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Channel: ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
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予想の範疇ではあるが、河瀨直美の東京オリンピックの公式記録映画はかなりの不入りらしい

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予想通りというか、まあそうだろうなとしか思えませんが、タイトルにもしたように、『東京2020オリンピックSIDE :A』がだいぶ興行成績が悪いようですね。いくつか引用します。

河瀬直美監督『東京2020オリンピック』連作の興行面における二つの問題点

>(前略)
 ウィークデイも劇場によっては大入りが続いている『トップガン マーヴェリック』とまったく逆の意味で、今週興行関連で話題を集めたのは、6月3日に公開された河瀬直美総監督による東京2020オリンピックの公式映画『東京2020オリンピック SIDE:A』の不入りに関する報道だ。オープニング3日間の動員は1万2208人、興収は1667万1600円、土日2日間の興収は約1200万円。同時期の『トップガン マーヴェリック』の約1.5%の数字である。

 過去の作品の制作現場における河瀬直美監督の暴力問題、同作の制作に密着したNHKの番組における捏造テロップとエキストラのやらせ疑惑、完成披露試写会場における公開反対デモなど、『東京2020オリンピック SIDE:A』に関しては公開前からネガティブな報道が続いていたが、本コラムはあくまでも興行コラムなので、興行の観点から本作の問題を二つ指摘したい。

 一つは、1965年3月に公開されてヒットを記録した市川崑総監督による『東京オリンピック』と同様に、本作が東宝配給、つまり必然的に全国で大規模公開されたことだ(それでも東宝配給の新作としては最小規模の約200スクリーンだが)。オリンピックの公式映画自体はIOCの規定で決められていることなので、作品の制作自体を問題視しても仕方がない(フィルム時代とデジタル時代で、作品の資料的価値については大きく変化しているはずだが)。河瀬直美監督という人選も、商業映画における実績はともかく、カンヌ映画祭において継続的に寵愛を受けていること(そのこと自体に思うところはあるが)によって国際的に名前が通っている日本人監督の一人であることから、JOCのような組織にとっては選びやすかったのだろう。

 しかし、57年前と同じようにオリンピックのドキュメンタリー映画に観客が押し寄せると思っていたとしたらおめでたすぎるし、諸々の政治的しがらみによって上層部が決めたことを敗戦処理として公開したのであれば、結局その皺寄せがいくのはJOCでも東宝でも河瀬直美監督でもなく、本作を東宝との関係性からどんなにガラガラでも上映しなくてはいけない全国200スクリーンの劇場である。ちなみに200スクリーン、一日4回上映でオープニング3日間の動員を単純計算すると、1回の上映あたりの動員は5人となる。何らかのかたちで、事前に上映規模を縮小する方法はなかったのだろうか。

上でご紹介した表は、同じ記事からのものです。表に映画が出てこないわけで、つまりは非常に興行成績がよろしくないわけです。

この映画については、私のようにアンチ東京オリンピック2020は、だれが観るか、そんな映画でしょうし(私も、相当な馬鹿なので、映画でしたら「この映画は絶対観たくない」という映画たそうそうあるわけでもありませんが、この映画は、絶対観たくありません)、それ相応にオリンピックを楽しんだ人も、いまさらという側面が大きいのかなと思います。また、河瀬直美についてのネガティヴ報道や、今年1月でのNHKのデマ番組など、どうも世間からの厳しい視線が多かったのも確かです。その点については、上の記事でも指摘されています。

「拳で顔面を殴打」東京五輪公式記録映画・河瀬直美監督が事務所スタッフに暴力

NHK、事実確認せず不適切字幕「金もらって」「五輪反対デモ参加」

私も番組は見ず、その後有志がアップロードしたその部分を抜粋した動画を見ただけですが、ほかは、音声処理をしているとはいえインタビューを受けている人物の肉声を伝えていたのに、一番問題の金銭の授受があったというくだりは字幕テロップとナレーションで処理をしているというなんともお粗末な代物でした。仮に金の授受があったとして、それを反五輪デモ一般に論じるのも、典型的な詭弁、虚偽ですが(「早まった一般化」というやつでしょう)、これも「五輪反対デモ」の件でなければ、こんなめちゃくちゃな報道になったのか、きわめて疑問です。

選手や競技を扱った「SIDE:A」でこのざまなのだから、裏方をあつかうという「SIDE:B」は相当にひどい興行成績になるのは確実でしょうね。いや、そういうテーマで記録映画を製作するということ自体は、そんなに悪いとも思いませんが、でも河瀬直美が(総)監督じゃあなあという気はします。

ところで下の記事のタイトルはかなり皮肉です。

「映画も無観客」皮肉られた東京五輪公式映画 なぜ大コケ?「大会への嫌な感情」「河瀬色」...識者指摘

タイトルにでてくる「識者」とは、映画評論家である前田有一氏です。前田氏について詳しくありませんが、彼のWikipediaによると

>2003年より、前田が運営するサイトと日本文化チャンネル桜の番組内で「超映画批評」と題して映画批評を行っており

とありますが、「日刊ゲンダイ」などにも寄稿しているとのことで、あるいは幅広くいろいろなメディアに登場している方なのかもですね。そこで氏のコメントを引用します。氏は、エンブレムの問題ほか(暴行の件も指摘)のトラブルについて指摘した後、

>そもそも、河瀬さんの作風は万人受けとは真逆にいるタイプです。これらの要因の相乗効果によって『私には向いていない』『なんかお金払って行くのもね...』と思った人が多かったのではないでしょうか」

>「市川作品には、当時の日本の精一杯で作ったイベント(五輪)を余すことなく記録しようという意志を感じました。あの映画を後から見ると『64年当時はこういうことをやっていたんだ』と振り返ることができます。まさに『記録映画』です。一方で、河瀬さんの作品からは、今回の大会・競技を『記録しよう』という気が感じられませんでした。前回大会とは違い、テレビやインターネットが普及し、映画で記録する必然性が薄れたという背景はありますが...感じたのは『私の視点から見た五輪を後世に残そう』という意識です」

としたうえで、

>「アスリート以外の関係者や大衆、市民運動などを描くのならば、五輪開催側(JOC、IOCなど)の『暗部』を避けては通れません。一方で、あくまで公式映画ですから、そういった人たちを正面から批判することは許されない。ただ、世の中には、一見するとわからないけど、実は体制批判の意味が込められていた、という映画も数多くあります。『面従腹背』でもいいので、東京五輪の『暗部』を河瀬さんなりに批判する、くらいのことがあってもいいのではないかなと思います」

としています。そうなれば面白いですが、そういう期待は河瀬にはむずかしいんじゃないんですかね。まあそんなことは、前田氏も本気では期待していないのでしょうが。   いずれにせよあんまり面白そうじゃないですね。アンチの私でなくてもあんまり興味をひくものでもありません。五輪の記録映画自体、すでに過去の遺物に近いのでしょうが、そのような限界をどれくらい突破できるかがこういった映画の価値でしょう。河瀨直美は、そのような方面に能力がある人物ではないのだと思います。予想できたことですが、やっぱり予想通りですね。それで映画館や東宝にも迷惑がかかるのだから、まったくもってひどい話です。『SIDE:B』の公開は、明日24日からです。さらに映画館が迷惑しそうです。

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