしかねない状態でした)、なんとかスイスへ到着します。これが12月20日の出発でした。その後は自宅で最後の時間を過ごし、1月17日に自宅で最後の散歩、20日に亡くなっています。つまり彼女は、9月末から4か月くらいしか生きられなかったわけです。
日本人女子として、傑出した砲丸投げ選手だった森千夏はといいますと、彼女は26年間の短い生涯で、9回も日本記録を更新しているすごいアスリートでしたが、アテネ五輪代表に内定した2004年春過ぎから体調を崩し、アテネ五輪ではベスト記録(18m22㎝)に遠く及ばない15m86㎝で予選落ち、その後入院となりますが、病名が確定せず、入退院を繰り返します。ようやく2005年7月に虫垂がんであることがわかり療養をしますが、彼女が希望した治療法が保険適用外のものであり、彼女への募金も行われたとか。パニック障害を起こすなど、精神的なダメージも重大でした。そして2006年8月9日に26歳で亡くなっています。彼女も、自覚症状が現れてから、2年強くらいしか生きられませんでした。
2000年代に活躍したグラビアアイドルの村上恵梨は、2006年11月ごろから腹痛を感じ、翌年1月に病院を受診、原因不明でしたが虫垂がんであることが判明、直ちに摘出手術をうけたもののすでに転移が広がっており、同じ年の7月に亡くなっています。なお上の森、村上のお2人の闘病経緯も、Wikipediaの記述を私の責任で要約したことをお断りしておきます。
以上3人の方の闘病経緯を記しましたが、森以外は、自覚症状を訴えてから1年も満たずに亡くなっています。森は、2年数か月というところか。かつてこんな記事を書いたことがあります。
すい臓がんというのは危険な病だとあらためて思ったその記事でもご紹介しましたように、すい臓がんは、
>早期発見が非常に困難な上に進行が早く、極めて予後は悪い
とされ、
>膵癌の予後は非常に悪い。5年生存率は部位別がんのなかで最下位(5%)であり、治療がきわめて困難な癌の一つである。
というわけで、非常によろしくない病気です。虫垂がんは、こちらの論文でのデータによると、
>術後観察期間中央値は43カ月(2~169カ月),転帰は無再発生存5例,無再発他病死3例,腹膜播種による原癌死3例,肝転移による原病死が1例,切除断端再発よる原病死が1例であった.累積5年生存率は51.9%であった.
とあります。運が良ければ助かるのですかね。しかし、オードリー、森、村上の3人の状況では、なかなか治癒は難しかったのではないかという気がします。
すい臓がんの場合、糖尿病などの罹患者や肥満体の人などがなりやすいようですが、虫垂がんはまれながんなので、そのあたりはどうか。大腸がん全体では、Wikipediaによれば危険因子として、過体重・肥満、赤肉、加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージ)の摂取、飲酒、喫煙などがあげられています。私はというと、飲酒はあまりせず、喫煙はしませんが、過体重・肥満だし、赤肉や加工肉は大好きです。私もそれなりのリスクファクターの持ち主です。ただ肉では、鶏肉が一番好きかな。
でも虫垂がんなんて、多分なるならないは運でしかないですからね。たぶん記事であげたお三方は、運が悪いから虫垂がんになったはずで、気を付けていればならなかったというものでもないでしょう。オードリーの62歳という年齢だってとても早い死ですが、森千夏と村上恵梨なんて二十代の死ですからとても気の毒です。
3人の方々を追悼して、この記事を終えます。